第14輪 花盗人の密談
私はアウラの手を引いて草原を歩く。片手にはお弁当の入った籠。リーニエはアウラの隣を歩いていた。
秋晴れの行楽日和だった。
廃城の周囲には草原が広がっている。
朝食も兼ねて、私たちは草原でピクニックをすることにした。
シートを敷いて三人で座る。
ソリテール「今日はとてもいい天気だね。ピクニック日和だ」
アウラ「どうしてわざわざ外で朝食を?」
ソリテール「仲の良い女の子同士はね、一緒に外で食事をするの」
アウラ「……どうして?」
ソリテール「仲が良いからだよ」
アウラ(……相変わらず会話にならない)
ソリテール「二人の分のお弁当も作ってきたよ。水筒には紅茶が入っているけれども、熱いから気をつけてね」
リーニエ「あ、このパンとパンの間に加工した肉や緑の草が入った食べ物おいしい」もぐもぐ
ソリテール「それはサンドイッチね。お姉様が作ったんだよ」
リーニエ「ん。お姉様好き」もぐもぐ
ソリテール「私もリーニエが大好きだよ」
私は食事の手が止まっているアウラを見る。
ソリテール「ふふ。昨日、私とアウラは最後のラブをしたから、これで正真正銘の恋人同士だね」
アウラ「そう……」
ソリテール「んー? 今日はまだアウラから、愛の言葉を聞いていない気がするなぁ」
アウラ「……お姉様大好き」
ソリテール「違うでしょ。目を見て」
アウラ「うぅ……お姉様、大好き……」
ソリテール「違うよね? 愛の言葉を伝える時は笑顔で」
アウラ「お姉様、大好き……」ヒクヒク
ソリテール「ええ。私も君が大好きだよ、アウラ」
リーニエ(このなんか茹でた鶏卵を潰して凝固させた卵白と混ぜた具材をパンで挟んだやつも美味い)もぐもぐ
ソリテール「さぁ、お互いに愛情を確かめ合ったら?」
アウラ「え?」
ソリテール「愛の言葉を交わし合ったら何をするの?」
アウラ「……キス?」
ソリテール「そう。ちゃんと分かってて偉いね。次からは私に言われる前からするんだよ」
アウラ「はい、お姉様……」
ソリテール「それじゃあ、早くキスして」
アウラ「はい……」ちゅ
リーニエ(あ、デザートにリンゴあった。カットして残した皮の部分がウサギみたいで可愛い)
リーニエ(今日も朝からリンゴがうまい)しゃくしゃく
アウラ「それで、これからどうするの?」
アウラ(まさかこんな外で、あんなことしないわよね?)
ソリテール「今日はこれから<百合を咲かせる魔法>の実験をするよ」
アウラ「……どうやって?」
ソリテール「実際に人類に見せて、どうなるか実験するよ」
ソリテール「おそらくグラナト領には、これからの戦争に備えて人と物資が集まるわ。その人たちに手伝ってもらうの。不死の軍勢の補充とあわせて、一石二鳥でしょ?」
アウラ「確かに補充はしたいけど……」
リーニエ「何人か食べてもいい?」
ソリテール「もちろん」
ソリテール「さぁ、このままグラナト領へピクニックの続きをしましょう」
* * *
いくつかの丘や森を越えると街道に出た。
ちょうど手頃な十数人の人々を見つけた。
傭兵か冒険者を護衛にした、行商人の一団のようだ。
私はアウラの手を引いて、彼らの前に立つ。
リーニエには万が一に備え、近くに潜伏してもらっている。
ソリテール「こんにちは。私は大魔族のソリテールよ。彼女は私の恋人のアウラ。君たちに是非見てもらいたい魔法があるの。少しだけ付き合って」
兵士A「ウソ……」ブリブリ
兵士B「はわはわは、怖いよ怖いよォ」ジョーーードボドボ
兵士C「そんな……そん……」
行商人「ひいいいっ! 一人にしないでェ!」
断頭台のアウラを知らない人類はいないだろう。彼らは恐慌状態に陥り、隊列は崩れ、我先にと逃げ出す。
ソリテール「逃げるくらいなら、せめて死に際の言葉を聞かせて」
私は魔力を凝縮して、無数の剣を具現化する。それを周囲に展開し、逃げられないように彼らを囲んだ。
我ながら、その光景はまるで墓標に囲われているかのようだった。
