【弟が】うちの姉ちゃん一度寝たら起きないんだぜ!【こんなこと言ってる件】 作:破戒僧
第25話で裕一が話していた『ある計画』を覚えているでしょうか。
その伏線回収になります。
Side.裕一
某月某日、俺の部屋。
車座になって座る俺、明、信也の3人。
部屋のドアには鍵をかけ、万が一にも姉ちゃんに聞こえないよう、極力声を殺して話し合っていた。
議題は、少し前に2人にも話した……姉ちゃんがらみで立てている、ある計画についてだ。
「いいか明、信也、今回の計画はこうだ……中一の時に、転校してった俺達の友達がいたの、覚えてるよな?」
「ああ、いたな……比呂のことだろ?」
「確か、隣の県の親戚の家に引っ越しちまったんだよな」
「ああ、そうだ……そんでその比呂の家なんだけどよ、旅館やってるらしい。しかも、海の近く」
「! そうなのか」
「海の近くの旅館……水着か? それとも、温泉か?」
「あわよくば両方だ。つまりだ、今回の計画はだな……」
今度の連休を利用して、中学1年の時に転校して離れ離れになってしまった友達に会いに行きたい! 1泊2日で!
でもそいつがいるのは隣県で、しかも日帰りで行くのはちょっと遠い! 中学生だけで宿泊して遠出なんてできないし、やったら学校に怒られちまう!
だから頼む姉ちゃん! 車出して、あと保護者として一緒についてきてくれ!
旅館に泊まる宿泊代は俺達が出すから!
「……というわけだ。そして、家から離れたところで1つ屋根の下……ビーチでは水着を着て開放的になり、温泉では浴衣姿でまったりくつろぐ姉ちゃん……」
「それを、俺達がそこでいただくってわけだな! うおぉ、興奮する……!」
「一泊二日、旅先で美沙さんと思う存分、っ……!」
「……まあ、それでも姉ちゃんが寝てる間のことに変わりはねえんだけどな」
「それはまあ、な……」
「ああ、そこ今更気にしても仕方ねえよ……」
☆☆☆
そして、決行当日!
予想通り、こういうイベントに対して理解の深い姉ちゃんは、快く俺達の頼みをOKしてくれた。
しかも、『そんな子供に出させるほど鬼じゃないよ、自分の宿泊代くらい自分で出すって』とまで言ってくれたんだが……そこはどうにか俺達のわがままを通させてもらった。
……その代わりってわけじゃないが、色々とこっちも姉ちゃんからもらうもんもらう予定であるので……うん、いいんだよ全然。出すよ俺達で。
何だかんだで、俺達だけじゃなく、姉ちゃんも今日のことは楽しみにしてたみたいだ。海も、温泉も、どっちも好きだもんな、姉ちゃん。
日焼けは嫌がるから、サンオイルとか日焼け止めたっぷり塗るんだけど……それを毎度俺が頼まれるので、その意味でも姉ちゃんとの海は、毎年俺にとっての楽しみだったのだ。
今年の夏は、色々あって忙しくて行けなかったけどな。
しかし、今の時期は夏の終わり。
海水浴客もまばらになっていて空いてるし、海に行くタイミングとしては悪くない。
賑やかさって点では物足りないかもしれないが、気分が開放的になるにはいい条件のはずだ。
快晴の青空と、降り注ぐ陽の光、吹き付ける心地いい海風が俺達を待っている!
