幼い頃に婚約した少年が、結婚式を目前に控えた花嫁の前に吸血鬼になって戻ってきた話 作:精神陵辱
呆然として、フランシスは立ちすくんだ。
「どうして? どうして、あなたがここに……」
それ以前に、あれから十年以上も経つというのに、なぜ彼は、あの時のままの姿をしているのだろうか。
まさか、時が戻ったのだろうか。
いや違う。
自分はもう、彼のような子供ではなく、大人の姿をしているではないか。
ならばやはり、これは夢なのに違いない。
『ここを開けて』
窓の外に立つクーガーが、口を動かして、そう言った。
「あ……」
フランシスははっとした。
どう考えても、これは異常な状況だ。
開けずに、すぐに誰かを呼んだ方がいいだろう。
彼女の理性は、そう言っていた。
だが……。
『ここを開けて、フラン』
クーガーがもう一度そう口を動かし、彼の目が妖しい、赤い光を放つ。
その光に魅入られた瞬間、フランシスの理性は麻痺し、ただ目の前の少年に対する懐かしさだけで胸がいっぱいになった。
彼女はふらふらと歩み寄って、窓を開けた。
「入ってもいい?」
「ええ……。ああ、クーガー、もちろんよ」
フランシスが微笑んでそう言うと、クーガーは窓枠をひょいと乗り越えて、部屋の中に降り立った。
「やっと会えたね、フラン」
窓を通さずに聞いたその声もまた、記憶にあるとおりだった。
「本当に、クーガーなのね……」
フランシスは、ぽろぽろと涙を流した。
「そうだよ、フラン」
クーガーはにっこりと微笑んでそう言うと、手にした花束を差し出した。
それは、あの日、丘の上で彼が差し出してくれたのと同じ花だった。
「君を迎えに来たんだ。約束だよ、結婚しよう?」
フランシスは涙に濡れたままの顔を上げ、少年の姿のクーガーを見て、それから再び視線を落とした。
「でも……私にはもう、婚約者がいるのよ?」
「知ってるよ。フランとあの日、婚約したのは、ぼくだ」
「違うの……違うのよ。私は、別の人と婚約したの。もう少ししたら、結婚式を挙げることになっているわ」
フランシスは苦しげにそう言うと、首を横に振った。
「ぼくと、結婚の約束をしたのに?」
「あなたのことを、忘れていたわけではないのよ」
彼女はそう言い訳をした。
次いで、少し咎めるような調子で。
「だって。だって、あなたがいなくなってから、もう十年以上も経っているのよ?」
一体、どこに行っていたの。
どうして、ずっと自分を放っておいたの。
フランシスは顔を上げて、再びクーガーと向き合い、そう尋ねようとした。
「十年の間に、フランは大人になったね」
クーガーは少しも表情を変えずに、やはり朗らかに笑っている。
その時、彼女ははっと気が付いた。
十年もの間、成長することのない容姿。
仄かな月明かりの下で分かりにくいが、血の気がなく白い肌。
そして、本来の色はブルーなのに、まるでルビーのような赤い輝きを内に灯す、超常的な瞳……。
まさか……。
「あなたは、吸血鬼……」
フランシスは震え声でそう呟いた。
「そうだよ。ぼくは、ヴァンパイアになったんだ」
クーガーは、あっさりとそう認めた。
「ひ……!」
フランシスは青ざめ、悲鳴を上げようとした。
だが、すかさずクーガーの瞳が放った赤い光に貫かれると、抵抗する意思を失ってしまう。
「シー……。もう夜中なんだから、騒いじゃだめだよ?」
クーガーは口の前で指を立てると、くすりと笑って、そう言った。
「う、あ……?」
「背が伸びたね。このままじゃ話しにくいから、そこに座って?」
そう言って、ベッドの端を指差す。
フランシスは言われるままに、そこに腰かけた。
「いい子だね、フラン」
クーガーは優しく微笑むと、フランシスの頬にそっと手を当てた。
その手は子供らしい柔らかさだったが、冷え切っていて、体温が感じられない。
「あ……」
フランシスは、ぶるりと身を震わせた。
