※この作品はR-18です。

幼い頃に婚約した少年が、結婚式を目前に控えた花嫁の前に吸血鬼になって戻ってきた話   作:精神陵辱

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三日目・日中

 

「フランシス、どうしたのだね?」

 

 朝食の席で、父が心配そうにそう言う。

 隣の席に座る母も、同じような顔をしていた。

 

「熱でもあるの?」

 

 なにせ、彼らの娘はいつになく肌が白く、そのくせ頬は紅潮していて、まるで夢でも見ているかのようにふらふらと上の空なのだ。

 とはいえ、彼女にまとわりついているのその気配が、艶めいた病的な色香なのだとまでは思い至らなかったらしい。

 親としては、自分たちの愛する娘がまさかそんな状態だなどとは、想像もできないのは無理もあるまい。

 

「……そうかもしれないわ」

 

 二人からの、心からの心配と愛情を感じて、フランシスの胸はちくりと痛んだ。

 けれど、そんな胸の痛みも、クーガーのことを思い浮かべた途端に、蕩けて消えてしまう。

 

(ああ、早く夜にならないかしら……)

 

 四六時中、彼女の頭の中を占めているのは、もはやそのことばかりだった。

 

「大丈夫よ」

 

 フランシスはそれでも、努めて明るい声でそう言って微笑んだ。

 

「ちょっと、疲れてるだけだから。今日一日、ゆっくり休めば治ると思うわ」

 

 そんなはずのないことは、自分でよくわかっていたが。

 

「そうかね? ならばよいが……」

 

 父はそう言いながらも、やはり不安げに娘の顔を見た。

 

「無理はしないでね」

 

 母はそう言うと、フランシスの額に手を当てた。

 

「ありがとう、お母さん……」

 

 フランシスはその手を握りしめ、熱っぽく霞んだ目で彼女を見上げた。

 それから、ふと付け加える。

 

「……アンドリューには、私は休んでるから会えないって、伝えておいてね」

 

 もうすぐ結婚することになっている……なっていた、自分の婚約者。

 彼のことを思い浮かべたとき、フランシスの胸にはかすかな痛みと罪悪感とがよぎった。

 だが、それはもはや遠く、ぼやけた感覚だった。

 アンドリューと結ばれる未来を思い浮かべてみても、まるで現実感がなかった。

 クーガーのことを想った時の胸の疼きの方が、彼のものになる自分を想像したときの倒錯的な悦びの方が、今となっては遥かに強い。

 

「一人で休みたいから、誰も部屋に入れないで……」

 

 まるで味のわからない朝食を機械的に食べ終えたフランシスは、そう言うと席を立って、ふらふらと自分の部屋へ戻っていった。

 

 

「…………」

 

 自室に戻ったフランシスは、机に向かうと、ペンを手にとって便箋をしたため始めた。

 それは両親と、アンドリューに向けた手紙だった。

 自分はもうすぐクーガーのものになる。

 その運命はもう、変えようのないものであるように思われた。

 だから、まだ両親やアンドリューのことを想う心が少しでも残っているうちに、別れの言葉を残しておこう、と思ったのだ。

 

『お父さん、お母さん、これまで育ててくれてありがとう。いなくなってしまって、ごめんなさい。でも、私は幸せに暮らして行けると思いますから。どうか私のことは探さないで、忘れてください』

 

『アンドリュー、私はもうあなたと一緒にはなれません。ごめんなさい、どうか他の人と幸せになってください』

 

 概ねそのような内容の手紙を書き終えると、フランシスはペンを置いて、小さく溜息を吐いた。

 たったそればかりの手紙を書く間にさえ、絶えずクーガーの面影が脳裏をちらついて、彼らへの思いを込めて書くことに集中するのに、大変な努力を要したのだ。

 自分が既に、どれほど深く彼に囚われてしまっているのかを、フランシスは痛感した。

 

(昨日のうちに、書いておくべきだったんだわ)

 

 そう思いながら、フランシスはその手紙とペンとを引き出しの中にしまい込んで、鍵をかけた。

 自分が居なくなってしまった後で、誰かが見つけてくれるだろう。

 

「はあ……」

 

 するべきことを終えたフランシスは、すぐにベッドに横になった。

 だが、眠れそうもない。

 身体が火照り、目が潤んでいる。

 心臓がどきどきと高鳴り、全身がむず痒い。

 