というか、ぶっちゃけ俺達としては、水着の姉ちゃんが見られればそれで……うん。
あわよくばその……遊び疲れてビーチチェアーあたりで眠ったりとかしてくれれば……うん。
そんな感じのことを考えながら、姉ちゃんの運転する車に揺られること、1時間と少し。
俺達は無事に県境を越え、待望の海水浴場に到着。
そこには……
……暗く淀んだ空と、しとしとと降る雨、夏とは思えないくらい肌寒くて冷たい風が俺達を待ち受けていた。
………………
……もう一度言おう。
暗く淀んだ空。
しとしとと降る雨。
肌寒い、冷たい風。
言うまでもないが、海には人っ子一人おらず、海の家も閉まっている。
「「「なぜだぁぁああぁっ!?」」」
「あー……そういや、本州には届かないけど、前線だか台風が南の方に急に来たってニュースで言ってたな……天気崩れちゃったか」
こうして、俺達の計画の第一段階……海辺で水着の姉ちゃんとキャッキャウフフな楽しい時間は、始まる前に終わりを告げたのだった。
☆☆☆
まあ、天気がダメだったもんはもう仕方ない。
切り替えていこう。
海で遊ぶ予定が丸々ダメになったので、予定を繰り上げて俺達はもう、旅館に行くことにした。
幸い、チェックイン可能時刻はもうすぐだ。車で移動中になるだろう。
念のために電話して、『予定より早くチェックインします』と旅館の人に伝えておく。
あと、もちろん……比呂にも、今から行くって伝える。
比呂に会いに来たっていうのも、れっきとした今回の旅の目的だからな。
1年ぶりに会うことになるアイツが、どんな感じになってるのか……楽しみだ。
海から近いその旅館には、ゆっくり運転してもらっても、車で10分もかからなかった。
フロントでチェックインの手続きをしていると、向こうの方から、エプロン姿の見覚えのある顔がこっちに歩いてきて……
「「「比呂!」」」
「久しぶり、裕一、明、信也! うわぁ……皆、全然変わってないな!」
「そういうお前も全然前のまんまじゃんか、背も伸びてないし」
「し、身長のことは言うなって言ってるだろ!」
そんな言葉通り……比呂は、転校していった1年前から、全然変わってなかった。
童顔で『かわいい』とよく言われる顔立ちに、小学生によく間違われるくらいに小柄な体。……見たところ、最後に見た時とマジで身長変わってないんだが……え、お前もう成長止まったの?
そのルックスゆえに、女子人気も高かったと言えばそうなんだが……かといってあの姿のままでいることは男としてどうなんだ、って考えてしまったのが、もう1年前のこと。
ある意味究極の選択だと、皆で真剣に悩んでしまったことを、今でも俺達は覚えている。
……その時のまま、こいつはマジで成長、止まったんだろうか……。このまま、見た目は子供、中身は大人、な感じの16歳とかになってしまうんだろうか。
「おい裕一、お前また変なこと考えてるだろ」
おっと、ばれたか。
苦笑いしてごまかそう。
しかし、それより先に、
「ごめんねー遅くなって。手続き終わったよ、裕一。……っと、その子がもしかして?」
「ああ、うん。こいつが今日会いに来た、友達の比呂。んで比呂、こっちが俺の姉ちゃんな」
「あ、え、あ……はい、その……海津比呂です。その……よろしくお願いします……」
「はい、よろしくね比呂君。私は裕一の姉で、田澤美沙。気軽に美沙さん、って読んでね。明君も信也君もそう呼ぶから」
にっこり笑う姉ちゃんの笑顔を見て、かあっと顔を赤くする比呂。
そして、その視線が一瞬、姉ちゃんの胸とか体にいって……すぐに戻る。気づかれないように、って感じの早業だった。おそらくは、無意識の。
姉ちゃんはその時、ちょうど俺達の方を見てたから、多分気づいてないが。
(おい、見たか明、信也?)
(ああ、相変わらずの早業だったな、そして正直な態度だ……変わってねえ)
(さすがは俺達のスケベ仲間だった男……腕は衰えてないようだ。それに、きっちり美沙さんに惚れたようだな)
俺達は知っている。
この、童顔でちっこいかわいい系の美少年が、俺達3人に負けるとも劣らない性欲をきちんと持っている、むっつりスケベであることを。
かわいい女の子にも、その体にも、興味津々であることを。
そして、その性質が今なお変わっていないことを、今のリアクションを見て確信した。
今回の計画、肝になるのはこいつの協力の有無だったが……
(((これなら……行ける!)))
