※この作品はR-18です。

ソリテール「百合を咲かせる魔法?」   作:socio

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第39輪 魔族を狩る者

○グラナト伯爵領周辺の街道。昼過ぎ。

ソリテールとアウラは街道を行く、護衛を含む行商人の一行、十人ばかりを襲撃した。

 

魔力を具現化した剣で包囲する。

 

護衛「ひぃぃ……殺さないで……」

 

行商人「はわはわは……」

 

ソリテール「ごめんなさい。君たちのうち半分は、アウラの不死の軍勢に。もう半分は<百合を咲かせる魔法>の実験に付き合ってもらうね」

 

ソリテールはアウラを促す。アウラは躊躇いがちに服従の天秤を具現化する。

 

アウラ(無事発動できるかしら……リーニエは、恐怖感で克服するようにと言ってたけど……)

 

アウラ(できなかったら肛門破壊、できなかったら肛門破壊、できなかったら肛門破壊ーー)

 

アウラ「<服従させる魔法>……」

 

天秤に自身と対象の魂が乗る。

 

アウラ「やった! できた!」

 

ソリテール「何が?」

 

アウラ「な、なんでもないわ!」

 

アウラはなるべく屈強な、護衛の中から五人を選ぶ。

服従完了後、ソリテールが魔剣で首を切り離す。

 

行商人「ひぃぃ! ひぃぃぃぃ!!」ジョーーードボドボ

 

その光景に生き残った者たちは失禁し、意識を失う者もいた。

 

ソリテール「残りは、<百合を咲かせる魔法>。アウラ」

 

アウラ「いやぁ……」

 

ソリテールはアウラを抱き寄せキスをする。

 

ソリテール「ん……ちゅっ……アウラ……」

 

アウラ「んん……やぁ……」

 

二人は舌を絡めてしばらくキスをする。ソリテールは唇を離すと、人類の方を見る。

 

行商人「え、なに? 百合のつもり? きたねえ百合だなーーあがっ!?」ザンッ

 

ソリテールは魔剣で口を貫き、そのまま半分に切断する。

 

ソリテール「……この調子で、たくさん試してみよう」

 

アウラ「意味ないわよ……もうやめましょう……」

 

ソリテール「意味がない?」

 

アウラ「いや、あの、その……」

 

ソリテール「確かに未完成なもので、何度実験を繰り返しても意味がないよね」

 

アウラ「そう、そうそう!」

 

ソリテール「そうだね」

 

ソリテールは気落ちした様子だった。

 

アウラ「ほら、早く用事を済ませて帰って、カンネたちを利用して、魔法を完成させましょう」

 

ソリテール「うん。そうだね。ありがとう、アウラ」

 

   *  *  *

 

日が暮れ始める。

不死の軍勢は三十人ほど。物資の補給も完了した。

 

ソリテール「それじゃ、帰ろうか」

 

アウラ「そうね」

 

不意にソリテールが立ち止まる。

 

ソリテール「今、魔力探知がされた」

 

アウラ「私、この魔力を知っているわ。誰だったかしら?」

 

ソリテール「アウラ、先に帰ってて。私は彼女に挨拶してくるね」

 

アウラ「そう。先に帰ってるわね」

 

ソリテールはアウラと分かれ、道を引き返す。

 

   *  *  *

 

街道に、一人の雌エルフがいた。

 

ソリテール「この時間軸では初めましてだね。フリーレン」

 

フリーレン「この辺りで断頭台のアウラの魔力を探知したが、もう一人の奴か」

 

ソリテール「大魔族のソリテールよ。改めて、よろしくね」

 

フリーレン「知らないし、どうでもいい」

 

ソリテール「少しだけお話ししましょう。その後、君を殺して私は帰るわ」

 

フリーレン「魔族とは会話するだけ時間の無駄だ」

 

ソリテール「フリーレン、君は女の子同士の恋愛に興味がある? 百合という言葉を知っている?」

 

フリーレン「もう喋るな。話が噛み合わない」

 

ソリテール「私はこの時間軸では、人類の百合について研究しているの。もうすぐ<人類を滅ぼす魔法>が完成するわ」

 

