※この作品はR-18です。

天才剣姫が犯罪者に敗北する話   作:黒糖バス

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神籠アイリ

 私、神籠アイリにとって歳の離れた姉は誇りであり目標だった。

 

 私が幼い時に国家指定魔闘師となった姉は毎年のように国の危機を防ぎ、若くして日本のエースと呼ばれるまでになっていた。日本初の"染色"魔闘師。戦闘中はマッハという常識外れのスピードで動き回り、必殺の一撃でどんな相手でも沈黙させる事が出来る。

 

 間違いなく日本という国に最も貢献している魔闘師は神籠ユリアだろう。

 

 しかし、そんな姉をよく思わない者は一定数存在した。誰に対しても自信に満ちた表情で強気に接し、魔闘師達の頂点に君臨する彼女は"男より強い女"の象徴として認識されていたからだ。高飛車な性格ながらも美人であった為、男性人気も高かったが、それでも女性の台頭を不快に思う者達からは目障りな存在として見られていた。

 

 それもあって2人目の"染色"魔闘師である立華ササラが登場すると、世間の人気はそちらに傾く事となった。立華ササラは強者でありながら大和撫子を体現したような女性で、プライドばかり肥大化した男達から好意的に受け止められたのだ。女性人気の神籠ユリアと、男性人気の立華ササラ。この対立構造は数年後、3人目の"染色"魔闘師が現れるまで続く事となった。

 

 

 

 立華ササラの陰に隠れる事が多くなっていた姉が再び大きな注目を浴び、その実力を改めて評価される事となる出来事があった。それは天才・姫神ソラとのエキシビションマッチである。

 

 最年少の指定魔闘師という話題性と、何よりその圧倒的な美貌で瞬く間に国民的なヒロインとなった彼女を、政府は積極的にバックアップし、魔闘師の広告塔にしようと企んでいたようだった。姉との試合はその一環として計画されたのだろう。

 

 姉はこの試合に負け、姫神ソラに日本最強の座を引き渡す事を求められていた。

 

 実際、試合は完全に姉にとってアウェーな状態だった。若くて美しい天才剣士が、一部で疎まれている高飛車な現最強を倒すというシナリオを誰もが期待していただろう。声援は姫神ソラにばかり注がれていた。日本を守り続けてきた英雄にこの仕打ちである。

 

 だが、そんな中でも姉は不敵な笑みを崩す事はなかった。

 

 ──そして、試合は姉によるワンサイドゲームで終わった。

 

 天才といっても実戦経験の少ない姫神ソラでは、国を背負って戦ってきた神籠ユリアの足下にも及ばなかったのだ。姫神ソラは姉の音速の攻撃に対応する事が出来ず、一方的に嬲られ続けた。そして僅か数分後には、純白の髪とワンピースを土で汚して気絶する新人と、それを見下ろす王者の姿があった。

 

 この闘い後から姉は絶対的な強者として再認識され、いつの間にか"守護神"と呼ばれるようになっていた。姉を毛嫌いしていた男達も流石に認めるしかなかったようで、今度は積極的に支援してくれるようになった。これによってもはや姉に敵はいなくなり、その地位は絶対的なものとなったのだと、私は思っていた。

 

 

 

 ★

 

 

「──アイリ。貴女も指定魔闘師になりたいのならスピードを重点的に鍛えなさい」

 

 魔闘の訓練の際、姉は良く私にそう言っていた。闘いの技術や全身の強化より、速度に特化した強者になれ、と。

 

「どう頑張ったところで肉体の強度では女の私達より男の方が上なの。今は纏える魔気の量でその差を覆せているけれど、もし同等の魔闘師が現れた時、素の身体能力の差がそのまま勝敗に繋がってしまうわ」

 

 姉は魔闘師として史上最高の才能を持っていながら、自分と同等の才能の持ち主が現れる可能性を考えて己を鍛え続けていた。慢心しない最強。そんなもの無敵ではないかと当時の私は呆れ半分で見ていた。

 

「身体能力が違うならスピードでも男性に負けるんじゃないの?」

「それはないわ。貴女も音速の域に至れば分かる。速く動けば動くほど空気が邪魔をするの。それを上手に躱せる事が身体の小さい私達の唯一の強みでしょうね」

「へぇ、そうなんだ」

 

