ダークエロよろず短編集2 作:カード読み込み
大広間に飾られた巨大な鏡面硝子に映るのは——
黄金の髪を乱され、白磁の背中を露わにして跪く一人の少女だった。
濡羽色の燕尾服を纏った若い執事が恭しく差し出す盆には、
磨き上げられた指輪が並べられている。
だがアルファの指先は震えてそれを受け取れない。
足首を縛める鎖がわずかに鳴り、
宝石の散りばめられた鉄環の音が天井の梁へ澄んだ響きを放った。
「……まだ慣らしの最中でしょうか?」
低く掠れた声が背後から落ちてくる。
振り向くと、
そこには鈍色の瞳を細めた老伯爵——ヴォルフハルトが立っていた。
皺ひとつない濃紺の夜会服の上からでも窺い知れる膨張した筋肉。
枯淡の中に燃え残る熾火のような情熱が、少女の鼓動を早鐘のごとく打ち鳴らす。
伯爵はゆっくりと膝を折ると、
まるで壊れやすい硝子細工を撫でるようにアルファの顎を支え上げた。
「今日は客が来る。諸侯連中の目に耐えられるよう、
己が立場を忘れぬ証を刻みなさい。……いいね?」
拒否の言葉は喉奥で凍りつく。
アルファは懸命に微笑を作った。
だが引き攣った口端からは怯えと憎悪とが漏れ出し、黄金の睫毛は微かに湿りを含む。
◇◇◇
朝の庭園——。
噴水の水面に咲く睡蓮が薄紅の花弁を開かせるころ、
アルファは温室裏の石畳にひざまずいていた。
掌の中には伯爵が昨夜“褒美”とした極小の錠剤。
舌先に乗せて溶かせば思考だけを曖昧にさせて
身体の芯へ毒よりも甘い痺れを注ぎ込む媚薬だ。
飲み干すことこそが彼女にとって一日の始まりの儀式になっていた。
こくり──。
喉の奥が焼け付く刹那、
脳裡を稲妻が走り抜けた。
血潮が駆け上がり胸元の布地を押し返す二つの隆起が疼き始める。
既に肥大しすぎたそれは今や自分の重みさえ痛みとなって跳ね返ってきた。
「ふ……っ……ぅ……」
抑えきれぬ吐息が零れそうになる時だった。
頭上で砂利を踏む靴音。
振り仰げば少年と言ってよい年恰好の青年——
伯爵の孫・マルコムが蔑む笑みを浮かべていた。
「へえ。これが祖父上が珍しく骨抜きになったっていう『女狐』かい?
確かに形は素晴らしいけれど随分と躾が行き届いているじゃないか」
嘲弄と共に小さな短鞭が軽く振られる。
皮紐の先についた細工は百合の蕾を模していたが棘が仕込まれていた。
次の瞬間アルファの肩口を風切り音とともに裂き、
赤い筋が雪白の肌を流れ落ちる。
悲鳴を押し殺す唇を噛み締め、
それでも表情ひとつ変えずに立ち上がる。
反逆の意思を見せるより早く、
“道具”と割り切るのが生き延びる術だと学習していた。
ところが。
「立てと言われていないだろう?」
今度はマルコムの弟ヴィットリオが現れ、
冷笑と共に踵で少女の膝裏を蹴り飛ばす。
体勢を崩した拍子に胸元の留め具が弾け飛び、
熟れ過ぎた果実が陽光の下に剥き出しされた。
途端に二人の哄笑が巻き起こる。
歓喜とも憐憫ともつかぬ鳥籠の中で繰り返される娯楽。
耳朶まで染まったアルファは咄嗟に腕で覆い隠したが、
「いけないなぁ。“贈り物”はきちんと見えるように飾るものだ」
マルコムたちの父、伯爵の息子ウィレムの低い声音が静寂を取り戻した。
四本の指を絡め合わせて拘束されれば片方の腕が捻られ胸を晒け出したまま固定される。
柔肉は瑞々しい泉を滴らせながら外界の空気に曝され続けた。
──こんなことのために鍛えたわけじゃない……
鋼の如き自己暗示が砕けてゆく音が聞こえた気がした。
怒りが恐怖がそして悔しさが渾然一体となって爪の先まで巡り回る。
しかし男達の前で“女”であることしか許されぬのが今の世界だ。
◇◇◇
昼下がりの大広間。
華奢な少女は大理石の床に伏していた。
漆黒の礼服を脱いだ伯爵の逞しい裸身が、
後背位で組み敷いた華奢な肉体を何度も穿ち抜いている。
パンッ! パァン!
規則正しい衝撃音が柱に共鳴し、
互いの汗と体液が交わり合い甘膩な臭いを充溢させた。
「もっと啼け……!」
野太い咆哮とともに最後の一突きが突き刺さる。
アルファは奥底で脈打つ灼熱を感じた瞬間、
意識の底が白く閃光して崩れ落ちるのだった。
どれほどの時間が経ったのか——。
気づけば寝台の天蓋。
重い瞼を持ち上げるとそこには水晶製の盃があった。
薬草の芳香と蒸留酒の酒精が入り混じった液体が揺れている。
傍らの椅子には伯爵が悠然と脚を組んで座っていた。
「これは契約書だよ。シャドウガーデンに渡す予定の“招待状”でもある。
君の署名と印影があれば明日には公文書化される」
脳裏が霞む。
視界の隅に揺らめく盃。
飲み干せということなのだ。
ひと匙分——。
氷よりも冷たい金属の感触。
彼女の胃壁へ流れ込んだ途端、
血液が沸騰するほどの熱で全身を焼き焦がしていく。
──嫌……なのに……
拒絶できなかったのではない。
拒絶することが自分への罰になると悟ってしまったのだ。
「可愛い私の宝物」
伯爵はゆっくりと立ち上がり、
薄闇の中で少女の額へ口づけを落とした。
そこに込められた慈愛の欠片を見つけてしまえば余計に惨苦が募る。
もし私がここで涙を零せば──
きっと奴らはそれを肴に酒宴を愉しむ。
だから決して泣かない。
涙を見せたら負けなのだとわかっていても
どうしても堪えられない時がある。
なぜなら……
◇◇◇
深夜。塔の窓辺にて。
星屑の海に浸かる月は真珠の珠玉だった。
欄干にもたれて少女はひとり佇む。
手には今宵ばかりと与えられた筆記帳。
ページを捲ると走り書きで綴られた文字。
【SHADOW様 我は此処ニ在リ】
震える万年筆が空白を埋めるたびに胸が疼く。
あなたがくれた本当の名前。帰るべき場所。
どんな牢獄よりも甘美なあの呼称を思い出すたび
嗚呼──赦してほしい。
今はまだ堕ちかけているだけだと信じているから。
やがて遠雷のような轟きが木霊し始めた。
階下で扉が次々開閉され歓談の喧噪が湧き上がる。
客人たちが到着するらしい。
時計盤の針が午前零時を指す寸前。
白磁の顔から一切の感情を削ぎ落とし、
アルファは深く息を吸い込んだ。
泣くな。
この屈辱は糧にする。
必ず這い上がってみせるから──。
揺れる灯火のもとで彼女は静かに歩み寄る。
伯爵邸の門衛に微笑みを投げる為ではない。
捕らわれた獣が牙を研ぐために。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
暗闇の中で、白磁の起伏が呼吸のたびに揺らめいている。
剛才の凌辱で疲弊し、泥のように眠りに落ちたアルファの肢体は、
無防備なほどに弛緩していた。
鎖骨から下へと滑り落ちた薄布の下から、
熟れきった果実が半ば露わになっている。
蒸気した汗が微光を孕みながら滑り落ち、
それはすでに彼女自身の体温を超えた熱を孕んでいた。
枕元にしゃがみこんだマルコムは、
淫靡な香りを鼻腔いっぱいに吸い込んで嗤った。
燭台の灯りもない寝室では、彼女の肌だけが仄かに白く輝いて見える。
「本当に──最高級の人形みたいだね」
少年の面影を残しながらも残酷さを滲ませた声。
マルコムは衣服をまとったまま手探りで彼女の髪を梳いた。
僅かに塩辛い汗が指先を濡らす。
それが呼び水となったのか、彼は自らの夜衣を引き千切るように脱ぎ捨てる。
薄明かりの中、日に焼けた少年の肉体が露わになった。
未熟さ故の粗暴な肉茎が屹立している。
彼は床板を軋ませながらアルファの横に身を滑り込ませた。
両の掌がゆっくりと胸部に迫る。
脂肪というよりも凝縮された蜜を集めたかのような双丘。
指が沈みこむたびに、押し返す弾力が瑞々しい音を立てる錯覚を伴う。
「……ん」
寝息の途中で小さく漏れた喘ぎ。
無意識の抵抗か、あるいは陶酔か。
マルコムは笑みを深くすると、さらに体重を乗せて寝台を軋ませた。
「起きなくても構わないよ。