 脳裏に浮かぶのは、かつての幼馴染であり、今は吸血鬼に変わり果ててしまった少年のこと。

 自分をもらい受けると宣言して、魂までも穢していった、あの男の面影ばかりだった。

 クーガーのことを考えるだけで、脳髄までが痺れるような快感が走る。

 眠れるどころか、逆にますます意識が覚醒していく。

 

「うぅ……」

 

 フランシスは小さくうめいて、シーツをかき抱いた。

 身体が熱い。

 下腹部の奥底が切ない。

 愛液が下着を濡らすほどに溢れている。

 

「くうっ……」

 

 フランシスは悶えて身をよじった。

 そのたびに、ショーツが肌に擦れて、新たな刺激を生む。

 

「ああぁっ!」

 

 彼女はついに耐え切れなくなり、ふらふらとベッドから体を起こした。

 そっとショーツの中へ指を差し入れると、そこはもう、ぐしょ濡れになっていた。

 

 

「はぁっ……! はぁっ……! ああぁっ……!」

 

 日が落ちて暗くなったフランシスの自室に、部屋の主の荒い呼吸が響く。

 半裸の姿で部屋の隅に置かれた椅子に腰かけながら、自分の右手を自ら股間に伸ばして、激しく指を動かしている。

 左手は胸元に伸び、こちらも自らの手で、乳首を摘んでこねくり回していた。

 

「はうぅっ! くぅううんっ!!」

 

 切なげな声を上げて、体を仰け反らせる。

 

「くううっ!! ふあっ!? くうううう~ッ!!!」

 

 絶頂に達した瞬間、びくんっと全身を大きく震わせる。

 

「はあっ……!」

 

 やがてぐったりとして、大きく息をつく。

 だが、それでもなお、手の動きは止まらず、再び動き出す。

 

「……ああっ!」

 

 今度は軽く達しただけで、すぐに手を離してしまう。

 そして物足りなさそうに、身悶える。

 

「はあ、はあ……」

(ああ……足りない……、全然、満たされない……)

 

 彼女は喘ぎながら、自分の体を抱いた。

 今日はもうずっと、こうして自涜に耽り続けているのだ。

 

(もっと……、もっと欲しい……。あの人の血が……、あの人に吸われたい……)

 

 人間の指などでは、所詮、魂の内側にまでは届かない。

 吸血鬼の甘い血の味わいは、その牙によって魂までも犯される魔性の被虐は、人間をたやすく虜にし、中毒にしてしまうのだ。

 

「あぁ、クーガー……くーがぁぁ……」

 

 熱に浮かされたようにその名を呼びながら、虚しい行為とは知りつつも、ほんのわずかでも体を苛む淫熱から逃れようと、再び自分の体を弄り始める。

 せめて、もっと深く体の奥を抉れば、少しは満たされるかも知れない。

 フランシスの目は、なにか自分の秘所に押し込むためのものを求めて、部屋の中をさまよった。

 

「あ……」

 

 その時、昨日クーガーに突きつけた、銀の十字架のことを思い出した。

 机の中を探ってそれを取り出すと、ふらふらと秘裂にあてがい、ぐっと押し込んでいく。

 

「んん……ぅ……っ」

 

 異物感を感じたが、構わず奥へとねじ込んでいった。

 

「はうぅ、っ……!」

 

 膣内の肉を押し広げられる感覚に、そして神聖な印を使って肉欲に耽っているのだという背徳感に、背筋がぞくりと震えた。

 

「はぁ、はぁっ……。くうっ……」

 

 しかし、いくら深く挿入しても、それで得られるのは僅かな満足感だけだった。

 

「ちが、う……。これじゃ、たり、ないぃっ……」

 

 フランシスはそう言って、涙を浮かべながら、十字架をゆっくりと引き抜いてゆく。

 

「ああ……あ……」

 

 ぬぽっと音を立てて引き抜かれると、それはべっとりと愛液で汚れていた。

 彼女はそれを、拭いもせずに、そのまま机の中に戻した。

 

(もっと、もっと太いもの……)

 

 フランシスの視線が、再び部屋の中をさまよう。

 その時、窓の外の方から、ずっと待ち焦がれていた声がした。

 

『おやおや? 君が本当にほしいのは、そんなものじゃないだろう?』

 

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