まだ飲む、と言ってきかないいろはと由比ヶ浜をなだめて就寝の時間となったのは、あれからもうしばらく経った後だった。
俺たちが泊まるのは旅館の一室である。が、襖で仕切られているので実質二部屋あるようなものだ。
なので俺が一人、別室で寝ればいいと思っていたのだが。
「せんぱい、せんぱい」
どういうわけか「当然カップル同士の部屋割りにするよね?」という話になり、隣の布団からは蕩けた目が俺に向けられている。薄闇の中で甘ったるい声を出されると堪らないものがあるのだが、当の本人に自覚はないだろう。
「そっち行っていいですか?」
「なんでだよもう寝ろよ⋯⋯」
せっかくなだめすかして寝る流れを作ったのに、こいつはどうしてこうも元気なのか。だんだん酒に強くなっている気がしないでもない。
俺は明らかに否定と取れる返事をしたつもりだったのだが、いろはは身体を引きずるようにしながら俺の布団に入ってきた。行燈に照らされたいろはは蠱惑的に微笑むと、そのまま唇を重ねてくる。
「んー⋯⋯っ、んちゅぅ⋯⋯」
そしてさも当然かのように、舌まで差し入れてきた。音でバレたらどうするんだと思ったが、執拗に絡みついてくる舌が離してくれない。
「⋯⋯っ。何してんだよ」
「したかったから、しただけです」
小声で諫めると、まったく反省のない声が返ってくる。
酔うとすぐ、こういうことをしてくるのだから困ったものだ。特に今日みたいに行為に至ることができない日にやられると、生殺しもいいところである。
「寝るぞ」
「はぁい」
緩みきった声で言うと、いろははちゅっと頬を
腕に押し付けられる柔らかさを意思の力で無視して、俺は目を瞑る。いや意思の力を借りている時点で全然駄目なんだよなぁ⋯⋯。相変わらず柔らかい⋯⋯。
「⋯⋯ぁ、ん⋯⋯」
そんな頭の悪いことを考えていたからだろうか。
くぐもった艶めかしい声が、聞こえた気がしたのは。
「⋯⋯」
「⋯⋯」
幻聴か? と思っていろはの方を見ると、驚いたような表情を浮かべた顔に迎えられる。
夢でも空耳でもない。ということは──。
「⋯⋯って、⋯⋯きのんっ。あぁ⋯⋯っ」
「⋯⋯いいわよ。⋯⋯い」
つまり、襖の向こうで、何かが始まっていた。
マジかあいつら⋯⋯。こっちは必死に我慢してたというのに、この状況でするのかよ⋯⋯。
「⋯⋯聞こえました?」
「ああ⋯⋯」
耳にキスするような近さで、いろはが囁いた。俺が頷くと、いろはの口角が上がる。
その表情には、残念ながら見覚えがありすぎた。どうしようもないぐらい、悪いことを考えている時の顔だ。
「⋯⋯ぅお」
思わず声が出てしまうほど、それは唐突な感覚だった。いろはが浴衣越しに、俺の股間に触れたのだ。
「あれ、まだ大きくなってませんね」
「おま⋯⋯何考えて、う⋯⋯っ」
俺の言うことはとことん無視して、いろははスリスリと浴衣越しに性器を愛撫してくる。こんな状態で行為に及べるはずがないと言うのに──。
「あ、もう硬くなってきた」
⋯⋯普通に勃起してしまっていた。
