※この作品はR-18です。

幼い頃に婚約した少年が、結婚式を目前に控えた花嫁の前に吸血鬼になって戻ってきた話   作:精神陵辱

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第一夜

 

 呆然として、フランシスは立ちすくんだ。

 

「どうして? どうして、あなたがここに……」

 

 それ以前に、あれから十年以上も経つというのに、なぜ彼は、あの時のままの姿をしているのだろうか。

 まさか、時が戻ったのだろうか。

 いや違う。

 自分はもう、彼のような子供ではなく、大人の姿をしているではないか。

 ならばやはり、これは夢なのに違いない。

 

『ここを開けて』

 

 窓の外に立つクーガーが、口を動かして、そう言った。

 

「あ……」

 

 フランシスははっとした。

 どう考えても、これは異常な状況だ。

 開けずに、すぐに誰かを呼んだ方がいいだろう。

 彼女の理性は、そう言っていた。

 だが……。

 

『ここを開けて、フラン』

 

 クーガーがもう一度そう口を動かし、彼の目が妖しい、赤い光を放つ。

 その光に魅入られた瞬間、フランシスの理性は麻痺し、ただ目の前の少年に対する懐かしさだけで胸がいっぱいになった。

 彼女はふらふらと歩み寄って、窓を開けた。

 

「入ってもいい?」

「ええ……。ああ、クーガー、もちろんよ」

 

 フランシスが微笑んでそう言うと、クーガーは窓枠をひょいと乗り越えて、部屋の中に降り立った。

 

「やっと会えたね、フラン」

 

 窓を通さずに聞いたその声もまた、記憶にあるとおりだった。

 

「本当に、クーガーなのね……」

 

 フランシスは、ぽろぽろと涙を流した。

 

「そうだよ、フラン」

 

 クーガーはにっこりと微笑んでそう言うと、手にした花束を差し出した。

 それは、あの日、丘の上で彼が差し出してくれたのと同じ花だった。

 

「君を迎えに来たんだ。約束だよ、結婚しよう?」

 

 フランシスは涙に濡れたままの顔を上げ、少年の姿のクーガーを見て、それから再び視線を落とした。

 

「でも……私にはもう、婚約者がいるのよ?」

「知ってるよ。フランとあの日、婚約したのは、ぼくだ」

「違うの……違うのよ。私は、別の人と婚約したの。もう少ししたら、結婚式を挙げることになっているわ」

 

 フランシスは苦しげにそう言うと、首を横に振った。

 

「ぼくと、結婚の約束をしたのに?」

「あなたのことを、忘れていたわけではないのよ」

 

 彼女はそう言い訳をした。

 次いで、少し咎めるような調子で。

 

「だって。だって、あなたがいなくなってから、もう十年以上も経っているのよ?」

 

 一体、どこに行っていたの。

 どうして、ずっと自分を放っておいたの。

 フランシスは顔を上げて、再びクーガーと向き合い、そう尋ねようとした。

 

「十年の間に、フランは大人になったね」

 

 クーガーは少しも表情を変えずに、やはり朗らかに笑っている。

 その時、彼女ははっと気が付いた。

 十年もの間、成長することのない容姿。

 仄かな月明かりの下で分かりにくいが、血の気がなく白い肌。

 そして、本来の色はブルーなのに、まるでルビーのような赤い輝きを内に灯す、超常的な瞳……。

 まさか……。

 

「あなたは、吸血鬼……」

 

 フランシスは震え声でそう呟いた。

 

「そうだよ。ぼくは、ヴァンパイアになったんだ」

 

 クーガーは、あっさりとそう認めた。

 

「ひ……!」

 

 フランシスは青ざめ、悲鳴を上げようとした。

 だが、すかさずクーガーの瞳が放った赤い光に貫かれると、抵抗する意思を失ってしまう。

 

「シー……。もう夜中なんだから、騒いじゃだめだよ?」

 

 クーガーは口の前で指を立てると、くすりと笑って、そう言った。

 

「う、あ……?」

「背が伸びたね。このままじゃ話しにくいから、そこに座って?」

 

 そう言って、ベッドの端を指差す。

 フランシスは言われるままに、そこに腰かけた。

 

「いい子だね、フラン」

 

 クーガーは優しく微笑むと、フランシスの頬にそっと手を当てた。

 その手は子供らしい柔らかさだったが、冷え切っていて、体温が感じられない。

 

「あ……」

 

 フランシスは、ぶるりと身を震わせた。

 心の奥では恐怖を感じていたが、精神には霞がかかったままで、何をすることもできない。

 