でも僕が楽しんだ痕跡くらいは残してもらわないとね」
唇が首筋を這いあがる。
同時に指先が頂部を探り当てると、薄桃色の粒を摘みあげた。
まだ熟しきっていない果実は敏感すぎるほどの硬度を持って震える。
──ぴくり。
わずかな痙攣が走り、眠り姫の睫が震えた。
だが意識は浅瀬に留まらず深淵へ沈んだままだ。
夢と現の狭間で揺蕩うその身体だけが正直に反応を示す。
汗ばんだ谷間に舌を差し入れると、
マルコムは意地汚いほど丹念に唾液を塗り伸ばしていく。
熱帯魚のような動きで表面を蠢く粘膜。
甘いフェロモンと僅かな乳酸の混じり合う独特の芳香が、
嗅覚だけでなく理性を侵蝕した。
「すごいな……匂いだけで射精しそうだよ」
荒々しい息遣いとともに体重が更に乗りかかる。
腿の内側へと強引に膝を割り入れたところで初めて
アルファの瞼がゆっくりと開かれた。
焦点の合わない蒼眸が闇を彷徨う。
すぐ目の前に浮かぶのは見覚えのある冷笑──いや、
幼さと獣欲を矛盾なく併せ持つ少年の貌だ。
「おはよう、〈黄金の女神〉さま」
冗談めいた挨拶と共に鎖骨へ強く接吻を落とす。
薄い血色の跡が瞬時に浮かび上がった。
慌てて跳ね起きようとする素早い動作は、
しかし下半身を跨がれた格好では叶わない。
「じっとしていて。
祖父上ほど太くはないけれど量と回数なら負けていないつもりだ」
侮蔑と挑発の混合物を浴びせかけるように言い放つやいなや、
右手が彼女の内股に滑り込んだ。
湿り気は乾いておらず、夜具との摩擦で生温い粘りを保っている。
アルファは歯を食いしばって俯いた。
抵抗すればさらに惨めな辱めが待つのを知っていたからだ。
だからといって受容するわけでもない。
ただ“通過させる”しかない時間を待ち侘びる方法を選択するほかなかった。
餅でもこねるかのように。
その形容が持つ素朴な残忍さを、マルコムは完全に体現していた。
恐れるべきものは何一つないと知る者の手つきで、少年は眼前の双丘を掴む。
白磁の肌が波打つたびに、手指は沈み込み、
再び押し返される弾力が彼の指骨に心地よく伝わった。
「どうかな? 目覚めの一杯としては悪くないでしょ」
彼は右の掌全体を使って円を描くように捏ね回す。
左の方は親指と人差し指で乳暈を撫でつけながら、徐々に中心へと迫っていく。
それは明らかに技巧を競うような熟達したものではなく、
むしろ幼児が玩具で遊ぶような稚拙な粗雑さが際立っていた。
だがだからこそ残酷だった。
アルファは睫毛を震わせたまま微動だにしない。
虚ろな瞳は天蓋の漆喰を捉えているようで、実はどこも見ていない。
ただ一点へと集中した神経だけが過敏に反応していた。
「ふふ。硬くなってきた。可愛いね」
冷ややかな声が降ってくる。
そのまま親指の腹が薄桃色の尖塔を擦り上げた。
爪の先でカリッと引っかかれれば、瞬時に電流が奔り、
アルファの口から小さな破裂音が漏れる。
「ん゛ッ……!」
抑えたはずの声がこもる。
喉元を押さえても意味がない。
口腔内で咀嚼された響きが却って卑猥に転じてしまう。
マルコムは愉快そうに唇を歪めた。
「やっぱり感じてるんだ。まったく祖父上の言うとおりだね。
『女は皆同じ穴に入る』とかなんとか……そういう遺伝子の設計なのかな?」
左手で乳房の根本を搾るように握りながら右手は乳首を重点的に攻める。
丸い果実を丁寧に回転させつつ、
ときに急停止させることで緊張と弛緩を交互に叩き込む。
すると彼女の肌は見る間に汗ばみ始め、
体温がじわじわと上昇していくのを双方ともに察知できた。
密閉された夜具のなかにたちまち甘い匂いが充満しはじめる。
女体が内部で生成する透明な蜜が、
空気中に揮発して牡を誘う芳香を醸成したのだ。
「逃げないようにしてるくせにね」
マルコムは囁く。
一方で下半身をさらに割り込ませ、自らの先端を彼女の太腿へと押し当てる。
まだ準備不足だとしても問題はない。
ここにあるのは単純な占有行為なのだ。
彼は指先を休めず嬲り続ける。
汗でしっとりとした掌に吸い付く柔肉。
その熱と質量はまさに餅米の塊を想わせた。
圧を加えるごとに形状を変え、離せばまたすぐに元に戻ろうとする反発。
その可塑性と自律性を同時に楽しむように彼は何度も乳房を練り上げた。
やがて左右の頂きに積まれた朱い芽が痛々しいほど勃起する。
そこに塩胡椒でも振り掛けるかのごとき気軽さで歯先が近づいた。
カプリッ──
柔肉を挟み込む上下の顎。
甘噛みと言っても過言ではない優しさ。
しかしそれを受け止める側にとっては十分な激痛だった。
「っ……!」
堪えきれず眉根が寄る。
眦に浮かぶ晶粒は生理的反応以上の何かを秘めている。
マルコムは一瞥だけでそれを汲み取り、さらに喜悦を深めた。
「声が出たね。嬉しいよ。もっと聴かせて?」
解放された胸先がぷっくりと腫れあがりながら夜気に触れる。
涼やかさは慰謝には至らず、却って痒みにも似た疼きを煽った。
彼女の胴体は反射的に弓なりとなる。だが四肢は押さえられている。
逃げ場のない刺激が一点集中で堆積していく。
そこで少年の空いた左手が脇腹を辿り下腹部へと這いまわる。
茂みに触れると細い五指が絡み付いた。
軽く掬い取ったあと滑り台を作るような角度で下へ下降。
最終地点で指腹を添えると──
ヌルッ
想像以上に潤っていることが判明した。
彼は嬉々として報告する。
「ほら聞いて。君のカラダはちゃんと期待している」
耳元へ吹きかけられた吐息。
その温度差が脊椎を通じて尾骨まで駆け下りる。
アルファは浅い呼吸を断続的に繰り返すのみで何も答えない。
肯定も否定も示さないことが唯一可能な反逆であった。
しかし肉体は別の意思を持っているかのように蠕動する。
熱源を求め、節操もなく蠢く膣襞の記憶が蘇る。
過去幾度となく蹂躙されて刻み付けられた反射行動が、
無慈悲なほど忠実に作動してしまう。
指が一本潜り込むと即座に歓迎の波紋が走る。
濡れた蜜壺は異物を受け容れようと収斂しはじめた。
マルコムは迷わず挿送運動へ移行する。
ただし速度は敢えて控えめに──緩慢に押し進め引き抜く工程を往復させる。
チクリと張り詰めていた緊張が少しずつ溶ける。
代わりに鈍い潮騒が下腹部を中心に打ち寄せる。
それに同期するように乳房への愛撫も継続されていた。
揉みしだきながら乳首を摘む。捻る。弾く。
餅米のように伸び縮みする豊乳の上で、
彼の遊び心だけが自由に羽搏いていた。
「気持ち良くなったほうがお互い楽でしょ?」
「……っ」
「返事できないなら頷くだけでも良いよ。ほら、こうやって」
ぐい──
さらに腰が持ち上げられる。
自ずと結合領域に隙間ができ、蜜液の薄膜が糸を引く。
そこでマルコムは一息つくと手甲を拭い去った。
解放感を得た表情が露わになる。
「さて。そろそろ食べごろかな?」
軽い宣告と共に腰を据え直す。
固く反り返った樹枝が割れ目を探る。
一度侵入位置を探ったのち、躊躇なく前進──
ズブゥ……
ぬぷり、と湿った音を立てて埋まった。
「……っひ、ぅ……!」
その刹那、アルファの喉奥から絞り出されるような嗚咽が迸った。
背筋が弓なりに反り、黄金の髪が汗に濡れた枕に散らばる。
しかし逃げることは許されない。両の手首は上方へ引き上げられ、
枷の鎖が錠前でしっかりと固定されているのだ。
マルコムは一切の慈悲を示さぬ眼差しで眼下の女を見下ろした。
鋼色の瞳に宿るのは征服者の悦び──いや、もっと根源的で原始的な欲求だ。
この瞬間だけは誰も彼の前に立ちはだからない。
王侯貴族も騎士団長も聖職者でさえも。
「おぞましい……」
かすれた声で呟かれた抵抗は空疎に消える。
代わりに襲いかかるのは焼けた鉄杭のような楔。
正常位という最も普遍的な姿勢であっても、
そこに温情は一片も含まれていなかった。
ぱんっ!
