魔闘師。
半世紀前に発見された、魔気と呼ばれるエネルギーを纏い闘う者たちの総称だ。魔気は熟練の者ほど纏える量が多く、それに比例して身体能力を常人離れしたものへと高めてしまう。
大多数の人間は、魔闘を教わっても目に見えた効果を発揮出来ないのだが、中には生身で自動車より速く走る者や、素手のパンチでコンクリートの壁にヒビを入れる者もいる。
そして、そんな一部の才能のある者の中に犯罪に手を染める者もいて、大きな脅威とみなされていた。
49年前の神田小学校占拠事件。
38年前の蟻巾警察署襲撃事件。
34年前の尾三201便ハイジャック事件。
この三つの事件は、たった1人の魔闘師によって100人以上の死傷者を出した事で現在も語り継がれている。特に蟻巾事件では武装した警察官達が襲撃者によってなす術もなく蹂躙され、他県から派遣された魔闘師が解決するまで魔闘犯罪の脅威を全国に報道する事になった。
そういった経緯から、30年前より魔闘犯罪に対抗する為の制度が整備されていき、国家指定魔闘師という存在も新たに生み出された。
国家指定魔闘師は、厳しい実技試験を突破した超人達で構成されており、全国の各街に1〜10人程度配置されている。彼等はその街の守護者のごとく、発生した事件の解決に当たる為、市民から英雄視される者も多い。最近ではメディアで取り上げられ、非公式の強さランキングの様なものも発表されており、子供の"なりたい職業"でも上位に食い込んでいる。
かくいう俺もまた、そんな魔闘師に憧れた者の1人だった。
小学生の時に住んでいた街の担当だった指定魔闘師に魔闘の才能を見出された俺は、彼女から魔闘の基本を教わり、その後も定期的に指導を受ける機会を得たのだ。一年が経つ頃には大人の男性以上の能力を発揮出来るようになり、出場した大会では県で2位という結果を残すまでになった。師匠からも努力次第では十分に国家指定魔闘師になれる可能性があると言われたほどだ。
────しかし、そんな俺の自信は近所に引っ越してきた1人の少女の存在によって、容易くへし折られてしまった。
彼女、姫神ソラは俺視点では全てを持っている完璧な少女だった。当時10歳にして既に周囲を圧倒するほどの美貌を誇っており、彼女を見た大人の半分が"可愛い"ではなく"美しい"と評するような容姿をしていた。
資産家の祖父がいるらしく、家は屋敷と呼んでも良いレベルの豪邸で、いつも高級車で学校まで送迎されていた。頭も良く、テストで当たり前のように満点を取っており、教師からの評価も高かった。
そして何より魔闘に関して天賦の才を持っていた。
俺と同じく師匠に教えを受ける事になったソラは、基礎を教わった時点で魔気を纏えるようになり、僅かひと月で俺以上の身体強化を使用出来るまでになった。剣術も師匠から習い始めると一度見ただけで型を覚える非凡振りを見せ付け、県大会2位の俺ですら歯が立たなくなるのに2か月も掛からなかった。
その後も凄まじいスピードで成長を続けたソラは、公式大会で無敗のまま何度も日本一に輝き、12歳の時には指定魔闘師として中堅レベルだった師匠にさえ勝利するまでになった。あまりの規格外振りに俺は嫉妬の感情さえ起きず、逆に彼女の兄弟子であることを誇らしく思っていた。断言しても良いがソラのファン第一号は間違いなく俺だろう。
ソラは中学卒業前に国家指定魔闘師の試験を突破し、それまでの最年少記録を塗り替えた事で大きな話題となった。一方の俺は早い段階で纏える魔気の量が頭打ちとなった事もあり、試験を受ける事なく夢を諦めた。
それから三年。
引退した師匠の後を継いでこの街に配置されたソラは完全に国民的なヒロインと化していた。その実力はあらゆるランキングサイトで日本3位内に必ずランクインするほどで、他都市から援軍要請が来る事も珍しくなかった。
純白の髪を靡かせ、お気に入りのベルト付きワンピースを身に纏い、芸術的な剣技で犯罪者を捕らえる。そんな姿から"白き剣姫"の二つ名で呼ばれている。
元々は黒髪だったソラだが、昨年魔闘師としての限界を突破した事で髪の色が変色してしまったのだ。魔気が髪にまで浸透している証拠であり、この域に達した者は国内に3人しかいないそうだ。
あまりに神秘的で美しい姿に、男女問わず多くのファンがおり、テレビでその活躍を見ない日はなかった。
★
