悪夢を見ているようだった。
目の前で愛する女の乳房に友人がしゃぶりついてから10分も経っていないだろう。しかし、苦痛の時間は時の流れを滞らせる。夢彦にはその何倍にも永く感じた。
見ているのがつらいからといってこの場を去るわけにもいかず、夢彦は顔を背けた。
飯島がシリルの乳房に襲いかかった時、てっきりいつもの技を食らわせるつもりなのかと思った。
相手のこめかみに目がけ両サイドから手のひらを打ち付け昏倒させる……シリルの得意技だ。
しかし、予想に反しシリルは動かなかった。シリルの乳房は吸い込まれ、今に至っている。
――いつまで続くんだ……
夢彦が何度目かわからないため息をついた。
突然、聞き慣れた嬌声が耳に入った。
ハッとして視線を向けるとシリルの顔が紅潮していた。背中がひくつき、肉付きのよい太腿が震えている。再び嬌声が口元から漏れた。
いつの間にかシリルに異変が生じていた。
――まさか…シリル………感じてるのか……?
飯島の愛撫に耐えるようにシリルが全身を強ばらせているのがわかった。乳首がこすられる度に声が漏れ、その頻度も増えていく。
そして、シリルのあごが跳ね上がりその美しい唇から漏れた嬌声を聞いた時、疑惑が確信へと変わった。
突然訪れたシリルの変化に夢彦は狼狽する。つい先ほどまで乳房を貪る飯島に侮蔑の視線を送っていたというのに……
舌が乳首を弾くピチャピチャという音が夢彦のもとまで届いた。その卑猥な音にシリルのあえぎ声が混じり、淫らな演奏が続く。
夢彦はシリルの左斜め後方2メートルくらいの位置で行く末を見守っている。ちょうどその対角線上に飯島の従える淫魔・カーリが同じように立っている。二人の放つ淫靡な空気にあてられたのか、カーリはしきりに太腿をこすり合わせていた。
シリルから漏れ出る声はもはや止まることがなかった。それは夢彦が乳房を愛撫している時と同じように思えた。
――もしかして…
夢彦が推考する。
自分と同じ能力を持っているのか――
でも、昨日飯島が言っていたことが本当ならあいつの能力は……
飯島が吸い続けていた乳首を離した。そして、もう一方の乳房へと顔を寄せる。
「待って…」
シリルがそれを静止した。
訝しむ飯島にシリルが続ける。
「……さっきの舌の動き、すごく良かったの…もう少しで………」
シリルが甘い吐息をつきながら囁く。潤んだシリルの瞳に吸い込まれるように、飯島がそれを見つめる。
「…だから……もっと続けて……」
シリルが言い終わらないうちに飯島が再び左の乳首にしゃぶりついた。シリルの喉から美しいソプラノが漏れ始めた。
――何でそんなことを言うんだ…
夢彦にはシリルの考えていることがわからなかった。考えたくはないが、淫魔の血が純粋に快楽を求め始めているのか……
不意に右の乳首をいじっていた指が離れ、そのまま下へ向かうと指先がショーツと肌の間に隙間をつくり、そのまま潜り込んだ。
シリルから一際高い声が漏れる。
「お、おいっ!!」
たまらず夢彦が声を荒げる。途端にシリルが片腕を上げそれを制止した。
「…大丈夫よ…夢彦……好きにさせて…あげて……」
――何が大丈夫なんだっ…!?
いよいよわけがわからなくなった夢彦がその場に立ち尽くす。混乱する夢彦をよそに飯島が乳首を吸い上げた。飯島の口の中で乳首が伸びる。ショーツの中では指がせわしなく動いていた。
「あああああぁっっっ!あぁっ、あああっ!」
シリルの頭が右に左に揺れる。声がまた一段と高くなり、絶頂が近いことを知らせる。
――シリルがこのままイカされたらどうなるんだ……
夢彦の胸中に不安が込み上げる。
淫魔使いは淫魔を性的に屈服させ、自らの奴隷とする。
主従関係よりも対等な関係を望んだ夢彦とシリルは、古来より伝わる「恋人の契約」という儀式を執り行った。
それにより夢彦がどんなに絶頂させてもシリルの精神構造の変化は起きず、気の向くままに交わることができたのだった。
シリルが奴隷なってしまったら恋人の契約はどうなるんだ?いや、そうなる前にやめさればいいだけ……でもシリルはそれを望んでいない………
夢彦の思考が目まぐるしく推移する中、飯島の右手が吸っている乳房の根本を掴む。そして唇が乳首を吸い込んだまま後方へと下がり、乳房全体が伸びていく。
ジュルルルッ!!ジュュウゥゥ~~〜~~!!