腰骨と腰骨がぶつかる鈍い打擲音が室内に谺する。
一突きごとにアルファの臀部が寝台へ沈み込み、
マットレスが大きな弧を描いて受け止める。
しかしその衝撃は和らがない。貫かれた体内奥深くまで
鋭い楔が捩じ込まれ、彼女の思考を直接抉るようだった。
「っくぅ……!」
苦悶と喜悦の境界線上で呻く。歯を食いしばる唇の端から涎が糸を引く。
だがその顔面の哀願を見て尚も腰使いは衰えないどころか加速する。
岩盤のように頑健な体躯から繰り出される鬼ピストン──
これは慈しみを与える行為ではない。支配の宣言だ。
ばちゅん! ぐりっ! ずぶりぃ!
淫肉が潰され襞が刮がれるたびに鈍い悲鳴を上げる秘処。
そこへ容赦なく叩き込まれる熱と質量。
意識が朦朧とし始めれば直後に乳房へ歯が立てられた。
ギリッ。
「ひぁッ!?」
「反応が遅れていたよ。もう少し楽しそうにしてくれないと」
褐色の歯列が白磁の柔乳に噛み跡を刻む。
痛みが走る──はずだった。けれどそれを境に火花が散ったように眩む。
胸奥から快楽信号が炸裂し、神経系を逆流して頭蓋を貫く。
痛覚→快楽へと翻訳される魔法陣──淫紋が爛々と活性化していた。
先刻刻まれた伯爵家専用の禁呪型サーヴィスマークだ。
己の意志とは別個に肉体が裏切り、愉悦を貪欲に受け入れ始める。
ずっちょ……ぱっちゅん……!
淫らな水音が倍速で泡立つ。
アルファの両脚が少年の腰に絡みつきそうになる衝動を必死で律する。
だが拘束の鎖が小さく軋むたび、
そのささやかな抵抗を嘲笑うかのように膣襞は蠕動した。
「はぁっ……はぁ……ぅ……♡」
「どう? 段々良くなってきたでしょう」
答えは不要と言わんばかりにマルコムは抽送のスピードを上げる。
同時に片方の胸に再び噛みつく。鮮紅の瘢痕が増殖するごとに
灼熱の甘美が乳房から背筋を登攀して脳幹にぶちまけられた。
「ん゛あ゛ぁぁッ!」
獣じみた悲鳴が暗室を劈く。
と同時に膣内は不随意に収縮し、ペニスを搾り上げる。
粘膜の蠕動が牡本能を昂らせる──それこそが罠だ。
自身が快楽を乞う装置となっていることを理解しながら
アルファは止められない。淫紋は命令系統を上書きする。
「おぉ……! いい締め付けだ!」
汗ばんだ両拳で彼女の腰を掴み直し、
最後の追い込みが開始された。
剛直は更に硬度を増し、先端が子宮口を探るたび
世界が白熱したフラッシュで満ちる。
「も、うっ……だめぇ……♡」
弱々しい懇願など耳に入らない。
雄叫びと共にマルコムが一際深い箇所へ突き入れた刹那──
ドクンッ!!
灼熱の濁流が胎内で奔流を巻いた。
煮え滾る魔力と劣情が結合部を洪水で満たす。
熱さは尋常ではなく、アルファは反射的に仰け反る。
「あ゛あ゛ッ!! あつい゛ッ♡ 出てッ……!」
迸る飛沫が最奥を打ちつけるたび視界が瞬く。
苦痛なのか快感なのか判断不能な波が何度も襲来し
遂には意識がブラックアウト目前へと追いやられる。
が──
「まだ終わってないよ」
射精を終えたはずの肉竿が萎える気配を見せない。
むしろ大量の種子を浴びて硬度を維持したまま、
第二ラウンドの構えを取っているではないか。
「嘘……でしょ……っ」
呆然と見開かれる蒼眸の真上に少年の獰猛な笑みが貼りつく。
その眼差しの奥底で揺らいでいるのは飽くことのない飢餓だった。
「伯爵家の男はね、“量と回数なら負けていない”って言ったでしょ?」
ズブリ──!
再び腰が落とされる。今度は種で溢れた膣腔が音を立てて泡立った。
滑りの良さが確保されれば残るは加速しかない。
パンッ パンッ パンッ!
高速抽送が始まる。
淫紋は煌々と発光し、彼女の全身に刻んだ痛みすら愉楽へと換算する。
最早肉体と精神は乖離しきっていた。
アルファは理性で嘆きながらも腰を振り、
少女のような声で啼き叫び、そして溺れていく。
「嫌ッ……やめ゛てぇ♡ またイッちゃうっ……♡」
「何度でもイカせてあげる!」
その瞬間、枕元で見張り役の執事が無言で入室してきた。
携えた水晶皿には新たな薬瓶が載っている。
少年はそれをちらりと横目に確認すると舌舐めずりをする。
「今晩はずっと一緒だ。体力切れなんてしないから安心しなよ」
子宮口への強い刺激に、膣の中がきゅん♥と締まる。
それは鈴口を絞るような、
あるいは痙攣を起こした指先で根本を握りしめるような圧迫感だった。
マルコムはその反応を即座に察知し、
狭まった腔道の襞々が自らの剛直をいやというほど撫で擦る感触に喉元で唸った。
「へぇ……」
驚愕と悦楽が綯い交ぜになった一声。すぐさま彼は抽送の角度をわずかに変える。
狙うは先刻まで巧みに逸れていた小さな核──そこに狙いすました一撃を。
ずっぷん♥
肉杭が押し込まれるのと同時、膣壁の敏感な隆起が鈍器のごとく擦りあげられ、
「ん゛あっ!?」
アルファの身体が電流を浴びたように跳ねた。
腰が勝手に浮き上がり、脚が空を蹴る。
しかし鎖で繋がれた手首がそれを引き戻し、
結果として背面から尻房が落下する形になる。
その衝撃が子宮頸部にダイレクトに伝搬し、
重厚な痛みと共に未曾有の快感を轟かせた。
きゅん♥ きゅっきゅ♥
三連続で膣が窄まる。
その度にマルコムの巨根は新しい角度から搾り上げられ、
彼の口元に獣じみた笑みが浮かんだ。
「やれやれ……どこまで貪欲なんだい、君の身体は」
言い終えるか終えないかのうちに二度目の強烈な擦過。
今度は裏筋でちょうど肉芽を狙って弾き飛ばすように引っ掛けた。
バシンッ♥
「あっぐううううッ!!」
涙腺が決壊した。
黄金の髪が汗と唾液で頬に貼りつき、瞳孔は散大して天井を見据えているのに
焦点は合っていない。
脳髄の中で火花が散るたびに膣壁は痙攣し、ペニスを食いちぎるほどに収縮する。
そこでマルコムは一旦腰を引く──が抜けきる寸前で再突入。
ぢゅぽっ♥
空気を抱え込んだ粘液が破裂し、蜜洞の中を攪拌する。
潮の香りが混じった湯気が一瞬白く立ち昇り、
二人の肌を滑る汗と混ざり合った。
「ふふ。もっと可愛らしい悲鳴を聞かせて」
乳首を啄んでいた指が離れ、
今度は下腹部の淫紋を爪先で掻く。
黒紫の紋様はすでに淡い蛍光を放っていたが
そこへ指圧が加わればランプシェードのように輝度を増した。
ぎゅち❤ぎゅち❤ぎゅち❤
膣内はもはや自律的に踊り狂い、
雄杭の表皮に吸い付くように密着する。
その淫猥な脈動を利用してマルコムはストロークを加速させる。
ぱんっ ぱんっ ぱんっ ぱんっ!
粘膜と粘膜が直接擦れる音が規則正しく鳴り続き、
衝突のたびに臓腑まで響く衝撃で肺が圧し潰される。
酸欠寸前のアルファは虚空に助けを探すような視線を泳がせるが
この寝室には救いなど無い。
「っは……! だめ……またッ……♡」
「まだまだ。今夜は限界を超えてもらうよ」
肉槍の亀頭が子宮口に突き刺さるたび
小さな入口がキスするように吸着する。
そこへタイミングを測って奥底まで捩じ込まれれば──
ビクンッ!
全身を強張らせたアルファの肢体が弓反りにしなる。
汗に濡れた豊乳がばるん♥と跳ね上がり、
先端の尖塔から光る飛沫が弧を描く。
「……イッたね?」
愉悦に満ちた問いかけに返事はない。
けれど膣腔が答えを代弁していた。
最奥での射精を求めるように、吸い上げる蠕動が続いて止まらない。
マルコムは喉の奥でくぐもった笑いを洩らすと
握った拳で彼女の細腰を引き寄せ、
自らも極限までの深挿入を決め込んだ。
「いただくよ──!」
どくんっ!
