※この作品はR-18です。

ソリテール「百合を咲かせる魔法?」   作:socio

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第40輪 シーソーゲーム

○廃城の回廊。昼。

ラヴィーネは一階の間取りを確認し終え、カンネのもとへ向かう。

偶然、ユーベルと出会う。

 

ユーベル「ああ、ラヴィーネ」

 

ラヴィーネ「ユーベルか」

 

ユーベル「どうしたの?」

 

ラヴィーネ「別に」

 

ユーベル「涙の跡がある」

 

ラヴィーネは無言で顔を拭う。

 

ユーベル「何かあった?」

 

ラヴィーネ「何も」

 

ユーベル「ふーん。そう」

 

ラヴィーネはユーベルの横を通り過ぎ、去ろうとする。その後をユーベルが追いかける。

 

ユーベル「何してるの?」

 

ラヴィーネ「別に何も」

 

ユーベル「リーニエに逃げられちゃって暇なんだよね」

 

ラヴィーネ「よかったな。それと、私についてくるな」

 

ユーベルは無視して続ける。

 

ユーベル「君の恋人、カンネはどうしているの? 一人にして大丈夫かな?」

 

ラヴィーネ「ソリテールたちはいない。リーニエも、あの二人に逆らって私たちに危害を加えたりしないだろう」

 

ユーベル「そうだね。君たちにはね」

 

ラヴィーネは立ち止まり、ユーベルを向く。

 

ラヴィーネ「何か企んでいるみたいだが、それにカンネを巻き込むなよ。もし何かあったら、お前を殺す」

 

ユーベルは笑う。

 

ユーベル「いいね。君が私を殺してくれるんだ」

 

ラヴィーネは言葉に詰まる。

 

ラヴィーネ(こいつは狂人だ。関わり合いにならない方がいい)

 

ユーベル「ねぇ、カンネから聞いた?」

 

ラヴィーネ「何を?」

 

ユーベル「アウラたちが逃亡を企てている話」

 

ラヴィーネ「どういうことだ?」

 

ユーベル「今から七日後の満月の夜に、アウラはリュグナーの手引きで逃亡する」

 

ラヴィーネ「それは本当の話なのか?」

 

ユーベル「私がリーニエに誘拐された時、たまたま聞いたんだ。だけど今となっては、私たちに関係ないことだね。彼女たちが逃亡する時が脱出のチャンスだと思っていたけど」

 

ラヴィーネ「結界がある以上、どさくさに紛れて、という訳にはいかないな」

 

ユーベル「そう。アウラたちが逃亡に成功したら、不要になった私たちは皆殺し。ソリテールに告げ口してアウラたちが殺されても結果は同じ」

 

ユーベル(ソリテールに告げ口するカードは直前までとっておきたい。できるだけみんなには、惨たらしく死んでほしいから)

 

ラヴィーネ「いや、脱出できるぞ」

 

ユーベル「え?」

 

ラヴィーネ「だからカンネはあんな話をしたのか」

 

ユーベル「どういうことかな?」

 

ラヴィーネ「アウラは自身の魔法で、ソリテールに服従している。逃亡するためには服従の天秤を解除しなければならない。そのアウラが結界の外に出れば、ソリテールは結界を破壊して追いかける必要がある」

 

ユーベル「そっか……」

 

ユーベルも盲点だったようで動揺している。

 

ラヴィーネ「アウラたちの逃亡を成功させれば、私たちの助かる可能性が高くなる。ただこの話をアウラやリーニエにすれば、協力どころか、口封じをされるかもしれない」

 

ユーベル「そうだね。彼女たちにしてみれば、致命的な秘密を知られているわけだから」

 

ラヴィーネ「しばらく様子見だな。お前はリーニエの動向を監視していてくれ」

 

ユーベルが立ち止まる。

 

ラヴィーネ「どうした?」

 

ユーベル「うーん、私ちょっと用事思い出した」

 

ラヴィーネ「そうか」

 

二人は分かれる。

 

ユーベル「脱出できる可能性? 何それ、つまんない」

 

 

 

○廃城の厨房。夕刻。

ラヴィーネとカンネが夕食の準備をしている。

 

カンネ「結局、何も見つからなかったね」

 

ラヴィーネ「明日は地下にスペースのない部屋を確かめてみよう」

 

カンネ「そうだね」

 

ラヴィーネ「それよりカンネ、お前ーー」

 

ユーベルの話を黙っていたことを問い糺すつもりだったが、ラヴィーネはやめる。

 

