※この作品はR-18です。

ソリテール「百合を咲かせる魔法?」   作:socio

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第20輪 Blade runner on the Edge

リーニエ(お姉様の嘘つき。食べてもいいって言ったのに。もう自分で獲ってこよう)

 

リーニエは廃城を出て、街道に向かった。

辺りはすっかり暗くなっていた。

 

リーニエ(血の匂いがする。行ってみよう)

 

そこには輪切りにされた人類の死体がいくつも転がっていた。

 

リーニエ(食べるなら新鮮なのがいいな)

 

その死体の向こうに、切り株に座る一人の少女を見つける。

 

リーニエ(あ、生きてる。アレにしよう)

 

リーニエ「あなた、美味しそうだね」

 

リーニエ(アウラ様より胸が大きい。全体的にモチモチしてて美味しそう)

 

ユーベル「いいよ。殺し合おう」

 

黒髪の少女ユーベルは立ち上がり、杖を構える。死臭の中、不適な笑みを浮かべていた。

 

リーニエは棍を具現化する。

 

リーニエ(無力化して生きたまま食べる。絶対美味しい)

 

ユーベルの杖の先に光輪が出現する。収束した魔力が一直線に射出された。

 

リーニエ「ゾルトラークか」

 

難なく横に回避する。次弾が装填される前に、一気に間合いを詰めた。

それに対しユーベルは、その不適な笑みを消すことはなかった。

 

ユーベルの左肩をリーニエの棍が打つ。

 

リーニエ「!?」

 

連撃に移る前に、リーニエは咄嗟に飛び退いた。

 

ユーベル「良い勘してるね」

 

リーニエ(魔力探知に何か引っかかった)

 

ユーベル「もう少し反応が遅れてたら、その可愛い顔が輪切りになってたよ」

 

リーニエ(頬と髪が切られている。攻撃を受けたみたいだが、予備動作はなかった)

 

ユーベル「ふーん。ふふ。何をされたのかな。左腕の感覚がない」

 

ユーベルの左腕はだらりと垂れ下がっていた。左肩の秘孔を打たれ、経絡が遮断されている。自力での回復には半日以上かかる。

 

リーニエ「ゾルトラークは誘いか」

 

本命は、予備動作無しに放たれる不可視の刃。

 

リーニエは街道沿いの木立に駆け、身を隠し、闇に紛れた。

 

ユーベル「隠れても無駄」ザンッ

 

一瞬で木の幹は両断され、次々と切り倒されていった。しかしそこにリーニエの死体も姿もなかった。

 

ユーベルの背後にリーニエは回り込む。

 

リーニエ「面白い魔法だね」

 

振り返るユーベルの左膝の下を棍の先端が打つ。

 

ユーベルは転倒しかけるのを、咄嗟に屈んで防ぎ、その目にリーニエを捉えた。

リーニエは棍を縦に構え飛び退くが、肩に裂傷を受ける。

 

リーニエ「目か」

 

視界に捉えた対象を切り裂く魔法。

 

ユーベルは杖の石突を地面に突き立て立ち上がる。

 

ユーベル「今度は左足。長引くとやばいかもね」

 

リーニエ(切断された木の最遠距離から、おそらく射程距離は5メートル。私の魔力探知でも、直前まで感知できない)

 

ユーベル「もう分かっているみたいだから言うね。私の得意な魔法は<大体なんでも切る魔法>。攻撃範囲は――」

 

リーニエは動体視力を振り切る速度で、ユーベルの側面に回り込む。狙いは右足。

 

リーニエ「あ」

 

しかしリーニエの右腕に深々と裂傷が走った。再び距離を取るも、棍を取りこぼす。

 

ユーベル「大体気配で分かる範囲だね」

 

リーニエ(うん。これは天敵だ)

 

リーニエ(接近戦に持ち込めば不可視の攻撃。距離を取れば――)

 

ユーベルは杖の先を向ける。光輪が出現し、収束した魔力が射出される。

 

リーニエ(ゾルトラーク!)