☆☆☆
その後、チェックインやら何やらの手続きを全部済ませた俺達は、それぞれの部屋に入った。
さすがに、姉ちゃんと同じ部屋に泊まるとかそういうわけにはいかないので、俺と明と信也の3人で大部屋を1部屋、姉ちゃんには小さめの部屋を1人で使ってもらうことになった。
そして俺達は、その大部屋に……比呂を呼び出して、ある相談を持ち掛けていた。
「ま、マスターキーを持って来いって!? 何で!?」
「正確には、マスターキーじゃなくていい……姉ちゃんの部屋の戸を開けられる鍵であれば何でもいいんだ」
「頼む比呂、こんなことお前にしか頼めないんだよ!」
「いやいや無理だって! 信用が命の客商売でそんなことするわけにはいかないよ、いくら裕一達の頼みでもさ」
「そこを何とか! ……お前だって、姉ちゃんの体に興味あるだろ?」
「……!? どういう、こと?」
興味を隠しきれず、食いつき気味になった比呂に話して聞かせる。
俺の姉ちゃんは、一度寝ると何をしても……それこそ、寝てる間にセックスしても起きないくらいに眠りの深い体質であること。
それを利用して、俺達はたびたび、姉ちゃんの『お世話』になっていること。
この旅行の目的は、普段なかなかそういう機会のない姉ちゃんと、一つ屋根の下に外泊して思う存分『そういうこと』をするというものだということ。
残念ながら海で遊ぶ予定はおじゃんになっちゃったけど、それでもまだチャンスは残っている。(色々な意味で)本番は今日の夜だということ。
そして、比呂に頼みたいのは……夜、姉ちゃんが寝静まったころに夜這いをかけるために、姉ちゃんの部屋の鍵を取ってくることだということ。
そして、その報酬は……寝ている姉ちゃんとのセックスだということ。
案の定、見た目は人畜無害、中身は立派な性少年である比呂(しかもこいつの好みは年上のお姉さんだったはずだ)は、降ってわいた童貞卒業の機会に、激しく動揺して迷っていた。
良心と、旅館手伝いとしての矜持……それと、体の奥底から沸き上がってくる欲望や本能の間で戦っている。
俺達3人は、精一杯甘言令色だまくらかして誘導しようとしたものの……いかに健全な(不健全でもあるが)少年の夢とはいえ、こんな風に姉ちゃんをモノ扱いして性欲を発散しようとする行いに加担するのは、さすがに色々ためらってしまうようだ。
くぅっ……予想以上に理性が強固だな……でも、間違いなく興味は持ってる。
何か、何かあと一つ後押しになるようなものがあれば……
……その時。
―――がらっ
「お邪魔しまーす。あれ、比呂君もいたんだ?」
「あれ、姉ちゃん……え? その恰好……」
「あ、み、美沙さん、お風呂入ったんですか?」
明がどもりながら言った通り……姉ちゃんはどうやら、先にというか、部屋についてすぐに風呂に入ったらしい。
体からほかほか湯気が上がっていて、髪の毛はしっとり湿っていて……その体は、普段着じゃなくて浴衣に包まれている。
薄い布の向こうに、結構体の線が出てるところを見るに、恐らく、あの下はそのまま下着か、それとも……い、いや、そんなまさか……
いやでも、姉ちゃんならあり得る、かも……? 何せ、夏祭りの時に『浴衣は下着はつけないのが正しいんだよね』って、ノーブラノーパンで外に出るような姉だ。
……あれ、ホントは別にそういう決まりも風習も何もないらしいんだけどな。地域によってはそういう考え方のところもある、程度で。
そんな、お風呂上がりで色気たっぷりの姉ちゃんの姿を、比呂はあっけにとられた様子で眺めていた。
かと思えば、何の前触れもなく、唐突に体育座りになった。理由はなんとなくわかるが。
その後、姉ちゃんが『夕ご飯いつ食べに行く?』とか、特にどうでもいい雑談を終えて帰っていった後……比呂は、気持ちを落ち着けるように、ゆっくりと深呼吸した。
……そして、
「……裕一」
「何だ、比呂?」
「……さっきの話、嘘じゃないんだよね? 美沙さんが寝たら起きないって言うのも……もし条件をのめば、美沙さんを、そ、その……僕も……」
「ああ、もちろんだ。中学生男子に二言はない」
「…………わかった、裕一」
「…………」
「鍵……何時頃、持ってくればいい?」
それでこそ、わが親友だ……!
「それでこそ、我が弟とその友達だ」