「ぼくはね。もう十年以上前のある晩に、ちょうど今のぼくみたいに部屋に入ってきたヴァンパイアに、さらわれてしまったんだ。そして、自分もヴァンパイアにされてしまった」

 

 クーガーは、フランシスの頬をなぞりながら、身の上話をしていく。

 

「でもね、決して、君のことを忘れたりはしなかったよ。だから、こうして戻ってきたんだ」

 

 話しながら、ゆっくりと手を下げて、首筋のあたりをなぞり始めた。

 

「なのに。君の方では、もうぼくのことなんか忘れて、ぼくを置いて大人の体になって、別の男と結婚しようって言うんだ?」

「あ、あ……」

 

 クーガーの手が触れるところから、ぞくぞくとした快感が這い上がってくる。

 フランシスは、その感覚に身をくねらせた。

 

「ひどいな、フラン。君はぼくのものだろう? ぼくと結婚してくれるって、ぼくだけを愛してくれるって、あの日の丘で約束したじゃないか」

 

 そう言いながら、クーガーはそっと、フランシスの唇に指で触れた。

 

「教えて。その男とは、もう、キスをしたの?」

 

 吸血鬼の視線に絡めとられ、精神に霞がかかったフランシスには、その問いに正直に答える以外の選択はなかった。

 

「……した……」

「そう。フランはもう、汚れちゃったんだねえ」

 

 その答えに腹を立てた様子もなく、くすくすと笑いながら、クーガーはフランシスの顎に手をかけた。

 

「なら、ぼくが清めてあげるよ」

 

 そのまま顔を近づけると、ちゅっという音を立てて、フランシスの唇を奪った。

 

「ん……ふぅ……っ」

 

 舌を差し入れられて口腔内を舐められ、吸われ、歯茎や上顎を撫ぜられるたびに、フランシスはびくんと体を跳ねさせた。

 

「あ、あぁ……」

 

 冷たい舌が自分の口内を這い回るたび、蹂躙されるたびに、ぞくぞくするような冷気と官能が伝わってくる。

 無意識のうちに自分も舌を動かし、相手の口内を探っていた。

 その舌が、吸血鬼の長く鋭い犬歯に触れたのを感じて、フランシスはびくりと身を震わせた。

 

「ふふ……」

 

 クーガーは銀の糸を引きながら、満足したように口を離した。

 

「心配しないで。『まだ』吸わないよ?」

 

 そう囁いてから、再び彼女の耳元へ顔を寄せた。

 同時に、掌をフランシスの豊かに実った乳房の上にあてがう。

 

「教えて。ここはもう、その男に触らせたの?」

「……少し……」

「ふうん?」

 

 クーガーは目を細めて、また笑った。

 

「いやらしいなあ。フランももう、すっかりいやらしい大人になっちゃったんだねえ」

 

 そう言いながら、彼女の着衣をはだけさせると。

 掌に力を込めて、乳房をぎゅっと掴み、揉み込み始める。

 

「あ、ああ……」

 

 フランシスは悩ましげに声を漏らし、身悶えた。

 

「ここも、ぼくが清めてあげるよ。そんな男の手なんて、思い出せないようにしてあげる」

 

 月明かりの寝室で、結婚を間近に控えた淑女の乳房を。

 まだ幼い少年のようにしか見えない、吸血鬼となった幼馴染が、淫靡にこね回す。

 それはひどく背徳的で、倒錯的な光景だった。

 

「どう? 気持ちいいかい?」

「う、うう……」

「教えて。気持ちいいんだよね?」

 

 命じられれば、今のフランシスは正直に答えるしかない。

 

「……うん……きもち、いい……」

「そうだね。フランの体はもう、男の人に弄ばれるための、牝のものになっちゃってるからね。仕方ないよね」

 

 クーガーはくすくすと笑いながら、今度は両手を使って、胸への責めを開始した。

 

「あ、ああぁっ……!」

 

 左右の手で違う動きをしながら、敏感になった乳首を摘んで転がす。

 さらに、爪を立てないように注意しながら、人差し指でぴんと弾いた。

 

「ひぃいっ……!?」

 

 その衝撃に、フランシスは大きく仰け反り、悲鳴を上げた。

 

「ほら。こんなに固くなってる。ぼくの言った通りだろう? フランの体はすごくいやらしくて、感じやすいんだ」

 

 喘ぐフランシスの脳裏に、もうすぐ夫となるはずの男の顔が浮かんだ。

 大きくて、たくましくて、優しい人。

 求婚を受け入れて、婚約に踏み切った、大事な恋人……。

 