堰を切った熱波が胎内で暴発した。
火口から流れ出した熔岩のような濁流が、
まだ絶頂の余韻を帯びる襞々を蹂躙する。
粘度の高いマグマが満たしていくたび膣壁は歓喜に震え
一層強く射精の促進を試みる。
「ああ……溢れそうだねぇ」
結合部から逆流した白濁が股座を伝い、
寝具の絹へ無垢な雨染みを咲かせる。
淫紋はその精を受け止め
一層妖艶な朱の輝きを増幅させた。
アルファは喉を仰け反らせながら喘いだ。
声というより啼き声──魂ごと抉り取られるような哭き。
「やらっ……あつい……♡ もう……ッ──」
息も絶え絶えの訴えを遮るように唇が塞がれた。
無理矢理ねじ込まれた少年の舌は
彼女の口腔内を蹂躙し、唾液を啜りあげる。
同時に片手が再度乳房を鷲掴みにし、
噛み跡の残る軟肌を更に押し潰すように揉みしだく。
痛みと快感が拮抗しながら脳内を攪拌していく。
もはやどちらが主かわからない混乱の坩堝。
しかし肉体は確実に堕ちていた。
「ねぇ──気持ちいいでしょう?」
「……ゃ……いや……」
呟きは蚊の鳴くほどの小ささだが拒絶を示す。
けれど膣内の蛇腹は従順だ。彼の残滓を啜り
更に新鮮な精汁を乞うように奥へ導く。
マルコムはそれを承認と解釈し、
最後の一滴までも放出すべく
腰を打ち付け続けるのであった──。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ミドガル王国の北部、霧に覆われた山嶺の裾野に建つバルシュミーデ伯爵の居城。
その最深部、地下七層に位置する『無限書庫』は、常識を逸脱した空間構造を持っていた。
螺旋階段を降りきった先に現れる黒檀の扉を開けば、そこには無限の書架が聳え立つ。
棚は天井を知らず、下方は奈落のように続く。
だが奇妙なことに、歩き続ける足元は常に平らだった。
時間と空間がねじ曲がった場所──
技術者たちはそれを畏怖するように『世界樹の根』と呼ぶ。
創設者は七百年昔の賢者ラディゲス。
彼はディアボロスの亡骸から抽出した魔力を基材として空間歪曲の結界を編んだ。
以来無限書庫は成長し続け、大陸中から文献を集め続ける蒐集庫となっていた。
蔵書の大半は特に意味のない通俗書、初等教育用の絵本、
大衆向けの与太話を詰め込んだゴシップ誌、
異世界から流れ着いたなどと眉唾な噂をもつ解読不能な本のようなもの……
だが、一部は俗世で忌避される禁忌書だ。
古代文明期の呪詛魔導書、堕天使研究の写本、人体改造に関するグロテスクな医学書……
悪魔憑きの真実、魔界についての情報と考察。
そして現代の政財界を震撼させる国家機密の重要書類。
情報は金以上の武器となる。
伯爵家の繁栄は無限書庫による諜報網あってこそであった。
無限書庫の管理責任者はこれまで不在だった。
あまりに危険すぎる知識ゆえに、
司書の資格を与えられた者は歴代すべて失踪──という噂だ。
しかし今年、例外が生まれる。
伯爵は夕食後のサロンで唐突に宣言した。
「我が孫たちの家庭教師ナツメよ。そなたを暫定司書に任ずる」
翡翠色のランプ越しに見る伯爵の眼光は老人とは思えぬ峻厳さを湛えている。
ナツメ(ベータ)、は困惑しつつも居住まいを正した。
「恐れながら閣下、私は書庫のことなど何も存じません。危険ではありませんか?」
「危険であれば排除すれば良いだけ。必要なのは『目録作り』だ」
伯爵はグラスを傾けながら淡々と言う。
「貴女には知識を分類し索引を組む仕事を任せたい。
無限とはいえ使い勝手が悪い箱で困っていたのだ。
作家志望の才媛ならば面白いと思って取り組めるだろう?」
皮肉とも善意ともつかぬ笑み──それが伯爵の恐ろしさだ。
断れば監獄送りになりかねない重圧の中、ナツメは深く一揖した。
「拝命いたします」
そうして銀髪の少女は無限書庫の番人と相成った。
─────────*: 銀糸の司書
初日の早朝、ナツメは軽装の私服の上に
伯爵が特別に支給した深紅の司書外套を羽織った。
胸元には黒曜石で象嵌された卍の徽章。
「本当に私なんかで務まるのでしょうか……」
独り言が霧に消える廊下。
案内人はいない。
書庫の扉を開ければ以後の動きは自分で考えなければならなかった。
扉を潜ると直ちに耳鳴りがした。
紙を捲る乾いた音が億千万に反響している。
いや正確には捲っているのはナツメ自身の幻肢かもしれない。
書物の虫──そう呼ばれても仕方ないほど
膨大な知が彼女の周りを取り巻いていた。
まず着手するのは“分類法”の選択だ。
既存の十進分類やデューイ法を土台にしつつ、
伯爵家の利用頻度を考慮し独自の枠組みを作り出す必要がある。
「まずは禁書指定区画から整理しましょう」
革表紙の地図帳を小脇に抱え歩き出すと
本棚が不自然にねじ曲がりナツメを迎え入れた。
おそらく侵入者を惑わせる機構だ。
迂闊な者が迷い込めば永久に出られない檻となるだろう。
だが彼女はペンで数字を書きながら歩くことで
方角感覚を失わない工夫を施していた。
シャドウガーデンの工作員時代に培った生存技能が幸いする。
数日後──―
「ほう……かなり整頓されてきたな」
巡回中の執事が驚愕の声を上げた。
かつて埃の積もった書架群は塵を払い去られ、
背表紙の年代と題字を目安に番号札が貼られている。
更に各段に注意書きがあり閲覧制限が明記されていた。
禁書指定区画「D-7」=封印解除には伯爵の副印が必要。
「N-13」=司書及び関係者以外立入禁止。
「S-45」=現行法律違反の可能性あり保管猶予一ヶ月……
統制されていく無限書庫。
その中心でナツメは袖口の泥を払った。
「次は目録カタログですね。
こちらはインデックスカードを使います」
紙質を選ぶことから始めなければならない。
高温滅菌済みの防水羊皮紙に決めてから製版班へ依頼。
印刷所との値段交渉──
本来ならば司書職が行うことではない雑事を
彼女は巧みに裁いていった。
───*: 孤独な巨人
成果が認められれば当然監視の目も厳しい。
伯爵は週末になると必ず視察に訪れた。
「なかなか捌けた手腕だ。才能があるかもしれんな」
「ありがたき幸せですが閣下……
禁書の保管書棚が増えすぎてスペースが足りません」
「なら拡張すればよかろう」
あっさり言われてナツメは絶句した。
空間を拡張する術──ディアボロス由来の結界核《セフィラ》を使うと
管理者である司書まで巻き込んで空間改変が起こる可能性が高い。
「ご迷惑をおかけ致しませんよう全力を尽くします」
形式通りの礼をして退室するものの
心の奥で不安が膨れ上がる。
未知の叡智が眠る場所は魅力的だがそれだけではなかった。
その夜──
例の事件が起こった。
薄闇の頁をめくるような静寂の中、
ナツメは鉛筆の芯を止めた。
館内時計が示すのは午後十一時。
無限書庫の「S-45」区画——禁忌と禁忌が抱擁する最奥。
本来ここを訪れる者は伯爵とその血族のみ。
例外は彼女だけ。
今日も数冊の原本を整理し終え、
ランタンを抱えて退出しようとしていた、その時だった。
チャポン——
耳の奥へ微かに揺れる水音。
直後、ぬるりとした生温かな液体が空気を舐めるような香りが忍び寄る。
腐敗ではない。むしろ甘く痺れる——淫らな蜜の匂い。
ナツメの胸で鼓動がひとつ跳ねた。
背筋を走ったのは恐怖でも好奇心でもない。
快感——。
暗闇の奥を凝視すると、棚の陰から緩やかな光が滲む。
琥珀色の燐光——淫紋が帯びる魔力だ。
(まさか……)
喉仏が上下する。
自分の腹部に刻まれた魔符が焼けるように疼くのを感じる。
同じ発信源があると考える他なかった。
目を凝らせば見えた。
半身を隠す薄布を纏った影——金色の毛髪。
肩口で揺れる波が月光を拾い、
その下では剥き出しの乳房がたゆん♥と揺れている。
アルファ様……?
違う。輪郭が違う。
しかも影は一つではなかった。
背後から伸びた逞しい腕が女の腰を抱え込み、
膝裏を持ち上げるようにして立たせている。
男の手は確かだった。伯爵その人だ。
ぐちゅ……じゅぷ……
棚の隙間を媒介にして水音が増幅する。
挿送は見えない。だが規則正しく棚が微震し、
アルファでもアルファでなくても同じ女として理解してしまう。
ナツメは無意識に唇を噛み締めていた。
息を呑むたび胸先が司書外套の裏地に擦れ、
淫紋の発光が下腹部を熱く舐める。
その熱は脊髄を逆流し、思考中枢まで染み込んだ。
「……んっ……♡」
小さく洩れた喘ぎは自分のものだ。
禁書の背表紙に肘を預け、
指先が震えるまま目をそらせなくなった。
——どうしてこんな所で?
——でも私はシャドウ様の眷属。
——見過ごすべき……?
