リオンが婚約者であった少女が無惨に孕まされる様子を強制的に鑑賞させられた悪夢の1日から一月が経った。
収容所の独房で、1日の強制労働を終えたリオンは簡素なベットに座り込む。その目は淀み、生気は感じられない。
ただぼんやりと床を見つめるリオンの耳に、独房の扉が開く音が届く。だが、リオンは顔を上げることなく床を見つめ続ける。
「ひどい顔ね。ま、貴方にはそんな負け犬みたいな顔がお似合いかもね」
扉から独房へと足を踏み入れた人物は、そんなリオンへ冷たい声をかける。だがその声にはどこか哀れみと諦念、そして自嘲がこもっていた。
「ヘルトルーデ…さん?」
声を聞いたリオンが初めて反応する。その声の主が、かつて敵対し、対神聖王国戦では味方になってくれた少女のものだったから。
そして希望を抱いて顔を上げたリオンの目に写ったのは、かつては公国の姫として己と相対した女傑の…無惨な姿だった。
「な…あ…」
「あんまり…見ないで」
リオンが彼女と対面したのは半年前、神聖王国に敗北し捕虜になった時だった。その時虜囚になったヘルトルーデは、リオンの婚約者達と共に連れてゆかれた。
ヘルトルーデの冷たくも美しい容姿は変わっていなかった。
腰まで届く長い黒髪もまた、かつてと変わらない艶を守っている。
だが、公国の女侯爵としてドレスを纏っていた彼女の肢体はそうではなくなっていた。
なだらかな、リオンの婚約者達の豊満な胸とは比べることすらおこがましい胸は隠すことなくさらされている。その先端、僅かな膨らみのようなものの頂点は、ハート型のニップレスで一応隠されている。
処女雪のように白くくすみのない肌は隠すことなく曝されている。括れた腰も、胸と比べるとしっかりと発育した肉付きの良い尻も、スラリとした長い手足も。
彼女の肌を隠すのは、紐同然の細いTバックのみ。だが、彼女の最も秘すべき花園を覆う黒い布地は、辛うじてその縦筋を覆うのみで、ふっくらと肉の盛り上がった肉土手も、その艶やかな花園を覆う黒くもっさりと生い茂った陰毛も、呆然と彼女を見つめるリオンの視線から隠されていない。
「すまない…」
「いいわ…もう数え切れないくらいの人に見られたもの」
リオンの謝罪に、ヘルトルーデは自嘲するように笑う。
「それは…」
「何も言わないで…これは私の選択の結果。貴方に賭けて負けた私の」
惨めな顔でヘルトルーデを見たリオンから、無様な姿で諦念の溜息をついたヘルトルーデは背を向ける。
「ついてきなさい。署長が呼んでいるわ」
「…ああ」
全てを諦めて、今の支配者に唯々諾々と従うヘルトルーデに促され、彼女の白い尻を追うようにリオンもまた独房を後にした。
裸よりも屈辱的な姿のヘルトルーデと、粗末な囚人服のリオンが署長の部屋を目指して収容所の寒々しい廊下を歩く。
歩くたびにヘルトルーデの長い髪が揺れ、その下に隠された彼女の白く肉付きの良い尻が見え隠れし、禁欲状態のリオンの劣情を煽る。紐状のTバックは尻肉の谷間に食い込み、一見すると何も履いていないようにしか見えないのが、更にその卑猥さを強調している。
「言ったでしょ…あんまり見ないでって」
「っ、悪い」
リオンの視線を感じたヘルトルーデが、白魚の様な手で尻を隠す。そしてリオンを咎める声には羞恥と、リオンへの哀れみがあった。
沈黙のまま歩く二人だったが、我慢できなくなったリオンが口を開く。
「ヘルトルーデさん…」
「何かしら?」
声を掛けるリオンを振り向くことなく、ヘルトルーデが答える。
「何が…あったんだ?」
「……」
リオンの問に、ヘルトルーデは無言で振り返ることで答える。その顔には深い諦念と、自嘲の笑みが浮かんでいた。
「あら、本当に知りたいの?」
「……俺のせいで皆がどうなったのか、教えてくれ」
それがヘルトルーデにとって辛いことだと、リオンは理解している。それでも、自分の婚約者達が、そして自分と親しかった女性たちがどうなったのか知らなければならないと、リオンの中に残る僅かな責任感が彼の背中を押した。
「……そう。良いわよ」
「ありがとう…」
「ただ、貴方には辛い話になるかもしれないわよ?」
「今更だ…頼む」
リオンが頭を下げる。
その哀れな姿を、荒みきった紅い瞳で見下ろしたヘルトルーデは、歩みを再開しながら語り始めた。
「…敗戦して捕らえられた私達は、まずは神聖王国の貴族や兵達に慰み者にされたわ」
「っ…」
ヘルトルーデが淡々と語った内容は、敗戦国の末路としてはありきたりな物だったが。