フリーレン「言っていることが分からない。イカれているのか?」

 

ソリテール「君にも見せてあげたいけど。私は臆病で心配性な性格なの。君の存在はあまりにも危険すぎる。今ここで君を始末するのが最善手」

 

ソリテール「だから、最期に君のことを是非私に教えて。フリーレン、君は百合なの?」

 

フリーレン「やれやれ。クソ魔族が。クソみてえな話に付き合ってやる。その代わり、私の右に一歩ズレろ」

 

ソリテール「いいよ」

 

フリーレン「もう半歩、右」

 

ソリテール「ここかしら?」

 

フリーレン「うん、そこでいい。そこの位置でいい。フェルンーー」

 

夕刻の空に星が瞬いた。

 

ソリテール「ふふ。綺麗ね」

 

その星より放たれたゾルトラークが、ソリテールの胸を撃つ。

かつて彼女を殺した魔法だった。

 

ソリテール「……ふ……ふふっ……」

 

白煙の中、ソリテールが笑う。

 

フリーレン「無傷……だと……?」

 

ソリテール「少しだけ、驚いた」

 

ソリテール「魔力探知外よりの攻撃。高密度のゾルトラークによる超長距離射撃。知っていた。すでに」

 

ソリテールの体表に常時展開されている高密度の魔力の膜。

 

ソリテール「この時間軸の私には、人類に対する一切の油断や侮りはない。この私は私が人類の前に敗北し狩られることを知っている。だから全力で君たちを殺すね」

 

フリーレン「高密度のゾルトラークでも破れない防御魔法か。やれやれだ。ヘヴィすぎるぞ」

 

フリーレンは杖の先をソリテールに向け、魔力を収束させる。

 

ソリテール「ゾルトラークの手数で押し切るつもり? 撃ち合うのもいいね」

 

ソリテール「人類の改良したゾルトラーク。それの原理は分からなくても、同等か、それ以上のものを作る方法はいくらでもある」

 

ソリテールは具現化した魔剣の切っ先をフリーレンに向ける。

 

ソリテール「ゾルトラーク・ファンネル」

 

剣身に魔力が充填される。そして切っ先より、圧縮されたゾルトラークが射出された。

 

フリーレン「なん、だと……!?」

 

それは三重に重ねて展開した防御魔法を貫通し、フリーレンの右肩を貫いた。

 

魔剣より放たれた超高密度のゾルトラーク。それはあらゆる防御魔法を貫通する。

 

フリーレン「防御魔法を展開する猶予は十分にあった。それでもお構いなしに防御魔法を貫通しやがる……」

 

ソリテールはさらに複数の魔剣を具現化する。

空中に浮遊する魔剣の切っ先をフリーレンに向ける。

 

ソリテール「魔力で具現化した剣を、術式増幅器に転用。魔剣に通常のゾルトラークを装填、術式により圧縮し、一点より射出する。名付けて、ゾルトラーク・ファンネル」

 

ソリテール「それがもし無数にあったとしたら?」

 

空中に十数本の魔剣を展開。切っ先がフリーレンを向く。

 

フリーレン「クソッタレが……」

 

ソリテール「君を捉えた。さよなら、フリーレン」

 

フリーレン「やれやれだぜ……」

 

フリーレン「スタープラチナ、ザ・ワールド(時は止まる)」ドオーーーーン

 

フリーレンの魔法に、世界はその動きを止めた。時の止まった世界ーー

 

フリーレン「久しぶりに、実に八十年ぶりに時を止めたぜ。時を止めなかったらやられないにしても、手足の一、二本は失っていた」

 

フリーレンはファンネルから射出されたゾルトラークを、時の止まった世界でかわし、ソリテールの前に立つ。

 

フリーレン「五秒だ。そして時は動き出すーー」

 

ソリテール「ーーなにが!?」

 

フリーレン「オラァ!!」

 

ソリテール「ぐっ!?」ドゴッ

 

ソリテールは防御膜の上から、強烈な一撃を腹部に受ける。

 