カンネ「何?」

 

ラヴィーネ「いや、なんでもない」

 

ラヴィーネ(こいつなりに私のことを考えて黙ってたんだろう。この件は私が、アウラたちの動向を監視して、様子を見てから改めて話をしよう)

 

そこへリーニエが一人、厨房に現れる。

 

リーニエ「お腹空いた」

 

ラヴィーネ「リンゴでも食ってろ」

 

カンネ「ラヴィーネ! リーニエ、ごめんね。もう少し待ってて。簡単なものならすぐに用意するけど?」

 

リーニエ「我慢する」

 

カンネ「ソリテールやアウラも、もうすぐ帰ってくると思うから、一緒に食べよう」

 

リーニエ「うん」

 

カンネは立ち去ろうとするリーニエを呼び止める。

 

カンネ「ねぇ、リーニエは何が好きなの?」

 

リーニエ「リンゴ」

 

カンネ「人の肉とリンゴはどっちが好きなの?」

 

リーニエ「うーん……」

 

リーニエ、腕組みして思案する。

 

リーニエ「うん。一緒に食べると美味しい!」

 

カンネ「そ、そっか」

 

カンネ「ねぇ、もし人間より美味しい料理があったらどうする? もう人を食べない?」

 

リーニエ「人肉は美味しいから食べる」

 

カンネ「じゃあ、人を食べると食べられないとしたら?」

 

リーニエ「うーん」

 

カンネ「たとえば、人を食べるとリンゴが食べられなくなるとしたら?」

 

リーニエ「それは困る。どっちも食べたい」

 

カンネ「そっか」

 

カンネ(もし人間より美味しいと思わせることができれば、リーニエは説得できる?)

 

ラヴィーネ「人肉の何が美味いんだ。魔族の味覚は理解できねェ」

 

カンネ「魔族の味覚か……」

 

 

 

○廃城の外。夜。

ソリテールとアウラが帰還する。

ソリテールはアウラに支えられて、やっと立っている状態だった。

 

アウラ「リーニエ! ちょっと手伝って!」

 

リーニエは二階のバルコニーから飛び降り、二人の前に立つ。

 

リーニエ「どうしたの?」

 

そこでソリテールの負傷に気付く。

 

リーニエ「え、何があったの?」

 

アウラ「ソリテールを部屋に運んで。私、もう体力の限界……」

 

ソリテール「ごめんね……」

 

リーニエは魔力探知する。目立つ外傷は左肩だが、打撲や骨折、内臓が破裂し、体内に深刻なダメージを受けていた。

 

リーニエはソリテールを抱きかかえる。

 

バルコニーにラヴィーネとカンネが現れる。

 

カンネ「どうしたの?」

 

アウラ「あなたたち、回復魔法使える?」

 

カンネ「応急処置程度なら」

 

アウラ「なら手伝いなさい!」

 

 

 

○アウラの寝室。

寝台にソリテールを寝かせる。

五人がソリテールを見守る。

 

ソリテール「ありがとう、みんな……」

 

ソリテールは弱々しく微笑む。

 

カンネ「止血と、簡単な治療は済んだけど……」

 

ラヴィーネ「内臓のダメージが深刻だな」

 

リーニエ「痛覚は遮断したけど、炎症は抑えられない」

 

ユーベル「ねぇ、これ死ぬの?」

 

ソリテールの死によってもたらされるもの。人類は永遠に結界から出られなくなる。魔族は人類と殺し合うことになる。

そのことを想像して、リーニエやカンネは沈黙した。

 

アウラ「別にこのぐらい、寝れば治るわよ」

 

カンネ「本当? よかった」

 

ソリテール「心配かけてごめんね。私は大丈夫よ……」

 

顔色は白く、呼吸も弱々しい。

 

カンネ「誰か一人、そばにいた方が?」

 

ラヴィーネ「私が見ておく。お前らは夕食済ませとけ」

 

アウラ「私が見てるからいいわよ。もう用が済んだのだから、さっさと出て行って」

 

ラヴィーネ「お前にまともな看護ができるのか?」

 

アウラ「ここは私の寝室よ! さっさと出て行きなさい!」

 

カンネ「ラヴィーネ、行こう。ユーベルも」

 

アウラ「リーニエも。いいから」

 

リーニエ「分かった」

 

四人は寝室を出る。

 

 

 

○寝室の外。

ラヴィーネはカンネの腕を掴んで立ち止まらせ、リーニエとユーベルが先に食堂へ向かうのを見送る。

 