「……あ……だめ……」

 

 フランシスは、ぶるりと身を震わせた。

 

「だめ? どうして?」

「だって、私は、もうすぐ……」

「もうすぐ、何?」

 

 クーガーは、あくまでも優しく問いかけてきた。

 

「もうすぐ、あの人の、奥さんになるのに……」

「ああ、なるほど」

 

 クーガーは頷いて笑みを深めた。

 

「それなのに、こんなに感じちゃってるんだものね。確かに、だめな子だよねえ?」

 

 乳首を口に含んで、舌先で淫靡に弄ぶ。

 

「あ、あっ! やめっ……!」

「それ以前にさ」

 

 クーガーは口を離すと、笑みを消してフランシスの顔を覗き込んだ。

 

「君はぼくと婚約したくせに、他の男の奧さんになろうって言うんだものね。もう、どうしようもなくだめな子だよ」

「ひっ……」

 

 その目に、赤い輝きが煌々と燃えているのを見て、フランシスの心は恐怖に震えあがった。

 

「教えて」

 

 クーガーは、フランシスの脚の狭間に手を当てた。

 

「君はその男に、もうここを許したの?」

 

 おそろしい、答えたくない。

 なのに、口は勝手に開いて、正直に話してしまう。

 

「……許し……ました……」

 

 涙が溢れ出す。

 

「そう。じゃあ、そこも清めてあげないとね」

 

 クーガーは再び微笑んだ。

 

「立って。服をぜんぶ脱ぐんだ」

「はい……」

 

 フランシスはよろめきながら立ち上がり、言われた通りに裸になった。

 

「もっと近くに寄って」

「は、い……」

 

 言われるままに、クーガーの目の前に立つ。

 

「後ろを向いて。ベッドの縁に手をついて、腰を突き出してごらん」

「こう……?」

 

 涙を流し、恥ずかしさに頬を染めながらも、フランシスの体は従順に従うことしかできない。

 

「そう。いい格好だね、フラン」

 

 楽しげに笑いながら、クーガーがフランシスの顔を覗き込み、乳房を弄ぶ。

 

「答えて。これから、なにをされるんだと思う?」

「わからな……い……」

「そう」

 

 クーガーは無邪気に笑うと、フランシスの背後に回って、秘所に指を這わせた。

 

「ひぅっ!?」

「ここにさ。今から、ぼくの腕を入れるんだよ」

「う……腕……?」

「そう。だって、ぼくの体は子供のままなんだもの」

 

 くすくすと笑いながら、割れ目をなぞる。

 

「その男みたいに、『あれ』で犯してあげたくたって、できないからね。だから、代わりに、この腕で清めてあげる」

「や、やめて……」

「やめないよ。裏切り者の婚約者さん?」

 

 クーガーはそう言うと、割れ目に顔を近づけて、ぴちゃぴちゃと舌を這わせていく。

 ぞくぞくするような冷たい感触に、怖気と快楽が体に走った。

 

「あ、あぁ……!」

「ほら、どんどん濡れてくる。ヴァンパイアの死んだ体に触られて。フランは本当に、どうしようもない子だよ」

「やぁ……!」

「嫌なんかじゃないくせに。噓吐きだね」

 

 舌を浅く抜き差ししたあとで、そろそろ頃合いと見たか。

 クーガーはフランシスの秘所に、右手をあてがった。

 そして―――

 

「ひぃいっ!?」

 

 ずぶり、と。

 小さな手が、中へと入り込む。

 

「暴れないで。それとも、腰をうねらせて、もっと感じたいっていうのかい?」

 

 クーガーはからかうようにそういいながら、左手で反射的に跳ねようとするフランシスの体を押さえ付けた。

 見た目は幼い少年のそれなのに、その力は超常的なまでに強くて、まるで鋼鉄製の枷をはめられでもしたかのようだ。

 

「ああぁ……!」

「ふふ。もっと深く入れて、その男のモノがつけた穢れを、みぃんな取り除かなきゃ……」

 

 クーガーは一見、無邪気そうな笑みを浮かべながら、体重をかけてめりめりと肉壁をこじ開け、さらに深く腕を埋めていく。

 

「あ、あ、あ……っ!」

 

 フランシスは声にならない悲鳴を上げた。

 痛みはない。

 ただ、異物が体の奥に入ってくる感覚だけがある。

 まるで、ベルベットにくるまれた氷の塊のような、冷たくて官能的ななにかが、自分の体に侵入してくる。

 

