翌日。
Dクラスの教室は、朝から騒がしかった。
「おいお前ら、これ見ろよ!」
須藤が一冊の雑誌を、見せつけるようにドンッと叩きつける。
そこには、衝撃的な内容が記載されていた。
『高度育成高等学校……暴かれた闇』
・お飾りの入試制度 入学者は理事長の好みと関係者
・ムダ・ムダのオンパレード 許されざる税金の私物化
・疑惑の目 坂柳前理事長に迫る
数々の不祥事をすっぱ抜いてきた、有名週刊誌。その大半のページが、かつてこの学校の上層部が行ってきたであろう不正行為や不適切会計の暴露で占められている。もっとも全て真実であるとは限らないが、そう簡単に否定できるものでないことは誰の目にも明らかであった。
建前だけの入試制度や、特別試験などのイベントに費やした金額など、リークされたと思われる内部資料をベースにした記事は読みごたえがあるもので、なおかつ高い説得力がある。
……もしかすると、理事たちはこの記事が出ることを察知して、慌てて理事長を解任したのかもしれない。あまりにもお粗末だが、タイミング的にはそうとしか思えない。
「……そりゃ、意味わかんねぇ理由で退学になりゃ腹立つよな」
ペラペラとページをめくりながら、須藤は呟いた。
後半部分は過去に退学処分を受けた元生徒たち複数名のインタビューとなっており、これまた過激なものだ。何の教育になるのかよくわからない特別試験に、大量の費用が投じられている……そして、不公正な理由で一部の生徒を排除している。そんな論調で、きわめて批判的にこの学校の制度を取り上げていた。
退学者による一方的な主張であり、感情的な部分が入っているのは否定できない。それを差し引く必要はあるが、それでも一般人が見ればおかしいといえる要素だらけなのは確実だ。何より、前半のスクープで「不祥事まみれの学校」というバイアスがかかっている読者たちを怒らせるには、十分すぎるものである。
「やべーな、この学校」
「俺らが卒業するまでに潰れるんじゃね?」
池と山内が、珍しく不安そうに話している。
それも無理はない。この問題は、国会にまで取り上げられてしまっているからだ。
選挙が近いこともあり、多額の税金が投じられているこの学校は野党議員たちのサンドバッグになっているらしい。事態を黙認してきたであろう政府への批判は免れず、世論も学校叩き一色となる。ドラスティックな改革は、もはや既定路線と化している。
記事によれば、すでに警察も関係者の逮捕に向けて動き始めているという。
……悪人ではないかもしれないが、前理事長が「真っ白」な人間であるとは到底思えない。実刑を食らうレベルなのかは今後明らかになるだろうけど、教育者としてのキャリアはもう終わりだ。
「あたしたちが見せられていたのは、綺麗な部分ばかりだったのかな?」
「さぁ?……でも、かなり変な高校だってことはみんな知ってただろ」
俺の言葉を聞いて、恵ちゃんは納得したように頷いた。
学校のことを何も知らない状態でこの雑誌を読んだら、俺でも早く解体したほうがいいと思うだろう。さすがに閉校はないとしても、今後全てが変わっていくことは間違いない。
「そっか。ねぇ、あのさ……あたし………」
何か言いかけてから、再び言葉を止めた。
「……やっぱ、そうなるか」
桔梗ちゃんには、恵ちゃんの考えていることがわかったようだ。俺はさっぱり読めなかった……このあたり、さすがだと思う。
そして頭に思い浮かぶのは、今日も部屋に待たせている少女……有栖ちゃんのこと。ここまで来ると少しかわいそうになってくるが、もはやどうすることもできない。
俺だって所詮は子供。大人たちの争いに参加する権利など、元から無いとわかっている。その成り行きを見守り、流されるまま過ごしていくのみ。
(動いたのが俺の親父なら、なおさらだ)
最大の失敗は、あの人の逆鱗に触れたこと。結局はそういうことなのかもしれない。
ただ一つ疑問なのが……
「さすがに、たった一人では無理だろう」
「えっ?」
桔梗ちゃんが聞き返したのを見て、俺は慌てて思考を止める。
うっかり言葉が漏れてしまった。考え事に没頭してしまう悪癖は、相変わらずだ。
それと同時に、茶柱が教室へ入ってきた。騒いでいたクラスの連中が、ダルそうに自席へと戻っていく。気持ち的には、もはや授業どころではないのだろう。
ああ、退屈な時間が始まる。自分が知っていることを延々と話されるというのは、なかなか苦痛なものであると最近理解した。ちょっと勉強を頑張りすぎたのかもしれないな。
……今さら授業態度なんて気にする意味もないし、今日は読書でもしておこう。
俺は鞄の中に手を突っ込んで、最近知り合った本好きの少女から借りた小説を取り出した。
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その夜。
