廊下に響くチャイムが昼休みの終わりを告げる。
それぞれの教室に向かう生徒たちを尻目にシリルは苛立ちを感じていた。
飯島は欲望をぶつけるように乳房を貪り続けている。自ら承諾したこととはいえ蔑んでいる男に体を好きにされるのは苦痛だった。
毎日のように夢彦に乳房を愛撫されて絶頂を迎えているシリルにとって、飯島のそれは児戯に等しかった。
飯島の顔を見ればひと目で淫魔の放つオーラにあてられ、正気を失いつつあるのがわかる。今はただ目の前の乳房に猛然と食らいついているだけだ。
しばらくすれば勝手に自滅するものとふんでいたが以外にしぶとい。
モドキとはいえ一応は淫魔使いということか。
シリルの目の周りの筋肉がいらただしげにヒクヒクと脈打った。
その時、飯島が荒々しい愛撫をとめた。とうとう限界が来たのだと内心ほくそ笑む。
しかし予想に反し飯島は乳房に食い込ませていた指を乳輪のフチにあて、焦らすようにゆっくりと撫でまわし始めた。口に含まれた乳首は舌が優しく弾いている。
――まだ続ける気なの……
シリルがため息をつく。
それにこの指の動き……
まさか本気で自分を感じさせようとしているのだろうか。
偽物の淫魔使い如きが――
いっそのこと今すぐ吹き飛ばして全てを終わらせてやろうかと思った。淫魔との腕力の差を思い知らせてやるのもいいかもしれない。
睨みつけるシリルの拳に力がこもる。
飯島は命の危機が迫っているのも知らず愛撫を続けている――
…………
…………
…………
――数瞬の後、シリルはふぅーっと息を吐き力を緩めた。
今ここで終わらせてもいいが、それだと今までの我慢が無駄になる。それに飯島には最大の屈辱を与えてやりたかった。
その為にも、もうしばらく付き合ってやるのもいいだろう。
シリルは飯島に顔を向けるとなるべく優しい声色で、さっきまでよりずっと気持ちいいと囁いた。
無論、飯島を昂ぶらせるための戯言だった。飯島は得意気に愛撫を続けている。
――これが夢彦だったら…
吸いつかれている乳房を見ながらシリルは思いを馳せる。夢彦にならいつでも触ってほしかった。
乳首を吸われた時のあの甘美な快感は一度味わったらもうやめられない。自分を見守ってくれている夢彦だって早く抱きたいと思っているはずだ――
その時だった。
不意に吸われていない方の乳首から甘い感覚がほとばしった。見るといつの間にか接近した人差し指が乳首の先端をこすっていた。
その刺激に体が震え、思わず声が漏れた。眼下の飯島がニタニタと笑っている。
――くっ……
こんな格下の相手に僅かでも感じさせられたことに、そして夢彦の前で他の男に貪られ嬌声を漏らした自分にどうしようもなく怒りがこみ上げた。
追い詰めている相手からの思わぬ反撃はシリルの心の内に僅かながら動揺を生んだ。
その隙きを突くように飯島の左手の人差し指と親指が右の乳首の根本をそっとつまむ。焦らされ続けた乳首は勃起してまるで小さなタワーと化していた。
そのままエレベーターが上るようにその表面をスライドさせ、最上階へとゆっくり上ってゆく。その一方で左の乳首は飴玉を転がすように口の中でころころと転がされていた。
最上階へ到達した指が今度はゆっくりと下降し始めた。そしてその中腹にさしかかった時、シリルの背中に寒気にも似た感覚が走りブルッと震えた。
それは――紛れもなく快感と呼べるものだった。
「あっ…あぁ…」
再び甘い声が漏れた。何度も何度も繰り返し刺激される乳首。その乳首からは溢れ出るように快感が生じている。
一度意識するともうだめだった。否が応にも双つの乳首の甘い刺激から逃れられなくなっていた。
――こいつ……
シリルの眼光が鋭くなる。
認めたくはない。認めたくはないが……
理性は否定するが、自らの肉体の反応がどうしようない現実を突き付ける。
――感じてるの、私……
シリルが愛撫される乳首を見ながら歯噛みする。
この指と舌の動き……腹立たしいが決して不味いものではない。むしろそこらの淫魔の男に比べればずっと…
夢彦の様に強烈な快感はない。それでも少しずつではあるが性感を高められていく。
これならばまだ欲望を剥き出しにして吸われていた時の方がずっとましだった。なぜ急に……
シリルが感じ始めたことに気付いた飯島が、興奮しつつなおも責め続ける。
頬張った乳房の乳輪の上を舌がくるくると旋回し乳首の側面を撫でられ、シリルは微かに肩を震わせた。
そして少し前から感じていた右の乳首のむず痒さがさらに強まったため、自然にそちらに視線を送る。直後、シリルが目を見開いた。