一気にミルクを吸い出そうというのか、乳首を吸う高い音が辺りに鳴り響く。同時にショーツに潜り込んだ中指が肉厚のワレメから中へと侵入し、くの字に曲がると、柔らかな肉壁に隠された弱点を刺激した。
シリルの声が高域に達した。
――イクなっ…シリルッ…!
もはや、静観することのできなくなった夢彦が止めようとしたその時、シリルの声がかすれて消えた。
入れ替わりにううっ、という低い声が響く。
そして……
何が起こったのか――
夢彦には瞬時に理解できなかった。
目の前で乳房を吸っていた飯島が愕然とした表情で座り込んでいる。その向かい側には勝ち誇るように飯島を見下すシリルの姿があった。
よく見ると飯島のズボンの前に大きな染みが広がっていた。シリルの放つ濃厚なフェロモンとその透き通るようなあえぎ声に刺激され、指一本触れられることなく射精したのだ。
「……演技だったのか…」
飯島が腰を震わせながらゆっくりと顔を上げた。
シリルはその問いに答えず一瞥すると、夢彦に歩み寄った。
「ねぇ、夢彦。ハンカチ持ってる?」
シリルは笑みを浮かべている。
「…まぁ、持ってるけど…」
シリルの急な変化に居をつかれつつ、ポケットからハンカチを取り出し、それを渡す。
「ありがと」
受け取ったハンカチでシリルは飯島に指でいじくられていた乳首を拭き始めた。続けて唾液に濡れている乳房の方も丁寧にぬぐっていく。
一通り拭き終わると、
「このハンカチもういらないわよね」
と問いかけ、夢彦が返事をする前に振り返ると、うなだれる飯島の前でとまった。
「これ使っていいわよ。返さなくていいから」
手に持ったハンカチを放り投げた。ハンカチは飯島の濡れた股間の前に音もなく落ちた。
シリルの正面に立っていたカーリがひっ、と小さく悲鳴をあげる。
氷のように冷たい目――
その目がこの世で一番汚わらしいものでも見るように見下ろしている。飯島はうなだれたまま動かなかった。
シリルは踵を返すと再び夢彦の元へと戻る。その顔は先ほどまでと違い、明るく清々しいほどだった。
夢彦に向かい合うとシリルが飯島に吸われていない方の乳房を持ち上げた。
「ねぇ、オッパイ、吸って」
夢彦がたじろぐ。
「えっ?ここで?」
すぐ近くには意気消沈している飯島が座り込んだままだ。
「いいでしょ?今、吸ってほしいの」
シリルが懇願する。持ち上げられた乳首までもが吸って欲しそうに夢彦の方を向いている。
それを見た夢彦の愚息が硬く強ばり始めた。
夢彦の両手が乳房を掴んだ。そしてその頂点で待ち続けていた突起が口の中へと吸い込まれた。
その途端――
「ああああぁぁぁっっっっ!!」
乳首が蕩けそうな快感に包まれ早くもシリルが嬌声をあげる。なおも吸い続けるとシリルが夢彦の両肩に手を掛けた。その腕が快感に震えている。
「もっと…お願い……もっと吸ってぇ!」
シリルを満たすべく乳首を吸いながら乳首を弾きまわす。
「そうっっ!もっとぉぉお!!」
シリルの肢体が反り返った。普段の澄ました顔からは想像できないほど乱れきっている。高貴な淫魔が我を忘れるほどの快楽が乳房の小さな突起に生じているのだ。その快感に乳房がふくらんでゆく。
シリルの絶頂を予感した夢彦が乳房を吸い伸ばした。乳房を吸う高い音が鳴り響く。
たまらずシリルが夢彦の頭を抱きしめて乳房に押し付けた。なおも吸引が乳首を遅い続ける。
「ああああぁぁぁぁっっっ!!イッ…イクゥ!!」
シリルが絶頂の到来を告げ、その声が消失した。入れ替わりに全身に痙攣が襲いかかる。
直後、夢彦が咥える乳首から大量のミルクが一気にふき出した。甘い味わいが口いっぱいに広がっていく。吸っていない方の乳首からも噴水があがった。
淫魔の雌の絶頂の証だった。飯島がいくら吸っても出なかったミルクが次から次へと溢れてくる。
「あっ…あうぅぅ…うぁぁ…」