ソリテールには、突然フリーレンが目の前に現れたように認識された。

 

ソリテール「……魔力探知が直前まで反応しなかった……これは、瞬間移動……!? そんな魔法があるの!?」

 

フリーレン「……<傍に現れ立つ魔法>、スタープラチナ!」ドーーーン

 

フリーレン「オラァ!!」

 

防御魔法は発動しない。フリーレンの気迫に、咄嗟に魔力を凝縮した盾を作る。ちょうどそこに不可視の攻撃が直撃した。しかし衝撃を吸収しきれない。

 

ソリテール「あぐっ!?」ドゴッ

 

不可視の一撃にソリテールは吹き飛ばされた。

 

ソリテール「……まただ、魔力探知が反応しない……この攻撃を、私は魔法と認識できていない!?」

 

フリーレンとの間合いは五メートルほど開いた。

 

ソリテール「……おそらく射程距離がある。追撃がないことがその証拠。そしてこの魔法には二つの特徴がある。一つは瞬間移動、もう一つは不可視の攻撃」

 

よく目を凝らすと、人のような形をした魔力の影が、フリーレンの傍らに見えた。

 

フリーレン「傍に現れ立つというところから、そのヴィジョンを名付けて……スタンド!」

 

フリーレン「ソリテール、てめーはこのフリーレンがじきじきにブチのめす」

 

ソリテール「……そう、これならどう?」

 

魔剣を全方位に展開、ゾルトラークを装填する。

 

ソリテール「たとえ瞬間移動ができても、逃げ場がなければーー」

 

フリーレン「やれやれだぜ」

 

次の瞬間には、魔剣はことごとく打ち砕かれ、目の前にフリーレンがいた。

 

ソリテール「どうして!?」

 

フリーレン「オラオラオラオラオラオラオラーッ!!」ドドドドド

 

ソリテール「うげっ!」ドゴドゴドゴドゴ

 

高密度のゾルトラークに耐えられる魔力の膜でも防ぎきれないダメージの浸透。直感で展開した魔力の盾では全てを捌けない。その飽和攻撃に、ソリテールは追い詰められた。

 

ソリテール「……防御に徹するしかない……でも、このままだと……死んじゃうな」

 

ソリテール「……それもいいかも……また死んでも、またやり直せる?」

 

ソリテール「……また最初から、やり直せばーー」

 

ソリテールは防御を捨てた。重い一撃が腹部に入る。その代償に、光球を一つ形成した。

 

ソリテール「魔力をぶつけるだけの単純な魔法。これが私の逃走経路ーー」

 

フリーレン「くっ!?」

 

フリーレン「スタープラチナ、ザ・ワールド!」ドオーーーーン

 

光球が膨張し、爆発する直前だった。

 

フリーレン「直撃を受ければタダでは済まない。自爆覚悟か。やれやれだ、いったん距離を取る」

 

フリーレン「ーー時は動き出す」

 

光球の爆発は半径五メートル程度。衝撃波はさらに広範囲に及んだ。

 

ソリテールは爆風に乗って飛び、一気に距離を取るが、そこへゾルトラークの狙撃を受ける。

 

ソリテール「うぁっ!」

 

それは左肩を抉った。

防御膜は先の爆発で剥がれていた。再形成には時間がかかる。

 

ソリテール「……ここまで、追い詰められるなんて、ね」

 

ソリテール「……君との再戦は、何度も計算したのに」

 

フリーレンは杖の先を向ける。

 

フリーレン「西側諸国の魔法使い風に言うと、“抜きな、どっちが素早いか試してみようぜ”というやつだ」

 

ソリテールは光球を展開する。

 

ソリテール「私はまだ死ねない……<百合を咲かせる魔法>を完成させるまでは……」

 

アウラ「ちょっと何してるのよ!」

 

首のない兵士の一団が、ソリテールとフリーレンの間に割って入る。

 

アウラ「ボロボロじゃないの!」

 

アウラがソリテールの腕を掴む。

 

ソリテール「……アウラ、どうして?」

 

