身体が女になったからって、オレは男だから!ホモじゃねーから!男とヤるとかありえねーから!ち、ちが……♡ やめ……♡ 作:ゲルパンマン♥山崎
「このッ! このアタシが! 人間ごときにィ!」
「ぐっ! このッ! いい加減にィ!」
「死ねやァッ!」
「ギャアアアアアアアアアッ!」
女魔族の身体がボロボロと崩壊していく。
手足が崩れ、身体が倒れ、頭が粉々に砕けていく。
着ていた服やアクセサリーを残して、肉体が粉々になったことを確認すると、二人の冒険者はやっと戦闘態勢を解いた。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあ……」
「うぐ……た、倒した……? 倒したのか……?」
「はあぁ~~……」
二人の男はその場で脱力する。目の前の敵を倒したからと言って、この場が絶対安全になったとは言い難いが、もはや新たな敵を警戒する気力も、それを討伐する体力も残っていなかった。
それだけ強大な敵であった。
彼らの名はクリスとサイラス。たった二人だけのパーティで一流にまで上り詰めた優秀な冒険者だ。
二人は自信に満ちていた。自分たちならば、何人もの冒険者を屠ってきた魔族にも間違いなく勝てるだろうと高をくくっていた。
だが実際に魔族と相対した時、それが慢心であったことを知る。
魔族の力は、彼らの想像を大きく超えていた。
命を賭けた綱渡りの連続。不死身と見紛う魔族の耐久力。
そして試される、相棒を信じて命を預ける胆力。
打ち合わせもなしに強行されるコンビネーション。
“あいつならこう動く”
それを信じて、自分の命を投げ出す覚悟。
もし相棒が自分とは別の判断をしていたら、次の瞬間、間違いなく死ぬ。
お互いがお互いを守り、守られ、受け流し、弾き、陽動し、牽制し、そして攻撃を続けた。
どちらか片方が死ねば、いや、満足に動けなくなれば、生き残ることはまず不可能。その予断なき状況を幾度となく強制される恐怖心は、想像を絶する心労を積み重ねた。
だが、二人は勝利した。
もし自分が間違えたら。
もし相棒が別の考えをしたら。
常に脳裏を掠めるその不安を乗り越え、二人は魔族を打倒したのだ。
戦闘が終わった時、クリスの毛髪はすべてが真っ白に、サイラスも半分が白くなっていた。
二人はしばらくの間放心し、そして涙を流してお互いが生きていることを喜んだ。
……
「死体は消えちまったけど、めっちゃ色んなモン残してんな」
「やたらじゃらじゃらしたヤツだったしな。ほとんどマジックアイテムみたいだ」
「見ろよこの繊細な細工の指輪。こんなんどうやって作ったのかわかんねえ。一体いくらの値がつくのやら……うけけけ!」
「こっちもすげーぞ。見ろよこのサイズの宝石。世界にただ一つと言われても納得しちまうデカさだ。うひひひ!」
彼らは結構俗物だった。
ひとしきり身体を休め、怪我の手当をした後、二人はご満悦で戦利品を漁る。
彼らは、見つけたお宝をその場で分配して、各々で持ち帰る超どんぶり勘定だ。お互いに数え切れないほどの貸し借りをしており、もはやどちらが持っていても共同資産のようなものなのだ。
とは言え、不公平感をなくすため、同じ物が複数個手に入ったときは必ず均等に分けるというルールは律儀に守っている。
「ん? なんだこの箱。ペアリング? 他のに比べてやたら地味な……」
「ちょい貸せ。見てみる」
「あいよ」
「う~ん……邪悪なものではなさそうなんだが……イマイチよくわかんねえな」
「んだよ肝心なときに役にたたねえな」
「殴られたいか?」
「まぁいいや。イッコ返せ」
「……」
「おい! イッコ! 分配!」
「じょーだんじょーだん。ほらよ」
「おっ、とっ、とぉ。投げんなよ、ちっせぇんだから」
クリスは、受け取った指輪を適当な指につけようとして……両手は既にゴテゴテと指輪だらけだった。
余っている指は一本だけ。よりによって左手の薬指だ。
流石にキモいな、と思いつつも、とりあえず今だけはと薬指にその指輪をはめた所で、サイラスから茶々が入る。
「うわキッモ。左手の薬指に着けやがった……流石にないわ……」
「るせー! 他の指が埋まってんだよ!」
「わりーけど俺は今は着けないわ……ホントわりいけど、俺そういう趣味ないんで」
「オレもねぇわ! 死んどけ!」
「前から言ってるが、戦利品をその場で身につけるのは自殺行為だぞ。何か罠や呪いがあったらどうする」
「てめーもいくつか着けてるじゃん」
「俺はなんとなくわかるからいいの」
「オレだって悪いモンはなんとなく感じ取るし、いーじゃんいーじゃん。今まで大丈夫だったんだし」
「まぁ、そうだが……」
もちろん彼らは、お互いに恋愛感情など持ち合わせていない。
この戦いで以前とは比べものにならない信頼が芽生えたが、やはり今まで通り恋愛対象ではない。
彼らは普通に女が好きで、普通に娼館に行き、普通に女の恋人がいた時期もある男達だ。
だが、二人の運命は、この瞬間から大きく狂うことになる。
この指輪を二人で分け合った、この瞬間から。
翌朝、クリスは女になっていた。
より正しく表現するなら、女児になっていた。