アランが斬りかかり、アンリは回避する
転がってもすぐさま起き上がり、突きを放つ
──が、しかし
「甘いな、勇者」
アランの腕に鋭い爪で刺し貫かれて悲鳴を上げる
「あぁ!」
アランは咄嗟に聖剣で切り払うが、聖剣は爪によって弾かれる
「まだだ!」
「ぐぅ……!」
アランは無理な動きをしたせいで血を吐いて膝をつきながら、アンリの胸元目掛けて飛び込んだ
「アラン……ッ!」
「貴様には、僕の全てをかけて殺し、アンリを救う!」
「貴様は、私が殺す!」
「あぁ!」
アンリはアランの首筋目掛けて爪を振り上げ、襲いかかる
アランは聖剣で防御した
「死ね、勇者!!」
──が、しかし
「アンリィィ!!」
アランは絶叫した
聖剣は押し弾かれ、アンリの爪で腹部を刺されて、内臓を破裂させる
「……がぁぁぁ……ぁぁぁあああああっ!!!!」
アランはそのまま力尽きた
「……………」
アンリは、アランの死体を眺めていた
「勇者………か。呆気ないな」
嘘
アランは負けちゃった
「勇者は死んだ。これで世界は我々の物だ」
…………
「喜べ。殺したのは紛れもなく、私らだ」
………違う
「……なに?」
「な……に……?」
(なんだと……!?)
「馬鹿な…!主導権は私が握ってるはず……!」
ねぇ、かみさま
ねがってもいいですか?
ゆうしゃさま
あなたに
力を
「ぐふはぁ……!!」
アランは剣を地面刺して支えにし、立ち上がる
「……致命傷だった筈だ」
「知らない……な。だが、今の僕なら……いや、俺なら!!」
聖剣がひとりでに強く輝き、アランを包む
「……アンリの声が聞こえたんだ。力を貸してくれたんだ!」
光が収まり、傷が塞がったアランが聖剣を構える
「ォォォォォっ!!」
アランは走り、聖剣を振りかぶる
「チィ……っ!」
振り下ろされるより早く腕を振るい、爪で切り裂こうとする
下段に構えたアランによって弾かれるが、空いた方の手で腹に向けて突きを放つ
それを素手で掴まれた
「貴様ァ……!?」
「アンリを返して貰うぞ!」
「勇者ァ!!」
何とか振り払ったアンリは距離を取り、魔力の塊を只管アランに向けて放つ
苦も無く走りながら弾いて近づいて来るアランに魔王は焦り出す
「なぜ退かない……!」
「ここまで来て引き下がれるか!」
「大人しく死ね!」
「お前がアンリから離れたら考えてやる!」
「出来ぬ相談だ!」
近づいて来たアランに蹴りを放ち、距離を離して魔力を放ち続ける
何故だ……!?
何故退かない!?
「アランは、勇者だから」
私がお前から離れれば、お前も消える!
「知ってる。貴女は私の未練」
違う!私はお前だ!お前の魔王としての力だ!
「……俺の未練だよ。転生前の未練だ」
違うだろう!!我々が望んだ事だろう!?
「ああ……俺は現実に疲れ、自殺したんだ」
だから人間共を……!!
「だけど、なんで自殺したのに生きてるんだろうな……て」
……や、やめろ!貴様!
「ああ……アラン……君の聖剣で……」
アランが聖剣を構えて魔力の波を突っ切って来る
「勇者ァァァ……ァァァァァァ!!」
腕に魔力を纏い、飛び込む
「魔王ォォォォォ!!」
突きを放つ
一瞬、魔王の動きが止まった気がした
アランはその隙を見逃さなかった
突きを放った聖剣が、アンリの胸に吸い込まれるように、穿いた
「アンリ……?」
「……ありがとう」
聖剣が抜け、アンリの胸から血が吹き出た
「ああ……ああああああああぁぁぁ!?」
魔王の断末魔が響き渡る
「………アンリ……」
アランは、アンリから吹き出た血で呆然とし、魔力が霧散していく光景と倒れるアンリを見続けていた
「………」
ふざけるな!何故だ、何故だァァァ!!
「俺達ば死者だ。夢はこれで終わりだ」
貴様は良いのか!?この体が、この世界が!!
「死んだ俺達がどうこう言っても始まらない。未練もあるが……でも、これで良い」
ああああああああぁぁぁぁぁ……
「アラン…………」
──救ってくれて、ありがとう
「僕は……救えなかった……のか……」
血塗れのアンリを抱えたアランは、涙を拭かず、顔を上げる
アンリの顔は、笑顔だった
アンリの死を悼んだアランは、魔力で包まれた死体を抱え、自宅まで運んだ
聖女とギーダルは、痛々しいその背を追えなかった
「アラ……ン……?」
アンリの死体がベッドに寝かされている隣で、アランは首を吊っていた
─僕は助けられなかった
アンリが死んでしまった
笑顔なのは、魔王から解放されたからだろう
だけど、僕の日常にアンリがいない
アンリがいない日常なんて、僕には考えられない
姪を殺した叔父が、勇者な筈がないんだ
……ダメな叔父でごめんな、アンリ
僕も向かうよ─
「あの……馬鹿野郎がァ……!!」
ギーダルは、遺書を握りつぶした
ああ、最悪な夢だった……
永い、永い夢を観ていた気がした
まるで、異世界を冒険したような……
エッチな事をしたような……
残酷な結末を迎えたような……
僕の両手が血で濡れてた気がした
生温い、最愛な■■■の血で
木が軋む音が聞こえ──
そこで目が覚めた
思い出しても、思い出しても、両手が血で染まった事が脳裏から離れない
■■■が笑顔で死んでいた光景が、ずっと僕の首を絞めるように焼き付いているんだ
ああ……■■■……
僕を見ててくれ──きっと、