「答えて。その男のモノは、君のこんなに深くまでは入ってきていないよね?」

「あ、あぁ……はい……」

 

 フランシスは息も絶え絶えに、そう答えた。

 当たり前だ、いくら子供のものとはいえ、腕なのだから。

 

「そう、よかった。じゃあ、これで全部、綺麗にしてあげられるね」

 

 クーガーはにっこりと微笑むと、腕をゆっくりと抜き差しし、捩じり、かき回して、フランシスの胎内を存分に蹂躙していく。

 

「やめてぇえ! そんな……そんなのぉお!」

「噓吐きだね。こんなにぼくの腕を、締め付けてきてるくせに。やめてほしくなんかないって、体が言ってるよ?」

 

 クーガーは胎内で器用に腕を捩じり、フランシスの性感帯を、無慈悲なまでに的確に刺激した。

 

「あ、あ、あぁああっ!!」

 

 びくんと体を震わせるフランシス。

 

「答えて。その男とするより、ぼくにしてもらう方がずっと気持ちいいでしょう?」

「は、はい……はいぃっ……!」

 

 フランシスはぽろぽろと涙を零しながら、何度も頷いた。

 その涙は絶望のためか、それとも喜悦のゆえか。

 

「よかった。これで、君の体はきれいになったね」

 

 クーガーは、最後にもう一度深く腕をねじ込んでから、一気に引き抜いた。

 ずるりと、愛液に濡れた右腕が、秘所から抜け出す。

 

「あ……ああぁ……」

 

 フランシスの全身から力が抜け、崩れ落ちるようにして、ベッドの上に倒れ込んだ。

 クーガーはそんなフランシスの体に、背後から覆いかぶさる。

 

「さあ、フラン。ちゃんときれいになったから、これで結婚式の準備はできたよ」

 

 そう言って、首筋に冷たい舌を這わせた。

 

「あの日に約束したとおり、君はぼくの花嫁になるんだ」

「い、嫌……」

 

 弱々しく首を振って拒絶するフランシス。

 クーガーは、そんな彼女の耳元に口を寄せると、優しく囁いた。

 

「まだ、怖いんだね?」

 

 ぎゅっと目を瞑って震えたまま、フランシスが頷く。

 

「無理もないよ、ぼくもそうだったから」

 

 クーガーはそう言うと、彼女を抱きしめる腕に力を込めて、華奢な体を押しつける。

 

「あ……ああぁ……」

 

 フランシスの口から、艶やかなため息が漏れた。

 

「でも、大丈夫だよ。一度ヴァンパイアの口付けを味わったら、君はすっかり蕩けて、もう、それなしではいられなくなるんだ」

「あ……あぁ……あぁぁぁぁ……!」

 

 冷たい唇が、フランシスの首筋に触れる。

 そこから広がる甘い痺れに、フランシスは抗えない。

 

「君の初めて口付けた相手が、触れ合った相手が、抱き合った相手が、ぼくじゃない他の男でも……。そんなことにはもう、なんの意味もなくなるよ」

 

 フランシスの頬を、髪を、唇を、冷たい手指が優しく嬲る。

 

「だって、これからどんな人間の男にもできないくらい、君は深く蹂躙され、穢されるのだから」

 

 そう言いながら、クーガーはフランシスの顔を覗き込む。

 その瞳の奥に灯る、剣呑な赤い輝き。

 笑み綻んだ唇の端から覗いた、鋭い犬歯。

 フランシスはそこに初めて、飢え切った獣の欲望を感じ取った。

 相変わらずのはずの笑顔が、急に、肉食獣のそれのような野性味を帯びたように感じられた。

 

「魂までも犯される悦びを知ってしまったら。肉の交わりなんて、所詮はお遊戯でしかないんだと、君にもわかるさ」

「あ……あぁ……あ……」

 

 ぞくりとした感覚が背筋を走る。

 それは恐怖なのか、それとも……。

 

「怖がらないで。今宵、ぼくたちはひとつになれるんだよ?」

 

 クーガーはフランシスの顔に自分のそれを近づけると、そっとその目蓋にキスをした。

 

「あ……あぁ……」

「そして、永遠に一緒になろう?」

 

 クーガーはそう囁くと、ついにフランシスの白い喉笛に、牙を突き立てた。

 

「ひあぁあっ!?」

 

 鋭い痛みと快感に、フランシスが悲鳴を上げて仰け反った。

 刺すような痛みに続いて、痺れるような冷気が伝播し、それはすぐに、甘い疼きへと変わった。

 そして、浮遊感……体内の熱を啜り出されていく、形容し難い感覚が始まる。

 幾つもの物語に記されるように、吸血行為は、おぞましく、そして同時に、爛れた快楽を呼び起こすのだ。

 

