※この作品はR-18です。

ソリテール「百合を咲かせる魔法?」   作:socio

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第15輪 怪物と天使のワルツ

街道を行く二人の少女。仲睦まじい様子だった。

私は百合の気配を感じ、彼女たちとお話ししてみることにした。

 

ソリテール「初めまして。私は大魔族のソリテールよ。よろしくね」

 

私は手をつないだアウラの肩に寄り添う。

 

ソリテール「彼女は私の恋人のアウラ。もしかして知ってるかな? アウラは有名だからね」

 

アウラ「…………」

 

少女のうちの一人は生まれたての子鹿のように震えていた。

もう一人は気丈に、こちらに杖を向ける。

 

ソリテール「君たちのことも教えて。二人は恋人同士なのかな?」

 

カンネ「……やばいよ、ラヴィーネ」がくがく

 

ラヴィーネ「……マジかよ。この魔力、断頭台のアウラだ」ハアハア

 

ラヴィーネ(もう一人は、千人の兵士を一瞬で皆殺しにしたとかいう謎の大魔族か?)

 

ラヴィーネ「こんな化け物が何匹もいてたまるか。こいつがそのもう一人だ」

 

ラヴィーネ「カンネ、逃げろ」

 

カンネ「え、嫌だ! ラヴィーネ」

 

ラヴィーネ「<氷の矢を放つ魔法>」

 

彼女の周囲に氷柱が複数出現する。それは先端を私たちに向けていた。

それらが一斉に飛来する。

 

私は片手で防壁を展開する。

衝突し砕け散った氷片が、霧のように舞った。

 

ラヴィーネ「……魔族が防御魔法だと!?」

 

ラヴィーネ(想定し得る以上の最悪の組み合わせじゃねェか……)

 

ラヴィーネ(アウラを倒すには、服従の天秤発動前に先制するしかない。それが通らないなら詰みだ)

 

ソリテール「素敵な魔法ね。君は魔法使いなんだね。教えてくれてありがとう」

 

ラヴィーネ「だったら何だ、クソ魔族!」

 

ソリテール「ラヴィーネ。君はラヴィーネていう名前なんだね? 合ってるかな? 名前は大事。君が死んだ後、君のことを思い出すときに名前が違っていたら嫌だわ。だって標本の中身と名前が違ったら困るでしょ?」

 

ラヴィーネ(アウラの服従の天秤が発動したら終わりだ。その前に、少しでも引き離す!)

 

ソリテール「質問に答えて。君はもう一人の女の子、カンネと百合なの?」

 

ラヴィーネ「は? うっせェ! 死ねクソ魔族!」

 

ラヴィーネは空中に移動し、氷の矢を放つ。先刻、通用しないことが判明したばかりなのに。

 

私はアウラを抱きかかえて、空中に回避する。

 

アウラ「ちょ、急にやだぁ!」

 

ソリテール「しっかり捕まってて」

 

ラヴィーネが私たちの注意を引きつけようとしているのが分かる。健気な努力だ。

 

ソリテール「私たちの注意を引きたいのはカンネのため? やっぱり君たちは恋人同士なのかな?」

 

ラヴィーネ(この魔族はなんだ? 何を言っているんだ? ただその興味は利用させてもらう)

 

ラヴィーネ「だったらなんだ? テメェら魔族に何の関係がある?」

 

ソリテール「私は会話から人類の習慣や文化、魔法技術を探究するのが研究テーマなの。今は百合という概念について研究しているの。どう? 面白いでしょ?」

 

ラヴィーネ「これっぽっちも面白くねェ!」

 

ソリテール「君とカンネは恋人同士なの? どちらがタチでネコ?」

 

ラヴィーネ「私たちはただの幼馴染だ!」

 

ソリテール「それじゃあキスもまだなの? 幼馴染ということは、素直に愛を伝えれば必ず受け入れてくれるよ。勇気を出して」

 

ラヴィーネ「勝手なこと言ってんじゃねえ!!」

 

ラヴィーネは口も手も休めない。

その間にも無数の氷柱を放つ。

私は高速で飛び、すべて回避した。

 

アウラ「きゃあああああ、やだああああ!!」

 

ソリテール「ふふ。アウラ、楽しいね」

 

アウラ「楽しくないぃ!!」

 

ソリテール「そろそろ私も反撃するね」

 

片手をかざす。収束した魔力を真っ直ぐ射出する。

 

ラヴィーネ「ゾルトラークだと!?」

 

照準はわざと外してある。肩先を掠めた程度だった。しかし余波でラヴィーネはバランスを崩し落下した。

 

ラヴィーネ「こいつ、いったいいくつ魔法が使えるんだ……」

 

もっと彼女の魔法が見てみたいけれど。あまり時間をかけて、他の人類がやって来て、取り逃すようなことになっては面白くない。

 

ソリテール「このままじゃお話しができないね。もういいよ。アウラ」

 

アウラ「<服従させる魔法>」

 

