授業終わりのチャイムを聞いて私は机に突っ伏した。今日の6時間目は算数。一日の終わりに頭をフルに使う授業を持ってくるのはギャクタイだと思う。
「うーん、今週も終わりかー」
体を起して鞄に勉強道具を仕舞う。あっという間にホームルームも終わって放課後、最高学年になって2週間が過ぎたけど、私ははっきり言ってタイクツだった。
「ルナちー、帰りヤック行こ!」
友達の千紗ちゃん達がそう声を掛けて来る。けれど現実はザンコクだ。
「ごめーん、今日はパス!お小遣い厳しくって」
「そっかー。じゃあまたね!」
「帰ろ」
そう言って連れ立って教室を出て行く千紗ちゃん達を見送った私は、そう呟いて鞄を掴むと教室を出た。おかーさんから貰っているお小遣いは月1000円、お手伝いなんかで追加がある千紗ちゃん達と付き合うには心許ないグンシキンだ。
「けどお手伝いって言ってもなぁ」
いつも通りの帰り道を通って私の家があるマンションの玄関前でそう溜息を吐いた。おかーさんはシングルマザーのキャリアウーマンと言う人らしく、家に居る事は殆ど無い。けれどとっても稼いでいるから家の事はハウスキーパーさんが私達がいない間に全部済ませてしまうのだ。つまりお手伝いをしようにも手伝う事が無い。ついでにお小遣いのアップも相談したけれど、まだ早いとバッサリだった。
「あ、あれ?ど、どうしたの月奈ちゃん?」
私がタソガレていると後ろからそんな声が掛かった。振り返るとそこにはコンビニの袋を持った丸いお兄さんが立っていた。
「あ、お兄ちゃん」
声を掛けて来たのはシンドーさんだった。お兄ちゃんと言ったけれど、別に本当のお兄ちゃんではない。所謂お隣さんでちっちゃい頃から遊んで貰っている人だ。家でゲームや漫画を読んでいるとおかーさんがいい顔をしないから、お兄ちゃんにはとても助けられている。
「お帰り、お兄ちゃん。出かけてたの?」
「う、うんただいま。あ、えと、夕食をね」
そう言ってお兄ちゃんは袋を持ち上げて見せた。お弁当とお菓子が一杯、多分土日のブッシホキューも済ませたんだろう。
「月奈ちゃんこそ、どうしたの?た、溜息吐いてたみたいだったけど。あ、良かったらウチ来る?こないだ読んでた漫画の新刊買ってあるよ」
「本当!?」
お兄ちゃんの提案に私は二つ返事で頷いた。おかーさんは昨日から出張で週明けまで帰ってこない。ハウスキーパーさんももう帰っている時間だからそのままお兄ちゃんの部屋にお邪魔することにした。
「おっじゃましまーす」
カッテシッタル何とかで私は靴を脱ぐと直にお兄ちゃんの部屋へ直行する。私用として用意してくれてある小さいパソコンの電源を入れ、早速目当ての漫画を読み始める。少ししたらお兄ちゃんがお菓子とジュースを持って部屋に入ってきた。
「はい、コーラだけど」
「うむ、よきにはからえー」
丁度読んでいた漫画の真似をすると、お兄ちゃんは笑いながらグラスをケンジョーするみたいに差し出してきた。お礼を言って受け取って、私は一口口に含む。うーん、このシュワシュワがたまんない。
「それで、さっきはどうしたの?」
家に入るとお兄ちゃんは普通に喋れる。外だと緊張するんだって言ってた。そんなお兄ちゃんに私は今日の事を話した。
「うーん、お小遣いかぁ」
そう言って腕を組むお兄ちゃんに、私は前からギモンに思っていた事を口にした。
「ねえ、お兄ちゃんっていつも家に居るけど、何の仕事しているの?」
私がそう聞くと、お兄ちゃんは一瞬喉を詰まらせたみたいな顔になった後、自分のおっきいパソコンを動かす。
「えっとね、僕はウーチューバーをしてるんだ」
「知ってる!すごい、お兄ちゃんお金持ちなんだ!」
ウーチューバーなら私も知っている。ウーチューブというサイトに動画をアップして稼いでいる人達だ。確かすっごい稼げるってクラスの子が言っていたと思う。