毎度のことながら、自分の性欲の強さに呆れるしかない。しかも今日は溜まっている上にいろはと一緒に風呂に入ったりしたものだから、辛抱たまらないものがある。
「⋯⋯あっ、んあぁ⋯⋯っ!」
「⋯⋯向こうも盛り上がってきたみたいですね」
耳を澄まさなくても由比ヶ浜のものと思しき喘ぎが聞こえてきて、いろははくすりと笑う。すると何を思ったのか、モゾモゾと俺の布団の中に入ってきた。
「な⋯⋯っ、おい」
「んぅ⋯⋯んちゅぅ⋯⋯」
いろはは酔っ払いとは思えない手際のよさと力で浴衣の中から下着を脱がせてくると、パクッとソフトクリームでも食べるみたいな気軽さで肉竿を咥えてくる。温かな口内で、俺の意思に関係なく肉棒が反応した。
「ん、はぁ⋯⋯んっ、れろっ、んぅ⋯⋯♡」
いろはは音を立てないようするためなのか、ことさら丁寧に俺の陰茎を舐めまわす。布団を軽くめくると、行燈の明かりを照り返す肉棒といろはの唇が見えた。
「う⋯⋯はぁ⋯⋯」
ねっとりとした快感に、俺の中からいろはを止める気力が抜け落ちていく。
アルコールが入っているというのもあるし、いろはのフェラチオが気持ちよすぎるというのもある。非日常の中で感じる本気のスリルに、ビリビリと身体の芯が痺れていた。
「んぅ、んん⋯⋯」
「いろは⋯⋯」
その髪を撫でると、いろはは俺のペニスを咥え込んだまま嬉しそうに目を細める。その瞬間快感のボルテージ一気に上がって、びくんと肉竿が反応した。
「んちゅっ、ん⋯⋯、はぁ、ん⋯⋯っ」
「⋯⋯ぁあっ、そこ⋯⋯めぇ⋯⋯っ♡」
いろはの濃厚なフェラチオの音に、由比ヶ浜の喘ぎ声が混じる。まったく、なんて状況だ。そう思っているのに射精感はやたらに募ってくるのだから、俺も人のことは言えない。
たった数分のフェラチオで、俺の肉竿はあっという間に射精の
「うぁ、あぁ⋯⋯。いろは、もう出そうだ⋯⋯」
「んぅ、ん⋯⋯。いいですよ」
いろはは男性器から口を離すと、仰向けになっている俺の横に寄り添った。シコシコと硬くなった肉竿をしごきながら、耳元で囁いてくる。
「出す時はお口と手、どっちがいいですか?」
「は、あぁ⋯⋯。口で頼む」
「ふふっ。はい♡」
いろはは妖しく微笑むと、また俺の脚の間に戻ってビクビクと脈打つペニスを見る。カウパーを垂らす鈴口をちろっと舐めた後、またその可愛らしい唇の間へと男根を咥え込んだ。
「んぅっ、んっ、んん⋯⋯っ」
さっきよりも大きくなった水音が、隣に聞こえやしないかとドキドキする。背徳感と性感の高まりに合わせて、生殖液が出口を求めて尿道をせり上がっていく──。
「いろはっ、出る⋯⋯っ! う⋯⋯っ!」
「んんっ⋯⋯! んっ、んぅぅ⋯⋯っ」
びゅるるるぅぅうぅうぅっ!! びゅっ、ドピュッ、ビュクびゅくっ!!
俺はいろはの頭を両手で抑えながら、熱く滾ったザーメンを発射した。
しっかりと絡みついてくるいろはの舌を肉棒で感じながら、その口内にザーメンをぶちまける。ずっぷりとペニスを咥え込んだいろはを見ていると、なかなか射精は収まらない。
「んぅ、ん⋯⋯っ」
ビュッ、びゅるるるっ、どぴゅっ! びゅるるるるぅぅっ!!