 世間の人が聞いたら驚くだろうが、意外な事に姉は男性に対して劣等感のようなものを抱いていた。自分達女性を弱い存在だと認識し、まだ見ぬ自分より強い男を恐れて自分を強化し続ける。恐らくそれが神籠ユリアという魔闘師の強さに繋がっていたのだろう。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。

 もしお姉ちゃんより強い男の人が現れたらどうする? お姉ちゃんより頑丈で、闘う技術もあって、速く動ける魔闘師。そんな人がいたらお姉ちゃんならどう闘うの?」

「ふふっ、そんなのどうしようもないじゃない。でも、そうね。そんな男と闘う事になったら──ただ、頑張るしかないんじゃないかしら」

 

 姉は微笑みながらそう口にした。

 

「うん、きっと諦めずに必死に喰らいつくわ。だって、私は日本の守護神なんだから。私だけは何があっても諦めちゃダメなのよ」

 

 その時の姉の顔は何だか誇らしげに見えて、やっぱり私の憧れの人は姉だな、とそんな風に考えていた。確かに少し高飛車なところがあったけれど、日本の事を大切に思っていて、皆を守れるように強くあろうとする姉の姿は、誰よりも美しく見えた。

 

 

 

 ★

 

 

 そんな誇りに思っていた姉も、もうこの世にはいない。

 

 二年前、彼女は他の有名な魔闘師達と共に、大陸から入国して来た犯罪者達に敗北し、無惨で無様で情けない最期を迎えた。

 

 日本は魔闘後進国だったのだ。国内最強の姉ですら海外の強者の前では無力なのだと、まざまざと見せつけられた。井の中の蛙という言葉がこれほど似合う物もないだろう。

 

 日本ではただ纏う物だと認識されていた魔気エネルギー。それを"不测之祸"と名乗る集団はある程度自由に操作する事が出来たのだ。公開された動画では、彼等によって魔気を散らされ、身体強化を強制解除される姉達の姿が映っていた。魔気を纏えなくなり、素の肉体に戻された日本の魔闘師達は、赤子の手を捻るがごとく無力化されてしまった。

 

 そして、目の前で男性魔闘師達が拷問され殺される様子を見せつけられた女性達の心は折れてしまったのだった。それは私の前で決して諦めないと誓った姉も同様で"不测之祸"の男達に命じられるまま服を脱ぎ、自らの大切な場所を割り開いて見せた。そして最期は、強姦される少女のような悲痛な叫び声を上げながら暴行され、殺されてしまった。後日、付近の都市の街灯に吊るされていた姉だった物は、四肢が切断されて達磨のようにされており、腹部に大きく『臭屄(まんこ)』と刻まれていた。その顔は涙で汚れ、英雄の変わり果てた姿に国中が大きな衝撃を受けた。

 

 それだけでも私にとってはショッキングな出来事だった。だが、その後ネット上では手のひらを返したように姉を罵倒する者達が続出し、姉を貶める目的で彼女が強姦される動画や殺される動画が貼られていった。

 

『国の守護神を名乗っておきながら敵に命乞いするとは何事か』とか『自分ならあんな情けない姿を晒すくらいなら死を選ぶ』といった怒りのコメントや『神籠ユリアの泣き顔をみたいと思ってたのが叶った』とか『強気な女が男に屈服する姿って興奮する』といった下卑たコメントが散見された。

 

 こんな奴らを守る為に姉は死んだのかと涙が出たのをよく覚えている。姉が死んだのだから、日本の危機だというのにそれに気付かない馬鹿ばかり。それから一年間、守護者のいない日本で多くの女性が"不测之祸"に殺されても姉に対する批判は収まらず、むしろ新たな被害者が出る度に『神籠ユリアが負けたからだ』などと言われていた。

 

 そして、新たな守護神"剣鬼"黒木ユウトが魔気を散らされながらも、純粋な剣技で"不测之祸"を討滅させたことで『やはり女より男の方が強い』といった声が強くなった。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 姉の死から二年。