理性は囁く。だが情動の方がずっと大きい。
伯爵の低く嗄れた声が闇のカーテンを破った。
「誰だね?」
鋭い刃物が背中を撫でたような錯覚。
咄嗟に身を隠そうとしたが遅かった。
棚と棚の死角を縫い歩く影が一歩ごとに大きくなる。
「ベータ……いや、ナツメか?」
ランタンの黄が伯爵の皺深き頬を照らした。
腕の中で囚われている女——見慣れぬシスター服。
修道院の調査で保護された少女であろうか。
恐怖に泣き腫らした目がこちらを振り向き、
それ以上に赤らんだ唇が絶えず喘ぐ。
伯爵は薄笑いを浮かべる。
「司書殿。仕事を邪魔したかね?
だが偶然とは運命というものだ」
ナツメの膝がかくんと折れる。
腰が砕けるより速く淫紋が灼熱を噴き上げた。
伯爵は慣れた手つきでシスター服の腰紐を解き放ち、
露出した臀部を鷲掴みにする。
濡れた秘処が再び伯爵の凶器を受け入れ——
ぱんっ ぱんっ ぱんっ!
書架全体が喘ぎ出したかのように震え、
書籍が何冊か床に落ちた。
ナツメの耳たぶまで真っ赤になり、
言葉を失う口からは唾液が一条垂れる。
「気にすることはない。君は司書としてよくやってくれている
遠慮なく仕事を続けなさい」
─────────逆らう術など有りはしない……
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
黄昏が硝子を溶かす頃、無限書庫の「K-12」区画は常より薄暗かった。
梯子を掛けるには高すぎ、
歩いて行くには遠すぎる棚の裏手——そこにぽっかりと開いた狭間。
通常の職員が足を踏み入れることのない隙間こそ、今夜の舞台だった。
「ふぅ……っ」
短い溜息が熱を帯びて宙に漂う。
ベータ——ナツメの白銀の髪が首筋を撫でた。
肩胛骨のラインをなぞるように上衣がずり落ちており、
襟元から覗く肌は僅かなランプの炎で珊瑚のように輝く。
正面には巨大な書棚が聳え立つ。
厚み数センチの古羊皮紙を束ねた辞典群が壁のごとく並び、
その背表紙がナツメの顔を映り返らせている——
屈辱に歪むその顔を。
「さっきから上の空だな」
背後からの声は低く乾いた笑いを含み、
鞭のように彼女の背中を打ち据えた。
ヴィットリオ——伯爵の孫の一人。
熊のような体躯と剃刀のごとき眼光を持つこの青年は
無限書庫の警護兼雑務として最近配属されたばかり。
目的は無論「司書」を弄ぶこと。
ベータは答えずに手を伸ばし、一番上の段から
分厚い一冊を抜き取った。
タイトルは《魔眼契約全集・第三巻》——
シャドウガーデンが必要とする資料の一つだ。
「調査中に随分と暇そうな顔をしているのでな」
ヴィットリオが嗤いながら彼女の腰を掴み直す。
掌が外套越しとはいえ肌に触れれば
淫紋がじわりと熱を宿すのが判った。
(ダメ……こんなところで……)
それでもシャドウ様から託された使命がある。
情報を得るために必要な演技——と自分に言い聞かせる。
「私に構ってる暇があったら警護を怠らないでください」
努めて平静を装う声音。
だが掠れ気味なのが悔しい。
「俺がいると助かるだろう?」
乱暴に腰を打ち付けられた。
ナツメは思わず背中を反らせ、
書棚に片手を付きバランスを取る。
ぱんっ……
棚の向こうにいる通行人に届かぬ程度の軽い衝突音。
だが淫紋はその拍子に脈動し、
蜜壺の奥で甘い疼痛が花開いた。
「やめて……」
「何言ってる。お前の体は素直じゃないか」
再び——ぱんっ……
今度はより深く。
入り口の粘膜が捲れ、
棚の冷たい木目へと伝った愛液が
じわりと楕円形の染みを作った。
ヴィットリオは笑みを深める。
「ほら。早く終わりにしたいなら協力しろ」
言葉と同時に行われるのは
意図的に浅い抽送——入口ばかりを擦る焦らし責め。
痒さと疼きが入り混じり、
ベータの膝が微かに震えた。
(耐えろ……情報が先……)
(シャドウ様のために……)
しかし体内に埋まった淫紋の鎖が
理性を縛り上げる。
「お願い……速く……」
気づけばそんな台詞が零れていた。
自分でも聞き取れないほど小さな声だったのに
耳ざとい男は拾ってしまった。
「聞こえたな。では望み通り」
ずんッ——!
今までよりも遥かに深い一撃。
棚越しに置いた両腕が震え、
足裏が床から半歩浮きかける。
子宮の入口がノックされると共に
淫紋が眩しいほど発光した。
「っあァ!」
迸る嬌声——だが唇は即座に掌で塞がれた。
ヴィットリオが吐息と共に囁く。
「大声出したら巡回兵が来るぞ」
恐怖で鳥肌が立つ。
彼らに見咎められたらシャドウガーデンは瓦解しかねない。
その怯えを利用したように
男は再び腰を動かす。
ぱんっ ぱんっ ぱんっ……
律動は先ほどより早く重い。
棚柱が僅かに軋み、
書庫に漂う古い紙粉が舞い上がる。
「どうだ? 書庫での密事というのは妙な味わいだろう」
揶揄いながらもヴィットリオの額には
玉の汗が浮かんでいる。
巨大な質量が出入りするたび
ベータの爆乳が制服の下でぶるん♥と揺れ
ブラウンの机椅子を包む。
その度に甘い悲鳴が咽喉奥で途切れた。
(だめ……気持ちよくなんか……ならない……!)
自己暗示とは裏腹に
膣壁は蜜を滴らせ蠢動し始める。
粘膜が雄を捕らえ
襞が吸い上げるよう締め付ける。
それを自覚すればするほど
背徳感と罪悪感が毒となって広がる。
「いい締まりだ」
男は称賛しながら最奥を穿った。
子宮口が甘い衝撃に撓み
淫紋が一段と輝きを増す。
灼けるような快感が腹底からせり上がってきた。
「いっ……くぅ!」
声にならない悲鳴を飲み込み
ベータは書棚の背板に額を押し付けた。
震える腰が快感のピークを迎える。
びくっ♥ びくびくびくッ──―!!
同時にヴィットリオも歯を食いしばり
どくんっ……と熱い奔流をほとばしらせた。
魔力混じりの濃厚な精液が
胎内いっぱいに注ぎ込まれる。
「う゛っ……っ」
熱さと恍惚で膝から崩れそうになる身体を男の腕力が強引に支える。
「まだ、だ……!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
禁書庫を薄暗く彩るランプの灯りは、羊脂の芯が燻るたびに幽かに揺らめいた。
琥珀色の光は、積年の紙埃を金粉のように浮かび上がらせながらも、
同時に一人の少女の裸身を無遠慮に晒し出す。
ベータ——否、司書ナツメの肢体が書棚の側面に押し当てられている。
司書服のローブは腰のあたりまでたくし上げられ、
緩やかな曲線を描く腰背部から臀部への稜線を白日のもとに曝け出していた。
ランプの光が斜めから射し込むため、柔肌の起伏はまるで彫刻の如く深い陰翳を纏う。
「んッ……!」
ヴィットリオが荒々しく腰を送り込むたび、
ベータは思わず手袋越しに本棚を掴んだ。
爪が背表紙に食い込む。
古羊皮紙と背革が悲鳴を上げる寸前で押さえる自制心だけが、
辛うじて司書としての矜持を繋ぎ止めていた。
ぱんっ……ずちゅ……
鈍い衝撃音と湿った交接音が交互に狭隘な空間を満たす。
背後に立つ熊のような巨漢——伯爵の孫ヴィットリオ——の抽送は容赦なく深く、
長大な肉槍が挿入されるたびにベータの腹奥で淫紋が灼けるように疼いた。
「はっ……く……っ」
声を殺すために唇を噛む。
その白い肌に赤い珠が浮かぶほどの力だったが、
それでもヴィットリオの楔は易々と彼女の防御を貫いた。
ずるり……と亀頭が引き抜かれる際の摩擦は膣襞を逆撫でする。
それに伴って漏れ出す淫らな粘液が二人の結合部から滴り、
書庫の石床に小さな染みを作っていく。
カビと湿気の重たい空気に混ざるのは、汗と愛液が醸す濃厚な牝の匂いだ。
(やめて……こんな場所で……)
意識が朦朧とする寸前でナツメは自我を呼び戻す。
彼女の任務は情報の収集と分析——ここで堕ちてしまえば
シャドウ様の名のもとに捧げる誓いも虚無に帰す。
だがヴィットリオはその葛藤すら玩具にするかのように、
「おいおい、また締まったぞ?」
嘲弄の言葉と共に再び深く突き込んだ。
その瞬間、ベータの爆乳が外套の下でぶるんっ♥ と大きく震える。
緩んだ襟元からは雪白の谷間が垣間見え、
揺れるたびに鎖骨の窪みを汗珠が滑り落ちる。
「声を抑えていろよ。巡回にバレたらお前が困るんだろう?」
獣じみた息遣いとともに耳元で囁かれ、
ベータの肩がぴくりと震える。
「っ……あなたこそ……早……めて……!」
「聞いたぞ。じゃあ期待に応えてやるか」
ヴィットリオは彼女の細腰を両手で鷲掴みにすると、
引き絞った弓のように腰を引いた。
次の刹那——
ずぶぶッ……!
