※この作品はR-18です。

その悲鳴が地上に出ることはない   作:片倉

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幸せだ





素生

 

 私が生まれた町には何もなかった。いや、正確に言えばありすぎた。

 

 薬が横行し、誰かの家が燃やされ、お金が盗まれ、人が殺されて、そして明日にはみんなの記憶から無くなる、それが毎日繰り返される。はっきり言って周りの人からはこの町に住む理由がわからないだろう。

 

 町には女性と子供が殆どいない。こんな町にいたらすぐに誘拐されてどこか知らない所に売られちゃうから。だから私には同年代の友達がいたことはない。

 

 ではなぜ私はこの町に住むことができたのか。理由は単純でいつも隣にいるお母さんが強かったからだ。

 町にいる悪い人もお母さんには近づいてこないし、家に入ってきた命知らずの強盗さえ拳一つで倒してしまう。長髪の黒髪を持った見た目の美しさからは想像がつかないほど強い。

 

 なんでこんなに強いのか、お母さんがこの町に来てからの知り合いである近所のおじさんがこっそり教えてくれた。

 話だとお母さんは昔、オラリオで冒険者をやっていたらしい。それもオラリオの中では少し名が通るくらいの強さだったらしく、普通の冒険者では束になっても敵わないそうだ。  

 

 この話でもう一つ分かったのはこの町に住む理由、どうやらお母さんが所属していたファミリアはかなり悪い所だったみたいでお母さんも例外ではなく、人殺しですら普通にこなしていたらしい。

 

 そんなお母さんに転機が訪れたのは同じファミリアの団員と結婚をして私を身籠った時のことだ。

 お母さんはお腹に命を宿して心変わりしたのか、ファミリアに対して嫌気がさしてきたのか、お母さんはお父さんと2人でファミリアを抜けようとした。しかし主神はそれを許さず処罰として2人は地下牢に閉じ込められてしまって殺されるのも時間の問題だった。しかしそれから数日後、2人は地下牢から抜け出すことに成功し、ファミリアから脱走することができた。

 

 実はファミリアの副団長だったお母さんは人望が厚かったらしく、主神の判断に反対した団員も少なくなかったそうで、その人たちが地下牢の鍵を開けて逃がしてくれたそうだ。その後、主神によって追っ手を向けられたものの、なんとか命からがらお父さんと一緒にこの町に逃げてきたそうだ。

 

 木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中とはいったもので、さらにこの町はとても治安が悪く、かなり危険な場所だ。そのため例え見つかったとしても不用意には近づけないだろうという考えだったみたいだ。

 

 残念ながらお父さんは妊娠して満足に動けないお母さんを庇って深い傷を負ってしまい、それが原因で死んでしまったらしい。お母さんは酷く落ち込んだらしいけど私を産んだ後はとても嬉しそうで明るくなったとおじさんは言っていた。

 

 

 そんな長い話を聞かされた私だったが特に気にしていなかった。だって今が幸せだから。お母さんが人殺しだったとしても大好きなことに変わり無いし私には関係ないと思っていた。

 

 

 

 甘かった

 

 

 

 

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