短めです。
<Chapter4-1-7-R-Y>
神社に引いている温泉は土地の影響を大きく受けている。
だからこそ水ではないのに水垢離の影響を受けられるし。
山から戻ってきた後は身体の瘴気を流し去ることが出来る。
「……とは言えなぁ。」
湯に浸かる事で全身に走るぴりぴりした痛み。
切り傷や擦り傷に染みていく水分に顔を少しだけ歪める。
そうして身体を無理に動かせば、一番痛みが酷い事に後で気付いた箇所が更に痛む。
故に、傷の箇所場所全てを急いで「清める」必要があった。
湯自体に傷を早く治す薬効もあるのだというから、それはいい。
「……なんで一緒に入ることに?」
「…………茉子に聞いてください。」
絶対に湯だけではない熱が二人を包んでいる。
礼儀にそぐわないと分かっていても、彼女は全身にタオルを巻いた状態で。
俺の場合はそれをするのを(何故か)認められず全裸で。
同じ湯に浸かっている。
……茉子ちゃんの時にもあったな、確かに!
ってことは彼女の企みか何かかこれ!
態々俺が浸かった後を狙って入ってきた事といい、流れ同じじゃねえか!
「そっか……。」
「で、でも!」
後で何か言ったほうがいいのか、と悩みかけて。
それを止めるように少しだけ大きな声を聞く。
ぱしゃり、と水が跳ねた。
タオルで隠されながらも浮かび上がる、形の良い胸が視界に入って無理に首を曲げる。
「わ、
其処まで告げて、自分の言ったことが恥ずかしくなったのか。
小さく何かを漏らしながら押し黙り。
温泉が流れる音だけが周囲を支配する。
……多分、互いの顔を見れば真っ赤だろう。
「……ありがと。」
「……いえ。 え、っと。 それで。」
礼を告げるのも何だか不思議だが、言いたくなったのでそう返し。
返答に合わせるように、彼女は当初の予定だったのだろう一つの提案を口にする。
「背中、流させてくれませんか?」
「…………え?」
「交換条件というわけではないですが……私を、将臣くんが洗ってくれると嬉しい……です。」
「え???」
少し頭の混乱があり。
それに追撃を受けるように、更に混乱。
俺を彼女が、彼女が俺を?
それってつまり、背中だけとは言え裸を見るってことで……。
不味い、下半身に熱が。
「……なんでそうなった?」
「なんで、って。 将臣くん、今背中洗えないじゃないですか。」
「……あー。」
そういうことね。
それを狙って入れ知恵か何かしたのか茉子ちゃん。
文句を言うべきか凄い悩ましい。
「私も洗えなくはないですけど、少しだけ腕が痛いのは同じですし……。」
「洗って貰えると嬉しい、と。」
「はい。 交換条件……になります?」
なる。
多分此方が貰いすぎってレベルでなってしまう。
ただそれをはっきり口にするのは恥ずかしかった。
(……うわー。)
こんな幸せでいいのか、と思いつつ。
だから、行動で示した後で言うことにした。
湯の中を進み、手を伸ばす。
揺蕩う指先を掴み、引き上げる。
なんだろう、と首を捻る彼女の眼前で。
手の甲に唇を重ねる、振りをする。
騎士の誓約、とでも言うのか。
貴婦人に捧げるモノとして、咄嗟に浮かんだのがそんな行動。
「……勿論。」
「あわ、わわわ……。」
実際に触れるのはもう少し後だろう。
それよりも先に肌に触れ、裸を見ることが有るかもしれない。
ただ、それでも。
「俺でいいなら。」
「…………お、お願いします……。」
共に、湯から立ち上がり。
肌に張り付いたタオルがぴっちりと肌を映し。
俺は彼女の視界に真正面を向けないように注意しながら。
共に、背中では有るけれど。
柔らかいその場所に触れて、それだけである意味満足してしまった。
……眼には、十二分以上に焼き付けながら。