※この作品はR-18です。

ソリテール「百合を咲かせる魔法?」   作:socio

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第36輪 楔

○廃城の家畜小屋。昼。

ユーベルが引き摺るようにバケツを運んでいる。

 

バケツの中には、クズ肉やクズ野菜をすり潰して液状にした、嘔吐物のような餌が入っている。

 

リーニエ「あなたには一日三食、不死の軍勢に餌やりをしてもらう」

 

ユーベル「どういうこと? 死体にわざわざ食べさせる意味があるの?」

 

リーニエ「死んでない。生きている」

 

ユーベル「……は?」

 

リーニエ「<服従させる魔法>は、アウラ様と服従対象の、双方の魂を乗せることで成立する。服従魔法は対象の魂に直接かかっている。生体活動を停止すれば、魂は肉体を離れて魔法は解除される」

 

ユーベル「……それじゃこの首無し兵士は、全員生きているってこと?」

 

リーニエ「首を切断しても、術式によって、自身の魔力を消費する形で生体活動を継続している。大体十年はもつ」

 

ユーベル「……悪趣味すぎて反吐が出る」

 

リーニエ「首の切断面に食道があるから、そこに直接流し込んで」

 

ユーベルは嘔吐物のような餌を柄杓で、漏斗を使って直接食道に流し込む。

 

ユーベル「……気持ち悪」

 

リーニエ「排泄は自動で処理するけど、たまに漏らしているのいたら片付けておいて」

 

ユーベル「…………」

 

ユーベル(不死の軍勢はアウラの主力。その世話係をさせられている間は殺されない。さっさと殺してほしいけど、ただ殺されるのもつまらないな)

 

ユーベル(致命的な楔を打ち込んで死にたい)

 

ユーベルは、見張りという訳でもなく、ただいるだけのリーニエに声をかける。

 

ユーベル「ねぇ、どうしてリーニエたちはソリテールとかいう、頭のおかしな魔族に従っているの?」

 

リーニエ「単純なこと。誰もお姉様に勝てないから」

 

ユーベル「力で従わされているんだ」

 

リーニエ「それ以外に何がある?」

 

ユーベル「そうだね。そしてソリテールがリーニエたちを手元に置いているのは、<百合を咲かせる魔法>を完成させるため」

 

リーニエ「そう」

 

ユーベル(そんな魔法が存在する訳がない。という情報を切るのは、まだ早いな。とっくに気付いているだろうけど、私が気付いていることは知られたくない。口封じに殺してもらえるかもしれないけれど、どうせなら、できるだけ多く死ぬ方がいい)

 

ユーベル「魔族同士では<百合を咲かせる魔法>が発動できないと判明したらどうなるかな?」

 

リーニエ「単純なこと。皆殺しだね」

 

ユーベル「へー。それなのに従っているんだ。逃げればいいのに」

 

リーニエ「お姉様から逃げることは、現状では不可能」

 

ユーベル「でもリーニエだけなら逃げられるんじゃない? ソリテールが関心を持っているのはアウラだけだから」

 

リーニエ「私はアウラ様の<服従させる魔法>で、お姉様から逃げることも危害を加えることもできなくなっている」

 

ユーベル「それならアウラを殺して、逃げれば?」

 

リーニエ「……結界から出られなくなる」

 

ユーベル「昨日みたいに二人で外に出てから、アウラを殺せばいいじゃん?」

 

リーニエ「…………」

 

ユーベル(アウラが死んだ場合、ソリテールの考えられる行動は、皆殺しか、一切の興味を失うか。できれば皆殺しがいいね)

 

リーニエ「さっきから何が言いたい?」

 

ユーベル「リーニエのことを知りたいだけ。人類と魔族で、共感できるものがあるのか」

 

リーニエ「そう」

 

ユーベル「それで分かったんだけどさ。リーニエはアウラのことを、大切に思っているんだね」

 

リーニエ「どういう意味?」

 

ユーベル「驚いたな。力による支配と服従関係しか魔族にはないと思っていたのに。魔族も誰かを愛することがあるんだ。リーニエはアウラのことを好きなんだね」

 

リーニエ「アウラ様のもとにいれば、食事に困ることがない。それだけ」

 

ユーベル「だけどソリテールのもとにいるメリットは? 断頭台のアウラを従える以上、七崩賢以上かそれに匹敵する魔族なんだろうけど。いずれ殺されるのに、従い続ける理由は何?」

 

ユーベル(だから逃亡するんだろうけど、それにしたって、アウラを助ける理由がない。自分さえ助かればいい、そう考えるのが普通だし、魔族ならなおさら)

 

ユーベル「だからさ、リーニエはアウラのことが好きなんだね。近くでアウラのことを守りたいんだ。それとも性行為のおこぼれにあずかりたいのかな?」

 