心の奥では恐怖を感じていたが、精神には霞がかかったままで、何をすることもできない。
「ぼくはね。もう十年以上前のある晩に、ちょうど今のぼくみたいに部屋に入ってきたヴァンパイアに、さらわれてしまったんだ。そして、自分もヴァンパイアにされてしまった」
クーガーは、フランシスの頬をなぞりながら、身の上話をしていく。
「でもね、決して、君のことを忘れたりはしなかったよ。だから、こうして戻ってきたんだ」
話しながら、ゆっくりと手を下げて、首筋のあたりをなぞり始めた。
「なのに。君の方では、もうぼくのことなんか忘れて、ぼくを置いて大人の体になって、別の男と結婚しようって言うんだ?」
「あ、あ……」
クーガーの手が触れるところから、ぞくぞくとした快感が這い上がってくる。
フランシスは、その感覚に身をくねらせた。
「ひどいな、フラン。君はぼくのものだろう? ぼくと結婚してくれるって、ぼくだけを愛してくれるって、あの日の丘で約束したじゃないか」
そう言いながら、クーガーはそっと、フランシスの唇に指で触れた。
「教えて。その男とは、もう、キスをしたの?」
吸血鬼の視線に絡めとられ、精神に霞がかかったフランシスには、その問いに正直に答える以外の選択はなかった。
「……した……」
「そう。フランはもう、汚れちゃったんだねえ」
その答えに腹を立てた様子もなく、くすくすと笑いながら、クーガーはフランシスの顎に手をかけた。
「なら、ぼくが清めてあげるよ」
そのまま顔を近づけると、ちゅっという音を立てて、フランシスの唇を奪った。
「ん……ふぅ……っ」
舌を差し入れられて口腔内を舐められ、吸われ、歯茎や上顎を撫ぜられるたびに、フランシスはびくんと体を跳ねさせた。
「あ、あぁ……」
冷たい舌が自分の口内を這い回るたび、蹂躙されるたびに、ぞくぞくするような冷気と官能が伝わってくる。
無意識のうちに自分も舌を動かし、相手の口内を探っていた。
その舌が、吸血鬼の長く鋭い犬歯に触れたのを感じて、フランシスはびくりと身を震わせた。
「ふふ……」
クーガーは銀の糸を引きながら、満足したように口を離した。
「心配しないで。『まだ』吸わないよ?」
そう囁いてから、再び彼女の耳元へ顔を寄せた。
同時に、掌をフランシスの豊かに実った乳房の上にあてがう。
「教えて。ここはもう、その男に触らせたの?」
「……少し……」
「ふうん?」
クーガーは目を細めて、また笑った。
「いやらしいなあ。フランももう、すっかりいやらしい大人になっちゃったんだねえ」
そう言いながら、彼女の着衣をはだけさせると。
掌に力を込めて、乳房をぎゅっと掴み、揉み込み始める。
「あ、ああ……」
フランシスは悩ましげに声を漏らし、身悶えた。
「ここも、ぼくが清めてあげるよ。そんな男の手なんて、思い出せないようにしてあげる」
月明かりの寝室で、結婚を間近に控えた淑女の乳房を。
まだ幼い少年のようにしか見えない、吸血鬼となった幼馴染が、淫靡にこね回す。
それはひどく背徳的で、倒錯的な光景だった。
「どう? 気持ちいいかい?」
「う、うう……」
「教えて。気持ちいいんだよね?」
命じられれば、今のフランシスは正直に答えるしかない。
「……うん……きもち、いい……」
「そうだね。フランの体はもう、男の人に弄ばれるための、牝のものになっちゃってるからね。仕方ないよね」
クーガーはくすくすと笑いながら、今度は両手を使って、胸への責めを開始した。
「あ、ああぁっ……!」
左右の手で違う動きをしながら、敏感になった乳首を摘んで転がす。
さらに、爪を立てないように注意しながら、人差し指でぴんと弾いた。
「ひぃいっ……!?」
その衝撃に、フランシスは大きく仰け反り、悲鳴を上げた。
「ほら。こんなに固くなってる。ぼくの言った通りだろう? フランの体はすごくいやらしくて、感じやすいんだ」