目をつむったいろはの口内で、最後の一滴まで精液を吐き出していく。いろはの口の中で射精してしまうのは初めてだったが、膣内で射精するのと遜色ないぐらいに気持ちよかった。
「ん⋯⋯。いっはいれまひた♡」
いろはは射精の終わったペニスから口を離すと、んべっと口内に出された精液を見せてくる。大量に射精してしまったらしく、いろはの舌がザーメンで溺れそうになっていた。
「ん⋯⋯っ」
そして、何を思ったのか。
いろはは口を閉じると、こくんとその白い喉を鳴らした。
「んっ⋯⋯、はぁ⋯⋯。すっごい匂いですね、これ。ゼリーみたいに濃いし⋯⋯」
「いや、おま⋯⋯。え? 飲んだのか?」
「はい」
ほら、とでも言うように、いろはは再び口を開けて空になった口内を見せてくる。さっきまでそこにあったザーメンは一滴も残っておらず、血色のいい舌がその事実を証明していた。
男が口内で発射した生殖液を、女性が飲み干す行為──いわゆるゴックンをしてもらえるとは想像してもいなくて、胸の高鳴りが抑え切れない。
「やっぱり、まだ元気ですね」
「あぁ⋯⋯っ。⋯⋯きのんっ、だめっ⋯⋯あっ」
何度言われたか分からない言葉に、喘ぎ声が覆いかぶさってくる。こんな状況にもかかわらず、俺の肉竿はガチガチに硬いままだった。
「ちゃんと持ってきてますよ」
いろははそう言うと、鞄の中身を探って避妊具を取り出した。いつもどおり箱で用意しているあたり、いろははどこまで想定していたんだろうと思ってしまう。
「入れたい、ですよね?」
そう言いながら詰め寄ってくるいろはの浴衣から、胸の谷間が覗いている。ごくりと生唾を飲み込んでしまえば、俺は頷くほかなかった。
「⋯⋯声出すなよ」
いろはは目尻を下げてこくっと首肯すると、包装から出したコンドームを俺の肉竿に装着していく。
以前生で致してしまった際に妊娠はしていなかったが、当然それは避妊しない理由にならない。今日は安全日でもないはずだし、今日のいろはは酔っていてもそのあたりの判断能力までは失っていないようだった。
「入れるぞ」
「はい⋯⋯」
小声でそう言うと、いろはは同じぐらい小さな声で返事をする。そんな秘め事の一つひとつに興奮しながら、俺はいろはの中に入って行った。
「ぁ⋯⋯、ん⋯⋯っ♡」
俺の肉竿が最奥に届いた瞬間、いろはの唇から甘い喘ぎが漏れた。聞こえてないよな? と心配になりながらも、膣内に挿入されたペニスはびくんびくんと派手に暴れまわっている。
久しぶりだし、入れているだけで充分に気持ちいい。だからと言ってじっとしていられないのが、男の
「ん⋯⋯、ぁ⋯⋯っ♡」
ゆっくりと腰を動かすと、またいろはの喘ぎが溢れる。いろはの最奥まで入れ直してじっとしていると、相変わらず襖の向こうからは断続的な喘ぎが聞こえてきていた。
「⋯⋯はぁ」
「あぁ⋯⋯、あぅ⋯⋯♡」
小さく息を吐くと、俺は抽送を開始する。ぐぐっと奥に突き入れると、またいろはの口から官能の声が漏れた。
こんな調子では、雪ノ下たちに聞こえてしまうのも時間の問題だろう。そうは分かっていても腰振りは止められず、徐々にその動きは大きく大胆になっていく。
「あぁっ♡」
今のは流石に聞こえたんじゃないか。そう思って腰を止めて耳を澄ますと、ひそひそと愛を囁き合うような声が聞こえてきていた。⋯⋯たぶん、大丈夫だろう。
「あんま声出すなよ」
「だってこれ、感じちゃ⋯⋯ん♡」
それ以上言うな、と俺はいろはの口を手で塞ぐと、また腰の動きを再開させた。
なんだかこうしていると、レイプでもしているみたいだなと思う。それにしては被害女性の顔が蕩けすぎているし、やられっぱなしのタイプではない。
「んちゅ⋯⋯、れろっ⋯⋯」
いろはは両手で俺の手に触れたかと思うと、中指を折りたたんで口に含んだ。いわゆる指フェラ状態になると、陶然とした目で俺を見上げてくる。
本当にこいつは、どこまで俺を狂わせれば気が済むのだろうか。自然にセックスの動きが加速して、段々と射精を堪え切れなくなってくる。
「は、ぁぁ⋯⋯。いろは、出すぞ⋯⋯っ」
「んぅ、んちゅ⋯⋯、んんっ♡」
いろはは俺に口を塞がれた状態のまま、こくんと頷いた。それを合図にして、俺は音が鳴らないギリギリの速さと強度でいろはの奥を突く。
「はぁ、はぁっ、あぁ⋯⋯っ、出るっ、イクっ!」
「んん~っ! んっ、んちゅっ、んぅ⋯⋯っ。んんん⋯⋯っ♡」
びゅるるるるるるるるうううぅぅっ!! びゅっ、ビュクッ! びゅくんっ、ドピュぅぅっっ!!