 14歳になった私は史上4人目の"染色"に至ったことで試験を免除され国家指定魔闘師になった。五年前に姫神ソラが記録した最年少記録を塗り替えたことでそれなりに話題にもなったが、現在では魔闘師の主力は男性となっており、また二年前の教訓から若い少女を祭り上げる事は憚られたようで、取材も数日で収まる程度だった。

 

 それからひと月。

 正式に国家指定魔闘師に任命された私は、ある都市を訪れていた。かつて中堅の女性魔闘師が担当し、その後"剣姫"姫神ソラが引き継いだ場所。そして彼女の死後、ある男が拠点としている小さな都市だ。

 

 ここであの男と会う事が新たに指定魔闘師になった女性(・・)の義務であるらしい。別に無視してもいいのだが、そうした場合あの男の方から会いに来て、より酷い目に遭うのだから実質強制である。

 

 私がこれから何をさせられるのか、先輩魔闘師からある程度聞かされている。名目は自分を強者だと思い上がった新人の鼻をへし折り、格上と遭遇した時に戦意喪失しないようにするというもの。──実際はあの男の嗜好と、男尊女卑の気のある上層部の思惑が噛み合っただけだろう。

 

 魔闘師の国際的な評価が地に落ちた日本が、他国の犯罪者に蹂躙されずに済んでいるのはあの男のお陰だというのは理解している。だから政府も彼の要求はある程度飲むしかない。彼は大多数の国民にとっては英雄で、被害に遭っているのは数少ない新人の女魔闘師だけなのだから。

 

 ──でも、それでも私は許せないと思った。そんな男に国を任せるくらいなら、私が最強になって日本の平和を守りたい。

 

 女でも男に勝てる事を証明したい。

 

 今は無理でも、いつか絶対に。

 

 

 ★

 

 

「…………っ」

「よく来たな、神籠アイリ」

 

 訪室した私を待っていたのは若い男だった。どこにでもいるような平凡な容姿の男。唯一、その暗く濁った目だけが印象的で、前情報がなければ彼が護国の英雄だとは思わない筈だ。どちらかと言えば犯罪者側に多い"終わった者"の空気をしているのだから。

 

 彼こそが"不测之祸"を皆殺しにし、一時期激減していた魔闘師達を率いて他国からの侵略者を屠り続けて来た守護神──"剣鬼"黒木ユウトだった。大陸の技術である、魔気を散らす技"剥魔"を使用して魔闘師の身体強化を無効化し、剣での絶技で仕留めるという特異な闘い方をするらしい。

 

 その瞳を見て私の頬を冷や汗が流れていく。

 日本最強の男と会う緊張と僅かにあった敬意は入室時に消し飛んでいる。

 

「…………」

 

 私は黒木ユウトを視界に捉えながら、その背後にある壁を観察した。壁に掛けてあったのは額に収められた数十枚の写真だ。それぞれに女性が1人ずつ写っている。問題は、彼女達が裸であり、そして自分の秘所を曝け出すポーズをしている事だろう。その内の何人かは見覚えのある先輩魔闘師だった。

 

(……聞いていた通り最悪の趣味をしていますね)

 

 あの写真の女性達はこの一年の間に指定魔闘師になった人なのだ。そして、今日の私のようにこの場所に呼び出され、屈辱的な姿を撮影された。皆、試験を通過出来るほど優秀で、それなりに自尊心も持ち合わせていたのだろうが、国家指定魔闘師になって早々に魔闘師としても女としても挫折を味わったのだろう。

 

 これが黒木ユウトの趣味なのだ。以前、先輩の一人が彼に質問したらしい。なぜ、こんな事をするのか、と。それに対し、彼はこう答えた。

 

『自分を強いと勘違いしてきた女が敗北し、恥辱的な姿を強要され、そしてそれを永遠に晒し物にされる。その情けなさが好きなんだ。付け加えるなら、そんな情けない姿を俺に晒した奴らが市民から英雄だ戦乙女だと持て囃されるのも見てて面白い。最近では、活躍して新聞の一面を飾った女を呼び出して、またガニ股の無様な姿を取らせる遊びにハマっているよ』

 