喘ぐフランシスの脳裏に、もうすぐ夫となるはずの男の顔が浮かんだ。
大きくて、たくましくて、優しい人。
求婚を受け入れて、婚約に踏み切った、大事な恋人……。
「……あ……だめ……」
フランシスは、ぶるりと身を震わせた。
「だめ? どうして?」
「だって、私は、もうすぐ……」
「もうすぐ、何?」
クーガーは、あくまでも優しく問いかけてきた。
「もうすぐ、あの人の、奥さんになるのに……」
「ああ、なるほど」
クーガーは頷いて笑みを深めた。
「それなのに、こんなに感じちゃってるんだものね。確かに、だめな子だよねえ?」
乳首を口に含んで、舌先で淫靡に弄ぶ。
「あ、あっ! やめっ……!」
「それ以前にさ」
クーガーは口を離すと、笑みを消してフランシスの顔を覗き込んだ。
「君はぼくと婚約したくせに、他の男の奧さんになろうって言うんだものね。もう、どうしようもなくだめな子だよ」
「ひっ……」
その目に、赤い輝きが煌々と燃えているのを見て、フランシスの心は恐怖に震えあがった。
「教えて」
クーガーは、フランシスの脚の狭間に手を当てた。
「君はその男に、もうここを許したの?」
おそろしい、答えたくない。
なのに、口は勝手に開いて、正直に話してしまう。
「……許し……ました……」
涙が溢れ出す。
「そう。じゃあ、そこも清めてあげないとね」
クーガーは再び微笑んだ。
「立って。服をぜんぶ脱ぐんだ」
「はい……」
フランシスはよろめきながら立ち上がり、言われた通りに裸になった。
「もっと近くに寄って」
「は、い……」
言われるままに、クーガーの目の前に立つ。
「後ろを向いて。ベッドの縁に手をついて、腰を突き出してごらん」
「こう……?」
涙を流し、恥ずかしさに頬を染めながらも、フランシスの体は従順に従うことしかできない。
「そう。いい格好だね、フラン」
楽しげに笑いながら、クーガーがフランシスの顔を覗き込み、乳房を弄ぶ。
「答えて。これから、なにをされるんだと思う?」
「わからな……い……」
「そう」
クーガーは無邪気に笑うと、フランシスの背後に回って、秘所に指を這わせた。
「ひぅっ!?」
「ここにさ。今から、ぼくの腕を入れるんだよ」
「う……腕……?」
「そう。だって、ぼくの体は子供のままなんだもの」
くすくすと笑いながら、割れ目をなぞる。
「その男みたいに、『あれ』で犯してあげたくたって、できないからね。だから、代わりに、この腕で清めてあげる」
「や、やめて……」
「やめないよ。裏切り者の婚約者さん?」
クーガーはそう言うと、割れ目に顔を近づけて、ぴちゃぴちゃと舌を這わせていく。
ぞくぞくするような冷たい感触に、怖気と快楽が体に走った。
「あ、あぁ……!」
「ほら、どんどん濡れてくる。ヴァンパイアの死んだ体に触られて。フランは本当に、どうしようもない子だよ」
「やぁ……!」
「嫌なんかじゃないくせに。噓吐きだね」
舌を浅く抜き差ししたあとで、そろそろ頃合いと見たか。
クーガーはフランシスの秘所に、右手をあてがった。
そして―――
「ひぃいっ!?」
ずぶり、と。
小さな手が、中へと入り込む。
「暴れないで。それとも、腰をうねらせて、もっと感じたいっていうのかい?」
クーガーはからかうようにそういいながら、左手で反射的に跳ねようとするフランシスの体を押さえ付けた。
見た目は幼い少年のそれなのに、その力は超常的なまでに強くて、まるで鋼鉄製の枷をはめられでもしたかのようだ。
「ああぁ……!」
「ふふ。もっと深く入れて、その男のモノがつけた穢れを、みぃんな取り除かなきゃ……」
クーガーは一見、無邪気そうな笑みを浮かべながら、体重をかけてめりめりと肉壁をこじ開け、さらに深く腕を埋めていく。
「あ、あ、あ……っ!」
フランシスは声にならない悲鳴を上げた。
痛みはない。
ただ、異物が体の奥に入ってくる感覚だけがある。
