……1の砦……。
「何だこれは!!!」
七盾同盟軍が拠点にしている白の城。その城を護る1の砦の守護をする姫騎士アリシア・アルクトゥールスは、黒犬傭兵団から自分達に送りつけられてきた書状を握り潰して怒気を漏らす。
「アリシア、気持ちは分かるが今は鎮めろ。プリムが驚いている。」
「っ!?イリス、すまなかった。プリムも驚かせてすまない。だが……!」
「アリシア姉様……。」
同じく1の砦を護る姫将軍イリス・アルケーディアに諭され、不安そうに目を伏せている姫プリム・フィオリーレに謝罪する。
しかし、黒犬からの書状を握りつぶすように強く握る。
「“
「冗談で済ませられる内容ではない。セラフィーナ様もセレスティン様と共に、この書状について話すと言っていた。事態はどう動くか分からない。」
「アリシア姉様……私、怖いです。仲間の方がこんな事をするなんて……。」
「プリム、大丈夫だ。お前やこの砦の民達は私とイリスが必ず護る!」
「姉様……ありがとうございます。」
アリシアとプリムの仲の良さを見たイリスは、そんな2人を微笑ましく思うのであった……。
……3の砦……。
「奉仕国家……この様な事を考えようとは、あまり面白い人々ではないですね。」
「セレヌス全ての女が商品、などと謳っているのだ。悪い冗談という以外ほかあるまい。」
和風な建物として造られている3の砦、その奥の間では戦巫女を束ねる巫女長のカグヤと戦闘隠密部隊くノ一を束ねるコハクが話をしている。
カグヤもコハクも黒犬を敵として認識しているが、カグヤは大して興味を示しては居ないようだ。
「コハクさん、ハクアさんは本当にこの国の……白の女神の騎士となっているのですか?」
「そのようだ。どうやらそこは事実らしく、騎士見習いとして精を出しているようだぞ。」
「……倭國に残ってくれれば、巫女長として武者になってもらえるように願い出れたのですが、それならば仕方ありませんね。」
ハクアがセレスティンの騎士見習いとなっている事に、カグヤは若干残念そうにしているのを見て、コハクは苦笑しながら同意した……。
……4の砦……
「奉仕国家建国って……。これ、馬鹿を通り越して、笑えてくるわ。」
「いや、笑えるかよ。笑い話にもならねぇっての。」
「こんなの冗談にしたって笑えないわ。女を何だと思っているのかしら。」
4の砦に陣取っている赤毛の女傭兵マイアは呆れながら笑い、餓狼族の女傭兵レオナは呆れ、キミア魔法師団領次期グランドマスターである女魔法使いのアストリット・フラメルは帽子を深く被ってため息を吐く。
4の砦を護っているのはアストリット達魔法使いなのだが、それだけではとセレスティンが餓狼族のレオナに声をかけ、さらに4の砦にいる貴族令嬢のヴィヴィアンの護衛をしていたマイアにレオナを手伝うように声を掛けたのだ。
「黒犬の連中、頭の中欲望まみれ。はぁ~ぁ、良くこんな馬鹿な発言できるわ。」
「頭が馬鹿だからだろ?つうか、ヴォルトの野郎なんて小手先だけの野郎だしよぉ。真正面から潰せば良いんじゃないか?」
「そうしたいけど、数は敵の方が多いわ。最低でも前衛を任せられる者が何人かいないと。」
「まぁ、その内の1人に誰かいればなぁ……ん?なぁハクアとかどうだ?氷とか使えるし、あいつくらい強かったら……。」
「そのハクアなら、セレスティンの騎士見習いをしているそうよ。何でも、この国を救った際の腕が買われたみたいでね。」
「「……………マジ?」」
アストリットの言葉にマイアとレオナは驚き、ぽかんとした表情になっていた……。
……5の砦……。
テュルルを護るハーフリング族が守護している5の砦、その応接室では財務担当のメル・メルが頭を抱えながら悩んでいた。
「はぁ~〜〜〜〜〜〜ぁ!黒犬傭兵団のせいで、
「メル・メル!そんなの別に気にしないで平気だよ!あんな馬鹿はボクの斧でけちょんけちょんにしてやるんだから!!」
