…………水の滴る音が響いた───
『俺』が『私』になったあの日のことだ
魔族戦争と呼ばれる出来事があった
つい最近まで起きてた戦争だ。転生前に良く聞いてた魔王と勇者の話のような、英雄譚のようなものだ
──普段ならそう聞く。だけど、それは勇者が魔王を倒すという、基本的な流れがあるからだ
だが、当事者──魔族側だったらどうだ?
勇者という存在に恐怖しか抱けない。何せ、魔族は触れられただけで死ぬ聖剣を持っているのだから
無論、普通の武器でも死ぬ時は死ぬ。野山や平原、洞窟にいる魔物がそうであるように、魔族も死ぬ時は死ぬ
故に、魔王は人間とハーフを作ろうと越起になった。聖剣の対抗策である、聖剣に触れても死なない魔族──デミデビル
強い光の力を持つ聖女を健常なまま、魔族との子を成せば、聖剣の光が効かない魔族が産まれる。人間の生命や精神、力では死なない、穢れない、究極の魔族を
魔王は変装や変身、姿形を変えながら聖女に接近し、聖女を見事騙し切った
そして聖女と両思いになり、身体を重ね、重ね、重ね、重ねた
やはり種族が違うと子を成しにくく、何度も身体を重ねても聖女に子が宿る事はなかった
持ち前の慈愛で魔王に焦らなくても良いと聖女は謡うが、魔王はそうもいかない
魔族との戦争が始まれば聖女から離れざるを得ない。そうなったら子を産ませることも、ましては宿すことすら……と
魔王は考えた。考えた末にたどり着いたのは──魔王の膨大な魔力で肉棒を作り、身体を重ねて子を成す事だった
バレるだろうが、子は間違いなく究極の存在となる。魔王が聖女の元から離れても、聖女の中に子が宿り、産まれると
魔王は実行した。そして、成し遂げたのだ
マジックアイテムと謡い、それをつけて身体を重ねた。聖女も重ねているウチに行為の気持ちよさと神聖さに身を委ね、魔王を受け入れていった
そして月日が経ち、無事子が宿る
街で祝福され、国をあげてまで祝福された。聖女が選んだ者との子だ。さぞ、良い子に育つであろう。そうであれと、幸あれと
聖女の孕が大きくなり、出産も間近になった。魔王は着々と準備を整え、戦いの火蓋を開けるのを待つだけとなった
出産の日、聖女から呻きと苦しみ、そして産ます為に精力をつくした聖女は、無事子を産んだ
白い髪──魔王の子を
忌み子を
聖女はそれでもと言い子を抱き、祝福した
祝福で苦しまないなら、人の子だ……と
魔王は子がある程度育つまで待った。6の年月──5歳になるまでだ
戦いの火蓋が開けられた
魔王は聖女と子を攫い、魔王城まで移動。子を聖女に育てさせた
そしてさらに6年が経った。子も11となり、戦いも終盤へと傾いた
勇者が1年前に現れ、瞬く間に魔族が駆逐されていった
聖女を取り戻され、子だけを連れて魔王は古城へと逃げた
集まった魔族に子を見せて希望を与えて活力を取り戻させ、勇者へとぶつけていった
尽く魔族が滅ぼされ、古城に勇者が来た
逃げ場が無くなった魔王は勇者とぶつかり、聖剣によって討ち滅ぼされた
私はその場から逃げたんだ
勇者のあの、殺意に満ちた目から
あの日から姿を隠し、1年経った
魔物を狩り、ギルドに討伐報告と証拠を見せて稼ぐ野宿の日々
臆病な私ができることは、多い魔力にものを言わせて撃つ魔力弾で仕留めるぐらいだ。転生してから1年……実際は12年は経ってるが、記憶が無い
いきなりファンタジーの世界に転がり込んだ一般人でしかない。そんな自分ができる事なんてたかが知れてる
ただ、魔力というのを感じ取れてからは簡単な魔物討伐や狩りで稼いで、路銀を稼いでいた