倒れるようにいろはに覆いかぶさると、俺はその奥に向けて射精を開始した。びくんびくんと暴れるいろはの身体を押さえつけるようにしながら、その熱い膣内の快感を全身で感じ取る。
「う、あぁぁ⋯⋯」
「んんっ、ふっ、んん⋯⋯っ♡」
びゅぷっ、びゅるるるるるっ! びゅるるっ、ドピュッ、びゅクゥッ!!
締めつけの増した腟内で射精を続けながら、声を我慢したまま達しているいろはを見ていた。半ば強制的にではあるが声を抑え、快感に身悶える姿は最高に可愛らしくていやらしかった。
「⋯⋯抜くぞ」
「んっ⋯⋯。はぁっ⋯⋯。はい♡」
ようやく射精が終わって口を塞いでいた手をどけると、俺はゆっくりいろはの膣から肉竿を引き抜いた。にゅるんと抜け出たペニスの先には、たっぷりと白濁液の溜まったコンドームが垂れ下がっている。
「いっぱい出ましたね」
いろははいつものように俺の下半身に手をのばすと、使用済みとなったゴムを外してくる。先端から二センチ以上は溜まっているザーメンを見て、満足そうに笑っていた。
「まだ、足りないんですよね?」
「⋯⋯ああ」
そう言うといろはは、枕元に置いていたコンドームの箱を自らの頬にくっつける。意図的で挑発的なその仕草に、俺は頷きを返すことしかできない。
「次は後ろからがいいです」
俺がゴムを装着したのを見届けると、いろはは小声でそうリクエストしてくる。
さっきまで漏れ聞こえていた喘ぎ声が聞こえなくなったのは気になるが⋯⋯。欲望に抗えず、四つん這いになったいろはの尻を掴んだ、その瞬間。
「うわぁっ!?」
バターン! と。
襖が倒れると同時に、由比ヶ浜と雪ノ下が俺たちの部屋に雪崩こんできた。
「へ⋯⋯」
俺もいろはも浴衣から下半身丸出しで、性器は丸見え。対する雪ノ下と由比ヶ浜も先ほどまで行為に及んでいたのだろう、浴衣は乱れ切っていた。
由比ヶ浜はデコルテが覗いているなんてレベルではなく完全に胸が露わになっているし、雪ノ下も前がはだけてブラジャーが見えている。めくれ上がった裾からは生足が覗いていて、口をパクパクさせながら思わず見てしまう。
「んんっ」
雪ノ下は咳払いをすると、浴衣を直して居住まいを正す。そして今まさに挿入しようとしたまま固まっている俺たちに向けて、平然と言った。
「どうぞ、続けて?」
「できるかぁっ!」
思わず叫ぶようにつっこんでいた。あと由比ヶ浜さん、おっぱいしまって下さい。また万乳引力が働いてしまっているので。
いやマジで何なんだよこの状況⋯⋯。こいつら、俺たちがヤッているのを覗いてたってことか? ようやく由比ヶ浜たちから視線を引き剥がしていろはの方を見ると、くすりと妖艶な笑みに迎えられる。
「いいんじゃないですか? 雪乃先輩たちが見たいなら」
「は⋯⋯? いや、お前何言って⋯⋯」
いろはがそう言って腰を後ろに動かすと、尻肉と肉竿が触れ合った。こんな事態になったにもかかわらず、俺の淫棒は激しく勃起したままだった。
「あ、なら⋯⋯」
由比ヶ浜は何かに気付いたかのような声を出すと、浴衣を乱したままの雪ノ下の背後で膝立ちになる。未だに赤い顔のまま雪ノ下の頬に唇を寄せると、何を思ったか浴衣の胸元に手を差し込んだ。
「ちょっ⋯⋯結衣っ」
「ふふっ。今度はあたしの番だから、いいでしょ? そっちの方がヒッキーたちも気兼ねなくできると思うし」
本気かこいつ、と呆気にとられながら見ていると、由比ヶ浜は雪ノ下の帯を解いた。するりと浴衣が脱げ落ちると、淡い青色のブラジャーが露わになる。
