※この作品はR-18です。

ソリテール「百合を咲かせる魔法?」   作:socio

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第9輪 人類の逆襲

目覚めると私はアウラの体を抱きしめていた。

 

私たちの血は凍てついているはずなのに、二人の体温が重なり合ったところが温かい。

 

不意にアウラが目を覚ます。眠たげな目を開けて、私とリーニエを交互に見て、戸惑っている様子だった。

 

アウラ「え? なにこれ……」

 

ソリテール「おはよう、アウラ」

 

アウラ「え? え? あれ?」

 

ソリテール「寝ぼけてるのね? 可愛いな。私だよ。君のお姉様」

 

アウラ「う、うぅ……夢じゃなかったんだぁ……」

 

ソリテール「夢じゃないよ。私はちゃんとここにいるよ」

 

アウラ「うぅ……」ぽろぽろ

 

ソリテール「さあ、アウラ。おはようのキスをして。今日もたくさん愛し合いましょう」

 

アウラ「嫌だぁ……」

 

不意にリーニエが起き上がる。

 

リーニエ「おや?」

 

ソリテール「おはよう、リーニエ」

 

リーニエ「おはよう、お姉様」

 

ソリテール「どうかした?」

 

リーニエ「魔力探知に、侵入者が引っかかった」

 

ソリテール「それは?」

 

リーニエ「四百、五百……もっといるか。おそらく千人規模。足取りが重い。甲冑を着ている。人類の軍勢みたい」

 

ソリテール「決して少なくはないけど。アウラと配下の魔族を考慮すれば、十分な兵力とは言い難い。これは事前に計画したものではない?」

 

昨夜の私の魔法攻撃が、内輪揉めか何らかの襲撃を受けたと推測し、好機と捉えたのかもしれない。

 

ソリテール「君たちの敵だね。それなら私の敵でもある」

 

ソリテール「君たちの敵のこと、お姉様に教えて」

 

私はアウラの胸を優しく撫でた。

アウラはビクンと体を弾ませた。

 

アウラ「……私たちは80年前から人類の領土、グラナト伯爵領と交戦状態にあるわ。その時は勇者一行に敗れたけど、27年前に力を取り戻し、攻略を再開したの」

 

ソリテール「教えてくれてありがとう」

 

私はお礼にアウラの頭を撫でた。

 

ソリテール(勇者一行、魔王様を倒したパーティ。そしてフリーレンがいた)

 

ソリテール「今も苦戦しているみたいだね」

 

アウラ「フランメの防護結界のせいよ。街を包囲しても、結界に阻まれて侵入できない。それに奴らは籠城戦に数年耐えられる備蓄があるわ。その間に他のところから援軍が送られてきて、撤退を余儀なくされてきたのよ」

 

ソリテール「フランメの防護結界。千年前の天才が作り上げた魔法。興味深い。もしかしたら、私なら解析して突破できるかも」

 

アウラ「本当に!?」

 

ソリテール「うん。だけど時間が必要。少なくとも二ヶ月。ううん、三ヶ月。私が直接解析する必要があるから、籠城戦に持ち込みたいわ」

 

リーニエ「それよりどうするの? アウラ様の不死の軍勢は五百。ドラートは死亡。リュグナー様は――」

 

アウラ「リーニエ!」

 

リーニエ「?」

 

アウラ(リュグナーの存在は伏せておきたい。私の解放の鍵になるかもしれない)

 

リーニエ(なんだよ、とっくに逃げてるし、お姉様に隠し事して怒られたくないんだよな)

 

ソリテール「それで、どうするの? アウラ」

 

アウラ「え、私?」

 

ソリテール「戦いの指揮は、七崩賢であるアウラにお願いするわ」

 

アウラ(そう私は断頭台のアウラ、七崩賢の一人、五百年以上生きた大魔族!)

 

アウラ「迎撃するわよ。私が五百を率いて足止めするから、リーニエは遊撃。お姉様は――」

 

アウラ(七崩賢クラスの魔力、彼女一人で戦局は覆る。協力してくれるみたいだけど、どこまで協力してくれるか……代わりに何を要求されるかも分からないし……)

 

ソリテール「そうね。私は集団戦が初めてだから、最初はアウラの護衛をするわ。戦局を見て、私に指示を出して」

 

アウラ「はい、お姉様」

 

アウラ「それじゃ、とりあえず服を着させて……」

 

   *  *  *

 

廃城の正面に、千人の軍勢が展開していた。

 

グラナト伯爵「クソ魔族どもめ! 今日こそ引導を渡してやるんじゃあ!!」

 

グラナト伯爵「みんな丸太は持ったな!! 行くぞォ!!」

 

兵士たち「ワーーーワーーー」

 