捕らえられた王国の若い女性たちは、その身分や容姿、そして“処女”であるかどうかでグループに分けられた。
そして身分と容姿、更に“処女”であったヘルトルーデを含む女子たちは神聖王国の王族や高官達によって処女を奪われた。
例外は特殊な立場のノエルくらいで、アンジェやリビア、ディアドリー等は神聖王国の男達の手によってその純潔を散らされ、約一週間にわたって凌辱された。
「あいつ等…っ!」
「…まあ、負けた時点でそうなることは覚悟していたわ。フフ…皆お尻の穴まで犯されて、最初は痛かったはずなのに最後は泣きながら喜んでたわ」
辛い過去を思い出しながら、ヘルトルーデは自嘲気味に笑う。
「もうここで死ぬかと…いいえ、いっそ死にたいとすら思ったわ」
「っ…すまない、辛い話を」
「いいのよ。だってまだ、序の口だから」
「え…?」
ヘルトルーデの言葉に、リオンは身構える。
「凌辱されきって壊れかけた私達は治療され体を綺麗に洗われた後、私達には特殊な奴隷紋が刻まれた」
「奴隷紋?」
「ええ。これよ」
ヘルトルーデが長い髪をたくし上げ、白いうなじをリオンへ曝す。そこには、リオンも見覚えのある紋章が浮かんでいた。
「これ…聖樹の!?」
「ええ。敗戦した共和国は国民の命と引き換えに聖樹の巫女と聖樹に関するすべての技術を差し出した。これはその時に手に入れた、聖樹の紋章を応用した奴隷紋だそうよ。本来なら巫女かその守護者だけが施せる強力かつ特別な」
「特別?」
ヘルトルーデの言葉に違和感を覚えたリオンが聞き返す。“特別”と言ったヘルトルーデの口調に、苦渋と自嘲が滲んていたから。
「ええ。この奴隷紋は奴隷となった相手の絶対服從は当然として、奴隷にした女を永く楽しむ為の機能があるわ」
「それって…」
「一つは奴隷の不老化。この紋を刻まれた年齢から私達は歳をとれなくなった。ついでに、専用の薬を飲まない限り妊娠もしないわ」
吐き捨てるようにヘルトルーデが語り続ける。
「そして2つ目、この奴隷紋は刻まれた奴隷の体調を健全に保つの。余程の怪我をしない限り、一晩で回復するわ」
「…良いことじゃないのか?」
「…一晩中乱暴に抱かれたのに、眠って起きたら肌も髪も綺麗になってる。そしてまた、男達に抱かれるの…これが、良いこと?」
「…ごめん」
無知を嘲笑うヘルトルーデに、リオンは弱々しく頭を下げる。
「そして3つ目の最も忌々しい効果は、この奴隷紋がある限り、私達の精神もまた健全な状態に保たれるの」
「精神…が?」
「ええ、そうよ。例え完全に心が折れて、廃人になったとしても、奴隷紋の効果のせいで精神が健常に保たれてしまう。それだけじゃないわ。私みたいな人間には、偽りの反抗心を持たせることで、壊れて人形みたいにならないようにするのよ」
ヘルトルーデが眉間にしわを寄せ、拳を握る。
「もう嫌だ。もう逃げたい。そのはずなのにこの奴隷紋は私に、私をこんな目に合わせた奴らへの怒りと復讐心を無理矢理植え付けるの。ふふ、なのに逆らおうとするとこの紋のせいで体が動かせなくなるのよ。嗤えるわよね」
ヘルトルーデがリオンニ向き直り、紅い瞳から涙を流しながら己の境遇を嘲笑う。
「あはは…ねえどうだった。参考になったかしら?」
「…ああ」
「因みに貴方の婚約者達も同じよ。二人共、紋を刻まれる前は目も虚ろだったのに、紋を刻まれたせいで無理矢理正気に戻されて、今では立派な雌豚として、毎日色んな男に抱かれてるわ」
「っ…!」
リオンが拳を固く握る。不甲斐なく負けた過去の己へを怒りを抑えながら。
「…私が話せることは以上よ」
「……ありがとう、ヘルトルーデさん」
リオンが頭を下げる。
「いいわ。こんなの単なる時間つぶ…し」
「ヘルトルーデ…さん?」
立ち止まったヘルトルーデにぶつかりそうになったリオンは、彼女に触れる直前で立ち止まる。鼻先にあるヘルトルーデの艶のある黒髪からは、ヘルトルーデの゙爽やかな体臭が漂いリオンの獣欲を刺激する。
「よう雌豚五号、ここは通行止めだぜぇ?」
「そうそう。お前ら雌豚は通る時は通行料を払わねぇとなあ」
ヘルトルーデとリオンの行く手を遮るように、曲がり角から現れた監獄の看守が二人、廊下に並び立っていた。
明けましておめでとうございます。
作者の地元も大分揺れました。皆様もお気をつけください。
作者のオリジナル作品もどうぞ宜しくお願いします
https://syosetu.org/novel/309815/