耳の奥で、心臓の音がうるさい。混乱と興奮の最中にいる俺のことなど意にも介さず、由比ヶ浜は雪ノ下から下着を脱がし取り、生まれたままの姿にさせてしまった。
「あぁっ⋯⋯。ん⋯⋯っ、結衣⋯⋯だめ⋯⋯♡」
「あは⋯⋯♡ さっきいっぱいイジめられた、お返しだよ」
由比ヶ浜は雪ノ下の耳たぶを甘噛みしながら、俺の目の前で薄い胸をこねくりまわす。生唾を飲み込む暇すらないほど、俺は夢中になって元部活仲間の女の子たちが絡む姿を見ていた。
「見すぎですよ、先輩」
その声にはっとしていろはの方を見ると、細められた目が俺を見ていた。ついでにまた腰を俺の股間に押し付けてくるのだから、もう堪らない。
「⋯⋯マジで続けるけど、いいのか?」
「もちろん。先輩だって、このままじゃ収まらないですもんね?」
こういう時、俺の性欲の強さが裏目に出る。いろはの言う通り、俺はもう後に引けないぐらいに興奮しきっているし、情動を抑えられる気もしなかった。
いろはの入り口に肉竿の先端を擦り付けると、ゆっくりと腰を進めていく。性的に結合するところを見られているのを自覚しながら、俺はいろはの最奥へと到達した。
「ああぁぁっ♡」
声を我慢する必要がなくなったからか、いろははどこまでも艶めかしい声で喘ぎを上げる。ついでにキュウキュウとさっきよりも締めつけてきて、どうしようもないぐらい肉竿も膨張してしまう。
「動くぞ」
「あぁっ♡ はいっ♡」
もうこうなってしまえば、俺もいろはも自身を押し留めるものは何もなかった。腰のくびれを掴んで前後に動き始めると、パンパンと生々しいセックスの音が純和風の部屋に響き渡る。
「あは⋯⋯っ。すごっ。ねえゆきのん、見てる? ヒッキー、すっごい気持ちよさそうな顔してるよ」
「やぁ⋯⋯っ♡ んっ♡ 結衣っ、そこ⋯⋯っ♡ あぁぁっ♡」
隣を見れば由比ヶ浜に胸を揉まれながら、陰核を愛撫されている雪ノ下の姿が見える。つい見続けてしまいそうな淫靡な光景から意思の力で視線を外すと、俺は形のいい尻の向こうで出し入れされる性器を見た。
引いては突き入れ、入れては引く。興奮のあまり見せつけるかのように激しい動きになって、俺はいろはの腟内を往復する。
「ああぁぁっ 先輩、強いっ♡ あんっ♡ あっ♡ あっ♡ あぁぁっ♡ 深い、ですぅっ♡」
「はぁっ、はぁっ⋯⋯。お前が、挑発するからだぞ⋯⋯」
それは半分本当で、半分は嘘だ。俺もいろはも視られながら、そして視ながらのセックスに、訳が分からないほど昂ぶってしまっていた。
アルコールのせいにするのは容易いが、本当にそれだけだったのかは分からない。常識を飛び越えた性行動に、俺たちは興奮のまま熱狂の渦に飲み込まれていくしかなかった。
「ふふっ。いろはちゃんも気持ちよさそうだねぇ。ゆきのんも、気持ちいい?」
「んっ、ふぅぅ⋯⋯っ♡ あ♡ ああぁっ♡ 結衣っ、いいわっ♡ あぁっ♡ ああぁぁっ♡♡」
甘くて高い声が、耳朶を震わせる。思わず見てしまった視線の先で、雪ノ下はビクビクとその細身を反らせていた。
ひょっとして、由比ヶ浜に責められてイッたのだろうか。ぐったりと力を失いながら時折ピクピクと反応しているのを見るに、そうとしか思えない。
「あんっ♡ ああぁぁっ♡ 先輩も、イッちゃいそうですか?」