「あっ、や……」
「……」
桔梗ちゃんとの激しい交尾の後、俺は女子二人の絡みを見つめていた。
ベッドの上で、有栖ちゃんが喘いでいるという謎の状況。こうなったのは、桔梗ちゃんによる執拗な愛撫?を強制的に受けさせられているからだ。
人差し指でなぞるように、コリコリと刺激する……そんな光景を見せつけられて、出した直後だというのに俺は変な気持ちになってしまう。
「私たちがやってるのを見て、興奮するなんて。有栖ちゃんって変態?」
「そ、そんなことは……あっ」
これにどういう意図があるのかはわからないが、意外と仲が悪いわけではないようだ。
俺がそんな風に思った時のこと。桔梗ちゃんは突然つまらなそうに手を離して、愛液で濡れた指をウェットティッシュで拭き取ってしまった。
「あっそ、じゃあやめとく。指も疲れてきたし、眠い」
「……え?」
「でも寝る前に、シャワーだけ浴びたいな。晴翔くんも一緒にどう?」
「お、おう」
興味を無くしたような態度で、脱いだ服を持って立ち上がる。シャワーの誘いを断ることはせず、俺はパンツ一丁で桔梗ちゃんの後についていく。
ぽかんとする有栖ちゃん。彼女の優れた頭脳をもってしても、今の桔梗ちゃんの思考を読むことはできないらしい。いや、俺ですらわからないのに、わかるわけもないか。
二人きりの風呂場。
俺たちは、いつものようにお互いの身体を流す。
「あはは、私が急に出てったときの顔見た?」
「訳がわからないって感じだったな」
「そーそー。あいつは私に逆らえないし……そのうち面白いものが見られるかもね」
おいおい、俺の親父みたいなことを言ってくれるじゃないか。
やはり、桔梗ちゃんは何か狙いがあって性的な行動を取っていたようだ。
「気になるなぁ」
「そんなに大したことじゃないけどね。どっちかというと、私が自分を守るためっていうか……まあ、晴翔くんには影響しないから、特に考えなくてもいいよ。それより………ふふっ」
シャワーのお湯を俺の股間に当てながら、桔梗ちゃんはキスをせがんできた。それに応じると、当然舌を絡めてきて……下半身に血流が集まっていく。
鎮火していた欲望が再び燃え上がる。おもむろに柔らかい胸を揉めば、2回戦の始まりだ。
「よし、やっちゃおうか」
「嬉しいっ。私……あなたのことが、世界で一番大好き!」
大きく快活な声。あえて彼女にも聞こえるように言っているのだろうか?
そんな桔梗ちゃんを見て、さらに興奮が高まる。腕を掴んで身体の向きを変えてから、バックの体勢で結合する。以心伝心。慣れたものだと、我ながら思う。
「愛してるよ」
「あ、あぁ……やっばい。頭おかしくなりそう」
挿入したまま、腰を前後に振りながら愛を囁いた。
この子にはこれが最も「効く」らしく、膣がギュッと締まる。強い刺激でうっかり暴発しそうになるのを耐えた後、ピストン運動を一段と激しく行う。
気持ちいい。ああ、気持ちいい。この瞬間にあっては、それしか考えられない。
これに勝る幸せなど存在しないと、心の底から思う。
「出すよ、桔梗ちゃん……」
「うん。私の中に、『私だけ』に、たくさん出して?」
「ああっ……!」
俺のことを捕まえるかの如く、両股に力を入れてきた。搾り取られるような形となり、我が息子はなすすべもなく子種を全放出する。最高の絶頂が俺を包み込む。
「ふぅ……」
快感の波が静まった後、互いの身体を強く抱きしめ合った。
ここでようやく、ベッドの方から有栖ちゃんの声が聞こえることに気づいた。何を言っているのかまではわからない。一体どうしたのだろうか?
(なんでもいいけど)
行為中は外への意識が完全に断たれてしまう。やるのはいいが、戸締りだけは忘れないようにしよう……そうやって全然関係ないことを思いつくぐらい、どうでもいいことだった。
俺たちが身体を拭いて戻ると、有栖ちゃんは顔を赤くしながら布団にくるまっていた。
桔梗ちゃんがそれを見て微笑み、寝巻きを着てから隣へと入り込む。
「よく、自分でパンツを変えられたね?」
その言葉につられて下半身に目をやると、確かに有栖ちゃんはパンツを履き替えていた。そしてそれは、彼女自身のものではなく桔梗ちゃんのものであった。
……暗い中、自分で見つけ出したとは思えない。おそらく、こうなることを見越した桔梗ちゃんが、あらかじめベッドの側に用意していたのだろう。
「ううー……」
再び布団に潜り、身体を丸めてしまった。心なしかうずうずしているようにも見える。
「ふーん、頑固だね」
しかし、桔梗ちゃんは全く気にしていない。一言で突っぱねてから、目を閉じて眠り始めてしまった。その行動に少し戸惑うが、だんだん俺の眠気も強くなってきて……
「……あんまりです………」
有栖ちゃんが最後に発した言葉は、聞き取ることができなかった。