 彼は、新人のプライドを折るという建前ではなく、この儀式がただの個人的な趣味嗜好であると口にしたのだ。それを聞いた私は理解してしまった。

 

 ──黒木ユウトは壊れているのだと。

 

 彼の経歴を調べれば色々と察せる事もある。彼が女性に強要するポーズが、あの事件の被害者が取らされたものと同じ事も無関係ではないのだろう。

 

 私は、飾られている写真の中に一つだけ他と違う物がある事に気付いた。他の写真は全てこの部屋の中で撮られた物であるのに、その一枚は全く別の薄暗い空間で撮影されている。写っている女性は、女の私ですら見惚れてしまうほど美しい容姿をしていた。それがあの事件で姉と一緒に殺害された人物だと気付いた瞬間、黒木ユウトの壊れぶりに恐怖を抱く。

 

 幼少期より一緒に育った妹弟子が、死ぬ前に撮られた恐らく最も見られたくない無念の写真。それを来客が目にする機会のある部屋に飾っておく人間がまともである筈がない。

 

 

 

 ★

 

 

 

「話は聞いているだろ? 服を脱いでこの写真の女性達と同じ格好になってくれ」

 

 黒木ユウトは穏やかな笑みを浮かべ、私にそう指示を出す。濁った瞳は私が拒否する事を許さないと言うように無言の圧力を放っていた。

 

「………………」

 

 分かっていた事だが、彼は私以上の強者だ。"染色"にこそ至っていないが、その佇まいに隙はなく、油断なく私の一挙手一投足を観察している。"剥魔"という技術がどれほどの物かは定かではないが、伝え聞く話が真実なら私が"染色"だという事は何の意味も無さないのかも知れない。

 

 私が彼から日本最強の座を奪うには経験を積み、そして"剥魔"に対抗する術を手に入れる必要がある。少なくとも今は私が敵う相手ではないと、感覚で理解出来た。

 

 

 

 ────でも、だからといって、何もせずに屈する事は私のこれまでの努力に対する裏切りだ。

 

 ──目の前の男に、私が取るに足らない相手だと思われたまま屈するのは嫌だった。

 

 ──私がいずれ自分を超える存在だと認識させる。

 

 ──私を屈服させれる事がどれほど幸運で、二度目は絶対にないのだと理解させる。

 

 ──私はただ従順に肌を見せる女ではないと教えてやる。

 

 

(最初から全力で……!)

 

 

 私は姉のように音速で駆け回る事はできない。史上最高は今も変わらず姉で、世界の誰であっても魔気の量だけは彼女に及ばないからだ。だから私が音速を超えれるのはほんの一瞬だけ。その一瞬直進するスピードだけなら私は姉を上回る事が出来る。

 

 私はノーモーションからいきなり最高速度にまで加速すると、数メートル先に立つ黒木ユウトに接近した。そして、その勢いのままに拳を叩きつける。音速のパンチは人を殺すには十分だ。私が移動した余波だけで室内の空気が震える。

 

 

 

 そして────

 

 

 

 

 ぽすっ

 

 

 

 

 

 

 私の弱々しいパンチは黒木ユウトの手で簡単に受け止められてしまった。

 

「……これが"剥魔"ですか」

「驚いたよ。確かに"銀光"だ」

 

 彼は私の二つ名を呟くと納得したように頷いた。私が彼を攻撃するより速く、彼は私の纏う魔気を消し飛ばした。なんとか彼に届いたのは14歳の小娘の拳で、そんなものが日本最強に通じる筈もない。

 

「……これは反則ですね」

「そうだろう」

 

 もう一度魔気を纏おうとしても上手くいかない。これは闘う以前に同じステージに立てていないのだと理解させられる。それは黒木ユウトも分かっているのだろう。私に殺され掛けたにも関わらず今はもう警戒すら解いている。

 

「謝りませんよ。──それと、次は必ず当てます」

「久しぶりにヒヤリとさせられた。次に期待しよう。だが、今回は大人しく従ってもらおうか。君みたいに強い女が無様な姿を晒すのが好きなんだ」

「抵抗したら従順になるまで心を折るんでしょ? ──今はまだ、貴方に勝てないから、屈します。でも、諦めませんから。今日が最初で最後です……っ」

「────なるほど。アイツらの気持ちが分かった気がするな。──とても、楽しめそうだ」

 

