※この作品はR-18です。

ソリテール「百合を咲かせる魔法?」   作:socio

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第10輪 星を打つ魔法

リーニエ(魔力探知で集団の動き、流れを読み取ることで、指揮系統の発信源を逆探知する)

 

リーニエ(てかお姉様飛べるんだ……上空からさっさと決着つけてくれればいいのに……)

 

リーニエ(まあ私の有用性を示せれば、有利な立場が得られるかも)

 

リーニエは戦斧を具現化し、単独で戦線後方の敵陣に斬り込む。

 

兵士X「首切り役人だ! 首切り役人のリーニエが来たぞ!!」

 

グラナト伯爵「リーニエだけか! やはり内部で分裂があったようじゃの!!」

 

グラナト伯爵(ただあのアウラを連れて飛んでる魔族、初めて見るが何者じゃ?)

 

グラナト伯爵「魔法使いは迎撃準備じゃ! とにかくクソ魔族どもは皆殺しじゃあ!!」

 

兵士X「クソ魔族め死にやがれ!!」

 

リーニエ「1」

 

兵士X「あぎゃっ」ザンッ

 

リーニエ「2」

 

兵士Y「あわあわあっ」ザンッ

 

リーニエ(人の流れ、その間隙を縫って、最短距離で頭を潰す)

 

リーニエ(それで群体は崩れる)

 

リーニエ「3」

 

リーニエ「!!」ギャリィィィン

 

リーニエ(私の一撃を弾いた!?)

 

兵士Z「バズーソだ!! “灰色の騎士”のバズーソ……!!」

 

リーニエ(巨体に重装備、巨大な戦斧……少し厄介そうだ)

 

バズーソ「ここから先は何人たりとも通さぬぞ!! 頭を叩き割られたければ前に出ろ!!」

 

少女の姿のリーニエに対し、三倍はあろうかという巨漢だった。

 

兵士a「バズーソってあの三十人斬りの?」

 

兵士b「熊を素手で殺したって聞いてるぞ」

 

リーニエは躊躇わず斬り込む。それをバズーソは迎え撃つ。重い金属音が響き渡る。

 

私はリーニエの戦闘を見ていて気付いた。

 

ソリテール「リーニエの<模倣する魔法>には致命的な欠点がある」

 

ソリテール「完璧に体術を模倣しても、小柄な体躯では質量が乗らない」

 

加勢すべきか。しかしグラナトの連れてきた魔法使いたちが、こちらに照準を合わせている。

 

アウラ「助けに行くつもり?」

 

ソリテール「…………」

 

リーニエはまだ失いたくないが、危険を冒す理由にはならない。

 

アウラを抱きかかえて、魔法攻撃を回避しつつ、リーニエを救出する。

一人であればこんな面倒なことにはならないのに。

 

ソリテール「リーニエは――」

 

逡巡の間に、リーニエはバズーソに吹き飛ばされた。

 

兵士たち「ワーーーワーーー」

 

兵士a「クソ魔族め! やられちまえ!」

 

兵士b「殺せェー!! ブッ殺せェェ」

 

リーニエ(甲冑に刃が通らない)

 

バズーソ「クソ魔族にしてはよく健闘した。誉めてやる!」

 

バズーソ「トドメだ!!」

 

リーニエ(奴の中の魔力の流れが爆発した。来るっ!!)

 

振り下ろされたその一撃は、リーニエの膂力で弾き返せるものではなかった。

 

リーニエ(魔力の流れには波がある。波と波の間――)

 

リーニエは戦斧を逆さにし、石突でバズーソの右膝の下を打った。

 

バズーソ「なにィ!?」

 

バズーソは右足の踏ん張りを失い、自身の力によって大きく体が吹き飛ぶ。

 

リーニエ(波と波が収束する点が、星のように光って見える)

 

リーニエ(点で打つ!)

 

一点に力を集中する武器の形。戦斧を分解し、棍を具現化する。

 

バズーソ「ぬ……右足が動かんっ!?」

 

リーニエ「魔力の流れを遮断した。魔力の流れ、これを経絡。収束する要所は、秘孔と名付けようか」

 

バズーソ「ま、待て……!!」

 

リーニエ「あたあ!」

 

バズーソ「ぐふっ!?」ドンッ

 

リーニエ「あたたたたたたぁー!!」

 

リーニエ「おあたぁ!!」

 

バズーソ「な、なに――」

 

リーニエ「体の中心から全身に伸びる経絡、その秘孔を打ち、すべてを遮断した。行き場を失った魔力の流れが暴走する」

 

