※この作品はR-18です。

ソリテール「百合を咲かせる魔法?」   作:socio

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第30輪 恋バナ

カンネは自室に戻った。

ラヴィーネの左隣に腰かけ、肩に頭を乗せる。

 

カンネ「ねぇ、ラヴィーネ。私たちどうなるのかな?」

 

ラヴィーネ「何があっても、お前のことは私が守る」

 

カンネ「えへへ、ラヴィーネありがとう。大好き」

 

カンネはラヴィーネの頬にキスをした。腕を絡ませて抱きつく。

 

ラヴィーネ「何かあったのか?」

 

カンネ「何にも」

 

カンネ(ラヴィーネは優しい。自分だって辛いはずなのに、私のことを気遣ってくれる)

 

カンネ(ユーベルのことはまだラヴィーネには黙っておこう。もしソリテールにバレたとき、ラヴィーネまで酷い目に遭ったら嫌だ)

 

カンネ(それにあの子、意地悪だし性格悪そう! 本当に信用できるかも分からないし、嘘を言ってるかも)

 

カンネ「ねぇ、ラヴィーネ、したくなったかも……」ハアハア

 

ラヴィーネ「お前は万年発情期のウサギか」

 

カンネ「えへへ、ラヴィーネちゃんのこと、舐めちゃおうかな」

 

ラヴィーネ「このヤロー」

 

いつもの調子で、ラヴィーネはカンネの左右の髪を掴もうとした。

 

カンネ「あれ、ラヴィーネ?」

 

ラヴィーネ「やべっ」

 

カンネはラヴィーネの右手に包帯が巻かれていることに気付き、隠される前に手首を掴む。

 

カンネ「この怪我、どうしたの?」

 

ラヴィーネ「転んだ時に怪我した」

 

カンネ「ソリテールに何かされたの!?」

 

ラヴィーネ「違う! 転んだとき、ガラスが刺さっただけだ」

 

カンネ「嘘だ! 微かに魔力がこもってるもん!」

 

ラヴィーネ「違うって言ってるだろ!!」

 

カンネ「そんな怒鳴らないでよ…」ビクビク

 

ラヴィーネ「悪い……」

 

しばらく二人は沈黙した。

 

カンネ「……私、夕食の手伝いにいってくる」

 

ラヴィーネ「……アイツに近づくのはやめろ。危険だ」

 

カンネ「私たちが生き延びるには、ソリテールと友達になるしかないよ」

 

ラヴィーネ「お前がそんなことする必要ない」

 

カンネ「ううん。私がしないといけないの。私にできることはそれだけだから」

 

ラヴィーネ「なら、私も行く!」

 

カンネ「ごめん、ラヴィーネ。これは私の戦いだから」

 

ラヴィーネ「カンネ……」

 

カンネ(ユーベルの話を信じたわけじゃない。仮に本当だとしても、そうでなくても、私たちに残された時間は少ない)

 

カンネ(それに、ソリテールに確かめたいことがある)

 

ラヴィーネ(あのことはカンネに知られたくない…これ以上引き止めれば、カンネに怪しまれるかも……)

 

ラヴィーネ(それに私が従い続ける限り、ソリテールはカンネに酷いことはしないはずだ……)

 

ラヴィーネ「カンネ……無茶だけはするなよ……」

 

カンネ「うん、大丈夫だよ。ちょっと行ってくるね」

 

   *  *  *

 

私が夕食の支度をしていると、カンネが一人でやってきた。

 

カンネ「手伝いに来たよ、ソリテール」

 

ソリテール「ありがとう。とても助かるわ」

 

カンネ(もしラヴィーネがソリテールに何かされていたら、私のせいだ。私のせいでラヴィーネが――)

 

ソリテール「今日はね、山鳥の煮込みと、ワインビネガーをかけたサラダ。リーニエには牛肉のオーブン焼き。薄切りにした玉ねぎと一緒に焼いて、すり潰したニンニクをかけて香り付けをするわ。これは少し切り分けてみんなで食べましょう」

 

カンネ「すごい、楽しみ!」

 

カンネ「あれ、ソリテール、胸に――」

 

カンネ(ソリテールの胸に、ラヴィーネの残留魔力がある。服で隠れているけど、怪我している? やっぱりラヴィーネはソリテールを殺そうとした!?)

