※この作品はR-18です。

幼馴染の意地   作:ゆかりはるか

35 / 43
33

璃子「はぁ……」

 

 

 

授業を終えて、背筋を伸ばすと背骨がバキバキと音を立てる。自分の知らないうちに上体をやや前かがみにしていたのか、姿勢が悪くなっていたようだ。周りを見ると、クラスの女子達は全員楽しそうに何かを話している。教室の窓際には靴下や下着がつるされており、男の目線が無いからこそ堂々とつるす人もいる。中には生理用品が無い人はある人にお願いして、貰うこともある。それ自体は割と女子同士であることだが、男子が消しゴムを貸してと言って投げて渡すように、生理用品を投げて渡し合うこともよくある。

 

 

 

帰りの準備を進めていると、クラスメイトに話しかけられた

 

 

 

クラスメイトA「ねぇ璃子。この前男の人といなかった?」

 

璃子「え、私が?」

 

クラスメイトB「そうそう、こんな感じの人」

 

 

 

クラスメイトBからその人の容姿を説明される。最初は誰なのかと思いつかなかったが、少し前に会っていた他校の同級生の男子(健也)と会っていたことを思い出す

 

 

 

璃子「いえ、会っていないよ?」

 

 

 

本当は会っているのだが、ここでそういえば、男の話題に飢えている獣達クラスメイトが、真っ先に食いついて来て帰るのが遅くなるだろう。男が女の話題になった途端に、多くの人がその女の話題に食いつくのと同じことだ。男子も女子も、異性に関する話題についてはすぐに食いつく。どこの学校でも、それは変わらない

 

 

 

璃子に動揺がなく、本当に人違いだったのかと思ったクラスメイトと適当に話をしてから、教室を出る。廊下には女子しかおらず、中には廊下で仲良さげに顔をとても近づけて話をしている人達もいた。女子校だし、そういう人も中にはいる。そもそも男子が怖くて無理から女子高、女子が苦手で男子校に入る人もおり、同性だけしかいないから入ると言う人もいる。璃子は廊下で偶然会った他クラスの友達と会い、少しだけ話す

 

 

 

璃子「よ、調子はどう?」

 

友達「ボチボチかなー。そっちは?」

 

璃子「私もそんな感じかな。部活は?」

 

友達「今から行くところ。璃子は?」

 

璃子「このまま帰るよ」

 

友達「そっか。じゃあ私はもう行くね」

 

璃子「うん、バイバイ」

 

 

 

短いやり取り。彼女は楽しそうに廊下を走るも、教員に見つかり走るなと注意を受けている。それを見てくすっと笑った後に、階段を降りて下駄箱に向かう途中に、友達の1人が校舎裏に行くのを見かけた。普通なら気になるが、見に行くことはないのだが、今日は不思議となんとなく気になった。どうして気になったか? 気になったから気になったとしか言えなかった。

 

 

 

友達が見えるギリギリの距離を取って何をしているのか見る。友達の表情は距離があるのと、コンタクトをしているとは言え、あくまで日常的に困らない程度の度数の物を使っているので、どんな表情をしているのか見えない。手には何か細長い物を持っているが、よく見えないので、それが割り箸なのか、ガラスなのか、プラスチックなのか、何なのか分からなかった。友達はそれを地面に叩きつけるように投げるような動作をすると、逃げるように走り去ってしまった。

 

 

 

璃子「?」

 

 

 

何をしたのか気になったが、これ以上は見ても何も無いよなと思い、そのまますぐに学校から出て家に向かって歩き出した

 

 

 

家に帰る途中に、ハットをかぶった人を見つける。どこかで見たことがあるような気がしたが、どこかを思い出せない。手にはカメラを持っており、あちこちにカメラを向けている。被写体を探しているのだろうか? 自分が被写体ではないと思いたいが、実際にカメラを無許可・無言で向けられるといい気はしない。顔を下に向けて、せめて顔を映らないようにしようと抵抗していると、その人が話しかけてきた