いつも俺とソラと師匠の3人で魔闘の訓練をしていた空き地。そこで俺は久しぶりにソラと会っていた。かたや英雄とさえ呼ばれる最強のお姫様。かたや一般人より多少強いだけの高校生。完全に立場が違ってしまった俺達だが、何だかんだで一番付き合いの長い友人でもある為、月に一回程度、こうして会う事があった。
「…ねえ、ユウト」
ソラが俺の名前を呼ぶ。相変わらず抑揚がない声だ。顔も無表情で、俺でなければそこから感情を読み取る事は出来ないだろう。彼女の数少ない欠点だ。──まあ、それが逆に超然とした雰囲気を感じさせ、魅力となっている節もあるのだが。
「ん? なんだ?」
「……しばらくこの街を離れる事になった」
「また他所からの支援要請か? 最近は担当の魔闘師の手に負えない事件が増えているからな」
「……ん。例の外国の人たち、本腰を入れて撃退するみたい。私以外の2人も一緒」
「ははっ、それは相手に同情するな」
ソラが言う2人とは"染色"に至っている序列1位と2位の魔闘師の事だろう。天才であるソラの上にいる日本の守護神達。特に序列1位の神籠ユリアは半年前のエキシビションマッチでソラに勝利した化け物だ。
「……あの2人は本当に強い。でも、すぐに私が追い抜く」
「ああ、お前ならやれるさ。その為にも今回は外国の魔闘師で経験を積んで来い」
「……そのつもり」
コクリと頷くソラは変わらず澄まし顔だったが、目はやる気に満ち溢れていた。半年前の公式戦初の敗北は彼女に良い刺激になったみたいだ。
「……ユウト。私がいない間、この街をお願いね」
「いや、毎回言ってるが俺はただの一般人だからな? お前の留守は他の指定魔闘師に任せろよ」
「……ん。でもあの人達がダメだったら手を貸してあげて」
「本業の人で無理なら俺にはどうする事も出来ないんだが……」
呆れた風にそう言ってやるが、ソラは首を振り「そんな事ない」と断言する。
「……ユウトは強い。私の、ライバルだから」
「始めて一ヵ月で勝ち越しておいてライバルとか言ってんじゃねーよ」
「……私が頑張って逃げ切っただけ。ユウトの剣技は私以上だから」
「妹弟子の色眼鏡か? まったく」
完全に的外れな評価だが、それでもソラにそう思われているのは嬉しい。彼女はお世辞とか言うタイプではないから、全て本音なのだろう。ニヤケそうになる口元を慌てて手で隠す。
「……ユウトお願い」
「あーっ、もう! 分かった分かった。なんかあったら俺も手を貸すよ! それでいいか?」
「……うん。安心」
「たくっ……」
よく見なければ気付かないくらい小さく微笑んだソラは、言葉通り安心した様子で纏う空気を緩ませる。本当に街に危機が訪れても俺が解決すると信じて疑っていないみたいだった。これから他国からやって来た犯罪者達を相手にする彼女の方が何倍も危険なのだが、そちらの心配はしていないのだろうか。
「…………」
そう考えたところで、俺自身もソラの心配を微塵もしていない事に気付く。決して、ソラがどうなってもいいと言う訳ではない。ただ、彼女が犯罪者ごときに遅れを取るなど想像が出来ないだけだ。
誰よりも才能があり、誰よりも努力家で、そしてきっと誰よりも強くなれる。
それが俺の憧れた姫神ソラという魔闘師なのだから。
★
隣の大陸からやって来たそいつらは、"
元々は20人以上の部隊だったのが、4分の1にまで減らされ、それでも祖国で一般人の虐殺を繰り返し、そして次なる目標を日本へと移したのだ。
三ヶ月前に日本で活動を開始した彼等は、自らの力を誇示するように各地の国家指定魔闘師達を襲撃し、その成れの果てを動画としてネットに流し始めた。明らかになっている被害者の数は34人。ただの一般人ではなく、34人もの超人達が彼等に葬られたのだ。
男性魔闘師の場合、数時間にも及ぶ拷問の末に殺されており、その一部始終を誰もが観覧出来る状態にある。女性の場合は尊厳を踏み躙られる陵辱の末に解放されることもあったが、街の中心に磔にされていたり、小さく折り畳まれてスーツケースに入れられて放置されたりと、誰もが社会復帰が絶望的な状態だった。
動画の中で彼等が良く口にしている言葉がある。それは『魔闘後進国日本』というものだ。
大陸国家に比べて魔闘師の割合が少なく、研究も遅れている日本が"後進国"と呼ばれる事は過去にもあった。それでも日本国民の認識では指定魔闘師の質では他国を上回っており、その証拠として犯罪件数が少ないというものがあった。