思わず腰を止めて見てしまっていた俺に気付いたのだろう、いろはは振り返るとくすりと笑って見せた。その表情一つですら性的な刺激となって、俺を射精へと追い詰めてくる。
「ああ⋯⋯。もう出してもいいか?」
段々と我慢するのも馬鹿らしくなってきて、俺は腰振りを再開させながらそう聞いた。いろはの答えは、聞く前から分かっている。
「あぁんっ♡ はいっ♡ 出してくださいっ♡」
いろはの許しと求めに応じて、俺は最高速で腰を動かし始める。パンパンパンパンと激しい性交の音が、俺たち四人の間を埋めていく。
「はぁ、はぁ⋯⋯。すごい、わね⋯⋯」
「うん⋯⋯。あんなに激しいんだ⋯⋯」
横から雪ノ下と由比ヶ浜に凝視されているのを感じながらも、その行為は止められない。キュウキュウと締めつけてくる腟内を激しく往復して、ただ最高の射精を迎える為だけに我慢を続ける。そして──。
「は、ああぁぁっ、出るっ! イクっ!」
「あっ♡あっ♡あっ♡ ああぁぁっ♡ わたしも、イキますっ♡ あ♡ ああぁぁんああぁぁ~~──♡♡」
びゅるびゅるびゅるるるるるうう!! びゅっ、ドプッ、ドピュぅぅぅうう!!
部屋の外にまで届きそうなほど大きな喘ぎ声を上げるいろはの中で、俺はすべての我慢をやめて精を解き放つ。全身が性感帯になってしまったかのような強烈な快感に身を委ねて、いろはの膣内から得られる快感を貪り尽くしていく。
射精しながらまた新たな性の扉が開かれたのを実感して、思わず身震いした。この快感の強さが視られながらだからかは分からない。ただ確実に何かが終わって、変わってしまった実感だけがそこにあった。
「ああぁぁっ まだ、出てる⋯⋯っ♡」
「⋯⋯ヒッキー、すっごいイッてるね」
「ええ⋯⋯」
ビュルルルルルルッ! びゅくびゅくっ、ドピュッ!!
三人それぞれに感想を言われ、俺の射精はなかなか終わらない。ペニスは最奥に擦り付けられたまま何度もいろはの膣内で脈打ち、コンドームを突き破らんばかりの勢いで生殖液を発射している。
視線を結合部に向けると、いろはの膣口に挿入された肉棒の根本がビクビクと脈打っているのが見えた。男根が震えるたびにいろはの膣内もきゅんと膣圧を強くしてきて、蛇口が壊れてしまったかのように精液が放出されていく。
「はぁ、はぁ⋯⋯」
「ん⋯⋯♡ あぁ⋯⋯♡ ふふっ♡ すっごい出しましたね♡」
いろはも体感で分かっているのだろう、また振り返ると妖艶な笑みを向けてくる。ああ、掠れた声で返事をすると、ぬるんと肉竿を引き抜いた。
「うわ⋯⋯」
たっぷりと精液の溜まった使用済みのコンドームを見て、由比ヶ浜は思わずといった調子で声を出す。その隣で雪ノ下がひゅっと息を吸い込み、いろはは得意そうにゴムを外してくる。
「あは⋯⋯っ。やっぱりたくさん出てますね♡」
いつものようにきゅっとゴムの口を縛ると、大量のザーメンが溜まったそれをつまみ上げる。その一部始終を、雪ノ下と由比ヶ浜は呆けた表情のまま見続けていた。
「さあ、先輩」
いろははちゅっと唇を啄んでくると、未だに勃起しているペニスを握った。二人に視られながら、シコシコと未だ硬くなっているそれをシゴていくる。
「まだ出し足りませんよね?」
その問いかけに答えるように、いろはの手の中で俺の肉棒がびくんと返事をした。我ながらどうしようもないなと思いながらも、やはりここでやめるなんて選択肢はなく──。
「⋯⋯結衣。気持ちよかったけれど、あなたにはまだ躾が必要なようね」