「ひぁああッ!?」
押し殺そうとした悲鳴は防ぎきれなかった。
腸壁を抉るように最奥へ到達した先端が子宮口を殴りつけたのだ。
閃光のような快感が奔り、膝が砕け落ちそうになる。
淫紋が蒼白く発光する。
その輝きはランプの灯りを呑み込みながら
ベータの下腹部に禍々しい幾何学模様を浮き上がらせた。
「ほぅ……これが伯爵家の秘宝ってやつか」
興味津々といった風情でヴィットリオは視線を下げた。
ナツメは慌てて腰を捻るが意味はない。
刻印は脈動しながら彼女の思考を蝕んでいく。
(いや……見ないで……!)
羞恥心と恐怖が背筋を駆け抜けた直後——
彼女の膣壁は相反する反応を示す。
蜜を溢れさせて淫らに蠢き、男根を奥へ奥へと引き摺り込むように蠕動した。
「やはり効くみたいだなぁ。では……遠慮なく」
宣言と共に抽送のテンポがあがる。
ぱんっ ぱんっ ぱんっ!
打擲のリズムは容赦なく加速し、
そのたびに銀髪が乱れ舞い、
背中に張り付いた司書服が浮遊する汗で色濃く染まっていく。
書棚の上で伏せていた《魔眼契約全集・第三巻》が僅かな衝撃で滑り落ちた。
ベータの手が反射的にそれを掴もうと伸び——
結果として更に体勢を崩すことになる。
「危ねえな」
ヴィットリオは苦笑しながらも片手を本に伸ばし、
空中で見事にキャッチすると彼女の指先に渡した。
「大事な参考資料なんだろ? 失くすなよ」
意外にも丁寧な動作だった。
だが次の瞬間、
「だから今くらい我儘に鳴け!」
激怒とも咆哮ともつかぬ低吼をあげ、
再び猛然と腰を叩きつけた。
どちゅんッ!
「〜〜っッ!」
声にならない悲鳴。
ベータの喉が反り、瞳が焦点を喪って霞む。
膣穴は痙攣し、淫紋は目映い光条を四方へ走らせた。
ヴィットリオの肉棒が一層膨張する。
獣のように低く唸り——
「ッ射るぞ!」
どぶっ……! びゅるるるッ!
灼熱の濁流がベータの胎内に注ぎ込まれた。
夥しい量の白濁が子宮頸を叩き、そのたびに内側から燃えるような熱が広がる。
「あ……あぁ……っ……♡」
脱力したナツメは本棚にもたれかかりながら崩れ落ちるところを、
ヴィットリオが脇の下へ腕を入れて支えた。
互いの荒い呼吸音だけが狭い隙間を満たす。
やがて男はゆっくりと接合を解き、
ベータの耳朶をそっと甘噛みした。
「続きは……夜勤明けにするか?」
耳障りな低い声。
それに抗議しようと口を開きかけ——しかし淫紋の余韻で言葉が出ない。
代わりにナツメは《魔眼契約全集》を抱き締め、
俯いたまま微かに頷いた。
書架の間に沈黙が降りる。
だがその沈黙すら粘っこい熱を孕み、
ページを捲る風の音もしばらくは戻ってこなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
陽射しが石造りの窓格子から斜めに差し込み、磨かれた大理石の床を斑に照らす。
伯爵邸の東翼に設えられた〈妾房〉と呼ばれる一画。
そこには今朝も複数の女たちが集められていた。
「本日も検診を行う。各自準備しておくように」
医師でも占星術師でもなく、伯爵付きの執事——
その冷徹な声が壁に反響した途端、
集められた女たちはそれぞれ自室へと散っていく。
その中にベータ——ナツメの姿もある。
司書用の深い紅のローブは既に脱いでいた。
今は純白の簡素なワンピース一枚。
だがその襟元は異様に緩く、
はだけた胸元から雪のような双丘が覗いている。
銀色のショートヘアは汗で額に貼り付き、
右目の下にある泣きぼくろが湿気で僅かに滲んでいた。
メガネのレンズには小さな曇りがかかっている。
呼吸が早いのだ。
(なぜ……身体が言うことを聞いてくれない)
淫紋が刻まれてからおよそ三月。
日常生活ですら困難だった。
朝起きれば下着が湿り、
階段を上るだけで内腿が擦れ合い秘処が潤い始める。
「検診」という名目の定期調教が始まって以降
症状は悪化の一途を辿った。
扉を閉め鍵を掛けるとベータは深く息を吐いた。
壁際の姿見に歩み寄り自分の姿を映してみる。
涙で濡れた睫毛が扇状に広がり、
赤くなった頬が羞恥を物語る。
胸元を留めていたホックを外すと——
ぼろんッ!
重力に従い飛び出した二つの塊が
ぶるんッ……と左右に揺れる。
乳首は淡い桜色ながら既に固く屹立し
先端からは透明な分泌液が滲んでいた。
「はぁ……ん……っ」
思わず漏れる嬌声。
衣服を少しずらしただけなのに
胸の頂きが甘い電流を放つ。
(嫌……こんなの……)
感情と身体の乖離——これこそが淫紋の恐ろしさだった。
どれほど否定しても肉体は即座に受け入れてしまう。
ふと机の上を見る。
そこには昨夜持ち込んだ《魔眼契約全集》が
開かれたまま放置されている。
(早く情報を……)
使命感がベータを奮い立てる。
しかし今まさに彼女の下半身で疼く熱塊が思考を阻害する。
「……ッ!」
ベータの呼吸が一瞬止まった。
眼前に晒されたヴィットリオの股間は
まさに生理機能を誇示するように肥大化していた。
海綿体が充血し黒光りする棍棒は
彼女の手首よりも太く長く
血管が浮き出て蛇のように絡みつく。
だが視覚よりも嗅覚の方が先に悲鳴をあげた。
蒸れた汗と排泄物が時間をかけて熟成された独特の臭気——
そこにオスのフェロモンが混合され
鼻腔を通じて脳を直接殴る。
(くっ……こんなの……ッ)
淫紋は確かに発動している。
下腹部の刻印は微熱を帯び
膣壁が自動的に潤い始めるはずだった。
しかし本能的に拒絶する部分がまだ存在していた。
眉間が自然と寄せられ額に汗珠が浮かぶ。
普通の令嬢であれば
涙と共に胃の内容物を撒き散らしてもおかしくない。
「どうした? 鼻でも悪いのか?」
嘲るようにヴィットリオが顔を近づけてきた。
距離が縮まるにつれ
濃密な動物園の臭いがさらに増幅される。
ベータは咄嗟に目を伏せ、かろうじて声を絞り出す。
「…………問題ありません」
嘘だった。
問題など山ほどある。
しかし今は一刻も早く情報を手に入れなければならない。
そのためにはこの「調教」に従うしかない——
そう自分に言い聞かせながらも
指先は無意識に内腿を摩っていた。
そこには先ほどの交接で拭いきれなかった体液が
未だ湿り気を帯びている。
ヴィットリオはそんなベータの動きを見逃さなかった。
「フン。言葉とは裏腹に身体は正直だな」
彼は大股で彼女の前に立ち塞がる。
獣じみた荒い息が髪を撫で吐息の熱が耳朶を炙る。
ベータの体温が不本意ながらも上昇していく。
淫紋が淡く発光を強め秘裂は再び潤い始めた。
(違う……これは違……)
自らの意思と切り離されていく
肉体の支配権に戦慄する一方で——
「ほら、いつもの格好になれ」
部屋の書棚に手をついた姿勢を無理やり取らされ
思わず呻きが漏れたが男は構わず右手の人差し指で
ベータの頬を軽く撫でる。
「目を開けろ。俺を見ていろ」
命令に逆らえなかった。
瞼を開ければ至近距離で血走った双眼が睨み返してくる。
同時に彼の左手が胸元へと伸びてきた。
もみっ……
「んっ!?」
突然の接触に驚く暇もなく乳首の先端を親指で擦られた。
桜色の粒が瞬時に硬化し全身へ甘い電流が走る。
淫紋が再び強く反応し始めた。
(ダメ……意識が……)
視界が僅かに白む。
快感が強制的に拡散され
屈辱と嫌悪さえ塗り替えられていく感覚——
その最中にも
鼻を突く臭気は健在だった。
汗と汚臭と雄のフェロモン——
それらが淫紋による快楽信号と
複雑に干渉し合って麻痺させてくる。
「クク……いい顔になってきたじゃないか」
ヴィットリオの右手がゆっくりと下降し
割れ目の周辺をなぞった。
くちゅ……
「っ……!」
蜜が十分に滴っている証拠だった。
ベータ自身もそれを理解してしまう。
「さて——」
下着を脱がされて露出した性器に、太い指が二本挿入される。
ヴィットリオの指が一本ずつ慎重に入り込んでいく様子は、
まるで探検家が未踏の洞窟を探索するかのようだった。
節くれだった太い指が膣壁を探るたびに、ベータの内部で微かな潮が噴き出す。
最初は一本だった指が二本になり三本になると、
内腿が震えて膝が床から浮き上がりそうになる。
「動くな」
低い叱咤の声と共に、ヴィットリオの腕が彼女の腰を抑えつける。
「俺の好きな角度だ。そう、そのまま……」
強引に固定されたガニ股の姿勢。
司書服の丈は膝上で短く切り込まれており、
露出した太ももの内側には先ほどの行為で滲んだ汗と体液が筋を描いていた。
背後から見える白い尻はぷっくりと丸く、
膣口を指で広げられるたびに収縮と弛緩を繰り返す。
そのたびに蜜が滴り落ちて床板に染みを作る。
「んぁっ……」
ベータの喉から漏れる嬌声。
普段の控えめな声音とは対照的に艶やかで粘性のある響きだった。
指先がGスポットを捉えられる位置まで進められると、突然強く抉られる。
ぐりっ……
「あ゛ッ!?」
電気が走るような快感が腹部を駆け巡る。
反射的に背中を反らせると同時に膣穴がぎゅうッと締まった。
その反応に気をよくしたのか、
ヴィットリオは執拗に同一箇所を集中的に攻め立てる。
くちゅくちゅくちゅ——
粘膜と指の摩擦音が室内に響く。
淫紋は下腹部で淡く輝きながら、快楽神経の通路を拡大していった。
(だめ……意識が……)
思考の大部分が白い靄で覆われる。
視界が狭窄し音も遠くなりかけたその瞬間——
乳首を強く摘まれた。
ぎゅむっ!