アウラ「やっぱり待ってたんだけど、遅いから様子を見にきたのよ! そしたらこんなことになってるし。さっさと退くわよ」

 

ソリテール「……そうだね」

 

フリーレン「……アウラか。不死の軍勢。やれやれだぜ。フェルンーー」

 

ソリテールはアウラを抱き寄せた。

 

アウラ「きゃあ!?」

 

その真横をゾルトラークが掠める。

アウラが青ざめた顔でソリテールに抱きつく。

 

ソリテール「君を守りながら、これ以上戦闘を継続することはできない。ここは逃げるとしよう」

 

アウラ「逃げるんじゃないわよ! 戦略的撤退よ! 退いたら勝ちなのよ!」

 

ソリテール「うん。君のそういうところ、大好きだよ」

 

ソリテールはアウラにキスをする。

 

アウラ「ん!?」ズキュウウウン

 

アウラ「んんんんん!?」もがもが

 

フリーレン「なん、のつもりだ……?」

 

フェルン「エッチで見ていられないです……」

 

ソリテール「<百合を咲かせる魔法>はまだ未完成だけれど、一瞬の隙を作れた」

 

ソリテールはアウラを抱いて浮かび上がる。

 

ソリテール「フリーレン、勝負はお預け。せいぜいその兵士たちを傷付けないように頑張ってね」

 

フリーレン「クソッタレが……」

 

   *  *  *

 

フリーレンは首無し兵たちの服従魔法を解除した。辺りに骸が転がっていた。そこへフェルンが降り立つ。

 

フェルン「追いますか?」

 

フリーレン「いや。手の内を見せすぎた。魔力の消耗も激しい。長引けば、アウラの魔力量が、私の魔力量を上回るリスクがある」

 

フリーレン「それに何故か奴は私たちのことを知っているようだった。まさかな……」

 

フェルン「会ったことが?」

 

フリーレン「見たことも聞いたこともない。戦ってみて分かったが、魔力量は私と大きな違いはない。ただ魔力のコントロールは別次元、私より遥かに上だ」

 

フェルン「……フリーレン様が圧倒しているように見えましたが?」

 

フリーレン「八十年前の私だったら三回は死んでいた。瞬時に私の魔法の性質も理解しているようだった。何より、おそらく奴にはまだ切り札があるはず」

 

フリーレン「<人類を滅ぼす魔法>、と言っていたな。出来ればここで仕留めたかった」

 

 

 

○林の中。

ソリテールはアウラに体を支えられながら歩く。

 

ソリテール「……どうして私を助けたの?」

 

アウラ「別になんだっていいでしょ」

 

ソリテール「……ありがとう、アウラ」

 

アウラ(よく考えたら解放されるチャンスだったじゃないの……)

 

アウラ(ただそれ以上に、人類側にソリテールを追い詰めるほどの魔法使いがいるなんて……フリーレン、それほどの魔法使いだったなんて……)

 

ソリテール「アウラ。フリーレンに服従の天秤を使っては駄目。彼女は魔力を制限している。私と同等の魔力を持つわ」

 

アウラ「そう、みたいね。足止めにしていた不死の軍勢も、魔法が解除されたみたい。こんなこと、五百年で初めてだわ……」

 

アウラ(途中から見てたけど、やばすぎでしょ、あいつ)

 

アウラ(ソリテールを見殺しにして解放されたとしても、そのソリテールを倒したフリーレンと、人類との総力戦が待っているわ。やっぱりソリテールを失うわけにはいかない)

 

アウラ(って、全部こいつが持ち込んだものじゃない……最悪だわ……)

 

ソリテール「見殺しにしていれば、君は自由だったのにね……」

 

アウラ「嫌なこと言わないでよ」

 

アウラ(めちゃくちゃ後悔しているところなんだから……)

 

アウラ「あなたが私を利用してやりたいことがあるように、私もあなたを利用してやりたいことがあるのよ」

 

ソリテール「そう。それでも嬉しいよ。大好きだよ、アウラ」

 

アウラ「心にもないこと言わないで」

 

アウラ(私はこんな奴、全然好きじゃないんだから!)

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