シリルが絶頂をさまよいながら震え続ける。夢彦が優しく乳首を吸いつつミルクを飲み込んでいく。
喉を鳴らす音がいつまでも続く。そして、射乳の勢いが衰えた頃になってようやく夢彦が咥えていた乳首を離した。顔を上げるとシリルの顔が紅潮し至福に満ちていた。
「気持ちよかった?」
夢彦がその頬を撫でながら問うとシリルが満足そうに頷いた。潤った瞳が輝いている。
そして、シリルの艷やかな唇がゆっくりと開いて言葉を紡ぐ。
ーーあなただけなの……
すっかり上気したシリルの顔を見ながら、その言葉を暫し反芻する。やがて乳首から滴るミルクを見て思い至る。
ーーまさかそれを伝えるためにわざと飯島に…
シリルの真の目的。それは、シリルを絶頂へと導き、そのミルクを吸うことができるのは世界でただ一人、夢彦だけであること。それを伝えるために敢えて飯島に身を任せたのだった。
「馬鹿だなぁ、シリル。あんなやつに吸わせなくたっていいのに」
「…だってぇ」
シリルが甘い声を出す。廊下に二人だけの空間が広がっていた。乳首からはまだポタポタとミルクが滴っている。
「まだ吸ってもいい?」
「もちろん。あなたのために出してるのよ…」
夢彦の内に興奮がこみ上げる。左右の乳房を掴むと先程まで吸っていた乳首に再びかぶりついた。
ーーこのオッパイも、このミルクも俺だけのものなんだ!!
独占欲を刺激され、絶頂を迎えたばかりの乳首を思い切り吸いあげた。近くにいる飯島に聞こえるようにわざとジュルジュルと音をたて吸引してやる。もう片方の乳房を揉み掴む。
もみもみもみもみもみもみもみもみもみっっ!
その弾力が手のひらにはじける。
「あぁ、ああっ!それすごく…いい…もっとしてぇ」
シリルもまた夢彦には呼応するように興奮を高めていく。シリルの手が震えながら夢彦の後頭部を優しく撫で続ける。
「ああぁぁっ……ああっ…いい…あぁ…また…イッ…」
夢彦の愛撫により双つの乳房は込み上げるミルクで再び張り詰めていた。絶頂がすぐそこまで来ているのを感じる。
夢彦が咥えていた乳首を一旦離し、飯島に吸われて汚された乳首に唇を近づけた。今度はこちらの乳首でイカせようと思ったのだ。
「あぁ……夢彦ぉ…」
夢彦の意図を察したシリルの顔が嬉しさと期待に満ちている。
夢彦が乳首の前で口を開いた――
口びるが乳首を捉える寸前、不意にシリルからヒッという小さい悲鳴が漏れ聞こえた。
ーーその直後だった
抗いようのない強大な力が夢彦の体を羽交い締め、そのまま後方へと引きずった。シリルとの間に距離ができる。
「夢彦ぉ!!」
異変を察知したシリルのすぐ後ろから少年の声がした。
「油断したなぁ、シリル」
振り返ろうとするシリルに声が続く。
「動くな。鏡がどうなってもいいのか?」
視線を戻すと夢彦が体を締め付けられ、顔が苦痛に歪んでいる。
その背後にいるのは、飯島の奴隷・カーリだった。
「おい、おまえはゆっくりと手を上げて頭の後ろで組め」
「くっ…」
夢彦が捕らわれている以上、どうしようもなかった。仕方なく言われたとおりにすると、その声が話を続けながらシリルの正面へと移動を始める。
「…まさか、ここでおっぱじめるとはなぁ」
声の主が視界に入った。
床の上で茫然自失としているはずの少年がこちらに振り向く。
「さすがは淫魔だな。抱かれることしか考えてないのか?」
声の主はやはり――飯島だった。気味の悪い薄ら笑いを浮かべている。
「……あなた何をするつもりなの」
「何って、さっきの続きに決まってんだろ」
飯島の手には刺繍の入った布が握られていた。
「ハンカチありがとな。早速使わせてもらうよ」
投げ捨てられたハンカチでシリルがそうしたように、乳房に付着した夢彦の唾液やミルクを拭っていく。シリルの顔が恥辱に歪んでゆく。こみ上げる怒りで目の端が細かく痙攣した。
「飯島ぁ!やめろぉ!!」
夢彦がなんとか拘束から逃れようともがきながら叫んだ。
