リーニエ(魔力探知で集団の動き、流れを読み取ることで、指揮系統の発信源を逆探知する)
リーニエ(てかお姉様飛べるんだ……上空からさっさと決着つけてくれればいいのに……)
リーニエ(まあ私の有用性を示せれば、有利な立場が得られるかも)
リーニエは戦斧を具現化し、単独で戦線後方の敵陣に斬り込む。
兵士X「首切り役人だ! 首切り役人のリーニエが来たぞ!!」
グラナト伯爵「リーニエだけか! やはり内部で分裂があったようじゃの!!」
グラナト伯爵(ただあのアウラを連れて飛んでる魔族、初めて見るが何者じゃ?)
グラナト伯爵「魔法使いは迎撃準備じゃ! とにかくクソ魔族どもは皆殺しじゃあ!!」
兵士X「クソ魔族め死にやがれ!!」
リーニエ「1」
兵士X「あぎゃっ」ザンッ
リーニエ「2」
兵士Y「あわあわあっ」ザンッ
リーニエ(人の流れ、その間隙を縫って、最短距離で頭を潰す)
リーニエ(それで群体は崩れる)
リーニエ「3」
リーニエ「!!」ギャリィィィン
リーニエ(私の一撃を弾いた!?)
兵士Z「バズーソだ!! “灰色の騎士”のバズーソ……!!」
リーニエ(巨体に重装備、巨大な戦斧……少し厄介そうだ)
バズーソ「ここから先は何人たりとも通さぬぞ!! 頭を叩き割られたければ前に出ろ!!」
少女の姿のリーニエに対し、三倍はあろうかという巨漢だった。
兵士a「バズーソってあの三十人斬りの?」
兵士b「熊を素手で殺したって聞いてるぞ」
リーニエは躊躇わず斬り込む。それをバズーソは迎え撃つ。重い金属音が響き渡る。
私はリーニエの戦闘を見ていて気付いた。
ソリテール「リーニエの<模倣する魔法>には致命的な欠点がある」
ソリテール「完璧に体術を模倣しても、小柄な体躯では質量が乗らない」
加勢すべきか。しかしグラナトの連れてきた魔法使いたちが、こちらに照準を合わせている。
アウラ「助けに行くつもり?」
ソリテール「…………」
リーニエはまだ失いたくないが、危険を冒す理由にはならない。
アウラを抱きかかえて、魔法攻撃を回避しつつ、リーニエを救出する。
一人であればこんな面倒なことにはならないのに。
ソリテール「リーニエは――」
逡巡の間に、リーニエはバズーソに吹き飛ばされた。
兵士たち「ワーーーワーーー」
兵士a「クソ魔族め! やられちまえ!」
兵士b「殺せェー!! ブッ殺せェェ」
リーニエ(甲冑に刃が通らない)
バズーソ「クソ魔族にしてはよく健闘した。誉めてやる!」
バズーソ「トドメだ!!」
リーニエ(奴の中の魔力の流れが爆発した。来るっ!!)
振り下ろされたその一撃は、リーニエの膂力で弾き返せるものではなかった。
リーニエ(魔力の流れには波がある。波と波の間――)
リーニエは戦斧を逆さにし、石突でバズーソの右膝の下を打った。
バズーソ「なにィ!?」
バズーソは右足の踏ん張りを失い、自身の力によって大きく体が吹き飛ぶ。
リーニエ(波と波が収束する点が、星のように光って見える)
リーニエ(点で打つ!)
