※この作品はR-18です。

幼馴染の意地   作:ゆかりはるか

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中学生(15)

先生「~~であるからして、~~~なるということだ」

 

 

 

授業を進めている先生は、あまり覇気の無い声で淡々と授業を進める。生徒も真面目に受けている人はほとんどおらず、大抵は机に突っ伏しているか、何か別のこと……他教科の課題をしているとか、隠れてスマホを弄っているとかそんなことをしている。右隣を見ると、鳴海は真剣に板書をして授業を聞いている。左隣りを見るが、そこは空席になっていた。体育祭が終わって約1週間、星奈はずっと学校に来ていない。新聞部の古株、愛奈の情報だと彼女は行方不明になっているらしい。

 

 

 

星奈の家に行っても、1週間くらい帰ってきていないようだ。ちなみに星奈は1人暮らしで、大きなマンションに住んでいる。愛奈がそのマンションにまで足を延ばして取材をしに行ったが、隣の住人からは1週間くらい姿も見ていないし、部屋から物音が1つも聞こえないという情報を得たようだ。郵便物の中を調べると、かなりの量が溜まっており、中を覗いていない、覗いたが取り出さなかったことから行方不明になっているのではないかと疑問視された。

 

 

 

愛奈に星奈の連絡先を知っている健也に連絡を取って欲しいと頼まれたので、いくつかチャットを送るも全て既読も付かない。彼女が投稿しているノートや写真を見ようとしたが、全て削除されていた。彼女が自分自身で消したのか、それとも遠隔操作などをされて消されたのか分からないが、どうも不自然に見える

 

 

 

しかし周囲の反応はそうではなかった。具体的に言うと健也・鳴海・吉良・愛奈は星奈のことを覚えているが、他の学校にいる人間は、健也達が調べた限り星奈のことを覚えていなかった。なぜか教室で1つ席が余っているよな~的な会話は行われることがあるものの、そこに「星奈」という名前は1回も出てこなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

 

 

いつも通り4人で集まって昼食を食べる。健也は星奈のことで調べないかと3人に提案したが、意外にもこの3人は星奈のことを調べる気はないようだ

 

 

 

健也「調べないの?」

 

愛奈「もう調べたよ。それを教えたじゃん」

 

健也「でもまだ行方不明と決まったわけじゃ」

 

愛奈「仮にそうじゃなくても家出とかじゃないかな。あの人、いつも誰かといたような気がするし、誰かの家に泊まっている可能性もあるし」

 

健也「でも」

 

吉良「やけに肩入れするよね~。なんでそんなに焦ってんの?」

 

健也「焦るって……気にならないのか?」

 

鳴海「どうせ戻ってくるでしょ? 家の都合とかそんなんじゃないの?」

 

健也「鳴海…お前何か知らないの?」

 

鳴海「何かって」

 

健也「星奈のこと…」

 

鳴海「知らないよ」

 

健也「でも星奈のこと気にしていなかったか?」

 

鳴海「星奈さんのことが苦手だから近くに寄らないように気にしていただけ」

 

吉良「もう~、健也もご飯食べようよ。そんなこと気にしないでさ~」

 

健也「………俺が気にしすぎなのか?」

 

愛奈「そうよ」

 

 

 

それから4人で談笑しながら昼食を摂る。話題は星奈から恋愛の話へと移っていった。どうも最近カップル誕生が増えているらしい。鳴海はそれを記事にしようかと考えているようだ

 

 

 

鳴海「―というわけなの」

 

吉良「確かに最近男女2人で話しているところを見るな~とは思ってはいたけど、そういうことだったんだね」

 

愛奈「私も協力して調べたから」

 

吉良「流石愛奈だね~」

 

健也「その交際している人達に取材をするのか?」

 

鳴海「そうしようかなって。けん君も来てくれる? 1人だとやり辛くて」

 

健也「一緒に調べた愛奈の方が良いんじゃないか?」

 