「やんっ♡ ゆきのん⋯⋯あっ♡」
夜はただ、淫らに更けていく。
理性も常識も丸ごと飲み込んでしまう暗闇に、引きずり込まれるかのように。
* * *
翌日。
「おーい、ヒッキーっ」
人気のない海水浴場の波打ち際で、由比ヶ浜は大きく手を振っていた。その隣で素足になったいろはが白波にくるぶしを飲まれ、雪ノ下は長い髪を抑えて水平線を眺めている。
「写真撮ってーっ」
「⋯⋯って言われてもなぁ」
俺の両手には、さっき市場で買った土産物が大量にぶら下がっている。市場を見た後、せっかくだから海に入ってみたいと言った彼女たちの荷物持ちだ。
しかし、まったく無理というわけでもない。俺は苦労して片手に荷物を集めると、カメラアプリを起動して携帯を構える。
「はい。ピーナッツ」
あえてポーズを取らせる暇を与えずに、その自然な姿を小さな画面の中に閉じ込めた。長方形の中に驚いた由比ヶ浜の顔が、無邪気な笑みを浮かべるいろはが、遠い目をした雪ノ下が写っている。
「もー、ちゃんと撮る前に言ってくださいよ」
「あはは。こっちきてもやるんだ、それ」
文句を言ういろはとカラカラ笑う由比ヶ浜を見て、雪ノ下は柔らかな笑みを浮かべていた。
何だか、いつも通りだ。旅行という非日常の最中ではあるのだが、それにしても昨日までと変わらなさすぎる。昨晩、あんな無茶苦茶なことになったというのに⋯⋯。
「比企谷くん、撮るなら早く」
「お、おお⋯⋯」
雪ノ下に急かされると、俺はパシャリともう一枚撮影する。今度はみんなばっちりこちらを向いていて、絵になるほどいい笑顔を浮かべていた。
「ね、ヒッキーも一緒に撮ろうよ」
「いや、荷物がね?」
見てこの量、と片手にずっしりくる土産物たちを持ち上げる。それに俺は靴を履いたままだから、波打ち際はご勘弁願いたい。
「別に袋に入ってるんですし、砂浜に置いておけばいいじゃないですか」
しかしそんな口実も、もっともな意見の前ではどうにも理由としては弱すぎる。やれやれと肩を下げると、砂浜に荷物を置いた。
「さ、撮ろっ」
素足になって波打ち際まで行くと、由比ヶ浜がインカメラにした携帯を構える。が、流石に四人一緒に撮るのは画角的にきついものがあった。
「先輩、ちょっとかがんでください」
「おお⋯⋯」
俺の背後に回ったいろはは、そう言ってぐーっと俺の肩を押してくる。そのまま俺の首に手を回すと、雪ノ下と由比ヶ浜が俺たちを挟み込む格好になる。
いや近いんですけど⋯⋯と条件反射で思ってしまったが、昨夜のことを思い出せばこんな距離感なんて可愛いものだ。
「はい、いくよー」
三、二、一。カウントダウンの後に、俺たちは半永久の世界に閉じ込められた。
「ふふっ」
由比ヶ浜と一緒に写真を確かめていたいろはが、不意にそんな笑いを漏らす。別に俺、変顔してたつもりないんですけど⋯⋯と視線を寄越すと、いろはは海のように綺麗な笑顔で言った。
「きっと、一生の思い出になりますね」
ああ、それはおそらくはそうなるのだろう、と。
俺は素直にそう思った。だけどそれには、きっと時間がかかる。
「ええ」
「うん。きっとね」
俺たちの関係性がどれだけ貴重なのかを、どれだけまちがっているかを、今をもってしても正しく理解しきれている気がしない。
だから一生をかけてその意味を知っていく。その過程で、それは思い出になっていくのだろう。
俺は微かな笑みを口端にのせると、こくりといろはに向けて頷きを返した。