 

 

 

ハットをかぶった人「君、少し良いかな?」

 

璃子「……」

 

 

 

これは関わったらだめな奴だ。最悪裸になって撮影をしようとか言い出しかねない。少なくとも顔が良く見えないようにして、相手の顔を伺うが、ハットを被っており、顔も少し下に向けているので、璃子からは顔が全く見えなかった。無視を決め込んで横を通り抜けようとしたが、最初からそれが読まれていたようで、逃げようとした道を先回りされてしまう。先回りされるとは予想していなかった璃子は、その妨害を回避することが出来ず、ぶつかってしまう

 

 

 

ハットをかぶった人「おっと」

 

璃子「っ!」

 

 

 

触れた瞬間、触れた箇所に電流のようなピリピリとした感触があったが、すぐにハットをかぶった人が距離を取った。璃子は不意打ちのピリピリに対応することが出来ず、その場で足を止めてしまう

 

 

 

ハットをかぶった人「あぁ、静電気が出たね。ごめんね」

 

璃子「いえ……っ」

 

 

 

静電気? それにしてはやけにビリビリするような? いや、最近静電気を浴びていなかったから、自分が思っている以上に反応しているのかもしれない。とにもかくにも、この人の話に反応してしまったので、無言で立ち去ることが出来ない空気になってしまった。

 

 

 

ハットをかぶった人「この人に見覚えが無いかな。私が探している人なのだけど」

 

 

 

そいつは懐から写真を2枚取り出す。一枚は自分と同じくらいの歳の女子、どこかの学校の制服を着ている。もう一枚はとても小さい女の子、見た感じ2~4歳くらいに見える。

 

 

 

ハットをかぶった人「この2人について何か知らないかな。この君と同じくらいの子は、星奈という名前なんだ。どうだろう? 名前や容姿に覚えは無いかな?」

 

 

 

璃子はその写真に映っている2人を見て記憶を掘り起こすが、全く覚えがなかった

 

 

 

璃子「無いです」

 

ハットをかぶった人「……そうか。うーん、実はこの2人を探しているんだ。もし何か分かったらここに書いてある連絡先に電話をしてくれないかな。もし、よければだけど……」

 

 

 

その人から小さな紙を渡され、数字が書かれている

 

 

 

それを受取ろうとしたが、風が吹き込んできて、その人の手から紙はひらひらとどこかに飛んで行ってしまう

 

 

 

璃子「あ」

 

ハットをかぶった人「……」

 

 

 

2人で紙が飛んでいった方向を見るが、紙は戻ってこない。とても気まずい空気になり、璃子的には今すぐこの場を離れたかった

 

 

 

璃子「あの、すいません。私はこれで」

 

 

 

何だか怖くなってその人の横を通り抜ける。その人は紙を飛ばされたことに落ち込んだのか、一歩も動かないで璃子の脱走を許してしまった。そのまま大股でずかずかと歩く。後ろを見たい衝動に駆られたが、もし振り返ってあの人と目が合ったら怖い。逃げるように歩き去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハットをかぶった人「……はぁ、面倒だな」

 

 

 

ハットをかぶった人は、飛んでいった紙の方角を見ながらそう呟く。呟いた後に、さっきの女の子(璃子)と同じ制服を着た少女を見つける。同じように聞き込みをしようかと思ったが、その女の子の顔がとても緊張しているように見えた。まるで悪戯をしたけど、それがバレていないかハラハラドキドキしているような印象を受ける。その少女の顔を見ると

 

 

 

ハットをかぶった人「おや」

 

 

 

あることに気付く。さっきと同じように少女の前に立ちはだかり、写真を2枚見せて、何か知らないかと聞くと、少女は慌てたような顔をしている。何か知らないかと聞くと、その子は知らないと答える。その少女に自分の連絡先を書いた紙を渡すと、そぐにそれを受け取って逃げるように去って行った。少女が逃げた方角を見て

 