愛奈「こういうのは男女で調べた方が話してくれるのよ。同性2人で行くよりも、男女2人で行った方が話をしてくれることが多い」

 

吉良「まぁ同性で行くと、異性には話しにくいこともあるだろうしねー。確かにそれは賛成かな」

 

健也「じゃあ吉良と愛奈が組むの?」

 

吉良「僕達は鳴海さんから救援要請されない限りは自分の取材を進めるよ」

 

健也「あれ吉良のって……」

 

吉良「僕は愛奈の取材の手伝い」

 

愛奈「私はいくつか掛け持ちで取材をしているの。その1つを手伝ってもらうだけ」

 

健也「あー、なるほど」

 

鳴海「じゃあさっそく行こうか、ゴホッゴホッ」

 

健也「大丈夫?」

 

鳴海「あぁ、喉に詰まっただけだから、気にしないで」

 

健也「じゃあ行ってくる」

 

吉良「あーい」

 

 

 

鳴海と共に教室を出て、彼女の後を追いかける。どこに行くのかと尋ねると、健也達と吉良達の所属していない残りの2クラスに向かうようだ。教室に入ると、教室にいる連中は一度健也達に注意を向けるが、それも一瞬で、すぐに自分たちの会話や遊びに戻っていく。鳴海は周りの視線を気にしないで、教室の隅にいる男女2人に近づく。男女2人は至近距離で見つめ合っており、何か楽しそうに話をしている

 

 

 

鳴海「こんにちは」

 

男子A「あぁ」

 

女子A「鳴海さん、こんにちは。あらそちらは……」

 

鳴海「私の恋人」

 

健也「……どうも」

 

 

 

とりあえず頭をペコりと下げて挨拶すると、男女2人は快く迎えてくれた。まず鳴海が付き合う前のころの話を聞いていく

 

 

 

男子A「その、最初話すときは居残りの課題が一緒になって、愚痴を言いながら話していたんだけど、話すうちに気が合うかもしれないと思って……それから少しずつ話すようになって、気が付いたら好きになっていたよ」

 

女子A「そうね、確か結構多い課題をやらされて、2人で一緒に解いてからその日は解散したね。それから課題の居残りが被ることがあって、それで話すようになったって感じかな」

 

鳴海「へーそうですかー」

 

 

 

鳴海はメモ帳に何かを書き込んでいる。その間男女2人は健也のことが見えていないように見つめ合っている

 

 

 

鳴海「じゃあお互いの魅力的なところを教えてください」

 

女子A「見た目はそんなでもないけど、服を脱ぐと結構がっちりとした身体をしている…」

 

男子A「ちょ、ここでその話は!」

 

女子A「だって~、自慢したかったし~?」

 

男子A「……そのお前の身体も……良かったよ」

 

女子A「ここで言わないでよっ!」

 

鳴海「…………」

 

 

 

鳴海は無言でメモ帳にペンを走らせる。周囲にいるものたちは、この男女の会話をさりげなく聞いており、2人の受け答えについてあれこれと話をしている。健也も「なんだこいつら」という気持ちを抱きながら男女を見ていると

 

 

 

鳴海「浮気はどこからになりますか?」

 

 

 

そこ聞く!??

 

 

 

男子A「そうだなー、親し気にしていたら?」

 

女子A「身体の関係があったらかなー」

 

鳴海「はーい、ありがとうございましたー」

 

健也「もう終わり?」

 

鳴海「うん、次行くよ」

 

 

 

教室を出て隣のクラスに向かう

 

 

 

健也「あんな人目のつくところで聞いて良いのか?」

 

鳴海「本人達はそこで良いって言ったから問題ないよ」

 

健也「…………」

 

 

 

それはまぁ、なんというか……堂々としているなーと思う健也

 

 

 

鳴海「次はここだよ」

 

 

 