リーニエ「黙れ」

 

感情の乏しいリーニエの顔から血の気が引き、微かに怒りを滲ませたような、幽鬼のような形相を浮かべる。

 

これにはユーベルもたじろいだ。

それでも不適な笑みを消さない。

 

ユーベル「黙らせたければ、殺せば?」

 

ユーベル(私の命はリーニエの所有物。カンネたちはソリテールの所有物。私の命の序列は最下位だ。たとえここで殺されても、こいつを楔にして、大勢を道連れにしてやる。そのためには、ここで命を賭ける)

 

ユーベル「私のことを殺せば、アウラのことを好きだって認めたことになるよ」

 

リーニエ「仮に好きだとしたら、どうだというのさ」

 

ユーベル「惨めだね」

 

リーニエの大きな目が、引きつったように見開かれる。

 

ユーベル「大好きなアウラを、ずっとそばで仕えてきたアウラを、自分ではどうすることもできない相手に奪われて」

 

リーニエ「…………」

 

ユーベル「二人が愛し合う姿を見せつけられて、いつの日か殺される。あー、でももしかしたら、<百合を咲かせる魔法>が完成して、リーニエのことは不要になって捨てられるかもね。だから、本当に惨めだね」

 

リーニエはユーベルを壁に突き飛ばす。そのまま首を掴む。

 

ユーベル「……認めるんだ」

 

リーニエ「黙れ」

 

ユーベルは一瞬、ある人物を思い出した。死を前にした走馬灯にしては、一瞬の閃光だった。

 

ユーベル(ああ、そうか。私はこの魔族に共感してしまったんだ。きっとそれは、私という存在が、私の心が人類よりも、魔族に近いってことなんだろうね)

 

ユーベル「……私にも、歳の離れた姉がいてさ。後から気付いたんだ。彼女のことが好きだった、て。もう伝えることもできないけど」

 

微かにユーベルの首を掴む、リーニエの手が弛んだ。

 

リーニエ「何の話をしている?」

 

ユーベル「ソリテールに無惨に凌辱されるアウラを、助けたいと思わないの?」

 

リーニエが何か言いかけて口をつぐむ。

 

ユーベル(だから逃亡する、って言いたかったのかな? そんな生優しい未来は許さない)

 

ユーベル「ソリテールの手でアウラが殺される日が、今日じゃない、明日じゃないと言い切れる? あー、ごめんね。だとしても、無力なリーニエには、何もできないよね」

 

ユーベル(そう、無力な私。無力だった私。大切なものを守れない無力さに、私は共感したんだ)

 

リーニエ「もういい、黙れ」

 

リーニエは自身の口で、ユーベルの口を塞いだ。

 

ユーベル「んん!?」

 

そのまま組み伏せ、乱雑にユーベルの服を剥ぎ取る。

 

ユーベル「黙らせるって、そっちかよ!」

 

ユーベルはリーニエを押し退けようとするが、常人以下に落とされた筋力では、見た目以上の膂力を持つリーニエは微動だにしない。

 

リーニエ「魔族は誰かを愛したりしない。私はアウラ様を好きになったりしない」

 

ユーベル「だけどソリテールは、アウラを愛しているんじゃないの?」

 

リーニエはユーベルの胸を乱暴に鷲掴みにする。

 

ユーベル「痛いっ!」

 

リーニエ「お姉様は、人類の真似をしているだけ。愛している演技をしているだけ」

 

ユーベル「人類も、愛しているフリをしているだけ。みんな、自分は人間だって演じているだけ。そう考えると、人類と魔族に違いなんてないね。ソリテールとアウラも同じ。愛し合う恋人同士と同じだね」

 

リーニエ「黙れ黙れ黙れ!」

 

リーニエは口でユーベルの口を塞ぎ、濡れていない膣口に指を突っ込む。

 

ユーベル「ん、んん……」

 

ユーベルは痛みに顔をしかめる。

 

ユーベル(無意識に、私に一番苦痛と屈辱を与える手段を選んでるんだ……気が狂いそうだけど、耐えて、こいつの死ぬさまを見届けてやるんだ……)

 

リーニエ「愛がなくても、百合はできる。こんな風に。あの二人に愛なんてない」

 

ユーベル「……リーニエにはあるんだ?」

 

リーニエは真っ白な顔で、ユーベルの片乳を握る手に力を込める。

 

ユーベル「う、ぐぅ……」

 

リーニエ「お前みたいなメス豚に私のことが分かるわけない」

 

そう告げると、リーニエは体を離し、背を向けて立ち去っていく。

 

ユーベルは膣の痛みに立ち上がれず、その背を見送る。

 

ユーベル「……さぁ、殺し合え」

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