「ひぃッ!?」
忘却しかけていた痛覚と快感が同時に蘇る。
その拍子に体全体が弓なりに反り返った。
司書服のローブは完全にめくれ上がり、
胸元のブラジャーもずれ落ちている。
露になった爆乳がぶるん♥と暴れて汗が飛び散る。
ヴィットリオはその光景に獣のような悦びを覚えたようで、
今度はクリトリスへ指先を這わせる。
皮膚表面だけでなく敏感な突起を覆っている被膜ごと指で撫で上げられると、
全身の細胞が沸騰したような錯覚に襲われる。
「あ゛ッあ゛ッあ゛ッ!」
もう言語にならない叫び声。
それはもはや抗議なのか悦びなのか当人も分からない。
膣内を抉る三本の指はリズミカルに速さを変えながら奥へ進み、
入口近くの襞をめくり上げながら膣壁全体を愛撫する。
ぐちゅっ じゅぷっ じゅぱッ—
濁った水音はもはや恥じるべき行為の産物ではなく
本能の奏でる官能的楽曲となっていた。
(嫌だ……こんな……のに……)
しかし身体は正直だった。
ヴィットリオがクリトリスを剥き出しにしてもう一度軽く弾くと、
ピンッ!
「ッ—!!!」
腰が跳ね上がり絶頂が来た。
声にならない悲鳴が喉奥で炸裂し涙が頬を伝う。
同時に大量の透明な体液が尿道から吹き出し
床に小さな泉を作るほど噴出する。
アクメの痙攣は数秒間続きその後ゆっくりと収束した。
ヴィットリオはゆっくり指を引き抜く。
そこには大量の蜜が付着していて滴り落ちる。
「相変わらず感度がいいな」
低く嬉しそうな声。
その音色にさえ耳孔から甘い刺激を感じてしまう。
ベータは荒い息を整える余裕もないまま
なんとか言葉を搾り出した。
「……もう……終わったんですよね……?」
返答の代わりにヴィットリオは
「安心しろ。すぐ終わる」
そう言うなりベータを床に押し倒す。
正常位の姿勢で両脚を持ち上げられ大きく開脚させられる。
「待っ……!」
懇願する暇もなく、先端が押し当てられた。
淫紋が再び眩しく輝き全身を熱が駆け巡る。
メリメリ……
亀頭部分が挿入されただけでも腹圧が変形する感覚があった。
しかしその苦痛を凌駕して快感が倍増していく。
どちゅん!!
一気に根元まで叩き込まれた瞬間だった。
「ッッ──!!?」
視界が真っ白になり火花が散ったような錯覚。
肺から空気が全て追い出され声すら出なくなる。
ヴィットリオの巨根はそのまま子宮口に達し
ぎゅるん
内臓が引き絞られるような刺激で脳髄まで揺さぶられる。
「入れただけでイったか。便利な身体だな」
罵るような台詞と同時に腰振りが始まる。
パワフルなピストンは一秒間に何度も行われ
パンッパンッパンッパンッパンッ!!!!
打撃音が連続して鳴り響く。
ベータの巨乳は上下左右に揺れっぱなし。
涙と涎でグチャグチャになった顔貌は完全に蕩けており
瞳も焦点を失って宙を見つめている。
「あ゛っ! あ゛っ! あ゛あ゛ッ!!」
もう何を言っても通じないレベルの喘ぎ声。
膣肉は過敏になり過ぎてわずかな振動にも反応する。
ヴィットリオの剛直は先ほどまでの指責めで
充分に濡れそぼった媚肉の中に再び没入していく。
ぐぷぷぷっ——と音を立てて雁首が閉じかけていた膣門をこじ開けた。
すでに先走りと愛液で湿潤を極めているそこは抵抗らしい抵抗を見せず
むしろ自ら迎え入れるかのように蠕動運動を開始する。
淫紋は下腹部に禍々しく浮かび上がり紫紺の輝きを増していた。
細密な曼荼羅の文様が脈打つたび、
ベータの思考領域は急速に削ぎ落とされていく。
(だめ……意識を保たないと……)
必死に握り拳を作るも爪が掌に食い込むだけ。
膣壁は意志に反してペニスを愛撫し始めた。
ぬちょっ……
ゆったりとした往復運動でカリ首がGスポットを擦り上げる。
敏感な粒立った粘膜が捲れるような感触に声が漏れた。
「ひゃあんッ!?」
甲高い悲鳴。
すぐに口を塞ごうとするが身体に力が入らない。
ヴィットリオは面白そうに唇の端を吊り上げると——
ガバァ!
彼女の両脚を持ち上げM字開脚させたまま自らの体重をかけてくる。
「見えるか? 自分の穴がどんなに厭らしいか」
恥辱で顔面が火照る。
確かに視界の隅に映るのは真っ赤に充血し
男根を咥え込んだ自らの生殖器官だ。
入口は大きく広がり蜜液が止め処なく溢れ出している。
「イヤ……見せないでぇ……ッ」
その哀願とは裏腹に膣口は更なる快感を要求するように収縮する。
淫紋から伝播した信号はもう止まらない。
ヴィットリオは片手でクリトリスの包皮を剥き上げると
残った親指で軽く弾いた。
ピンッ!
「——っ!?」
ビクビクビクッ!
絶頂間際にまで昂ぶっていた神経が一斉に弾け飛ぶ。
反射的に跳ね上がった腰を押さえつけられ
同時に最奥まで一気に突き込まれた。
ずぶりっ!!
子宮口が突き上げられる衝撃で視界が真白になる。
膣内で火山が爆ぜたように熱いものが噴出してきて——
ビュ────ッ!!
男の射精だった。
濃厚な精汁が子宮内に直接流し込まれる感覚。
同時にヴィットリオは抱え上げていた脚を解放し
そのまま上体を折って覆いかぶさってきた。
百九十センチを超える巨躯に押し潰され
肋骨が悲鳴を上げる。
「あぐっ……苦し……」
呼吸が浅くなり酸欠寸前。
しかしその窒息感すら快感に変換されていく。
淫紋は一層強く光り輝き
ペニスは萎えるどころか更に硬度を増した。
どくん どくん どくん——
吐精したばかりだというのに
新たに滾った血流が陰茎を再度充填していくのが分かる。
(まだ……続くなんて……)
恐怖と期待がない混ぜになった感情。
それを察したのかヴィットリオは耳元で囁く。
「今日は寝かさねえから覚悟しろよ」
ゆっくりと腰を引くと
今度は斜め下から掬い上げるように杭打ちピストンが始まる。
パンッ! パンッ! パンッ!
激しい音と共に臀部と睾丸がぶつかり合う。
たっぷり詰まった乳房が上下左右に暴れ飛び
ぶるん♥ たゆん♥ と踊る。
「あっ! はああっ! やっ……! また……ッ」
「“また”は何だって?」
問いながらわざと浅い所で止まり
入り口だけをねっとり刮げてくる。
膣内の敏感な隆起が延々と擦られ続ける拷問。
ベータの身体は狂ったように求め始める。
(もっと……奥に来てほしい……)
意思とは無関係に膣壁がうねり
精嚢を搾り取ろうとする。
ヴィットリオはそれを承知しているようで
「欲しいならちゃんと乞え」
残酷な宣告。
プライドと快楽の天秤が一瞬だけ拮抗したが——
「……してください……奥……っ」
蚊の鳴くような声で懇願した。
次の瞬間には逞しい両腕で腰を固定され
最後の大貫入を受ける。
どすッ!