「あー、いや、えっとね」
でも私の言葉にお兄ちゃんは気まずそうに手招きをして画面を指さした。
「これ何?」
「僕の動画、再生回数ってあるでしょ?」
そこには16と書かれていた。
「???」
私が良く解らない顔をしていたら、お兄ちゃんが詳しく説明してくれた。なんでもこの再生回数という数字がとっても重要で、これが沢山ないとお金にならないらしい。
「ダメじゃん!」
「いや、難しいんだよ、ほらこういうのはやっぱり強みとかがある方が有利で、僕はそういうのが無くて」
「強み?」
「見て貰えるのに有利な条件ってこと。例えば同じゲームでも可愛い女の子がしてる方が再生数は多くなるし」
お兄ちゃんの言葉に私は驚いて聞き返す。
「え?そんなのでいいの?」
「いや、そんなのって。結構ハードル高いんだけど…」
でも私はもうお兄ちゃんの言葉に凄いケーカクを思いついてしまった。
「それって私がやっても稼げる?」
そう聞くとお兄ちゃんはまたびっくりした顔をした後、真剣な顔で聞いてきた。
「いや、月奈ちゃんは可愛いけど、それだけじゃ難しいかな」
「えー!?」
「可愛い子がゲームをするって、もう結構使い古されてるからね。新しく始めても見て貰うのは難しいよ」
お兄ちゃんの言葉に私はがっくりと肩を落とした。
「良いアイデアだと思ったのに」
「…月奈ちゃんはお小遣い欲しいんだよね?」
「当たり前じゃん」
当然の事を聞いて来るお兄ちゃんに頬を膨らませながらそう言い返すと、お兄ちゃんはパソコンを操作して別のサイトを開く。
「稼ぐ方法があるって言ったら、やる?」
「あるの!?」
「うん、でもちょっと難しいんだよ。機材とかも必要だし」
「機材って、カメラとか?」
私の質問にお兄ちゃんが頷く。でも私の天才的頭脳はその解決方法を即座に出していた。
「ならお兄ちゃんが手伝ってよ、ウーチューバーならそういうの持ってるでしょ?」
「そりゃあるけど、僕も自分の動画を撮らないといけないし。あ、こういうのはどうかな?」
「?」
「月奈ちゃんのチャンネルを僕と共同運営にするんだ。そうすれば僕が自分の分の動画を撮らなくて済むから、月奈ちゃんが全部使えるよ」
「本当!?」
「ああ、けど、まだ問題が」
「まだあるの!?」
もうちょっと嫌になってきた私に、お兄ちゃんはさっき開いたページを見せてきた。そこには私くらいの女の子がゴムボールみたいなのに乗って遊んでいる動画が再生されている。
「これって…」
でも重要なのは多分そこじゃない。だって、その子は水着で遊んでいるんだ。横にいるお兄ちゃんが説明をしてくれる。
「会員制のちょっと過激なサイトでね。普通より沢山お金が貰えるけど、見ての通りHな内容なんだよね」
お兄ちゃんの声は聞こえるけれど、私は目の前の動画から目を離せないでいた。最初はただボールの上で跳ねているだけだったけれど、だんだんその子は腰をぐるぐる回したり、寝そべって股を開いてみたりし始める。それは女の私から見てもとてもHで、私は凄くその動画に惹かれた。
「はい、お終い」
動画が終わったタイミングでお兄ちゃんがそのサイトを閉じてしまう。そして私にこう言ってきた。
「今日は取敢えず家に帰って、ゆっくり考えてごらん。その気になったら、明日またウチに来てよ」
エロを謳っておいて一話目にエロ描写を入れないスタイル。(と言い張る勇気
友人(本作主人公の原案者様)の深幹ケイ様より月奈ちゃんのイラストを頂きました!
【挿絵表示】
更にシンドーさんまで書いて頂きました!
【挿絵表示】
他にも可愛いイラストを沢山書いていらっしゃいます。良ければ覗きに行って下さい!(ダイマ
https://twitter.com/Kei_Fukamiki