身体が女になったからって、オレは男だから!ホモじゃねーから!男とヤるとかありえねーから!ち、ちが……♡ やめ……♡ 作:ゲルパンマン♥山崎
……
サイラスは覚悟を決めた。
何の覚悟か?
決まっている。
クリスを一人の女として見る覚悟だ。
サイラスが単身で知人を訪ねたのは、クリスを元に戻す手掛かりを探すためではない。
女になったクリスに対して、自分はどうすればいいのかを相談するためだ。
その知人である女性は、事情を聞き出した後で、サイラスの指に癒着した指輪(いつの間にか左手の薬指に移動していた)を一瞥して言い放った。
「……好きにすれば?」
彼女はイライラしていた。
サイラスは懸命に悩みを相談していたつもりだったのだが、彼女はまったく別の印象を受けた。
“こいつ、│惚気《のろけ》るためだけにわざわざ訪ねて来たの?”
複雑な心情が渦巻く。
彼女は指輪の正体を知っている。
平たく言ってしまえば、二人を結びつけるペアリング。
だが、その効果は生易しいものではない。
これは、着用者の感情も、性別も、種族すらも、一切合切を捻じ曲げて、強制的に結びつけるリングである。
もはや呪いとも言える効果だが、それでもこの指輪を欲しがる人間は後を絶たない。
何故ならば、この指輪によって結ばれた二人は例外なく、誰もが羨むほど相思相愛になり、幸せな家庭を築くのである。
たとえ無理矢理装着させようとも、憎しみ合う仇敵同士でも、相手を利用する腹積もりでも、更には根本的に肉体構造の違う別種であろうとも、このリングが二人の指にはめられさえすれば、日に日に二人は惹かれ合い、そして愛し合う。心の底から。
サイラスには既にその効果が現れていると見ていいだろう。相手も時間の問題だ。
心底羨ましい。妬ましい。自分にはこの年になってもいい人などいないのに。
彼女は機嫌が悪いことを隠そうともせず、ぞんざいな返答をした。何度もした。好きにすれば?勝手にすれば?
指輪が発動してしまった以上、何を言っても二人は惹かれ合うし、万が一あわよくば破局でもすればスカッとさわやかざまあみろだ。指輪の事も教えてやらない。悔しいから。
だが、サイラスはそのおざなりな返事を真面目に聞いた。そして確信した。
“ああ、別に
好きにすれば? と言われて、そうか好きにしていいのか、と素直に聞いてしまった。
サイラスは彼女に大きな感謝を伝え、気分晴れ晴れスカッとさわやかな顔で帰って行った。
旧友が唐突に訪ねてきたと思えば、延々惚気話を聞かされ、最後には勝手に納得して気持ち良く去って行った。
彼女にはイライラだけが残った。
独りになり静かになった部屋の中、嫌な気分を振り払うように大きく伸びをしてため息をつき、彼女は本気で婚活しようかと悩み始めるのだった。
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