「あ、あぁっ! ああぁぁぁ~!」

 

 フランシスは狂乱したかのように身悶えた。

 その体がぶるりと痙攣するたび、豊満な乳房が激しく揺れ動く。

 

「んん……っ」

 

 吸血鬼は跳ねてのたうつ体をしっかりと抱き寄せ、愉悦に喉を鳴らしながら、熱い血潮を貪っている。

 甘い血と共に、魂が啜られる。

 双眸は血に酔ったものか、爛々と赤光を湛えていた。

 

「ぉ、おぉ、おぉおぉっ……!」

 

 フランシスの双眸は見開かれ、涙をぽろぽろと零す。

 舌を突き出し、唇の端から涎を零して、この世のものならざる苦悦に翻弄される。

 

「っ、ふ……」

 

 吸血鬼はそんな獲物の姿を愉しむように、目を細めた。

 元より呼吸の必要などない身ゆえ、息継ぎすら経ずに、フランシスの血液を間断無く吸い上げていく。

 昂るままに獣声めいた呻きを零し、手中の娘の柔肌に指先を這わせた。

 

「おっ、おおぉ、うぅっ、ほ、おぉおッ!!」

 

 もはや言葉の形を成さない、哀切な響きの喘ぎ。

 フランシスの体から、生命の美酒が吸い尽くされるのはもはや、時間の問題かと思われた。

 だが、唐突に、その妖悦の刻は終わった。

 

「……ふうっ」

 

 クーガーは血を吸い上げるのをやめ、名残惜しそうにフランシスの首筋から牙を抜くと、口を離した。

 舌でなぞると、たちまち傷跡が塞がって、少し血の気が失せている他は元通りの、傷一つない美しい肌に戻る。

 

「あ……あぁ……ああぁ……」

 

 ベッドの上にぐったりと横たわり、弱々しく震えるフランシス。

 

「フラン、ごちそうさま」

 

 クーガーは彼女の頬に軽く口づけすると、優しく頭を撫でた。

 

「とても美味しかったよ。今日はここまでだ」

「……え……」

 

 フランシスは荒い息を吐いたまま、呆然と彼の顔を見つめた。

 クーガーはそんな彼女の顔を見つめ返して、くすくすと笑う。

 

「なに? もっと、続けてほしかった?」

「そ、そんな……こと……」

 

 フランシスは、慌てて首を振った。

 

「やっぱり、フランは大人になっちゃったんだね。さっきから、嘘ばっかりだ」

 

 クーガーはつっと指を伸ばして、フランシスの首筋の、先ほど自分が牙を突き立てていたあたりをなぞった。

 

「あ……あっ……!」

 

 それだけで、フランシスは恍惚と瞳を蕩かせ、自ら首筋を差し出すかのように仰け反った。

 首筋が熱をもってずきずきと疼き、穢されたという倒錯的な悦びに苛まれる。

 

「だめだよ、おあずけだ」

 

 クーガーはそう言って目を細めると、指を引っ込めた。

 

「ヴァンパイアの結婚式は、一晩くらいじゃ終わらないんだよ。また明日の晩に、来てあげるからね」

 

 そう言うと、フランシスの頭を抱き寄せて涙を舐め取り、その唇を奪う。

 

「んっ……んぅ……」

 

 フランシスは抗わず、それを受け入れた。

 唇が触れ合うたびに、痺れるような甘さが脳髄まで駆け抜ける。

 舌が絡み合った瞬間、理性が消え去り、ただ目の前の男のことしか考えられなくなる。

 

「愛しているよ、フラン。ぼくたちはずっと一緒だから」

「あぁ……わたしも……好きぃ……あなたが好き……っ」

「嬉しいな。やっと正直になってくれた」

 

 クーガーはもう一度深くキスしてから、ゆっくりと顔を離した。

 

「じゃあ、今夜はこの辺にしておこうか。続きはまた明日。おやすみなさい」

「あぁ……おやすみな、さい……」

 

 フランシスが陶然としてそう呟く中、クーガーは身を翻すと、来た時と同じように窓枠を乗り越えて。

 そのまま、夜の闇の中に融けるように、姿を消してしまった。

 

「……あ……」

 

 フランシスは、寝直すことも、服を着直すことも忘れて、ただぼうっとベッドの端に腰かけたまま、彼の消え去った窓の外を見つめ続けた……。

 

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