首のない不死の軍勢と、人類の軍勢は正面から衝突する。

 

私たちは後方上空から戦況を俯瞰する。

 

アウラ「高い高い高い! 怖い! 降ろして!」

 

アウラが力強く私に抱きつく。

彼女は飛行魔法が不慣れな様子だった。

 

ソリテール「こういうのも悪くないね。妹に頼られてお姉様は嬉しいよ」

 

アウラ「いいから降ろしてよぉ!」

 

<服従させる魔法>に生涯を費やしたアウラはそれ以外の魔法が使えない。

彼女は<服従させる魔法>の特性上、自身の魔力量を高める研鑽に費やしてきたのだろう。

 

ソリテール「私は人類の魔法について生涯を費やして研究してきたから、君ができないことはお姉様がしてあげる」

 

アウラ「私、地面がいい! 地面に降りたい!」

 

戦況を俯瞰して分かったことがあった。

 

ソリテール「集団戦は、兵数に差があっても、一度に接地するのは前列の兵のみ。前列が倒れれば後列が繰り上がって陣形を補填する」

 

ソリテール「数で劣る私たちは、平地での戦闘は不利ね。人数の多い方が陣を広く展開することで接地面積を広げ、人類側は一対一ではなく複数対一に持ち込むことができる」

 

また人類側の士気は非常に高い。

 

兵士A「あいつはイケメンだったのに首を切られちまったからちくしょう!!」

 

兵士B「クソみてェなことしやがって! 俺たちの仲間を返しやがれ!!」

 

兵士C「膝だ! 関節を壊せ!!」

 

アウラの軍勢は包囲され、三人一組で対処されている。また関節を破壊することによって無力化される。膝を破壊されることで立ち上がることができなかった。

 

ソリテール(あくまで操り人形。アウラが不可視の糸で操っているにすぎない。ただ壊れにくいだけの玩具)

 

ソリテール「それにしてもだいぶ恨まれているみたいだね」

 

アウラ「人類は愚かね。死んだ者のためにだなんて。もういないのに滑稽だわ」

 

ソリテール「そうだね。私たちにはない感情だ」

 

ただそういった感情が、死への恐怖を克服させ、私たち魔族への憎悪が人類の魔法を進化させてきた。

 

私たちにも同族を哀れむ感情があれば、人類に敗れることもなかった?

それともとっくに人類を滅ぼしていたかも。

ないからこそ、魔族はいつか滅ぶ運命にある?

 

ソリテール「このままだとアウラの大切な軍勢が消耗してしまうよ。私が出る?」

 

アウラ「まだ! 五百年以上生きた大魔族の私の実力を見せてあげるわ。服従の天秤で、敵の陣形を崩す!」

 

ソリテール「そう。ならもっと近付くね」

 

アウラ「え、やだぁ!」

 

私はアウラを抱きながら、上空を飛び、前線に出る。

 

アウラ「……ちょっと漏らしたかも」ハアハア

 

ソリテール「あとでお姉様が綺麗にしてあげるね」

 

アウラ「……え?」ゾゾッ

 

アウラ(まさかまた舐め回されるんじゃ……)

 

アウラ(……ううん、今は目の前のことに集中!)

 

アウラは服従の天秤をかざす。

 

アウラ「<服従させる魔法>」

 

兵士B「へ?」キィィン

 

兵士A「やべェ急げ! 手足を叩き潰せ!!」

 

兵士C「あいよっ!」

 

兵士B「ひいいいいっ! 待って嫌だ! 死にたくないぃ!!」

 

兵士B「ひぎぃっ!!」ドスッバキッズシャッ

 

アウラ「……そんな?」

 

ソリテール「なるほどね。よく訓練された兵士みたいだ。服従の天秤が魂を載せられるのは一度に一人。三人一組で相互に監視し、一人が服従状態になれば瞬時にそれを処理する。陣形は崩れない」

 

アウラ「なら、陣形が崩れるまで、服従させて兵力を減らせば!」

 

ソリテール「焼石に水だね。私は不死の軍勢を失うよりも、アウラの魔力を消耗することが惜しいわ」

 

ソリテール「単純に、私が敵の指揮官を処理するか、君が対象を服従させれば終結する。どうする? 私なら上空から近付けるけど」

 

アウラ(え? 私の魔法って弱いの?)

 

アウラ「じゃあ、それで、お願いするわ……」

 

ソリテール「あ、待って。リーニエが動いた。私、彼女の戦いを見てみたいわ」

 

アウラ「え? でも私の不死の軍勢が……」

 

ソリテール「別にいらないから大丈夫」

 

アウラ「ひどい……せっかく頑張って集めたのに……」ぐすん

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