目が覚めた時、あの時の目が忘れられなかった
行為中にアンリの目が光り、僕を求め言葉を発した時の目だ
(まさか……魔王の力か?)
そうではないと信じたい。魔王は僕がこの手で殺した筈だ。いくら娘だとしても……いや、ある
何せ魔王だ。何かを仕込んでいてもおかしくは無い。一番長く魔王の近くにいたんだから、有り得なくはないだろう
伝書鳩でギーダルに相談があると書いた紙を持たせて飛ばす。早いウチに動かなければ怪しいからだ
あいつが儲かっているのは何も貴族だからって理由以外にもある
あいつは僕と一緒に魔族戦争を戦い抜いた魔術師だ。魔法薬ピルもあいつが作った物だ。製法を知っているからこそ、生産して販売も容易にできるし、それで食って行ける程儲けもあるから貴族でいられる。何せアンリもそうだが、娼婦からの人気が高いからこそ、娼館からはお得意様扱いされているんだろう
主に商売相手としては破格の物を売っているのだから、喉から手が出る程欲しい物を息を吸うように作り、売り出しているのだから
魔王の魔力で僕も充てられてしまったのか、ありえない量を出してしまって、アンリが妊婦みたいな状態にしてしまった。暗示の類かと思ったが、女魔族特有の搾精がハーフであるアンリには許容範囲を超える程の内容だったのだろう
……最悪、魔法薬ピルが無いタイミングで魔力に充てられて搾精されたら、アンリは妊娠してしまうかもしれない。魔王と姉の状態を思い出すと、根本的に種族が違うから妊娠するのにかなり工夫をしたらしく、ある意味魔王と姉が共同で妊娠できるように努力した結果、アンリが産まれたような感じだろう
魔族とのハーフだから安心かもしれないが、半分は人間だ。妊娠する確率も半分はあるということだ
僕が寝てる時にやられてしまえば、僕も搾精され尽くされれるだろうし、アンリも妊娠……所じゃない。お腹が破裂してしまうかもしれない
由々しき事態だ……と思ってたら早い返事がきた
どうやら街で商談してたらしく、すぐに宿屋の食堂に行くとの事
まだ寝ているアンリの頭を撫でて、起こさないように借家を出て食堂に行く
同時にギーダルも来て、宿屋の一室を借りて、腰を落ち着けて、さっきの内容を話す
「それはやばいね。魔王がどうやって聖女を妊娠させたかが分かれば解明できるかもしれないが……」
「姉さんは各地の教会を巡っている。運良く来ていれば良いが……」
「アンリちゃんが知ってるかもしれない」
「……お前に会わせたくはないが、清濁を併せ飲む事にする」
「嫌われたモノだね。まぁ仕方ないけどね」
「鳩にもうひと仕事してもらおうか」
僕らは借家に行き、起きたばかりのアンリと話す
「アンリは魔王がどうやって妊娠させたか知ってるか?」
「あ〜……」
心当たりがあるようだ。それに昨日の事も思い出しているようで、言葉を濁しながら言った
「魔力……だと思います。強大な魔力なら、できなくはない……のではないでしょうか?」
「理に叶ってるね。魔王程であれば、行為しながら相手の子宮を魔力で弄る事は容易いのかもね」
「……出産してから半年は過ぎてたにも関わらずしばらく姉さんが体調不良だったのは、魔力が原因かもしれないな」
「だろうね。現在は推理する材料が足らないけど、魔王ならではの手法なら、と言ったら魔力だからね」
スラスラと話しが結びつき、どういうのを作れば良いかを決まる
「魔力を抑える薬だね。私の方で売ってるのをいくつか置いていこう。過剰魔力で爆発させて手が吹き飛ぶとかを起こさせないようにする奴がある。魔力の扱いに慣れてない子供を持つ親が良く買っていく物だ」
そう言って持ってきてたバッグから瓶を取り出して、テーブルに置いていく
「収まるかどうかは分からない。何せ魔王の魔力だ。我々人間の枠に収まらないだろう。……いや、君も人間だ。だが、魔王の魔力は底がしれない。アランが速攻で強襲し、一気に斬らなければ聖剣があっても倒せるか分からない相手だ。そんな存在の魔力が、君の中にある」
珍しく神妙な顔で言うギーダル。こいつがそんな顔をしたのは魔王と戦う前ぐらいだ。アンリを見つけた時も同じ顔してたかもしれないな
「いつ暴走するか分からない。これで少しは持つ事に賭けよう」
そう言い、取り出したのは赤い液体が入った瓶だ。大きさ小瓶で、小型回復薬ぐらいの容器に入ってる
「これは魔物の血液から取れた魔力で作った、いわばピュアブラッド……魔血薬だ」
「劇薬か?」
「1滴ですら劇薬だよ。だけど、魔力が枯渇している人に垂らしたら回復した。しばらく魔力が暴走してたから抑制薬を飲みながら生活して、今は落ち着いてる」
「で、魔力がある人間に垂らしたらどうなる?」
「しばらく魔力を使えなくなる。枯渇じゃなく、抑制される」
「だけど、劇薬だろう?どんな副作用が出るんだ?」
「薬が切れたら暴走する。殺人犯に使ったらしばらく魔法が使えなくて絶望してたよ。そして4日たったら暴走して、破裂したよ」
「……使わせられないな」
「そうだ。だからこれは最終手段だ」
そう言って僕に魔血薬3つと抑制薬を4つを渡してきた
「……なんで3つも寄越した」
「耐久もしたからだよ。さっき言った殺人犯とは別のやつに、魔血薬と抑制薬を交互に飲ませせて、いつ破裂するかを確かめた」
「人の心無さすぎないか?お前」
「死刑囚だからね。新手の拷問か何かとして行った治験だよ。3週間は保ったよ。そのあと破裂したけど」
「……」
ギーダルを睨んだ。流石に劇薬にも程があるだろう
「だが、魔物には抑制となった。行動が出来なくなり、その場で薬が切れるまで眠り続けたんだ」
「それで?」
「起き上がったら特に普段と同じように動物を狩りをしていたよ。抑制……というより、睡眠薬になった感じだね」
「……魔王の魔力と相殺できるかもしれないと?」
「そこに賭ける。何せ治験対象がいないからね」
と言って、ギーダルは借家から離れて行った
直後に伝書鳩が飛んできた
内容を読んだ僕は、最悪な物語を読まされた気分になり、鬱になった
(……)
ぼーっとしていく頭の中で、何かと向き合っている気がした
(……赤い薬)
赤い薬。この事が頭から離れない
(薬を飲め)
何とか起き上がった身体で、抑制薬を飲み干す
(……)
声が止んで、意識がはっきりしてくる
「……」
夜空が見える
鏡に映った私は、
まるで悪魔のようだ
魔王として目覚めたら、君があの子を殺すんだ。聖剣は、その為に持っているんだろう?
──君も薄々、わかっているんだろう?もう、手遅れかもしれないって