アウレリア王国に現れた大量の黒い“
剣による攻撃は通じるのだが、首や腕を切り落としても再生して増えてしまい、イリスとその部下である神聖王国騎士団は苦戦を強いられていた。
「はあっ!!……何なんだ、この黒いモノ達は!?
民達の避難は!?」
「それが、まだ6割ほどしか進んでおらず、まだ避難できていない民達が大勢おります!」
「くっ!なんてことだ……!
極力戦闘を避け、避難を優先させよ!
伝達は忘れるな!!」
「はっ!」
イリスの指示に兵士は慌てて駆け出していく。
しかし、謎の黒い存在は数は減らず、ゾロゾロと湧き出してくる為に、切っても切ってもキリが無い。
その時、イリスの頭の中にセラフィーナからの念話が届く。
【イリス、私がなんとかします。】
【セラ……!?何をする気だ!?】
【今、アウレリア王国を襲っているのは、暗き生き物の力で生み出された分身、ならば私の力で消すことは出来ます。】
【だが、それでは【イリス、私なら大丈夫。私を信じて。】……セラ。分かった、頼む。】
イリスはセラフィーナに悲痛な様子で頼むと、セラフィーナは優しく微笑んで頷く。
セラフィーナの力、その力は浄化であり、魔である者たちを消す事が出来るのだが、今のセラフィーナには浄化を制御するのは難しい。
浄化の力は強力な為、使える時間が短く、セラフィーナの身体にも大きな負担をかける為、イリスは彼女が力を使うのに賛成出来ずにいた。
「はああっ!!!『ズバッ!!』(セラ、無茶はしないでくれ……!!)」
イリスが迫ってきていた黒いモノを斬り伏せた時、城から清らかな白い光が国全体を包むように広がり、その白い光を受けた黒いモノ達は、ボロボロに崩れていった。
それを見た兵士や騎士たち安堵の息を漏らし、喜びの声を挙げた。
「す、すごい!!これは奇跡の力だ!!」
「た、助かった……!助かったんだ!!」
喜ぶ者達を尻目にイリスは、セラフィーナに念話を送る。
【セラ、ありがとう……!黒いモノは全て【きゃああああああっ!!!?】っ!!?セラ、セラ!?どうした!】
突如聞こえてきた親友の悲鳴に、イリスは嫌な胸騒ぎを覚え、セラフィーナのいる地下神殿へと駆け出して向かう。
そして城に着くと、そこには謎の魔導士らしきもの達がおり、イリスの前に立ち塞がっている。
「何だ貴様ら!!?そこをどけ!!」
「「「「全ては、真なる神のため……。」」」」
「何を訳のわからない事を!!そこを、どけぇ!!!」
イリスは謎の魔導士達を斬り伏せて進んでいくが、数が多い為になかなか前に進めない。
そんな中でイリスの前に意外な人物が現れる。
「おやおや、これはイリス将軍。何事ですかな?」
「お前は、レイモンドゥス!!この者達は何だ!?」
イリスの前に現れたのは、アウレリア王国の神官であるレイモンドゥス・ルルスであった。
イリスはレイモンドゥスを護るように立つ魔導士達を見て、彼に尋ねるが彼は何も答えない。
しかしイリスはそんな彼を見て、“
「まさか、外で起きた騒ぎ……あれは、貴様の仕業か!!?」
「あれですか。あれは、“選別”でございますよ、イリス将軍。」
「選別、だと?何を言っている!?あれで何人の民が!!」
「あの黒き者達は、いわば神の遣い!
あの者達に選ばれなかった者達は、真の神が創る世に住めない“尊い犠牲”だったのです。」
「は……?尊い、犠牲……!?
何人も人が死んでいるのに、尊いだと……!!
貴様ぁ……!!命を何だと思っているんだ!!!!?」
イリスは間近で見てしまった。
黒いモノに襲われ、塵となった母親とその亡骸の前で泣く子の姿を。
それを尊い犠牲で済ませるレイモンドゥスに、彼女は怒りが溢れて仕方なかったが、当のレイモンドゥスはどこ吹く風であった。
「全く……そんな“
「貴様ぁ!!巫山戯るなぁ!!」
イリスは怒りに任せてレイモンドゥスに斬り掛かるが、そんな彼の背後から黒く太い触手が伸びてきて、彼女を弾き飛ばす。
そして、イリスが顔を上げると、そこにはセラフィーナを縛り上げている“
「っ!!?セラ!!!レイモンドゥス!!?
その禍々しい生き物は何だ!!?」
「禍々しい……?この神々しい姿が分かりませんか?」
「そんな事はいい!質問に答えろ!!」
「良いでしょう。ならばお答えしましょう。
このお方こそ!!我らを導いてくださる、“真なる神”なのです!!」
「なに!?真なる、神……!?」
イリスはレイモンドゥスが崇める異形こそが、真なる神と言った事に驚いたが、彼は構わずに熱弁する。
「その通り!!!私はある時、この方の“声”を聞きました。
“白き女神が欲しい、贄として捧げれば永遠の安寧を与えよう”、と。
白き女神の一柱であるセラフィーナ様とこの方が交われば、神子が生まれ、永遠なる安寧が訪れるのです!!」
「なにを、言っているのだ……!?
そんな醜い化け物が神だと!?
盲言も大概にしろ!!セラを離せ!!」
イリスはセラフィーナを助けようと駆け出すが、禍々しい異形はイリスを触手で弾き飛ばすと、セラフィーナの足を開かせ、醜い触手を近付ける。
その光景にレイモンドゥスと、周りの魔導士達は歓喜する。
「さぁ神よ!!
今こそセラフィーナ様と交わり、神子を!!」
「……!!!?」
「や、止めろ……!!セラ……!!?
セラぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
イリスが涙を流し、手を伸ばして叫んだ、その瞬間。
パキィィィンッ……。
世界が凍り付いた。
「な、何だ!!?誰だ!!?誰がこんな不届きな真似を!!?」
レイモンドゥスは眼の前で、イリス、セラフィーナと自分以外の全てが完全に凍り付いたのを見て、戸惑いながらも叫び声を挙げる。
その目には神聖な儀式を邪魔された事による怒りが滲み出ており、辺りを見渡す。
すると、誰かが歩いてくる音が聞こえ、イリスとレイモンドゥス、セラフィーナがその音の方を見ると、そこには……。
「よう、あんたが“元凶”?」
ハクアがいたが、その目は冷たくレイモンドゥスを見ていた……。
よし、次回、レイモンドゥスを潰します。
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