リーニエ「お前はもう死んでいる」

 

バズーソ「ひでぶっ!!」ドバッ

 

兵士Z「バズーソが負けただと……!?」

 

兵士たち「ザワザワザワザワ」

 

兵士a「行くぞ!! みんなで捕まえて八つ裂きだ!!」

 

兵士b「ざけんなァァ! クソ魔族がァ!」

 

リーニエ「4、5、6」

 

兵士Z「あべし!」グシャッ

 

兵士a「たわば!」グシャッ

 

兵士b「死に、たわっ」バガッ

 

リーニエ「うん。私、強いかも」

 

グラナト伯爵「何……じゃと……」

 

   *  *  *

 

ソリテール「戦いの流れが変わったわ」

 

戦場の目がリーニエに集まった。

その機に、私はリーニエのもとへ上空より急行する。

 

ソリテール「リーニエ、おつかれさま。驚いたわ。素晴らしい魔法ね。<星を打つ魔法>とでも呼ぼうか」

 

リーニエ「お姉様、アウラ様」

 

アウラ「じ、地面、地面だわ……」プルプル

 

グラナト伯爵「いかん! アウラを近づけてしまった!!」

 

兵士たち「ひいいいい嫌あああああ!!」

 

グラナト伯爵(……バズーソがやられて士気が下がっている時に! まずいぞい!)

 

ソリテール「さあアウラ、見せてあげよう」

 

アウラ「へ?」

 

ソリテール「<百合を咲かせる魔法>」

 

アウラ「え? え?」

 

ソリテール「アウラ、愛しているわ」

 

アウラ「ちょっと、どういうことよ?」

 

アウラ「ん!?」ズキュウウウン

 

私はアウラにキスをした。

愛し合う二人の少女がするキス。

これこそ<百合を咲かせる魔法>。見る者を尊死させるという大量殺戮魔法。

 

グラナト伯爵「????」

 

兵士たち「????????」

 

アウラ(……ありえない……この私が……こんな人間どもの前で……)もがもがもが

 

ソリテール「ふふっ、終わったわね」

 

グラナト伯爵「……いったいなんじゃ?」

 

兵士たち「クソ魔族が! クソみてェな百合見せるんじゃねェェェ!!」

 

兵士たち「ワアアアアアアアアアアア」

 

ソリテール「……どういうこと?」

 

アウラ「ちょっと、なんとかしてよ!? 完全に包囲されているじゃない!?」

 

ソリテール「……私とアウラは愛し合っていて、キスしたのに、なぜ百合の魔法が発動しない?」

 

アウラ「そんなこと今はいいから、なんとかしてぇ!!」

 

兵士たち「仲間を大勢殺して…クソみてェな百合を見せやがって!! 許せねェ!!」

 

ソリテール「……クソみたいな、百合?」

 

アウラ「……ちょ、お姉様?」プルプル

 

リーニエ「……こんな魔力の量、見たことない」

 

私は自分の中の思考や感情が、妙に静かで、消滅したような感覚がした。

それでいて沸々と込み上げてくる、形容しがたい衝動があった。

 

今の心境は、このクソ人間どもをすべて消し去ってやる――

 

頭上に、最大出力で光球を出現させる。それはあたかも太陽が落ちてきたかのようだった。

 

ソリテール「リーニエ、傍へ」

 

リーニエ「はい、お姉様……」

 

ソリテール「魔力をぶつけるだけの単純な魔法」

 

グラナト伯爵「なんじゃこりゃぁあ!!!」

 

光球が爆散する。天空が裂けたような閃光と轟音。

衝撃波が大地を噛み砕き抉る。人間を枯葉のように舞い上げて切り刻み、この世に影一つとして残すことを許さない。

それは半径1km圏内すべてを薙ぎ払い、粉砕し、破壊した。

粉塵が立ちこめ、不毛の荒野が姿を現すまでしばらくかかった。

 

アウラ「なにこれ……」ガクガク

 

リーニエ「やばすぎるでしょ……」

 

ソリテール「…………」

 

アウラ「……お姉様?」

 

私は眼前の虚無の平野を眺め、気を取り直した。

 

ソリテール「さ、お家に帰りましょう。アウラ、お姉様への朝の挨拶がまだよ」

 

アウラ「お、お姉様、大好き……」プルプル

 

ソリテール「よくできたね。偉いね。いい子」

 

ソリテール「リーニエも頑張ったね。君たち二人はお姉様の自慢の妹だよ」

 

リーニエ「うん……」

 

アウラ&リーニエ(こいつ本当にヤバいやつだ……)

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