だが魔王がいなくなり野獣や動物──魔族や魔物とは関係ない生物が出てき始め、魔物の討伐と狩りで稼いでいた私の路銀は底を着いてきた
そして今日、最後の晩餐とも言える食事が終わった
(…………どうしよ)
街をほっつき歩いて模索するが、何も思いつかなかった
着ているコートも服も靴もそんなに高いわけでもなく、普通に安い有り合わせで済ましている為、売っても二束三文にもならないだろう
…………答えはシンプルだった
街中に堂々とある、大きな娼館だ。昼間は閉まっており、入れるのは夜の8時から12時までで、貴族やお得意様が来て、満足していく程……との噂の娼館だ
一般人ですら入ったら、満足してしばらく体調も調子も良くなり、バリバリ働くようになった……と
胡散臭いこの上ないが、稼ぐならもう……ここしかない。
昼間でも店自体は空いており、予約や娼婦達の休憩時間で出入りしてる
……この容姿なら売り込めるんじゃないか?という謎の自信があった
「良いですとも!貴女なら歓迎しますよ!」
軽く話し合ったら快く入れてくれた。私の容姿がやはり1番効いたと思う。それとも前世の社畜精神が異世界でも効いたのか
「では、お得意様をおひとり呼びます。貴女は準備を済ましてくださいね?来るまでに時間がかかりますので、それまでごゆっくり準備をしてください。分からないことがあったら世話係に言ってください」
店主はそう言い、手紙を書いていた。伝書鳩を利用するとは……流石はファンタジー
世話係の女性に着いていき、説明を受けた
──なるべく優しい人に、初めてここで娼婦として働く人と会わせて、ゆったりとヤる。男の人がヤりたいようにやる為、為すがままで気を張らないでおく事
──終わったら掃除とか風呂とかは世話係がやる。片付けとかしなくて良い
という感じだ
……12で処女が無くなる。ここまで来た以上は、覚悟を決めなきゃいけない
部屋は綺麗で、マンションの一室まるまるレベルの広さをしていた。外観は大きめの宿舎というレベルだが、中はかなり広いようだ
複数人用の場所もあるそうだが、お呼ばれされたくないね
……とはいえ、お得意様が来るまで裸で居る必要があるのはきついものがある
主に羞恥心で
お得意様が来るまで30分をきった。トイレは大丈夫、事前情報も世話係の人から聞いた
どうやら、お得意様の息子の初の娼館だそうだ。何人か彼女がいるらしく、その全員が彼との結婚を考えるレベルで優しく、そして彼女達も満足するほど……良い、と
…………めっちゃ不安。初めては誰でもって言うけど、外見は12のロリだ。感覚が違う
私以外は全員、若くても16だそうだ。未亡人になった人や金が無くて……という人が大半だ。私もそうだ
なお史上最小年齢で来たのは私だけとの事。奴隷か孤児院が大半で、そこからギルドでクエスト行ったり、冒険者になったり、炭鉱夫や鍛冶や木こりや……となっていく
こんな所に来る奴なんて私だけだろう。自慢になんて出来ないが
調合された魔法薬ピルを飲む。避妊効果100%なだけあり、そこそこ値が張るのだとか
──時間になった
開店30分前になったら、この部屋に来る
心臓が脈打つ。息が小声、声か震えるようだ
これから来る男を、自分の未成熟な性器の中に入れる
怖い、もあるが緊張、もある
恐怖とプレッシャーで表情が暗く映るかもしれない。だけど、そこは我慢してもらおう
扉が空いた
「よう……こそいらっしゃいました。此度はお相手させていただく、アンリと申します。よ、よろしくお願いします……っ」
「よろしく。私はギーダルだ、ここに来るのは初めてだから……お互い様かな?」
思いの外、聞いた話以上に優しそうだった