 

カンネ「ソリテール、もしかしてラヴィーネが何かした?」

 

ソリテール「ん? 何もないよ」

 

カンネ「でも…」

 

ソリテール「カンネは心配性だね。ラヴィーネに何かあったの?」

 

カンネ「ラヴィーネが右手に怪我してた……たぶん自分の魔法で怪我したんだと思う……」

 

ソリテール「そうなんだ。早く良くなるといいね」

 

カンネ「……ラヴィーネが、ソリテールを殺そうとしたんじゃないの?」

 

ソリテール「仮にもしそうだとして、何か心配なことでも?」

 

カンネ「ラヴィーネを殺さないで……」

 

彼女は今にも泣き出しそうだった。

私は彼女に微笑みかける。

 

ソリテール「ラヴィーネは私の友達カンネの恋人。もし彼女が私を殺そうとしても、君に黙って殺したりしないから。もしもの話よ。そんなことはなかったわ」

 

嘘はついていない。お仕置きはした。大切なものをもらった。

 

カンネ「ありがとう、ソリテール」

 

ソリテール「カンネは本当にラヴィーネが好きなんだね」

 

カンネ「えへへ」

 

カンネ(やっぱりソリテールは優しい。ソリテールに人の心を理解させれば、きっと――)

 

カンネが笑顔を取り戻す。

私のことを信頼して安心したのだろう。

本当に君は可愛い。可愛い可愛い愛玩動物。

 

カンネ「ソリテールはアウラが好きなんだよね」

 

ソリテール「そうだね。そういうことになっているね」

 

私たちは手を進めながら会話する。

 

カンネ「ねぇ、友達同士は、恋のお話とかするんだよ」

 

ソリテール「そういえばそうだね。人類は恋バナが大好きだよね」

 

カンネ「だから私たちも恋バナしよ! 私、友達と恋バナするの初めて。ラヴィーネのことが好きなこと、今まで秘密にしてたから」

 

ソリテール「素敵ね。君たちのこと、もっと教えて」

 

カンネ「うん、いいよ。私たちが幼馴染で、同じ魔法学校の出身だって話したよね」

 

ソリテール「ええ」

 

カンネ「本当はね、前はラヴィーネのこと嫌いだったの。乱暴で、いつも意地悪なことばっか言ってさ。子供の頃から私のこといじめて」

 

カンネ「でもある時、気付いたの。本当はいつも私のこと見ていてくれて、臆病な私の背中を押してくれてたのは、いつだってラヴィーネだった、て」

 

カンネ「いつもラヴィーネが一緒にいてくれるから、どんな怖いことも二人でなら、勢いに任せたら意外となんとかなるって気が付いたの」

 

カンネ「ラヴィーネはね、私の勇気なんだ」

 

ソリテール「素敵な関係だね」

 

カンネ「うーん、少し恋バナと違ったかな。ラヴィーネの笑顔が好き、がさつなところも好き、ぶっきらぼうなくせに優しいところが好き。全部好き!」

 

カンネ「あー、言ってて恥ずかしくなってきた! 次、ソリテール!」

 

ソリテール「私?」

 

カンネ「そうだよ。ソリテールとアウラのことも教えて」

 

ソリテール「私――私たちは、ただの利害関係で結びついているだけ」

 

カンネ「そうじゃないんだけどなぁ……うーん、その利害関係ていうのは?」

 

ソリテール「<百合を咲かせる魔法>を完成させられるのは、私とアウラしかいないから」

 

カンネ「どうして?」

 

ソリテール「人類の百合を理解できる魔族は私だけ。私と百合ができるのはアウラだけ」

 

ソリテール「魔族には、家族や恋人という概念がないの。だから百合をしようとしても、アウラ以外の魔族に対しては、力で従わせるしかない」

 

ソリテール「アウラの<服従させる魔法>を使わない前提で、仮に私がリーニエと百合をしようとした場合、いずれ彼女は私から逃げようとするか、私を殺そうとするわ」

 

ソリテール「そうなると私は彼女を殺さなければならない。あるいは手足を切断してダルマにしてもいいけどね。そうなると少し違うでしょ?」

 

カンネ「う、うん。そうだね……」

 

ソリテール「私に逆らうたびに殺して、また次の相手を探していたら、いつか魔族が絶滅してしまうと思うの」

 

ソリテール「その点、アウラの<服従させる魔法>は、先の問題を解決できる。だから私にはアウラしかいなかった」

 

カンネ「それってソリテールにとって、アウラはかけがえのない存在ってことだよね」

 

ソリテール「そうなるね」

 

カンネ「それじゃあさ、アウラのどんなところが好き?」

 

ソリテール「それは利害関係で、彼女しかいないから――」

 

カンネ「一緒にいて、ここがいいなあとか、こういうところ好きだなあって思わない?」

 

ソリテール「……そうだね。感じやすくて、すぐにイっちゃうところは、興味深いね」

 

カンネ「なんかエッチだね……」

 

ソリテール「魔族なのに、泣いたり怒ったり、感情表現が豊かなのも興味深い」

 

カンネ「やっぱりアウラって、魔族の中でも変わってるんだ?」

 

ソリテール「君もそう思う?」

 

カンネ「うん。ソリテールってすごい落ち着いてるじゃん。優しいし。大人のお姉さんって感じ」

 

ソリテール「ふふ。ありがとう」

 

カンネ「リーニエも落ち着いてるけど、何考えているか分からない感じで、ミステリアスだね」

 