カンネ「ソリテールが心配だね」

 

ラヴィーネ「それよりも、私たちは私たちで警戒した方がいい」

 

カンネ「どういうこと?」

 

ラヴィーネ「もしもアウラがソリテールを殺せば、私たちは外に出ることができないどころか、アウラの服従下に置かれる可能性がある」

 

カンネ「それでラヴィーネ、さっきあんなこと言ったんだ」

 

ラヴィーネ「できれば私かお前がそばについてる方がいいんだが。ただ熱にうなされて、暴れられたら危険だな」

 

カンネ「アウラ一人にして大丈夫かな?」

 

ラヴィーネ「まあ、アウラ自身は戦闘向きじゃない。私たちを服従させて、ソリテールを殺すように仕向けるか、リーニエが手を下す可能性がある」

 

ラヴィーネ「私たちは必ず二人で行動して、アウラの魔法を警戒しつつ、リーニエの動向に注意するぞ」

 

カンネ「うん、分かった!」

 

ラヴィーネ「……あるいはソリテールを脅迫して、結界を解除してもらうか」

 

 

 

○アウラの寝室。

アウラはソリテールを裸にして、その上に覆い被さる。

 

ソリテール「ふふ。今日はそんなことしなくても大丈夫だよ」

 

アウラ「こうした方が怪我が早く治るのよ」

 

アウラはソリテールの左肩の傷を舐める。すでに魔法で傷口は閉じていた。

 

ソリテール「そうなの?」

 

アウラ「昔、私が怪我してた時、リーニエがしてくれたのよ」

 

アウラはソリテールの腕の打撲痕や、細かな擦り傷を舐める。

 

ソリテール「くすぐったい……」

 

アウラ「我慢しなさい」

 

ソリテール「はい」

 

ソリテールは嬉しそうに笑った。

 

アウラは舌を這わせ、胸元を舐め、そのまま下へと進み、腹部や臍を舐める。

 

ソリテール「ん、ふぅ……」

 

アウラ「変な声出さないで」

 

アウラはソリテールの全身を舐めた。

 

ソリテールは自身が濡れていることに気付いたが、体力的に不可能なので断念した。

 

ソリテール「ありがとう、アウラ」

 

アウラ「大魔族である私がしたんだから、もう大丈夫よ」

 

アウラは体を離し、寝台に腰かける。

 

ソリテール「どうしてここまでしてくれるの?」

 

アウラ「あなたには早く治ってもらわないと。あんな奴が出てきた以上、リーニエでは荷が重いわ。治ったら、不死の軍勢を増やすのを手伝ってもらうわよ」

 

ソリテール「そうだね。今日の分は、ほとんど失ってしまったからね」

 

アウラ「とりあえずさっさと寝なさい。また後で来るから」

 

立ち上がろうとするアウラの腕をソリテールは掴む。

 

ソリテール「行かないで……」

 

アウラ「別に私がいても、他に何もできないわよ」

 

ソリテール「いてくれるだけでいいの」

 

アウラ「意味が分からない」

 

ソリテールは手から力を抜く。アウラはそのまま座っていた。

 

ソリテール「行かないの?」

 

アウラ「あなたがいてほしいって言ったんじゃない。別にいてあげるわよ」

 

ソリテール「ふふ。アウラ、好き」

 

アウラ(これ私も好きって返した方がいいのかしら?)

 

アウラ「私も好きよ」

 

不意にソリテールの瞳に、<服従させる魔法>発動時の渦巻きが現れた。

 

ソリテール「え、これって」

 

アウラ「どうして? どういうこと?」

 

ソリテール「ああ、そうか。魔力量が逆転したんだ……」

 

アウラ「え、それじゃあ、私は!?」

 

ソリテール「うん。アウラはもう、自由だよ」

 

アウラ「やったーーー!!」

 

アウラは立ち上がり喜ぶ。

 

アウラ「やっと解放された! 長かった! もうあんなことしなくていいのね! さすがは私! 五百年以上生きた大魔族!!」

 

ソリテール「ふふ。私のこと殺すの?」

 

アウラは寝台の上で弱々しく微笑むソリテールを見る。

 

アウラ「そんな勿体無いことする訳ないじゃない。今までされてきたことの分、仕返しさせてもらうわ」

 

ソリテール「それは楽しみだ」

 

アウラ「さぁ、何をさせようかしら」

 

アウラはうっとりと笑った。

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