※この作品はR-18です。

恋心、想花の如く。-千紫万紅-   作:氷桜

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混浴回。


<Chapter3-3-11-R-M>貴方と共に。

 

<Chapter3-3-11-R-M>貴方と共に。

 

ざぶん、と身体が湯に沈む。

既に一度入っているのに、二度目のお風呂にも関わらず。

少しだけ声が漏れるのは、致し方ないことだと思ったりもする。

 

(年寄り臭いよなぁ……。)

 

山の方から引いている温泉を利用した水垢離で良く問題ないな、と思っていたが。

土地に染み付いた呪いと、それと相反する浄化の力と。

恐らくは「流れる」という水の力もあって打ち勝っているのだろうな、と。

ゆっくりとするべき場所で益体も無いことを思う。

 

安晴さんは既に眠りについた。

二人は何をしているのか分からないが、ムラサメちゃんはあの後で合流した。

 

『霊力を蓄えていたのだ。』

 

そんな事を口にしていたが、何をどこでどうしていたのかは一切の不明。

まあいつも通りか、と思いつつ。

手で掬った湯で顔を洗った。

 

からり。

 

――――?

 

源泉掛け流しの湯の音に紛れ、何か物音がしたような。

少しだけ耳を澄ませたが、やはり水の音に紛れて聞こえない。

多分気の所為だろう。

電気が付いているのだし、着ていた服も籠の中。

普(・)段(・)と(・)同(・)じ(・)であるのなら、それで気付いてくれるはずなのだから。

そんな思いで意識を緩めた。

 

……結論から言えば。

普(・)段(・)、という言葉はもう切り替わっていることに気付くべきだった。

 

からり。

 

「――――え?」

 

風呂場の入口が開く、軽い音がした。

咄嗟にそちらを見てしまい、そして即座に顔を戻した。

 

「…………どうも。」

 

顔を真っ赤に染めて、身体に何も身に着けず。

健康的な肢体に胸元の桃色の突起までしっかりと見える。

けれど下半身はタオルで隠した、奇妙な格好の茉子ちゃんの姿。

 

「な、ななななななな……!」

 

言葉にならない言葉を発し、彼女の方を見ることだって出来やしない。

顔が茹だる。

熱を発し、風呂に長く浸かりすぎた時のように混乱している。

それと相反して、生理的な現象は抑えられずに反応を示した。

 

「落ち着いて下さい。 もう深夜ですから。」

 

そんな囁く声色が耳に届く。

けれど、恐らく。

彼女の声も少し震えている。

 

洗体場で身体に湯を纏わせる。

横目に入ってしまう彼女の身体。

肩から背中へ水が滴る。

濡らしている――――目を離せなくなりそうで、無理矢理に思考から外した。

 

「何してるんだ!?」

「何……もう一度お風呂に入ろうと思っただけですよ?」

 

互いが互いに冷静ではない。

それが分かっているから話が成立してしまう狂った状況。

 

「……ただ、それだけではなくて。」

 

立ち上がる。

濡れたタオルが肌に張り付き、見えていなかった下半身までも布越しに映し出す。

ごくり、と。

生唾を飲み込みそうになって、息を止めた。

 

「一昨日、話をしましたよね。」

 

タオルをそっと湯船の傍へ置いた。

一度だけ見た――――肌(・)で(・)感(・)じ(・)た(・)こ(・)と(・)の(・)あ(・)る(・)、彼女の裸体が視界に映る。

見ないように、けれど脳裏が覚えるように。

思考と身体が相反するように反応する。

 

「昨日、受け入れてくれました。」

 

ちゃぷん、と沈んだ脚から腿。

そして胸元、首まで沈んだ彼女の視界の高さが同じに揃う。

水越しに歪んで反射した肌が微かに見えて。

気付かれていなければいい、と胡乱な思考でそう思った。

 

「ですから、貴方は私達の。 私達は、貴方のモノです。」

 

そうでしょう、と聞く言葉。

普段とは違いすぎる、妖艶な言葉に違和感を感じる。

――――まるでそう、無理でもしているように。

 

「……なんて、今はそう言うしか無いんですけどね。」

「……え?」

 

そして。

そんな態度をひっくり返すように小さく笑い。

ほんの少しだけ俺へと近付いた。

身体と身体の間は……多分、2メートルも無い。

 

「嘘でもないですし、全部本当のことです。

 ――――将臣さんが望むなら。」

 

でも。

普段と違う場所。

普段と違う事柄。

普段と違う、彼女。

 

「でも……今は。 結(・)ば(・)れ(・)る(・)なんてことも出来ませんから。」

 

それがどういう意味を指すのか。

互いに顔を真赤にしたからこそ、伝わった。

 

手が伸びる。

釣られるように、手を伸ばす。

手と手が重なって、組み合い。

引き寄せられるように、水の中を浮いた。

 

「せめて――――今は、これで。」

 

組み合った手が、胸へと引き寄せられた。

あの時に感じたのは背中への感触。

今感じているのは、手への感触。

同じものを別の場所で。

 

「……ワタシの事も、大事にしてくださいね。」

 

そんな言葉の前に。

精一杯の無理をしているというのが分かるからこそ。

微かに伝わるだけの、頷きを返した。

 

唇も、肌も重ねずに。

ただ、心を重ねた。

 

そうして、一人とは契りを結び。

もう一人とは――――。

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