「ルー・ルー、幾らルー・ルーが強くても数の多さには勝てないよ。はぁ〜〜ぁ、誰かボク達に自由に協力してくれる人は居ないかなぁ。」
メル・メルがため息を吐き、天井を見上げていると、ルー・ルーが彼女の顔を上から見ながら提案する。
「メル・メル、それなら!ハクアに頼んでみようよ!セレスティンが騎士見習いにしてるっていうし、ボク達に力を貸してくれるかもしれないよ。」
「ハクアかぁ……それは良いかもしれないね!」
「それなら早速準備だ!ハクアがいるならセレスティンに許可を取らないとね!」
2人のハーフリングは楽しげに笑い合うと、早速用意に取り掛かるのであった……。
……白の城……。
「ハクアくんからの書状で現状は理解出来ました。ですが、エミリアさん、幾ら急ぐとはいえ必ず私に一言申し出るようにしてくださいね。」
「クラウディア様、申し訳ありません!」
ハクアからクラウディアに書状を届け、なおかつ近隣の状況を探るために兵を動かした事をエミリアがセレスティン、セラフィーナ、クラウディアに伝えたがクラウディアは自由過ぎるハクアに頭を抱えた。
ハクアからの書状では、まず近隣の村や町で黒犬が七盾の名を傘に陵辱や簒奪をし放題していたのを見て、討伐し、被害者をサングレアに送った事。
サングレア王国には被害者達の保護と治療を頼んだ事。
そして、黒の城からオリガ・ディスコルディア、ミスティオラ・アーテ、クロエ、ルカ、ラドミラを保護し、白の城にある自分の家にて保護している事が明記されていた。
「ハクアくん……何故報告をしないの?報告さえすればこちらでも人を動かせたのに。それに黒の女王と女帝達を保護なんて……。」
「クラウディア。ハクアくんは今、黒の女王……オリガさんと一緒にいるのですね。」
「はい、セレスティン様、セラフィーナ様。自分の家に泊めているとの事です。兵を動かして、捕らえますか?」
「それはいけません。まずは私達で対話をしてみます。それからでも遅くはないはずです。ハクアさんのいる場所に馬車を出してください。」
「「はっ!」」
セレスティンとセラフィーナの指示を聞き、クラウディアとエミリアは姿勢を正して一礼し、即座に動くのであった……。
その頃、ハクアの家ではオリガ、ミスティオラ、クロエ、ルカ、ラドミラが彼が自ら設計した風呂に入り、温かい料理を食べた。
5人は陵辱され、その際にラドミラは抵抗したが黒犬の副団長ディレクに特殊な石を飲まされて力と翼を失い、さらに左側の角をへし折られて、モノのように扱われてしまったのだ。
その現状を聞いたハクアは、怒りを通り過ごして頭が冷える中、ミスティオラとクロエから話を聞いている。
「そっか……そんな事が。助けるのが遅れて悪かったな。」
「お前は現状を知らなかったのだ。それを責めはしない。」
ラドミラの治療は特に念入りに行っており、今はミスティオラが起きていてクロエとルカがミスティオラの側に着いている。
「姉様や妾達を助けてくれた事、感謝するぞ。氷狼族の。」
「あぁ、それはどうも。あと、俺の名前はハクアだ。」
「では、ハクア。妾達はこれからどうなる?」
「そうだな……一応はこれから白の城にいるセレスティン様に会うことになるが、その後はどうしたものか。」
「オリガ様達を助けられないのか?」
「俺としてはクロエやルカの恩人の2人やラドミラさんは助けるし、最悪裏切ってでも護るつもりだ。けど、セレスティン様達なら話せば分かってくれるはずだ。」
「そうか……。」
ミスティオラが目を伏せて、コップに入った茶を飲むと扉がノックされた。ハクアが警戒しながら扉に近づく。
「……はい。」
「ハクアくん、私です。開けてくれますか?」
「セレスティン様……!?」
ハクアが扉を開けると、そこにはクラウディア、エミリアを連れ立って来たセレスティンとセラフィーナが立っていた……。
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