 黒木ユウトはそう言って笑った。

 

 

 

 ★

 

 

 

 黒木ユウトが見ている中で私は服を脱ぎ、生まれたままの姿を晒していた。着ていた制服は彼の足下に散らばり、白い下着は彼の手の中にある。初めて異性に裸を見られた感想は、恥ずかしいよりも悔しいが勝った。

 

 恐らく彼が見てきた中で一番小さく、幼い胸は年相応に膨らんでいる。先っぽも隠していない為、丸見えなのだが先程から黒木ユウトの視線は私の顔にばかり向けられていた。そんなに私が悔しがる表情が面白いのだろうか。

 

 下半身は手で隠しているが、下着を脱ぐ時にまだ生え揃っていない下の毛と大切な割れ目をしっかり見られている。私の全てを目の前の男に知られてしまった。今この瞬間、私は彼の目を楽しませるだけの見せ物でしかないのだ。

 

 固まる私に彼は視線で催促する。それに従い私は脚を肩幅より大きく広げ、足先を外側に向ける。そして、震える両手の指で、自分の女性器を左右に開いた。彼の場所からは私の秘すべき場所が完全に見えている筈だ。服を脱いだ心細さが一層増し、自分が今本当に無防備な状態なのだと理解する。

 

 まさか、二年越しに姉の最期と同じポーズを取らされる事になるなんて思わなかった。たった1人に見られただけでこの屈辱感なのだ。日本を背負っていた姉が、国民に見られると知りながらこの体勢を取らざるを得なかったのは、どれほど無念だっただろうか。

 

 カシャっというカメラのシャッター音を聞いた瞬間、私の頬を一筋の涙が流れていった。

 

 

 

 ★

 

 

 

 その後、私はガニ股を維持したまま自慰をさせられた。拙い手付きで必死に秘所を愛撫する小娘の姿はさぞ滑稽だっただろう。30分掛けて女性器を濡らす姿もしっかりと撮影されてしまった。今後私がどれほどの活躍をしたとしても、この動画が流出したら日本中の人に失笑され、好奇の目で見られてしまうに違いない。

 

 何を思ったか、黒木ユウトは私にもう一度ガニ股になり、割れ目を広げるように命令してきた。さっきと違って恥ずかしい液体で股を濡らしている私の姿は、変態みたいに見えるだろう。

 

 それが終わると今度は液体の薬を飲まされ、正座をさせられた。

 

 変化は一瞬で起きた。

 

 プシュッと私の割れ目から愛液が噴き出し、床を濡らしたのだ。そして急激に身体が熱くなってきたかと思うと、胸の先と股の間がムズムズし始めた。

 

「な、に……これ……」

「大陸で売られている媚薬だ。身体に害はないから安心しろ」

「大陸の、って、もしかして、あの事件の時のですか……?」

「ああ、君の姉が飲んだのと同じ薬だ。何度見ても凄い効き目だな」

 

 会話の間にも私の身体は薬によって変化していき、気付けば乳首がツンと上を向いて勃ち、女性器も淫らに口を開いていた。その上で皮を被っていた筈の陰核は、一人でに剥けて私の快感を伝えるように屹立している。その解放感を気持ちいいと感じる自分がいて、無意識に陰核に力を入れて更に勃起させようと身体が動いていた。

 

 私は無理やり媚薬を飲まされた被害者の筈が、まるで発情した身体を黒木ユウトに見せ付けている変質者になったような錯覚を覚える。これでも学校ではお淑やかな女子として通っている私のこんな姿をクラスメイトに見られたらどんな顔をされるだろうか。そんな想像をして、また興奮する自分が嫌になる。

 

 それから数分後。

 正座を維持したまま何度も潮を吹く私の姿をしばらく撮影した黒木ユウトは、満足した様子で私に近付いてきた。

 

 

 

 

 

「…………?」

 

 

 

 

 そして、足を私の股の間に近付けると、おもむろに勃起している私のクリトリスを踏み潰した。

 

 

 

 

「!??!??!!!???!!!!! 〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」

 

 

 