一点に力を集中する武器の形。戦斧を分解し、棍を具現化する。
バズーソ「ぬ……右足が動かんっ!?」
リーニエ「魔力の流れを遮断した。魔力の流れ、これを経絡。収束する要所は、秘孔と名付けようか」
バズーソ「ま、待て……!!」
リーニエ「あたあ!」
バズーソ「ぐふっ!?」ドンッ
リーニエ「あたたたたたたぁー!!」
リーニエ「おあたぁ!!」
バズーソ「な、なに――」
リーニエ「体の中心から全身に伸びる経絡、その秘孔を打ち、すべてを遮断した。行き場を失った魔力の流れが暴走する」
リーニエ「お前はもう死んでいる」
バズーソ「ひでぶっ!!」ドバッ
兵士Z「バズーソが負けただと……!?」
兵士たち「ザワザワザワザワ」
兵士a「行くぞ!! みんなで捕まえて八つ裂きだ!!」
兵士b「ざけんなァァ! クソ魔族がァ!」
リーニエ「4、5、6」
兵士Z「あべし!」グシャッ
兵士a「たわば!」グシャッ
兵士b「死に、たわっ」バガッ
リーニエ「うん。私、強いかも」
グラナト伯爵「何……じゃと……」
* * *
ソリテール「戦いの流れが変わったわ」
戦場の目がリーニエに集まった。
その機に、私はリーニエのもとへ上空より急行する。
ソリテール「リーニエ、おつかれさま。驚いたわ。素晴らしい魔法ね。<星を打つ魔法>とでも呼ぼうか」
リーニエ「お姉様、アウラ様」
アウラ「じ、地面、地面だわ……」プルプル
グラナト伯爵「いかん! アウラを近づけてしまった!!」
兵士たち「ひいいいい嫌あああああ!!」
グラナト伯爵(……バズーソがやられて士気が下がっている時に! まずいぞい!)
ソリテール「さあアウラ、見せてあげよう」
アウラ「へ?」
ソリテール「<百合を咲かせる魔法>」
アウラ「え? え?」
ソリテール「アウラ、愛しているわ」
アウラ「ちょっと、どういうことよ?」
アウラ「ん!?」ズキュウウウン
私はアウラにキスをした。
愛し合う二人の少女がするキス。
これこそ<百合を咲かせる魔法>。見る者を尊死させるという大量殺戮魔法。
グラナト伯爵「????」
兵士たち「????????」
アウラ(……ありえない……この私が……こんな人間どもの前で……)もがもがもが
ソリテール「ふふっ、終わったわね」
グラナト伯爵「……いったいなんじゃ?」
兵士たち「クソ魔族が! クソみてェな百合見せるんじゃねェェェ!!」
兵士たち「ワアアアアアアアアアアア」
ソリテール「……どういうこと?」
アウラ「ちょっと、なんとかしてよ!? 完全に包囲されているじゃない!?」
ソリテール「……私とアウラは愛し合っていて、キスしたのに、なぜ百合の魔法が発動しない?」
アウラ「そんなこと今はいいから、なんとかしてぇ!!」
兵士たち「仲間を大勢殺して…クソみてェな百合を見せやがって!! 許せねェ!!」
ソリテール「……クソみたいな、百合?」
アウラ「……ちょ、お姉様?」プルプル
リーニエ「……こんな魔力の量、見たことない」
私は自分の中の思考や感情が、妙に静かで、消滅したような感覚がした。
それでいて沸々と込み上げてくる、形容しがたい衝動があった。
今の心境は、このクソ人間どもをすべて消し去ってやる――
頭上に、最大出力で光球を出現させる。それはあたかも太陽が落ちてきたかのようだった。
ソリテール「リーニエ、傍へ」
リーニエ「はい、お姉様……」
ソリテール「魔力をぶつけるだけの単純な魔法」
グラナト伯爵「なんじゃこりゃぁあ!!!」
光球が爆散する。天空が裂けたような閃光と轟音。
衝撃波が大地を噛み砕き抉る。人間を枯葉のように舞い上げて切り刻み、この世に影一つとして残すことを許さない。
それは半径1km圏内すべてを薙ぎ払い、粉砕し、破壊した。
粉塵が立ちこめ、不毛の荒野が姿を現すまでしばらくかかった。
アウラ「なにこれ……」ガクガク
リーニエ「やばすぎるでしょ……」
ソリテール「…………」
アウラ「……お姉様?」
私は眼前の虚無の平野を眺め、気を取り直した。
ソリテール「さ、お家に帰りましょう。アウラ、お姉様への朝の挨拶がまだよ」
アウラ「お、お姉様、大好き……」プルプル
ソリテール「よくできたね。偉いね。いい子」
ソリテール「リーニエも頑張ったね。君たち二人はお姉様の自慢の妹だよ」
リーニエ「うん……」
アウラ&リーニエ(こいつ本当にヤバいやつだ……)