 

 

ハットをかぶった人「……っふ」

 

 

 

笑った後に、消えるように空が暗くなっている方に向かって歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

璃子「疲れたー」

 

 

 

家に帰って直ぐに勉強をして夕食を摂り、部屋に戻って横になって休む。食べ過ぎた後に横になると、起き上がるのに苦労するが、それでも横になりたいと言う衝動は強く、抗うことが出来ない。頭には、さっきまで勉強をしていた歴史の人名、地名、年表などがあちらこちらと駆け巡っていて、理科の公式や、英語の文法の些細な違いも混ざり混ざり、自分ですらどの科目の知識がどこにあるのか分からない。未来に自分に託すことにして、今日はもう勉強をやめスイッチを切った。

 

 

 

暇つぶしに動画やメールのやり取りをするが

 

 

 

璃子「あれ、あそこの地名って何だっけ?」

 

 

 

ふと自分が覚えた物が、本当に合っているのか不安になり、スマホをベッドに放って教科書や参考書を広げて確認する

 

 

 

璃子「あ、良かった。ここがこうで……」

 

 

 

確認を終えて、教科書を閉まって布団に再び飛び込みスマホをポチポチといじるが

 

 

 

璃子「あれ、こここうだったかな?」

 

 

 

また気になることを思い出して、スマホを放り投げて確認する。こういうことが何度も起きて遊びに集中できない。かと言って無視してそのまま遊んでいても、頭の片隅に「気にならないか?」と囁く自分を黙らせることが出来ず、確認を繰り返す。

 

 

 

璃子「確認は後にしようって思うんだけどねー……」

 

 

 

確認なんか後日に回してやればいいじゃんと囁く自分。しかし、勉強はこういう小さな確認と修正を繰り返すことで少しずつ学力が伸びてくるものだ。今すぐ確認すれば、心置きなく遊べるぞと囁く自分もおり、なんやかんやで確認を繰り返していると、もうすぐ日付が変わる時間だ。夜更かしは体調と、電気代を悪化させるだけなので、急いで部屋の電気を消して布団にもぐる

 

 

 

が

 

 

 

璃子「……なんか眠れないな」

 

 

 

何度か寝る体勢を調整したり、無心でいようと頑張るが、中々寝付くことが出来ない。寝る前にスマホをポチポチするのは良くないと聞いたことがあるが、それでも何もしないでいる時間は中々キツイ。寝ようにも身体は起きている。

 

 

 

傍に置いてあるスマホを取って、仰向けで、片手でスマホを持って、片手で指をなぞる体体勢になって眠くなる時を待って時間を潰す。こういう時の時間は、どういうわけか普段見ないようなサイトを行きかってしまうことがある。璃子はネット記事に気になるものを見つけたので、それをタップして詳しい内容を見る

 

 

 

内容は、ある学校の女子生徒の遺体が見つかったこと。その女子生徒の名前と顔が表示されており、それはつい最近聞いたことがあるような気がした。名前は「星奈」、近くの女子中学に通っていた生徒とされているが、死体を解剖した結果、なんと死亡推定時刻が10年以上も前となっているようだ。死体が発見されたのは、自分の家からかなり距離がある小川。遺体は性的暴行を受けたような痕跡があり、このまま調査を続けるような決意表明で文章が閉められている

 

 

 

関連記事を見つける

 

 

 

さっきの記事を書いた人が行方不明になっていたが、死体で見つかったとの話だ。この記者の遺体が発見された場所は、ある温泉旅館から離れた場所の森の中で見つかったらしい。死体を見つけた第一発見者の話によると、突然空から死体が落ちてきたとのこと。死体を見つけた時の驚きて、意味不明な供述をしたのではないかと書かれている。解剖した人の話によると、遺体の損傷は激しく、一体何にどうなったらこうなるのか分からないくらいの惨状だったようだ。

 

 

 

続きが気になったが、残り充電が10%を切ったと通知が来る。ついでに時間を見ると、思ったよりも時間が経っていた。明日……今日も学校があるので、充電器をスマホに挿して、目を瞑る。視界は真っ暗になるが、スマホを置いたところから淡い光を放っているような気がした。なんだろうと思って目を開けて確認するが、何も通知が来ていない。充電をしたときに時々起きるあれだろうか? 

