カンネとラヴィーネは自室の寝台で、抱き合いながら眠る。
ラヴィーネ(状況は最悪だ……人類の力であの結界を破壊することはできるのか? あのソリテールがそんな脆いものを作るとは思えない……)
ラヴィーネ(結界の外に出るにはアウラの服従下になるしかない。アウラが解放してくれるとも思えない……)
カンネ「ラヴィーネ、起きてる?」
ラヴィーネ「ああ……」
カンネ「なんか怖い顔してたよ」
ラヴィーネ「……カンネは、私が守る」
カンネ「私だって、ラヴィーネを守りたい。ねぇ、悩んでいること、困っていることがあったら、ちゃんと私に言って。ラヴィーネと一緒に私も考えるから。お願い」
カンネはラヴィーネの手を握る。
ラヴィーネは躊躇いがちに口を開く。
ラヴィーネ「ソリテールの結界を、どう突破すればいいか分からない……」
カンネ「それなんだけど、ラヴィーネ。どうしてソリテールはあんな不完全な結界を作ったの?」
ラヴィーネ「……不完全?」
カンネ「だって自分も閉じ込められちゃうじゃん」
ラヴィーネ「どういうことだ?」
カンネ「結界を出入りできるのはアウラの魔力を帯びている者だけでしょ」
ラヴィーネ「ソリテールもアウラの<服従させる魔法>で魔力を帯びているだろう?」
カンネ「でももし、アウラが結界の外で魔法を解除したら?」
ラヴィーネ「……ソリテールは結界の中に閉じ込められる」
カンネ「結界を解くか、破壊して、アウラのことを追いかけるよね。ソリテールはアウラのことを一番大切に思っているから」
ラヴィーネ「アウラを結界の外で、服従魔法を解除させれば、脱出のチャンスができる!?」
カンネ「うん。だからまだ希望があるよ」
ラヴィーネ「そうだな!」
カンネ(ラヴィーネの表情が明るくなってよかった。だけど私はまだ、ソリテールと分かり合えると思っている。ユーベルの言ってたことはまだ黙っていよう)
* * *
ユーベルは粗末な荒屋の中に置かれていた。
乱暴に掻き回された膣と肛門が痛み、起き上がる気力もなかった。
ユーベル「……そう……つまらない」
ユーベル「つまらないな……こんなの……」
* * *
廃城とその周囲を覆う琥珀色の結界。
結界の外側に二人の人類がいた。
フェルン「これは結界? 魔族は結界を作れるんですか?」
フリーレン「かつて七崩賢の一人、不死なるベーゼが結界魔法を使えた。しかし奴は私たち星屑十字軍が倒している」
フェルン「それでは人類側に裏切り者が?」
フリーレン「いや。これは魔族の作った結界だ。解析するのに百年はかかるだろう。やれやれだ」
フェルン「断頭台のアウラに、謎の大魔族。他にも結界魔法を使う魔族がいるということですね」
フリーレン「今、大陸中の人類の最高戦力が、グラナト領に結集しつつある。私たちの出る幕はないだろう」
フェルン「しかし人類である以上、私は見過ごすべきではないと思います」
フリーレン「だがフェルン。ヘヴィすぎる。状況が」
フリーレン「大魔族が二体。やれやれだ。ヘヴィすぎるぞ」
フェルン「そこはフリーレン様の無敵の魔法でなんとかしてくださいよ」
フリーレン「……やれやれだぜ」
――結界の外に、よく知っている、忘れもしない魔力の感触がした。
ソリテール「そう。君が来るんだね、フリーレン」
私は眠るアウラを抱きしめる。
最後の戦いに向けて、時の歯車は加速する――
* * *
廃城の尖塔の屋根に、リーニエは一人腰掛け、リンゴをかじる。
沈む月を見ていた。
月齢5の三日月は、西の地平に音もなく沈んでいった。
次回、新章突入!!
錯綜する想いが交差する。
満月の晩、運命の刻が近づく。
最後の九日間。
彼女たちに待ち受けるものとは?
第三幕「月下の夜想曲」
近日開幕!!