しかし、この事件によって日本が誇る英雄達が何人も敗れ、無惨に虐げられる様子が世界に公開されてしまった。屈辱に感じる者や、嘆く者、危機感を抱く者が増え、これに焦った政府が持てる最大戦力でこれを解決する事を決断したのだ。
"黄金の守護神"神籠ユリア。
17歳で指定魔闘師になり、それから八年間活躍を続ける日本の絶対的エース。三年前には欧州から入国した10人組の犯罪魔闘師を捕らえ、日本を救った人物。日本史上最も魔気を纏うことが出来、強化された肉体は音速での移動を可能性としている。
"天技"立華ササラ。
武術の達人で、華奢な身体ながらも至高とさえ呼ばれる技の数々で敵を無力化する超人。メディアへの露出が最も多い魔闘師でもあり、ソラが台頭するまではその清楚な容姿から男性人気トップの座にいたそうだ。
この2人とソラに加えて"染色"に近い実力者十数名で"不测之祸"を撃退し、国民の不安を払拭するのが政府の狙いだった。
日本を完全に舐めていた"不测之祸"は自らの居場所を積極的には隠してはおらず、本気になった国家が彼等の隠れ家を特定するのは容易かったのだろう。ソラが街を離れてから数日後に、彼女から『頑張ってくる』とメールが届いた。
そうして、一般人には極秘でこの作戦は進められ、そして運命の日。
ソラ達、選ばれた魔闘師達は襲撃を開始した。
★
"不测之祸"が動画を公開している海外のサイト。そこには彼等が市民を虐殺する動画が多く保管されている。その最近の物は日本で撮影された物ばかりで、彼等に敗北した女性魔闘師が土下座して命乞いをする姿だったり、攫われて来た10〜13歳くらいの少女達が強姦されて号泣する様子が録画されていた。
以前、ソラが闘う相手を知ろうと、幾つかの動画を見た俺は、気付けばその場に嘔吐していた。それ程までに非道な行為の数々がそこに映し出されていたのだ。どれほどの悪意があればこんな事を出来るのか、想像も付かない。
俺はそれきりそのサイトを開く事はなかった。
──だが、今日。
そのサイトに幾つかの画像や動画が新しく更新され、その内容が世間を騒がせ始めると、俺も自分の目で確かめない訳にはいかなくなった。
サイトを開き、まず目に入ったのは一枚の写真だった。薄暗い部屋で、11個の丸い物体がテーブルに並べられている画像。拡大して見れば、それが全て人の頭部である事が分かる。更によく観察すると、彼等が強者として有名な指定魔闘師達だと気付けた。
彼等は皆、恐怖と苦しみの表情を浮かべており、想像を絶する責め苦の末に首を落とされたのだと理解させられる。
この顔は一生忘れる事が出来ないような気がした。こんな死に方だけは絶対にしたくないと誰もが思うに違いない。
「…………」
その画像を閉じると、その下に一つの動画があった。
俺は震える指でその動画を再生させた。
まず映し出されたのは1人の女性の姿だった。名前は覚えていないが、彼女も有名な魔闘師だった筈だ。その気になれば銃を持った集団を1人で制圧出来る超人。そんな彼女が怯えた表情で全裸を晒していた。身体を小刻みに震えさせながら、まるで見た目通りの無力な女性のように立つ彼女は、足をガニ股に開き、両手の指で自分の女性器を広げている。完全なる屈服のポーズだった。
しばらく彼女の情けない姿が映し出されると、映像は横にずれて別の女性の姿を映し出す。それが4人分続けられた。全員が知名度のある魔闘師で、そんな彼女達が全裸で自らの恥ずかしい場所を見せつける姿が収められていた。
そして5人目の女性が映し出された時、俺はそれまで以上の衝撃を受けた。そこにいたのは序列2位の魔闘師"天技"の立華ササラだったのだ。髪にまで魔気を纏わせる事の出来る"染色"の一人。あのソラを越える強者までもそれまでの女性達と同じ目にあっていた。
ブルーの長髪が特徴的な立華ササラ。多くの男達が妄想したであろうその裸体を晒した彼女が、泣きそうな表情で下半身に手を伸ばし、自分の割れ目を大きく広げる。
"染色"は下の毛にも適応されるのか、と下衆な考察をされていた彼女。広げられた性器の上に茂る青い陰毛を見ればその答えが分かるのだが、そんな物が気にならないくらい彼女の姿は信じがたいもので、ショックが大きかった。