兵士A「ひいいいっ! 逃げられないよォ!」
ソリテール「あぁ、逃げられないように手足を切断すればいいのか。選ばせてあげる」
ソリテール「切り刻まれて苦しんだ後に死ぬか、手足を切断されてから<百合を咲かせる魔法>で死ぬか、素直に百合の魔法を見て死ぬか」
ソリテール「どれがいい?」
行商人「殺さないでお願いします! お金ならいくらでも払います!」
ソリテール「ごめんなさい。君たちに生きる選択肢はないの。せめて好きな死に方を選んで」
兵士A「嫌だ、嫌だァ!」がくがくがく
兵士B「あうあうあうあ……」プルプル
包囲された一団は逃げることを諦め、密集して、泣きながら命乞いをする。
ソリテール「百合の魔法で死ぬことを選ぶんだね。ありがとう。嬉しいわ」
ソリテール「それじゃあアウラ、私たちの愛を見せてあげよう」
アウラ「この私が……こんな……」
私はアウラの頬に片手を添え、そのまま顎先へと滑らせて、顔を向けさせる。
ソリテール「アウラ、愛しているよ」
アウラ「……私も、愛してます」
アウラからの愛の言葉を受け取り、私はキスをした。彼女の唇、その柔らかな感触が好き。さらにお互いの舌を絡めて、私は彼女の口を吸う。
ソリテール「ん……アウラ……」ちゅっちゅっ
アウラ「んん……やぁ……」ちゅっちゅっ
人類「…………」シーーーーーン
人類は黙して死したようだ。
ついに<百合を咲かせる魔法>は完成した。
私は満足して彼らを振り向く。
兵士A「オエェェェェ!」ゲロゲロ
兵士B「ロリBBA魔族の百合とか地獄」
兵士C「ばぶばぶ」
行商人「なんなんだこれは、なんなんだ! ふざけやがって!!」
人類「クソ魔族がクソみてェな百合を見せんじゃねェ!!」
人類「ワアアアアアアアアア」
ソリテール「………」ザンッ
人類「」シーーーーーン
ソリテール「あぁ、ごめんなさい。頭から真っ二つにしちゃった。この選択肢はなかったね。ん? これじゃ<服従させる魔法>で奴隷化もできないね。それとも服従させてから首を切らなくちゃいけないのかな? でもこんなクソみたいな人類はアウラの不死の軍勢に相応しくないわ。リーニエも食べちゃ駄目よ? こんなクソみたいな人類は野犬や魔物の餌よ。さぁ、次に行こう」
アウラ「あ、うん……そうね……」
リーニエ「こわっ……」
* * *
街道の死体はそのままに、別の場所へ向かう。
アウラ「ねぇ、今日はもうやめにしない?」
ソリテール「どうして?」
アウラ「あまり人類の前でこういうことしたくないというか…」
アウラ(人前で辱められるのと、家で辱められるの、どっちがマシってことはないけど……)
ソリテール「<百合を咲かせる魔法>の完成を確かめるには人類相手で実験するしかないよ」
アウラ「でもさっき失敗したということは、魔法はまだ完成していないということじゃない?」
ソリテール「…………」
アウラ(この感じなら押し切れる?)
アウラ「そもそも私、百合が何なのかよく分からないし。もう一度口頭で。口頭で教えてもらえたらいいな、って……」
ソリテール「そう……」
アウラ(お願い怒らないで、怒らないで……)プルプル
ソリテール「うん、そうだね」
アウラ(押し切れた!?)
ソリテール「それじゃあ実際に人類の百合を見てみよう。実際に見れば、アウラの百合に対する理解が深まるかもしれないし、ほかにも何か知見が得られるかも」
ソリテール「アウラは偉いね。勉強熱心だ。まだアウラとしてないことがたくさんあるんだ。帰ったらたくさんたくさん愛し合おうね」
アウラ(え、私は救われたの? それとも悪化した? もうやだ怖い)
ソリテール「ん? あの二人、なんだか素敵な雰囲気をしているね。きっと百合に違いない。百合を見せてもらいましょう」
移動しているうちに、私は仲睦まじい様子の二人の少女を見つけた。何か言い合いをしているようだが、それもまた百合のスパイスである。
ソリテール「ねぇ、君たち」
ソリテール「お姉さんとお話ししよう」