さっきの教室の隣の教室に着き中に入る。中には人はほとんどおらず、8人程度しかいない。ちなみに男子2人、女子6人だ。鳴海はその8人の元に向かうと、そこで駄弁っていた8人の中のリーダーらしき人物が話しかけてきた

 

 

 

女子A「待っていたよ~」

 

鳴海「ありがとうね」

 

女子B「ほら、早く終わらせようよ」

 

鳴海「そうですね、それでは付き合い始めのころを教えて下さい」

 

男子A「女子Aと付き合っていたんだけど、女子Bと女子Cと一緒に3人で遊んでいるところを見られてな、それから話し合った結果4人で付き合うことになったんだ」

 

男子B「俺も男子Aとほとんど同じだ」

 

 

 

どういうことや

 

 

 

鳴海「なるほどー」

 

 

 

呆れた感じでメモ帳に何か書き込んでいるが、この8人は鳴海を気にしないでイチャイチャとしている。男は3方向から女に抱き着かれているので、少し羨ましいなと健也が思っていると、鳴海から冷たい視線を向けられた。すぐに目を逸らす

 

 

 

鳴海「普段何して遊んでいますか?」

 

女子D「大体彼氏に家に集まってゲームをしたり、外に遊びにいったりとかかな?」

 

女子E「ゲームセンターに行って遊ぶとか、カフェとかでお話をするとかもあるよね」

 

鳴海「なるほど、ちなみに浮気はどこからですか?」

 

男子A「俺以外の男と遊んでいる」

 

男子B「男子Aと同じく、遊ぶなら許可を取ってからにしてほしい」

 

 

 

男子2名がそういうと、女子6人はキャーキャーと言っている。正直どこに魅力があるのか健也にはさっぱり分からなかったのだが、女子にしか分からない魅力がこの2人にあるということだろうか? 鳴海はさっさと挨拶を終わらせて教室を出た

 

 

 

健也「どこ行くの」

 

鳴海「新聞部、記事を書くよ。けん君も来てね」

 

健也「俺も~?」

 

鳴海「うん」

 

健也「えー」

 

鳴海「…」

 

健也「はいはい、行きますよ」

 

 

 

鳴海の後を追って新聞部に入る。入部してちょこちょこと来ていたが、久しぶりに感じた。鳴海は部室に入ると奥にあった機材をガチャガチャといじった後に、部室にあるパソコンを起動して記事を書き込んでいく。後ろからどんな感じの記事を書いているのかと思って覗いてみると、見出しには最近カップルが沢山いるという感じのことが書かれていた。タイピングが早く、手元を見ないでどんどん文字を打ちこんでいく様子を見るが、健也にはやることが無かった。どうやって時間を潰そうかなと思っていると

 

 

 

鳴海「けん君」

 

健也「んー」

 

鳴海「けん君にとって私って何」

 

健也「え」

 

 

 

あまりに突然の質問で、思わず鳴海の方を見るが、鳴海は健也の方に視線を向けないでカタカタとタイピングがしているが、視線だけはこっちに向けていた。その視線はとても真剣で冗談を言える雰囲気ではなかった

 

 

 

健也「どうしたの突然」

 

鳴海「突然? 突然じゃないよ。ずっと前から思っていたの」

 

健也「何って……幼馴染で、恋人なんだろ?」

 

鳴海「……けん君は私のこと好き?」

 

健也「好きだよ?」

 

鳴海「……そう」

 

 

 

鳴海は健也のその返答に、何とも言えないような顔をしていた。嬉しそうにも見えるが、戸惑っているようにも、辛そうにも見えた

 

 

 

健也「突然どうしたの、そんなことを聞いて」

 

鳴海「なんでもない、けん君は高校どこにするか決めているの?」

 

健也「高校?」

 

鳴海「3年生になったら本格的に受験だからさ。けん君はどこの学校に行くのかなって思って」

 

健也「あー、そうだねー。鳴海はどこにするの?」

 

鳴海「……どこだろうね~」

 

 

 

タイピングをやめて背もたれに寄りかかり、うーんと身体を伸ばしている

 