 私は、天を仰いだ状態で顔を歪ませ、人生で最大の絶頂を迎えた。あまりの刺激の強さに、表情を取り繕う余裕もない私は、その顔を彼によって何度も撮影され、それすら気にならないくらい激しくイキ果てたのだった。

 

 

 

 ★

 

 

 

「しゅ、趣味が悪いですよ貴方!!」

「仕方がないだろう。こっちの方がよく撮れていたんだから」

「これだと私だけ変態みたいじゃないですか!」

 

 一週間後、再び黒木ユウトに呼び出された私は、彼の部屋に新しく飾られている写真を見て激しく抗議をしていた。それは予想通り私が秘所を広げて屈服のポーズをしている写真だったのだが、問題はそれが濡れている方(・・・・・・)だという事だ。悔しげな顔や、泣き顔で同じポーズをする女性の写真の中で、ただ一人私は割れ目を淫らに濡らし、頬を紅潮させていた。しかも、その写真はなぜか姫神ソラの隣というかなり目立つ場所に掛けられているのだから、嫌でも目についてしまう。

 

 今後この部屋に呼ばれてくる後輩達に間違いなく見られてしまうだろう。それでどうやって先輩としての威厳を保てと言うのだ。そう思って写真の差し替えを要求する私を、彼はニヤニヤと見てくる。

 

「な、なんですか」

「いや何。俺はこれでも君に配慮しているんだけどな」

「どこがですか! 私の写真が飾られる事自体、不快で堪らないのに、先輩達の写真も一緒だからと一時的に我慢する事にしたんですよ! すぐに貴方を超えてデータごと消してやろうと、そう思う事で自分を納得させたのに、こ、こんなの認められません!!」

「濡れているか濡れてないかなど大した差ではないと思うけどな。──この写真と比べれば」

 

 そう言って彼が差し出した写真を見た瞬間、私は羞恥で頭がおかしくなりそうになる。

 

 その写真には、正座する私の姿が上から撮影されていた。恐らく陰核を踏み付けられた直後の写真だろう。1センチ程の大きさに膨らんだクリトリスとそこから糸を引いて離れている彼の靴がしっかりと写っている。そして、その瞬間の私の顔も見る事が出来た。

 

 写真の私は、口を半開きにして舌を覗かせ、頬は限界まで緩めており、目は半分白目を剥いていた。これを見ただけで情けない声を上げていた事が分かるレベルの無様な顔。私がこんな不細工な表情を出来るなんて知らなかった。知りたくもなかった。

 

 これはダメすぎる。

 これを人に見られたら生きていけない。

 こんなイキ顔を……アヘ顔をこの私が晒すなんて信じられない。

 

 私は"黄金の守護神"神籠ユリアの妹で、最年少国家指定魔闘師で、現在日本唯一の"染色"で、人類最速の"銀光"で、姫神ソラの再来と言われてて、学校ではお淑やかな高嶺の花で通っている神籠アイリなのに、陰核をビンビンに勃ててアヘ顔を男に見られたなんて、そんなことあっていい筈がない。

 

 混乱する頭でそんな事を考えた私は、差し出された写真を引ったくるとキッと黒木ユウトを睨み付けた。

 

「…………その写真でいいです。……その写真で我慢しますから、だから!! 今の写真は誰にも見せないで下さい……!!」

 

 それだけ言うと私は逃げるように部屋を後にした。

 

 

 

 

 何年か後なんて悠長にしていては、あの写真がいつ流出するか分ったものではない。

 

「────1年です。1年で私は黒木ユウトを倒して、あの写真を抹消します!」

 

 これほど強くなりたいと思ったのは、姉が死んだあの日以来だった。




【用語】

染色:
才能がある人だけが至れる。髪にまで魔気が浸透しているので、髪の色が幻想的なものに変化している。身体強化が並の魔闘師の数倍になる感じ。

剥魔:
大陸の魔闘先進国の技術。努力すれば誰でも使える。相手の魔気を散らして身体強化を解除させたり、逆に相手が使ってきた剥魔を無効化出来たりする。

強さは、剥魔を使える染色>>剥魔>>>>>染色>その他
神籠ユリアが剥魔を覚えたら無敵だった
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