何かにしがみついてでも
──仮想世界
病院中が騒ぎになっていることなどアスナは露知らず、男によって執拗な責めを受けていた。
男はアスナに自分の立場をわからせるため、仮想の感覚という作り物を与えると暴力を振るったり、敏感なところを弄りイカせたりした。それでも気が強く反抗的な態度を取るアスナに対して、男は痛みによって心から崩そうと刃物による拷問を開始した。
ミチミチッ
「あ゛あ゛あああ─────ッッ!!!」
そこからは地獄だった。男によって背中をナイフで斬られている間は表現するなら、まるで焼いた鉄を押し付けられているような熱さと痛み。うなじから尾てい骨まで皮膚を切り裂くと、再びうなじから刃をスタートさせるのを繰り返し行っている。
何度も背中に訪れる鋭い痛みにアスナは恥じらいもなく口を大きく開けて絶叫を上げるも、それで男の凶刃は止まる事なく、その悲痛な声は繰り返しアスナの口から発せられた。
「……ぅ……うぅ……」
ようやく男がナイフを鞘に納めた時には、俯き力なく蔦に吊るされたアスナの姿が。玉のような汗が背中を滑り落ち、うなじから尾てい骨にかけて一直線の赤い傷跡が何本も刻み込まれていた。
痛みで無意識に頭を振り回していた事でいつの間にか結ってあったアスナの髪が解けていた。そのため前髪で目元が隠れて顔はよく見えないが、頬を伝い流れる透明な涙と思われるものが顎先から滴り落ちている。
「あぐっ!」
男がアスナの前髪を乱暴に掴んで顔を上に向けさせる。予想通りでアスナの顔は苦痛で歪み、涙と涎でぐしゃぐしゃになっている。
「う、ぐっ……ふぅっ……!」
「痛いのはもう嫌だろ? 俺は優しいからな、いま謝ればここで終わりにしてやるよ」
普通の少女だったら、いや成人の男性だったとしてもここまでされたらここで根を上げて許しを乞うのが普通。それほど無抵抗で与えられる苦痛というものはきつい。
「……い……いやよ……」
それでもアスナの目に恐怖の色は見えるものの光は失われてはおらず、NOという答えは変わらなかった。
「まぁいい、時間はたっぷりあるんだ。朝までじっくりといたぶってやるよ」
しかしこの答えはアスナの目を見た段階で男も想定していた。アスナを拘束しているのとは別の蔦たちが様々な方向から男の手と共にアスナの身体にゆっくりと近づいていく。
(……まだ、大丈夫………まだ、耐えられる……だから…………)
アスナはここから拷問が再び始まるのが分かり歯を食いしばる。朝になれば他の冒険者もこの森に集まるはず、ミトが助けに来てくれるはず、それまで耐えればと何の根拠もない僅かな希望にアスナは縋るしかなかった。
短くてすみません。