 

難なく回避したが、背後の樹幹が爆散し、音を立てて倒れる。直撃を受ければ致命的だった。

 

ユーベル「どうしたの? 諦めちゃったのかな?」

 

リーニエ(右腕の裂傷が深い。長柄はもう使えないか)

 

ユーベル「そう。もういいや」

 

ゾルトラークの連射。リーニエの回避方向を予測して、追い込んでいく。

 

不意にリーニエが放った石ころが、魔力探知を掻い潜り、ユーベルの右肩を打った。

 

ユーベル「クソ魔族らしい悪あがきだ――」

 

途端、右肩から先の感覚が消失し、杖を取りこぼす。

 

ユーベル「え?」

 

リーニエ「一瞬で戦いがつまらなくなるから、この技は使いたくなかったんだよね」

 

リーニエは左手の中に、直径10ミリ程度の小さな玉を具現化する。

 

リーニエ「指弾による射程範囲外からの一方的な攻撃」

 

ユーベル「最低で卑劣な戦い方だね」

 

右手の人差し指を曲げて親指の腹に引っかけ、力を溜める。その力を解き放つと、左手に乗せた玉を勢いよく弾き飛ばす。

それはユーベルの右膝下を打ち、右足の感覚を奪う。彼女はその場に膝をついた。

 

リーニエ「魔法使いは戦士に比べて、軽装で、肉質も柔らかい。こんなのが通用するのは魔法使いぐらいだ」

 

ユーベル「あまりにも小さく、魔力探知を掻い潜るから、防御魔法も反応しないのか」

 

リーニエ「私が接近戦を主体にすると油断したのも致命的だったね」

 

ユーベル「もういいよ。殺せば?」

 

リーニエの姿が消える。ユーベルの背後に回り込んだ。同時に彼女の両方のこめかみを、両の親指で突く。

 

ユーベル「あっ……」

 

ユーベルの視界が暗転する。

 

ユーベル(私は死んだ? いや、風も温度も感じる。視覚だけ奪われた?)

 

ユーベル「ふふっ、なぶり殺しにするつもり? いい趣味だね。言っておくけど私、不感症だから。悲鳴一つ上げてあげないから」

 

リーニエ「人類の美味しい食べ方について考えた。まず新鮮なうちに食べた方が美味しい。料理するともっと美味しい」

 

ユーベル(声は背後からする。まだ感覚がこの状態に適応していない。時間を稼ぐか、私に触れた瞬間、切り裂く)

 

不意にリーニエの指先が、ユーベルの眉間を突いた。

 

ユーベル「かはっ!?」

 

ユーベルは呼吸ができなくなり、全身の力も抜け、その場に崩れる。

 

リーニエ「あなたの魔法は、周囲の気配を探知して切り裂く魔法。だから身体感覚を奪った。これで魔力探知はできない」

 

さしものユーベルも、呼吸ができなければ余裕もなくなった。

 

ユーベル「……さっさと殺したら?」

 

リーニエ「お姉様が言っていた。料理の前には下拵えをすることが大事」

 

ユーベル「……何するつもり?」

 

リーニエ「経絡の流れを組み換える。まずは魔法を使えない体にする」

 

リーニエは身動きができないユーベルの体を仰向けにし、全身の秘孔を指で突く。

 

リーニエ「あたたたたっ!」ドドドッ

 

ユーベル「ぐぁあっ!?」ビクビクビク

 

ユーベル(痛い!? なんで!?)

 

ユーベルの全身を激痛が駆け巡った。それは指で突かれた痛みではなかった。

人為的に組み換えられた魔力の流れが、体内の各所で衝突や逆流を起こし、全身に剣山で突き刺されたかのような激痛をもたらした。

またこの経絡を組み換える過程で、不幸にもユーベルの痛覚は復活してしまった。

 

ユーベル「痛い、痛い…」ぐすぐす

 

リーニエ「うん。疲れたな。でも出来た」

 

ユーベルの両手足の感覚と視覚はまだ回復していない。ただ魔力探知は戻った。

 

ユーベル(このクソ魔族、切り刻んでやる!)

 

<大体なんでも切る魔法>を発動――

 

ユーベル「ああああああっ!?」ビクビクビク

 

全身に再びあの激痛が走る。

 

ユーベル「……なんで、なんで!?」ハアハア

 

リーニエ「言ったはず。魔法を使えない体にするって。魔法を使えば、その魔力が体内を逆流するから、もう魔法は使えない」

 

ユーベル「そんなことが……」ハアハア

 

リーニエ「これで下拵えはできた。今から料理する」

 

リーニエの指がユーベルに触れた。

 

ユーベル「きゃっ!?」ビクン

 

全身の触覚が敏感になっていた。触れられただけで、そこに電気が流れたようだった。

 

リーニエ「ここだと邪魔が入るかもしれないから、森の中で料理する」

 

リーニエはユーベルを担ぎ上げる。

 

ユーベル「痛い痛い痛い! 息ができない! 早く殺してよ!」プシューーードボドボ

 

悲鳴を上げ、失禁するユーベルを意に介さず、リーニエは彼女と森の中へ消えて行った。

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