――乳首が、こんなっ……
指でゆっくりと上下にこすられ続けた尖塔はその刺激さえもどかしくなり、さらなる快感を求めるように最大限に勃起していた。
シリルの意思を裏切るように天を突く尖塔――
その麓では乳首を支える乳輪までもがぷっくりと隆起していた。飯島の指がなだめるように乳首をこすり続けている。
シリルの視線に気づいたのか、親指と人差し指に続き中指までもがそこに加わり、今度は3本の指で凝り固まった乳首をゆっくり揉みほぐし始めた。
「んあぁっ……くっ…」
シリルからはもうごまかせないほど、断続的に声が漏れる。咄嗟に腕が飯島の手首を掴もうとするが、シリルのプライドがそれをとめた。
急に冷静さを取り戻した飯島の愛撫はそれまでが嘘だったかの様に洗練され、技巧に満ちていた。これが本来の実力なのだろうか。
夢彦に毎日のように乳房を愛撫され、以前よりも乳首の感度があがった自覚はある。だからといってこんなやつに――
淫魔使いは淫魔を精神的に屈服させることができる唯一の存在だ。まさかとは思うが自分の中の淫魔の本能がそれを望んでいるというのか――
飯島と自身の心身の変化にシリルは心の平衡を失いつつあった。
「乳首、敏感なんだな。こんだけでかいと感じにくいのかと思ったけど」
飯島が咥え続けていた乳房を離し開放する。コルク栓のように太い乳首が口腔内から現れた。久しぶりに乳首に触れる空気が冷たく感じた。
「――あなた、人間にしてはなかなか上手ね。最初は大型犬に襲われているみたいだったけど」
シリルが心の内を悟られないように取り繕って皮肉を返す。
「まあ、一応淫魔使いなんでね」
飯島が左の乳房を無造作に揉み掴んだ。
「……随分と胸が張ってきたな。なぁ、もしかしてミルクが出そうになってるのか?」
乳房は飯島の愛撫により張り詰めていた。一旦、手を離すと今度は搾乳でもするように乳房を前方へと揉み搾り始めた。
「なぁ、そうなんだろう?いいんだぜ出しても。吸ってやるからよぉ」
揉み搾る度に乳首が飯島へ向かって突き出す。
――誰がおまえに飲ませるものか…
「……残念だけど、もっと気持ちよくならないと出てこないの。ごめんなさいね」
胸の中で嫌悪感が渦巻く中、シリルが愛想よく答える。
「そうか。じゃあもう少しで出てきそうだな」
飯島が再び左の乳房の前に屈んだ。
その時、シリルは飯島の変化に気づいた。乳首を見つめる目が血走っている。呼吸も荒く脂汗をかいていた。
平静を装っているが淫魔の瘴気に蝕まれ限界が近いのだ。
飯島が舌を出し乳首をレロレロと弾き始めた。もう一方の乳首は軽く牽引されながら円を描いてる。
「くっ……う…あぁ…」
――もう少し…もう少しでこいつは限界を迎える…
そうすれば私の勝ちだ…もう少しで――
乳首を弾くスピードが増していく。太く存在感のある乳首が次第に目で追えなくなり、代わりにその残像が現れた。
「あっ、あ、あ、あ、あ、あっ……」
――もう少しでっ……もう少し…
突き出した飯島の舌が空中でまるで日本刀の様に翻り、乳首を叩きつけた。
「んあああっ!」
シリルのあえぎ声に呼応するように飯島のボルテージが上がっていく。
――も、もう少し……
弾かれていた乳首が再び飯島の口腔内に消え、舌と上顎の間で擦り潰され平たく伸びた。同時に引っ張られていた乳首の側面を親指と中指が挟みこみ、人差し指がその頂点をカリカリと引っ掻いた。
「あはぁぁぁぁっ!」
双つの乳首にそれぞれ繰り広げれる舌技と指技。ふたつの異なる快感が乳首からそれぞれの長大な膨らみの中で暴れまわり、乳房をより膨らませる。
さらにはシリルの意識をも侵食し、その思考を鈍化させていくーー
……………………………もう………す……こ…………
シリルが身をくねらせる中、3本の指が上下に乳首をつまむ。シリルの体がビクッと震え、あわてたようにつままれた乳首を見て息を呑んだのも束の間、指が無情にもまるでとどめを刺すように乳首をハサミ潰した。指の間で乳首の芯がコリッと弾け、シリルのあごが瞬間的に跳ね上がるーー
その直後、乳首に生じた鋭い快感は電流へと変換され乳房内を通りその奥に眠る授乳器官、乳腺を刺激した。乳房の最奥でミルクがつくられ始める。
乳房を通り抜けた電流は消えることなく二つに別れ、一方は喉を通り抜け脳へと達し、他方は下腹部を通り抜け子宮を直撃し、長い旅路の末、ショーツの奥で眠る陰核へと至った。
割れ目の奥がジュンと濡れた。
「あああああああぁぁぁっっっ!!」
その日いちばんの歓喜の声が、誰もいない廊下に響き渡っていた。