飯島が乳房を拭きながら、顔を軽く横に向ける。
「カーリ、ちゃんと抑えておけよ。胸を触られないように気をつけろよ」
「承知致しました。御主人様」
カーリが恭しく答えた。
「……あなた、まだ自分の実力が理解できないの?」
「わかってるさ……まさか触れられもせずイカされるとはな。初めてだぜ、………こんな屈辱はよ」
薄ら笑いを浮かべていた飯島の目がシリルを睨む。そしてシリルの乳首をハンカチの上からつまむとそのままこすり合わせた。ハンカチの細かな繊維が絶頂を迎えたばかりの敏感な乳首を刺激する。
「くっ……く……くぅぅ…」
怒りに歯を食いしばるシリルから声が漏れた。
やがてハンカチがもう一方の乳首へと移り、拭き終わった乳首に飯島の指が伸びた。そして夢彦によって高められた性感が落ちないように、いまだそそり立つ乳首をしごき始めた。
「あぁ……く………やめな…さい……くぁ……」
手を頭の後ろに組んだシリルがその指から逃れようと身をくねらせ、乳房を揺さぶった。乳首から指がはずれる。
「おい、動くんじゃねぇよ。鏡がどうなってもいいのかっ!」
苛立ちをぶつけるように双つの乳首を押し潰した。
「くああっ!」
たまらずを悲鳴をあげる。飯島がなおも潰した乳首をすり合わせると乳汁が滲み出しポタリと落ちた。
「わかった!わかったからっ、やめてっ!」
シリルが湧き上がる怒りと乳首への刺激に肢体を震わせながらも静止に努める。わかればいいんだよ、と飯島が吐き捨てるように言った後、再び丹念に乳首を拭き始めた。
勃起した乳首は刺激を受け続け、一向に収まる気配がなかった。シリルの目線の先にはいまだ羽交い締めにされている夢彦の姿がある。
それを遮るように飯島が顔上げた。
「ハンカチ返すぜ。……おっと、返さなくていいんだったな」
ハンカチをその場に投げ捨てる。そして、おもむろに両手を伸ばし、飯島が先ほどまで吸っていた左の乳房の根本を掴むと揉み搾った。
すると、乳房に添えた人差し指の手前の乳肉が盛り上がり、なおも続けると乳房がパンパンに張り詰め、その先端に位置する乳首が突き出した。
次第に乳首の頂点やその周辺に白い点が何個も浮かび上がった。一度乳房を離し再度揉み搾るとその点がさらに大きくなり、乳首の上でフルフルと震えやがて放物線を描いて外の世界へと飛び出した。
夢彦によってもたらされた絶頂の残滓がシリルの乳房の中でいまだ疼いてた。
「いいぞ……まだまだ出そうだな」
溢れる乳汁を見て飯島がニタニタと笑う。
――ミルクを飲まれるっ……!!
シリルの内に屈辱を超えた嫌悪感が生じた。
自分のミルクを飲めるのはシリル自身を絶頂へと導く唯一の存在、夢彦だけだ。それはシリルの自戒であり誇りでもあった。
夢彦以外の男に授乳をする……それが卑怯な手段を取られた上であってもシリルの矜持が許すはずもなかった。
不意に飯島の口が乳首に近付いた。
「やめなさい!これはあなたが吸うために出してるんじゃないのっ!」
シリルの怒声が響く。
「……そうだろうな。まぁ安心しろよ。これからは俺だけのために出すようになるからよ」
吸わせまいと身を引いて逃げようとするシリルの左の乳房を飯島が掴んで固定した。
乳首からミルクが滴り落ちる――
とうとう訪れたその瞬間に飯島が身を震わせる。
目の前にはたっぷりとミルクの詰まった乳房と、美味しそうな乳首――
それを見た瞬間、飯島はシリルにされた屈辱の数々を忘れ、ただ目の前の乳房の虜になっていた。乳首から放たれる甘ったるい香りに反応し、唾液の分泌が始まる。興奮に体が支配されていく――
――吸ってやるっ! 吸ってやるぞぉぉっ!
飯島が再び顔を乳房に近付けて口を開く。シリルの抵抗も虚しくミルクで湿った太い乳首が飯島の口腔へと消えていった――
数分後、一部始終を見ていた夢彦が自分の思い違いに気付いた。
本当の悪夢はこれから始まるのだということを……