 

 

健也「決めていないのか」

 

鳴海「……」

 

健也「?」

 

鳴海「あ、ごめん。聞いてなかった」

 

健也「またか」

 

鳴海「最近ね……時々だけど少し耳が聞こえなくなる時があるんだよね」

 

健也「それ大丈夫なのか?」

 

鳴海「病気とかではないから安心して。それよりも高校、どうするの?」

 

健也「高校か…」

 

 

 

中学生活も半分手前まで来た。あと1年半で中学校を卒業し、高校生となる。高校生になれば、中学生よりも制限が緩くなるので、遊びの範囲が広がる、アルバイトをやるということも考えられるが、あまり現実味がない

 

 

 

健也「なんかやけに先のこと話すな。どうしたの」

 

鳴海「最近変な夢を見てさ、私は高校生になれない夢」

 

健也「どういうこと?」

 

鳴海「夢のことだからね。いまいち内容を覚えていないんだ」

 

健也「それはなんか怖いな」

 

鳴海「怖いよ、けど避けられなかったんだその夢では」

 

健也「大丈夫だろ、夢なら」

 

鳴海「……」

 

 

 

鳴海は健也の顔を見ないように外に視線を移す。外には部活に勤しんでいる者、校庭に何も人がいてボールやバッドを持って遊んでいる者、男女が仲良さげに話をしているところが見られる

 

 

 

鳴海「あと1年とちょっとか……」

 

 

 

鳴海は大きく溜息をつく

 

 

 

健也「まだ卒業もしていないのにやけに気にするな」

 

鳴海「見てあそこ、部活してるよ」

 

健也「お昼に練習だなんて、熱心だな」

 

鳴海「でもあそこまで熱心になるのもすごいよね」

 

健也「それだけ必死なんだろ」

 

鳴海「そうだね、必死だね。あそこも見て」

 

健也「んぁ? あぁ、カップルっぽい2人がいるな」

 

鳴海「楽しそうだよね」

 

健也「そうだな」

 

鳴海「あれも必死なのかな」

 

健也「……そうじゃないか?」

 

鳴海「……」

 

 

 

ここから見えるカップルは、遠くからもアツアツな感じが伝わる。その2人と自分達のことを比べてみた。鳴海とは付き合っていることになっているが、あの人達と比べたら冷めすぎているような……少し熱が足りないような気がする

 

 

 

健也「鳴海」

 

鳴海「何」

 

健也「その…あの…俺達は付き合っていることになっているけど、このままで良いのかな」

 

鳴海「良くない」

 

健也「そ、そうなの??」

 

 

 

即答でそんなことを言われてしまい少し落ち込んでしまう。鳴海は外を見たまま会話を続ける

 

 

 

健也「ど、どうしたらいいのかな」

 

鳴海「けん君がもっと私に熱くなってみるとかどう?」

 

健也「あ、熱く?」

 

鳴海「最近マンネリ気味ではあるかなと思っていたんだよね」

 

健也「……」

 

 

 

思ったよりもバッサリと言われて、ショックを受けたようだ。健也は口をパクパクとさせて、何も言い返すことが出来なかった

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

 

予鈴がなった。急いで戻らないとこの前みたいに先生に遅刻扱いされて怒られてしまう。チャイムが鳴っていることに気付いて戻らないといけないということは分かってはいるが、鳴海の発言が頭の中で繰り返されていて、歩くにも遅く歩くことしか出来なかった

 

 

 

鳴海「けん君? …ほら、行こう」

 

 

 

鳴海から手を繋いできた。いつもあった感触が手にあり、少しだけ落ち着きを取り戻すが、それでも鳴海の顔を見ることは出来なかった。それはいつも一緒にいる大切な人が自分の思っていなかったことを言って、どんな顔をしているのか見る勇気が無かったからだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳴海「……もう時間が無いのに……」

 

 

 

鳴海のその呟きを聞き取ることは出来なかった

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