まるで、ベルベットにくるまれた氷の塊のような、冷たくて官能的ななにかが、自分の体に侵入してくる。
「答えて。その男のモノは、君のこんなに深くまでは入ってきていないよね?」
「あ、あぁ……はい……」
フランシスは息も絶え絶えに、そう答えた。
当たり前だ、いくら子供のものとはいえ、腕なのだから。
「そう、よかった。じゃあ、これで全部、綺麗にしてあげられるね」
クーガーはにっこりと微笑むと、腕をゆっくりと抜き差しし、捩じり、かき回して、フランシスの胎内を存分に蹂躙していく。
「やめてぇえ! そんな……そんなのぉお!」
「噓吐きだね。こんなにぼくの腕を、締め付けてきてるくせに。やめてほしくなんかないって、体が言ってるよ?」
クーガーは胎内で器用に腕を捩じり、フランシスの性感帯を、無慈悲なまでに的確に刺激した。
「あ、あ、あぁああっ!!」
びくんと体を震わせるフランシス。
「答えて。その男とするより、ぼくにしてもらう方がずっと気持ちいいでしょう?」
「は、はい……はいぃっ……!」
フランシスはぽろぽろと涙を零しながら、何度も頷いた。
その涙は絶望のためか、それとも喜悦のゆえか。
「よかった。これで、君の体はきれいになったね」
クーガーは、最後にもう一度深く腕をねじ込んでから、一気に引き抜いた。
ずるりと、愛液に濡れた右腕が、秘所から抜け出す。
「あ……ああぁ……」
フランシスの全身から力が抜け、崩れ落ちるようにして、ベッドの上に倒れ込んだ。
クーガーはそんなフランシスの体に、背後から覆いかぶさる。
「さあ、フラン。ちゃんときれいになったから、これで結婚式の準備はできたよ」
そう言って、首筋に冷たい舌を這わせた。
「あの日に約束したとおり、君はぼくの花嫁になるんだ」
「い、嫌……」
弱々しく首を振って拒絶するフランシス。
クーガーは、そんな彼女の耳元に口を寄せると、優しく囁いた。
「まだ、怖いんだね?」
ぎゅっと目を瞑って震えたまま、フランシスが頷く。
「無理もないよ、ぼくもそうだったから」
クーガーはそう言うと、彼女を抱きしめる腕に力を込めて、華奢な体を押しつける。
「あ……ああぁ……」
フランシスの口から、艶やかなため息が漏れた。
「でも、大丈夫だよ。一度ヴァンパイアの口付けを味わったら、君はすっかり蕩けて、もう、それなしではいられなくなるんだ」
「あ……あぁ……あぁぁぁぁ……!」
冷たい唇が、フランシスの首筋に触れる。
そこから広がる甘い痺れに、フランシスは抗えない。
「君の初めて口付けた相手が、触れ合った相手が、抱き合った相手が、ぼくじゃない他の男でも……。そんなことにはもう、なんの意味もなくなるよ」
フランシスの頬を、髪を、唇を、冷たい手指が優しく嬲る。
「だって、これからどんな人間の男にもできないくらい、君は深く蹂躙され、穢されるのだから」
そう言いながら、クーガーはフランシスの顔を覗き込む。
その瞳の奥に灯る、剣呑な赤い輝き。
笑み綻んだ唇の端から覗いた、鋭い犬歯。
フランシスはそこに初めて、飢え切った獣の欲望を感じ取った。
相変わらずのはずの笑顔が、急に、肉食獣のそれのような野性味を帯びたように感じられた。
「魂までも犯される悦びを知ってしまったら。肉の交わりなんて、所詮はお遊戯でしかないんだと、君にもわかるさ」
「あ……あぁ……あ……」
ぞくりとした感覚が背筋を走る。
それは恐怖なのか、それとも……。
「怖がらないで。今宵、ぼくたちはひとつになれるんだよ?」
クーガーはフランシスの顔に自分のそれを近づけると、そっとその目蓋にキスをした。
「あ……あぁ……」
「そして、永遠に一緒になろう?」
クーガーはそう囁くと、ついにフランシスの白い喉笛に、牙を突き立てた。
「ひあぁあっ!?」
鋭い痛みと快感に、フランシスが悲鳴を上げて仰け反った。
