身体が女になったからって、オレは男だから!ホモじゃねーから!男とヤるとかありえねーから!ち、ちが……♡ やめ……♡ 作:ゲルパンマン♥山崎
「はい、こうやって着けるの。ね、簡単でしょ?」
「うわ……」
鏡に映る、下着姿の美少女。
着た。着ちまった。
女物の、下着を。
もちろん普通の下着だ。やたら布面積が小さかったり、大事なところに穴が開いていたりはしない。
う……やべ……ヘンな気分になってきた……。
全裸ならもう飽きるほど見たけど、女物の下着着るだけで、こう、なんか、いい。すごくいい。
正直、全裸よりも断然エロさを感じる。
全く如何わしい下着なんかじゃないのに。
「おーい、クリス? パンツ履いた? お、かわいいじゃん」
「あっ! ちょっ! 開けんな! バカ!」
「あら~、これいいのかしら?」
「いいのいいの。身内みたいなもんだし、金払ったの俺だし」
「なんも良くねえわ! 下着くらいオレが買うっつってんのに、勝手に払いやがって……」
「俺が選んで、俺が買って、お前が着る。それで良くね?」
「……まぁ、ヘンなデザインじゃなけりゃいいよ、もう……」
「服も色々買ってきた。今ここで適当なの着とけ」
「お、おう……」
今日のサイラスはやたらと面倒見が良い。
普段とはどこか違うサイラスの態度に一抹の気持ち悪さを感じつつ、クリスは渡された服を広げる。
「っておま、これスカートじゃん! てか全部子供服じゃねーか!」
「そうだが?」
「そうだがじゃねーよ! せめて……せめてこう、あるだろ!?」
「いや、自分の体格考えろよ。ほらピッタリ」
「ぐぬぬ……だがスカートは……」
「ままま、そう言わずにさ、絶対似合うから」
「あら~、素敵なものばかりですね。きっととてもお似合になりますよ。もう支払いを済ませてしまったのですから、着ないともったいないですよ」
「お姉さん話がわかるな。そうなんだよ、もう買っちまったからさぁ」
「お前が勝手に払っただけだろ」
「まーまー、ほら、よく見ろよ」
サイラスがクリスの身体に服を合わせながら、鏡を指さす。
「めちゃめちゃかわいいじゃん。お前だってそう思うだろ?」
「ぬ……そりゃ……まぁ、うん、かわいいが」
クリスは、未だに鏡に映る美少女が自分自身であるという自覚が薄い為、客観的事実としてかわいい事は認めている。
「こんな姿の美少女を実際に見たくないか? これを着て、ひらっと舞う様を見たくないか?」
「ぬ……う……」
「だからさ、ちょっと着てみようぜ。な?」
優しく諭すサイラスに、クリスは思考を巡らす。
なんか今日のサイラス、気持ち悪ぃな……やけに熱意がこもってるし……
それはそれとして、この服は……ぐぬぬ……
まぁ、間違いなくかわいいだろう。オレだし。
いやしかし、こんなものを着て往来を歩くのはちょっとな……
知り合いに見られたら恥ずかしいじゃん。
サイラスのヤローはかわいいって言ってくれてるけど、あそこの下品なやつらは絶対嗤ってくるだろうしなぁ。
……ん?
……“サイラスはかわいいって言ってくれてるけど”?
“サイラスはかわいいって言ってくれてるけど”ってなんだよ。
いや、意味わかんね。
なんかオレがかわいいって言われたいみたいじゃん。
あまつさえ、“かわいい”が褒め言葉みたいじゃん。
いやいやいやいや……ありえない。
オレは
超凄腕と評判の、魔族すら打倒せし伝説のクリス様だぞ?
我、歴史に名を残す人間ぞ?
そう、ちょーーっとだけ間違えたんだよ。うん。
例えば、サイラスの趣味ならこれよりこっちのほうが好みなんじゃないのか、とか……
いや違ーよ! サイラスは関係ねえよ!
何サイラスの好みで服選ぼうとしてんだよ! アホか!
オレが好き勝手に選べばいいんだって!
そうだよ、別にいちいちサイラスに媚びる必要なんかねえんだから。
やっぱまず第一に動きやすさだよな。
そうなると、スパッツ系? スカートよりかはなんぼかマシか……嫌な目つきでめっちゃ見てきそうだけど……
ねちっこい視線で、ネチネチネチョネチョとな……あいつはそういうやつだ。
スパッツの上にスカート履くか。これならまだ抵抗も薄い。
いや……下に何履いてようが、なんか嬉々としてめくってきそう……
下にジャージ履いてたとしても、嫌な笑みを浮かべながらペロンとな。
あいつホントこういうの好きだからな……くふふ……
って、ちがあああああう!!
もおおおおめんどくせええええ!!
「ああああ着ない着ない着ない! 絶対着ないぞ! オレは!」
クリスがキレた。
こうなったらもう無理である。
「あー……わりわり。調子に乗りすぎた。ほら、こういうのならいいだろ」
サイラスがあらかじめ買っておいた無難な服を渡す。
子供サイズのチノパンとシャツとパーカーだ。
「なんだよあんじゃねーか! 始めっから出せよこういうのをよォ!」
「悪かった悪かった」
クリスはプリプリと怒りながらサイラスから服をひったくり、いそいそと着る。
サイラスは、クリスが着替え終わるまで一緒に試着室に居続け、その姿をずっとヤバい目で観察したのだった。
……
「で?」
「ん?」
「なんだそれ」
女性用下着と野暮ったい普段着を詰めて貰った袋を受け取った横で、別の袋を持ったサイラスに尋ねる。
サイラスはクリスとは別に衣服を買い込んでいた。
とても女の子らしい衣服である。
「どうすんの? それ。お前が着んの?」
「んな訳ねぇだろ。俺が着ても可愛くねえし、そもそも入んねえよ」
「誰が着んだよ」
「お前」
「は?」
「お前が着るんだよ」
「は? 死ねよ」
「は? 着ろよ」
「いや、死ねよ」
「ぜってぇ似合うと思うんだけどなー残念だなー」
「着ねぇつってんだろ。まだタグ付いたままだろ。返品しとけや」
「あ、いーのいーの。俺が勝手に買っただけだから」
「着ねえって!」
「いーのいーの。気にすんな気にすんな」
「着ねえから! ぜってぇ着ねえから!」
……
「おいなんでソレこっちの部屋に置いとくんだよ。てめぇが買った服だろ」
「いやお前の部屋は倉庫兼用だろ。置いとくだけだって。でももし着たくなったら着てもいいぞ」
「着ねぇ! ぜってぇ着ねぇ!」