 

 

 

気にしないようにして目を瞑ると、突然身体を引っ張られるような感覚に陥る。まるで寝ている時に急降下をしているときのような感覚だが、目を開けてもそれは続いている。まるで上から無理やり押し付けられて落とされるような……そんな感じだ

 

 

 

戸惑ったと同時に

 

 

 

璃子「はっくしょん!」

 

 

 

鼻に何か詰まっていたのか、くしゃみをする。身体が少し痛くなるくらいに大きなくしゃみをすると、さっきまで無理やり押さえつけられていたような感覚が無くなった

 

 

 

璃子「?」

 

 

 

勉強の疲れが溜まっているのだろうか? それにしてもさっきの記事……不可解な点がある

 

 

 

行方不明自体の記事は何もおかしいことではないが、記者が行方不明(死亡)になっていて、更にそれに関連した記事を書いた人も、行方不明(死亡)になっている。もし、消している人が意図的にいるとしたら、わざわざそんな証拠を残させるようなことをするだろうか? 記者だけではなく、記事まで消すはず。その方が、痕跡も消せる箇所が大きくなるのだから、意図的に消している人がいるとしたら、好都合のはず。

 

 

 

まぁ、意図的に残しているなんてそんなわけないよね……

 

 

 

璃子は眠りについた

 

 

 

 

 

 

 

ある家の屋根の上、そこには2人の女性がスイーツを食べながら話していた

 

 

 

???「どう?」

 

???「くしゃみで逃げられた」

 

???「そんなことあるんだ」

 

???「私も予想外です。それよりあの子と接触したハットは誰?」

 

???「さぁ? 別のグループの知り合いじゃないの?」

 

???「あんなのを?」

 

???「私は全員知らないと思うけどね」

 

???「それは私も思っているっての。あーあ、あの子を捕まえればおびき寄せると思ったのに……それ頂戴」

 

???「だめ、もうそっちはスイーツ全部食べたでしょ」

 

???「私に隠れて私の1つ食べたのを知っているんですよ?」

 

???「……」

 

???「さっさと寄こせっての。それよりもあの子どうするの? これからもハットに目を付けられるんじゃないの?」

 

???「その心配はないと思うわよ? 被害者は全員写真に映っている人を知っているかで、まず警告になって、連絡先を受け取ったら連れていかれるみたいだし」

 

???「あの子は受け取っていないの?」

 

???「見ていたけど、受け取っていなかったわ。風で流されていったわよ」

 

???「それは好都合ですね。やはりあのハットは黒ですか」

 

???「黒よりのグレーってのが、あの4人も同意見みたいだし。偶数組で行くんじゃないかなー」

 

???「ふーん、そうですか。とりあえず今日はこれで解散?」

 

???「えぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

璃子「……あれ?」

 

 

 

朝起きてスマホを見るが、なぜか充電されていない。コンセントを抜いて見るが、どこかねじれている所は見当たらない。もしかしたら中の配線が切れていて、充電出来なかったのかもしれない。溜息をついて制服に着替えて、朝食を摂って学校に向かう。璃子はモバイルバッテリーを持っていないので、仕方なくスマホは家に置いていくことにした。モバイルバッテリーは外でスマホを酷使する人の必需品で、あまり外で使わない人にとってはそこまで重宝しない。璃子は外ではほとんど使わない、使うとしても連絡をする程度なので、モバイルバッテリーは持っていなかった。

 

 

 

学校に到着するが、何だか人気が少ない気がする。いつも通りの時間に出たのに、いつも見る風景に映る人の数が少ないような? もしかしたら下級生が修学旅行やら、校外学習なのかなと思ったが、1年生、2年生の下駄箱に人が出入りしているので、そんなことはなさそうだ。