刺すような痛みに続いて、痺れるような冷気が伝播し、それはすぐに、甘い疼きへと変わった。
そして、浮遊感……体内の熱を啜り出されていく、形容し難い感覚が始まる。
幾つもの物語に記されるように、吸血行為は、おぞましく、そして同時に、爛れた快楽を呼び起こすのだ。
「あ、あぁっ! ああぁぁぁ~!」
フランシスは狂乱したかのように身悶えた。
その体がぶるりと痙攣するたび、豊満な乳房が激しく揺れ動く。
「んん……っ」
吸血鬼は跳ねてのたうつ体をしっかりと抱き寄せ、愉悦に喉を鳴らしながら、熱い血潮を貪っている。
甘い血と共に、魂が啜られる。
双眸は血に酔ったものか、爛々と赤光を湛えていた。
「ぉ、おぉ、おぉおぉっ……!」
フランシスの双眸は見開かれ、涙をぽろぽろと零す。
舌を突き出し、唇の端から涎を零して、この世のものならざる苦悦に翻弄される。
「っ、ふ……」
吸血鬼はそんな獲物の姿を愉しむように、目を細めた。
元より呼吸の必要などない身ゆえ、息継ぎすら経ずに、フランシスの血液を間断無く吸い上げていく。
昂るままに獣声めいた呻きを零し、手中の娘の柔肌に指先を這わせた。
「おっ、おおぉ、うぅっ、ほ、おぉおッ!!」
もはや言葉の形を成さない、哀切な響きの喘ぎ。
フランシスの体から、生命の美酒が吸い尽くされるのはもはや、時間の問題かと思われた。
だが、唐突に、その妖悦の刻は終わった。
「……ふうっ」
クーガーは血を吸い上げるのをやめ、名残惜しそうにフランシスの首筋から牙を抜くと、口を離した。
舌でなぞると、たちまち傷跡が塞がって、少し血の気が失せている他は元通りの、傷一つない美しい肌に戻る。
「あ……あぁ……ああぁ……」
ベッドの上にぐったりと横たわり、弱々しく震えるフランシス。
「フラン、ごちそうさま」
クーガーは彼女の頬に軽く口づけすると、優しく頭を撫でた。
「とても美味しかったよ。今日はここまでだ」
「……え……」
フランシスは荒い息を吐いたまま、呆然と彼の顔を見つめた。
クーガーはそんな彼女の顔を見つめ返して、くすくすと笑う。
「なに? もっと、続けてほしかった?」
「そ、そんな……こと……」
フランシスは、慌てて首を振った。
「やっぱり、フランは大人になっちゃったんだね。さっきから、嘘ばっかりだ」
クーガーはつっと指を伸ばして、フランシスの首筋の、先ほど自分が牙を突き立てていたあたりをなぞった。
「あ……あっ……!」
それだけで、フランシスは恍惚と瞳を蕩かせ、自ら首筋を差し出すかのように仰け反った。
首筋が熱をもってずきずきと疼き、穢されたという倒錯的な悦びに苛まれる。
「だめだよ、おあずけだ」
クーガーはそう言って目を細めると、指を引っ込めた。
「ヴァンパイアの結婚式は、一晩くらいじゃ終わらないんだよ。また明日の晩に、来てあげるからね」
そう言うと、フランシスの頭を抱き寄せて涙を舐め取り、その唇を奪う。
「んっ……んぅ……」
フランシスは抗わず、それを受け入れた。
唇が触れ合うたびに、痺れるような甘さが脳髄まで駆け抜ける。
舌が絡み合った瞬間、理性が消え去り、ただ目の前の男のことしか考えられなくなる。
「愛しているよ、フラン。ぼくたちはずっと一緒だから」
「あぁ……わたしも……好きぃ……あなたが好き……っ」
「嬉しいな。やっと正直になってくれた」
クーガーはもう一度深くキスしてから、ゆっくりと顔を離した。
「じゃあ、今夜はこの辺にしておこうか。続きはまた明日。おやすみなさい」
「あぁ……おやすみな、さい……」
フランシスが陶然としてそう呟く中、クーガーは身を翻すと、来た時と同じように窓枠を乗り越えて。
そのまま、夜の闇の中に融けるように、姿を消してしまった。
「……あ……」
フランシスは、寝直すことも、服を着直すことも忘れて、ただぼうっとベッドの端に腰かけたまま、彼の消え去った窓の外を見つめ続けた……。