ソリテール「あの子はご飯のことしか考えてないよ」

 

カンネ「そうなんだ。でもアウラは、泣いたり怒ったり、嫌そうな顔したり、人類と変わらないみたい」

 

ソリテール「うん。見てて飽きない」

 

カンネ「きっとそれが好きってことだよ」

 

ソリテール「そうかな」

 

カンネ「仮にもし、他の魔族とも<百合を咲かせる魔法>ができたら、アウラを選ばなかった? アウラよりもパートナーにしたかった魔族はいた?」

 

ソリテール「……アウラ以外?」

 

私は<百合を咲かせる魔法>のパートナーとしてアウラを選んだ。それは他に選択肢がなかったから。

仮にもし、誰でも選ぶことができたとしたら、私はどうしただろうか。手頃な、手近な魔族で済ませただろうか。

特定の誰かを選んだだろうか。

 

ソリテール「分からない。考えたこともなかったわ。想像もできない」

 

カンネ「それはきっと、ソリテールがアウラを大好きだからだよ」

 

私たち魔族に恋愛感情はない。愛玩動物に向ける好意、愛着はある。私はきっとアウラに愛着があるのだ。

人が人に向ける愛情とは違う。

 

私はぎこちなく笑った。

 

ソリテール「それなら私は、人類の百合に近づけたということだね」

 

カンネ「そうだね。そしたら今度、四人でデートしない? ダブルデートって言うんだよ!」

 

ソリテール「それはとても素敵だね。うん、是非しよう」

 

カンネ「お城の近くに、どこかいい場所あるかな?」

 

ソリテール「すぐ裏に湖があるの。今度一緒に行こう」

 

カンネ「いいね! 楽しみ!」

 

人類であるカンネを欺くほど、私は百合の高みに近付いている。

このまま彼女を利用して、さらなる高みを目指そう。

 

   *  *  *

 

私はアウラとリーニエの魔力を感知し、城の外まで出迎えに行く。

行くべきだと、カンネに勧められた。

 

カンネ「残りは私がやっておくから、ソリテールはアウラを迎えに行ってあげて」

 

ソリテール「別にその必要はないと思うけど」

 

カンネ「恋人同士なら、玄関まで迎えにいくものだよ。あとアウラに、もっと優しくしてあげてね」

 

ソリテール「なぜ?」

 

カンネ「恋人に優しくしてもらえると嬉しいから。だから恋人に優しくすることはとても大事だよ」

 

ソリテール「アウラのことを大切にすれば、より恋人らしくなるってことだね」

 

カンネ「うん、そうだね」

 

――その方が恋人らしいから、という理由だった。

 

ソリテール「おかえり。アウラ、リーニエ」

 

アウラ「ただいま……」

 

リーニエ「ただいま」

 

ソリテール「無事、手勢も手に入れたんだね。おつかれさま」

 

そこで私はリーニエの左腕に添え木をしてあるのに気付いた。

 

ソリテール「ん? リーニエ、怪我したの?」

 

リーニエ「左腕折れたみたい」

 

ソリテール「大丈夫なの?」

 

リーニエ「大丈夫。明日にはくっつくと思う」

 

ソリテール「そう、よかった。それにしても、リーニエに怪我を負わせることのできる人類か。大陸中から腕の立つ人類が集まってきてるみたいだね」

 

リーニエ「そう、みたい」

 

リーニエ(アウラ様がポンコツなせいなのは言えないな……)

 

ソリテール「明日からは私も一緒に行くね」

 

アウラ「別に、私たち二人で大丈夫よ!」ドキドキ

 

ソリテール「もしも二人に何かあったら困るわ。それに人類の戦力を削りつつ、私たちの戦力を増強しておきたい」

 

アウラ「そ、そうね。だけど、わざわざお姉様の手を煩わせることもないわ…」

 

アウラ(コイツの前で服従の天秤が発動しなかったら、何をされるか分かったもんじゃないわ……)

 

ソリテール「アウラ」

 

アウラ「な、なによ!?」ビクビク

 

ソリテール「君は偉いのね。私のことを気にかけてくれて、ありがとう。自慢の妹だよ」

 

アウラ「どういたしまして!」

 

ソリテール「だからこそ、私も一緒に行くよ。世界で一番、君のことが大切だから」

 

私はアウラの頬に手を触れる。冷たくて柔らかくて、どうして彼女はこんなに気持ちがいいのだろう。

 

私はアウラにキスをした。

 

ソリテール「アウラ、大好きだよ。世界で一番」

 

アウラ「私も、お姉様のことが大好き……」

 

ソリテール「嬉しい」

 

愛玩動物が飼い主に向ける依存心のようで嬉しい。

 

ソリテール「今日はまだ、全然愛し合ってなかったね」

 

アウラ「そうね……」

 

ソリテール「今夜は、たくさん愛し合おうね」

 

アウラ「はい、お姉様……」

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