 

 

 

教室に着くが、何と自分が一番乗りだった。それに驚きながらも自分の席に座る。HRが始まるまで約20分前、なのに自分が一番乗り……そのことに不信に思った璃子はスマホを取り出そうとするが、家に置いてきたことに気付く。後ろ頭を掻きながら、どうしようかと思うが、HRがもうすぐで始まるし、大人しく席に座っていることにした。

 

 

 

改めて教室全体を見渡す。朝一番に来たことにも驚きだが、朝に自分以外の誰もいない教室を見るのは初めてかもしれない。放課後になればそういう光景を見ることは出来なくはないが、HRが始まる10分前に誰もいない教室は中々見ることが出来ないだろう。なんだか不安になって来た

 

 

 

璃子「……もしかして学校休み?」

 

 

 

予定表を見たが、別に今日は休みでなかったはず……。見落とした? そんなはず……でもそうじゃないと説明が出来ない……。実は今日は校外学習だったりする?

 

 

 

璃子「いや、そんなはず……」

 

 

 

教室に貼ってある予定表を見て確認するが、今日は校外学習でもなく、休みでもないことが書かれている。いつもの日の一日だ。外を見る

 

 

 

璃子「あれ……。校舎裏に何かいる?」

 

 

 

璃子がいる教室からは遠くてはっきりと見えるわけではないが、何かがいるのが見えた。人のような形をしているが、何かが不気味なものを感じさせた。遠くにいるのに、目の前にいるような、そんな違和感がある

 

 

 

 

 

 

 

校舎裏にいた何かに気になったが、それと同時にチャイムが鳴った。先生が教室にノロノロと入ってきてはいるが、どこを見ているのか分からない。あちこちと視線を彷徨わせており、酔ってしまったのか、千鳥足のようにフラフラだ。結局、璃子以外の生徒はやってこなかった。先生は勝手に1人で良く分からないことを話して教室を出て行った。「あ~あ~あ~」みたいな感じのことしか言っておらず、とてもじゃないが体調が良さそうには見えない。しかも璃子の言葉はまるで聞こえていないかのようにノロノロと歩いている。

 

 

 

璃子「……激務で疲れているのかな」

 

 

 

教員は忙しいと聞いていたが、あそこまでボロボロになるまで働いているとは……それとも酒を飲み過ぎたのか、家庭の事情とかだろうか? あまりに以上な事態に他のクラスの友達と話そうと思ったが、他クラスの人達は誰1人いない。おかしいなと思い、自分と同じ学年の教室を全て見て回ったが、誰もいなかった。外を見ると、下級生の教室に人がいるのが見える

 

 

 

どうしようかと思ったが、1限のチャイムが鳴った。先生が教室に入ってくる。自分以外の生徒がいないことがひどく気がかりだが、それでも授業は授業だ。授業料を払っている以上、せめてその時間は勉強に集中したい。璃子はそれが学生である自分に出来る最低限の親孝行だと思っているので、気になっていることをむりやり気にしないようにして、勉強に集中した(先生の言葉を聞いても授業にならないので、自習をした)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お昼休み

 

 

 

この時間なら調べることが出来そうだ。1人きりに教室で食べる昼食はとても不思議なものだった。誰もいない、これはこれで面白い体験だったが、話す相手がいないからか箸が進む。いつもよりも5分くらい早く食べ終えると、教室から外を見渡す。人が1人も見当たらない。異様な光景だ

 

 

 

璃子「……」

 

 

 

教室から見える限りの校外を見る。車やバスも道路を走っておらず、人もいない。まるでもうひとつの世界に閉じ込められてしまったような気がする。その発想にいきついた璃子は、ありえないと思っていても、事実この異常な事態を認識しているので、怖くなりしゃがみ込んでしまう。

 

 

 