ラヴィーネ「ち、ちくしょう……!」

 

ラヴィーネ(それでも発動から完了まで、わずかなタイムラグがある)

 

彼女は渾身の魔力を振り絞って、巨大な氷塊を作り出す。

 

ソリテール「ふふ。素敵ね。まるで雪のよう」

 

私は光球を放ち、氷塊と相殺させた。

氷塊は粉々に砕け散り、霧のようにあたりに舞った。無数の氷片が日差しを受けてきらきらと光る。

 

ラヴィーネ「なん……だと……」キィィン

 

アウラ「服従完了ね」

 

ソリテール「ありがとう、アウラ」ちゅ

 

アウラ「…………」

 

ソリテール「リーニエもありがとう」

 

ラヴィーネ(もう一人いた!? まさか――)

 

カンネ「ラヴィーネェ……」ぽろぽろ

 

リーニエはカンネの首を掴み、いつでも殺せる状態だった。

 

リーニエ「攻撃しようとしてたから、経絡を遮断し無力化した。お姉様、食べてもいい?」

 

ソリテール「もうちょっと待って。彼女たちに聞きたいことがあるの」

 

ラヴィーネ「クソっ……首切り役人の一人、北斗七星のリーニエ……」

 

ラヴィーネ(姿が見えない時点で、潜伏しているのを疑うべきだった……)

 

ソリテール「今日のピクニックはここまで。お家に帰りましょう」

 

ラヴィーネ「カンネ…どうして逃げなかったんだよ……」

 

カンネ「ラヴィーネェ……ごめんなさいぃ……」

 

リーニエ「ちょっとしたご馳走だね」

 

アウラ「食べていいのは首だけよ。体は使うんだから」

 

ソリテール「あらあら、ふふ」

 

ラヴィーネ「……頼む、カンネだけは見逃してやってくれ……食べるなら私一人で十分だろ?」

 

ソリテール「私は人類の百合について知りたいの。二人一緒じゃないと駄目」

 

ラヴィーネ「くっそ……」

 

ソリテール「さぁ、君たちを私たちの家に招待するわ。おいで」

 

アウラ「私のお城よ……」

 

私たちは服従状態にした二人を連れて、廃城へと引き返す。

 

   *  *  *

 

ソリテール「二人とも歩けないみたいだから、私が運ぶね」

 

ラヴィーネとカンネを空中に浮かせる。

ラヴィーネは魔力切れで歩くことができない。

カンネは経絡を遮断されていて、魔法を使うことも体を動かすこともできない。

 

ラヴィーネ「最悪だ……」

 

カンネ「うぅ……ひっく……ぐすん」ぽろぽろ

 

アウラ「それでコイツらどうするのよ?」

 

ソリテール「実験に使うの。<百合を咲かせる魔法>のね」

 

アウラ「実験が終わったら?」

 

ソリテール「アウラの好きにしていいよ」

 

アウラ「魔法使いの肉体は脆弱だから、首を切ったら弾除けにでも使おうかしら」

 

リーニエ「頭以外も食べちゃダメ?」

 

アウラ「うーん。一体は非常食にとっておいて、もう一体は食べてもいいわよ」

 

リーニエ「どっち?」

 

アウラ「どっちでもいいわよ。好きな方食べれば?」

 

リーニエ「私が捕まえた方。私の獲物だから、そっちにする」

 

アウラ「いいわよ」

 

ソリテール「ふふ。分け合って偉いね。お姉様は嬉しいよ」

 

リーニエ「早く食べたい」

 

ソリテール「もう、リーニエったら食いしん坊なんだから」

 

アウラ「この子いっぱい食べるのよ」

 

リーニエ「育ち盛りだから」

 

ラヴィーネ(カンネだけは、カンネだけはどうにか助けたい…アウラの<服従させる魔法>は一時的に抵抗できる。魔力が回復するまでなんとか耐えて、隙を見つけるんだ)

 

カンネ「ラヴィーネ、ラヴィーネェ……嫌だよぉ……」ぽろぽろ

 

ラヴィーネ「情けない声出すな。クソ魔族どもが喜ぶだけだ」

 

カンネ「でも、でもぉ……ラヴィーネが死んじゃうの、嫌だぁ……」ぽろぽろ

 

ソリテール「安心して。二人ともちゃんと殺してあげるから」

 

カンネは声を上げて泣き始めた。

 

ラヴィーネ「カンネに酷いこと言うな、クソ魔族」

 

ソリテール「私の名前はソリテールよ。ラヴィーネ」

 

ラヴィーネ(断頭台のアウラも北斗七星のリーニエも、コイツに従ってるようだ。聖なる怪物ソリテール)

 

ラヴィーネ(アウラを倒し、コイツを足止めする。それが私の役割だ。その機会を必ず見つけ出す!)

 

ラヴィーネ「カンネ。お前のことは、私が絶対に守る」

 

カンネ「……ラヴィーネ?」

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