次に映し出されたのは神籠ユリアだ。いつもは黄金の髪を靡かせ、不敵に微笑む姿が印象的だった彼女もやはり恐怖の表情を顔に貼り付けていた。徹底的に心を折られたのだろう。他の女性達以上に脚を大きく広げ、秘部を突き出すポーズをした神籠ユリアの姿からは、これを撮影している者達に対する降伏の意思が感じ取れた。
そして──
「ああ……そんな……っ」
最後に映し出されたのは、やはりソラ──姫神ソラだった。
10年近い付き合いのある俺ですら澄ました顔以外見た事のない彼女。常にどこか余裕があり、神秘的な美貌も相まって、ネット上では天使や女神に例えられていたのが俺の妹弟子だった。
俺の憧れで、幼馴染で、友人で、妹弟子で、そして──初恋の相手。
今回の任務も問題なく達成し、当たり前のように帰ってくるのだと信じていた。
そのソラが──初めて見る怯えた表情で裸を晒していた。彼女の白い身体には小さな傷やアザが幾つかあったが、それでも他の女性達と比べ物にならない程綺麗だった。中学に入ってから膨らみ始めた乳房は、手のひらにギリギリ収まるくらいの大きさで、中心に桜色の乳首が鎮座している。下半身には白色のまん毛がふわりと生えていた。
ソラは、その下にある女性器を左右に開き、女性の最も大切な場所をカメラに見せ付けている。彫刻のように美しい身体でガニ股を晒す姿は違和感が凄まじく、そしてとても卑猥に見えた。
★
映像は引かれていき、日本の誇る7人の女性達の屈辱的な姿を映してから終わった。
たった5人の外国の犯罪者に、日本の最高戦力が敗れ、屈服させられた事は誰もが理解するだろう。この動画のせいで、朝からSNSは大いに荒れていた。
そして、新たに動画がアップされる度にそれはヒートアップしていった。確認すると、動画は今の物を含めて6つ公開されている。
俺は妹弟子の迎えた顛末を確認するべく、残りの動画を再生させていった。
2つ目の動画には"染色"以外の4人が強姦され、解体されていく様子が映っていた。男達は女性達を乱暴に陵辱した後、彼女達の指を、耳を、鼻を、笑いながら切り落としていき、その悲鳴を愉しんでいた。ソラ達3人はその様子をガニ股を維持したまま見せ付けられていた。
3つ目の動画で、男達は神籠ユリア、立華ササラ、姫神ソラの3人にオナニーするように命じた。周りに仲間達の一部だった物が飛び散っている中で、だ。そんな最悪の状況で彼女達3人は必死に自慰を始めた。ソラは女性器に指を出し入れさせ、股を濡らしていた。天使のような彼女も自慰をした事はあったのだと知った。
4つ目の動画で、遂にソラは初めてを奪われてしまった。男達はまず、ソラ達に壁に手をつかせ、尻を突き出す体勢を取らせた。日本最強の3人が、自分で濡らした秘所を並べる姿は、場違いにも厭やらしいと感じてしまった。そのまま男達によって犯されたソラは、お尻の穴の処女も失い、何度も絶頂させられていた。
5つ目の動画では、立華ササラへの拷問が映っていた。膣や尻の穴に鉄パイプを挿入され、乳首や陰核をノコギリで切断され、身体中に釘を打ち込まれる。それが、日本のNo.2の最期だった。
6つ目の動画では、ソラは何かのゲームをさせられていた。男達の言葉は分からなかったが、薬を飲まされたソラと神籠ユリアはただその場に正座させられる。しかし、恐らく媚薬だったのだろう。近くで撮られた2人は明らかに発情した様子を見せる。ソラの小さな乳首は乳輪ごと膨らみ、陰核も皮が完全に剥けて異常なくらい勃起していた。天使のようなソラがクリトリスを男性器のように膨らませ、それを男達に何度も摘まれる映像がしばらく続いた。
それが終わったのは神籠ユリアが我慢出来ずに自分のクリトリスを触った瞬間だった。その瞬間、男達は待っていたように彼女に飛び掛かり、殴る蹴るの暴行を加え始めた。数分間悲鳴が続き、それが終わった時、顔が醜く潰れた日本の守護神の死体がそこにあった。
ソラはただ、その隣で陰核を固くして震えているだけだった。
★
ソラは結局、次に公開された動画で解体されていた。
何度も俺の名前を呼び、助けを呼んでいた彼女の最期の姿は、全裸で土下座をした体勢で首を落とされるというものだった。
男達は首だけになったソラにキスをしながら、土下座して突き出されている彼女の尻の穴を犯し、漏れ出した便を眺めて馬鹿にしたように笑っていた。
あれから一年。
正式に国家指定魔闘師になった俺は、第六回目の"不测之祸"討伐作戦に参加している。