これが噂に聞く受験のストレス? そこまで疲れは溜まっている気はないと思っていたが、まさかここまで疲れているとは……。職員室に行ってみよう

 

 

 

職員室に向かうと、教員達はいつも通り仕事をしていた。しかし、誰も一言も発していない。物音しか聞こえない空間で、時々何かを落とす音以外、大きな音は無かった。それがまた不気味さを引き立たせる

 

 

 

璃子「あの」

 

 

 

適当に近くにいる教師に話しかけるが、さっきと同じように全く反応をしてくれない。試しに近くにあった消しゴムで机を擦って消しカスを造り、教師に向かって投げてみるも、教師は避けもしないで、そのまま直撃を受けた。しかし、何事も無かったかのように仕事を続けている

 

 

 

璃子「ブラックなのか? 学校って……、ここまで動じないように精神を鍛え上げられているってこと?」

 

 

 

本当は自分がおかしなことに巻き込まれていることに気付いてはいるが、それでも意識したらまともに動くことが出来ないと直感した璃子は、それとなくふざけて落ち着こうとしている。職員室を出て、校舎裏に行こうと思ったが、誰かが校舎裏付近にいるのを見つける。遠くから隠れるように見るが、距離があって顔ははっきりと見えない。しかし立っている位置的に、もしかしたら昨日自分が見た友達の1人じゃないかと思ってしまう。声をかけようかと迷ったが、足元に何かスリスリとされていることに気付いた。

 

 

 

璃子「わっ!」

 

 

 

足元を見ると、そこには白猫がいた。黒猫は璃子の足をスリスリとして、目を合わせて「にー」と鳴いてきた。猫の可愛さを見て、少しだけ心を落ち着かせると、白猫はまた「にー」と鳴いて、どこかに歩き始めた。少しだけ歩くと、後ろを振り返り、璃子を見ている。

 

 

 

ついてこいということだろうか? 猫は人よりも聴覚が優れているところがあるので、もしかしたら自分では気づけない何かに気付いているのかもしれない

 

 

 

そう思った璃子は白猫の後をついていくと、校門前に出た。また振り返って「にー」と鳴いた後に、校門の奥を顎で指す

 

 

 

璃子「そこから出ろってこと?」

 

 

 

にー

 

 

 

返事があったが、それが璃子の答えを望んでいたのか分からなかった。しかしここで突っ立っていても何もすることはないので、試しにと校門を出ると、視界が徐々に白く染まっていく。何が何だか分からず、あちこち視線を彷徨わせていると、白猫の姿がないことに気付くが、気を失った

 

 

 

 

 

璃子「あれ……」

 

 

 

目を覚ますと、保健室のベッドだった。時計は既に5時間目に入っている時間で、近くにいる保健室の先生に話を聞くと、校門前で倒れていたらしい。それで保健室に運ばれたとのこと。倒れていたことを全く思い出せず、そう答えると、今日は早退させられるように言われてしまった。自分でもまさか倒れていることに気付けないほど、疲れが溜まっていたのかなと思い、素直に早退する。

 

 

 

下駄箱に向かうために階段を降りると、校舎裏に何かフェンスのような物が立っている。何事だろうと思って近くにいる先生に話しかけて聞いてみると、先生はとても気の毒そうな顔をして

 

 

 

先生「あそこで遺体が見つかったのよ」

 

璃子「は?」

 

先生「遺体よ。ほんと嫌になるわー」

 

璃子「え、は、遺体? なんで、誰ですか?」

 

先生「……」

 

 

 

先生はそれ以上話したくないようで、会話の途中なのにどこかに去ってしまった。改めて校舎裏を見ると、救急隊のような人たちが、制服を着た少女を車の中に押し込んで、どこかに走り去ってしまった。誰か分からなかったが、また数日たって学校に来ても、友達の1人が学校に来ていないことに気付く。

 

 

 

璃子はまさか……とは思ったが、深入りするのが怖すぎて、それを忘れるように勉強や趣味にのめり込んだ

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。