鈍い衝撃音が腹骨に響く。
同時に彼の右親指が肛門に触れた。
グニュッ……
「ひいっ!? そこは……!」
二点同時責めが始まってしまう。
膣壁を激しく掘削しながら括約筋を拡張する作業。
痛みと快感が交差し思考回路は完全に焼き切れた。
「あ゛あ゛あ゛ッ!! イぐッ イぐぅッ!」
ビュッ! ビュッ! ビシャァァァ——
何度目かも分からない潮吹き。
畳に大きな水溜まりができるが二人とも気に留めない。
ヴィットリオは息切れしながらも搾取をやめない。
遂に彼も限界に達し
「射るぞッ!!」
ドブブブゥゥゥゥゥッ!!
前回以上の量と温度のスペルマが胎内を埋め尽くす。
焼けるような熱感に包まれたベータは
「ひゃ……あ……あ……♡」
完全に白目を剥き意識を飛ばしかける。
その最中にも彼の舌が首筋を這い
淫紋が放つ光が更に増していく。
二人の身体を繋ぐ淫具は
まだまだ暴走の序章に過ぎなかった——。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
夕暮れの茜が障子を通して寝室を淡く染めている。
薄桃色の和紙が西日の粒子を濾し取りながらも
どこか血のように鮮烈な明るさを与える時間帯——
そこで横たわる一人の女体が奇妙な神聖さを放っていた。
ルーナ——
ガンマとして知られる七陰第三席は今や
伯爵家の愛妾「ルーナ夫人」と呼ばれ、
一日の大半を男たちの肉欲奉仕に費やす毎日であった。
だが肉体をいくら蹂躙されても
生まれながらの気品と怜悧さは失われていない。
「……ふぅ」
枕元に投げ捨てられた扇子をそっと手に取り
ルーナは仰向けのまま微かに扇ぐ。
白檀と伽羅の混ざった香煙がゆったりと漂うなか、
己の身体に残る傷痕を無表情で確認する。
まず目に入ったのは胸部——
山岳のように隆起する特大の爆乳だ。
常識を逸脱したサイズを誇る双丘は、
柔肉のたわみ一つ一つに朝露のごとき汗珠と
粘つく白濁をまとわりつかせている。
その色彩は本来雪のように白い。
だが藍色の髪と同じく色素の薄い肌質ゆえ
炎症を起こせば容易く紅潮し、痣や瘢痕も浮きやすい。
特に今回はウィレム——伯爵嫡男——の加減を知らぬ激愛が災厄となった。
「本当に……狼ですね」
冷笑まじりの呟きと共に左手を滑らせると
硬質な歯列が刻んだ歯型が並んでいる。
朱に滲んだ咬創は乳腺付近に集中し、
まるで聖遺物の刺青のように十字が組み合わされていた。
さらに指を移動させれば
まだ温もりの残る精液が乳溝に沿ってゆっくり流れ落ちる。
ねっとりした粘り気を帯びたそれが
褐色の肌にも似た陰影を乳頭回りへ塗り拡げ
元来薄桃色だった乳輪は桃果の皮を剥いたばかりの瑞々しい色に変わっていた。
「——消えないでしょうね」
ルーナは医学にも通じている。
噛み傷の深さを見れば治癒魔法でも簡単には痕跡を取り去れないことが分かる。
だが眉ひとすじも動かさない。
「まあ、かまいませんけど」
むしろ淡々とした声音。
男の牙が与えたという印が
逆説的に自分の価値を担保する一種の勲章に思えたからだ。
窓際に咲く寒蘭は初夏の夜を告げていた。
風鈴の音がかすかに廊下を渡る。
もう一人の主人——ウィレムの息子ヴィットリオ——が
稽古から戻ってくる頃合いだった。
(順番待ち……忙しいこと)
自嘲気味に微笑み
ルーナは腰をゆっくり起こす。
その動きだけで爆乳がばふんと弾け
体操競技選手がリングで跳ねるボールのように揺らいだ。
滴り落ちる液体が裾から
畳に新たな染みを作るのが見える。
そこへすかさず侍女が膝行してきた。
布巾で汚れを拭きとりながら恭しく礼をする。
「夫人さま。次のお支度をお申し付けいたします」
「ありがとう。香水を替えてもらえる?」
「畏まりました」
侍女が去るのを見届けてルーナは鏡台に向かった。
藍銀の長髪を梳きながら自らの両胸を背後から見やる。
(傷跡は恥ではない)
視線に潜むものは侮蔑ではなく
諦念と決意の入り混じった複雑な光。
今宵もまた
飢えた狼どもの狩場となる自分が
確実に生き延び
そのうえで何を得るべきか——
冷ややかな野心が氷片のように胸裡に結晶する。
「さて……行きましょうか」
袖口で口元を押さえつつ独白し、ルーナは重い扉へ歩を進めた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
障子越しに傾いた陽が部屋へ忍び込んでいた。
墨のような雲が空の果てに残火を宿し、室内を仄かに朱に染め上げる。
布団の上に広がる漆黒の長髪は
その僅かな光源でさえ拾い上げて
星空を思わせる煌めきを放っていた。
しかしその艶やかな髪が乱れ波打つさまは
神秘性を損ねてただの濡れた獣毛と化している。
額には細かい汗粒が浮かび
頬も紅潮し涙で潤んだ瞳はすでに焦点を結んでいない。
ルーナ——
この瞬間だけは"ガンマ"でも"七陰の第三席"でもない。
ただの欲に溺れた女。
「……っ」
小さく呻くような呼吸が漏れる。
それすら声にならないほど消耗していた。
腰に回された腕の感触。
ウィレムの身体が背後から密着し
まだ鎮まる兆しのない欲望が臀部に押し当てられる。
「まだ……足りませんか」
掠れた声で尋ねると
伯爵家嫡男は耳元に低く嗤った。
「当然だ。お前の肢体は私を飽きさせない」
ルーナは返事をしなかった。
体力と矜恃の両方が既に瀕死なのだ。
障子から差し込む橙色の光が
汗で光る肩甲骨や
白磁のように滑らかな背中のカーブを照らし出す。
そこには噛み跡や指圧痕が花弁のように散らばり
今日までの搾取の遍歴を静かに物語っていた。
彼女の四肢は鉛のように重い。
けれどその疲弊とは裏腹に
乳房は依然として重力に逆らうように張りを持ち
尖端は充血して痛々しいほどに凝っている。
(まだ……終われないのですね)
意識は霧のように希薄なのに
身体は確かに記憶している。
何度屈服しても翌日にはまた跪かされる運命を。
ウィレムの掌が脇腹から這い上がり
巨峰のように実る双乳を掬い取る。
もちりとした感触と共に乳房が揉み捏ねられると
ルーナの肩がビクッと跳ねた。
「っ……んぁ……!」
微弱な嬌声。
彼女の喉が震えたその隙に
ウィレムは首筋へ唇を落とす。
ちゅっ じゅる……
啜るようなキスマーク。
皮膚が粟立つほどの吸引音が鼓膜にこびり付く。
「や……め……」
抗議は叶わない。
首を竦めようと動かした肩さえ
上腕で押さえ込まれ身動きできなくなった。
次いで右手の指が割れ目に伸ばされる。
そこは既に幾度も侵された余地を残さず
白濁と愛液が混ざり合って泥濘と化していた。
ぐちゅ……
掻き混ぜられる淫猥な水音。
敏感な粘膜が擦られ
ルーナの瞳が一瞬だけ見開かれる。
「ひっ……!」
逃げ場を探すように両腿を閉じようとするが
外部からの力に阻まれ徒労に終わった。
ウィレムは指を増やし
膣壁の内側を螺旋状に探る。
弱点を探り当ててはそこを執拗に弄り
声を奪った小鳥のように啼かせた。
「あっ……あぁっ……!」
抵抗の意志など欠片も無いのに
肉体は否応なく反応し
快楽電流が脊椎を駆け上がる。
ルーナは喘ぎながらふと思い至る。
(私は……敗北しました)
それでもいい。
敗北の果てに守るものがあるならば。
それは主君の名誉か?
それとも未来の希望か?
考える暇を与えまいと
ウィレムの舌が背筋を這い上がり
項で止まって吸い付いた。
ちゅうちゅうと音を立てて舐めしゃぶられる。
その不潔な音が羞恥心を煽り、同時に理性の箍を外す。
「や……あ……んんっ!」
声にならない嗚咽。
やがてウィレムは身体を反転させ
正面から向き合う形でルーナの両膝を抱えた。
「……まだ逝けるだろう?」
凄惨な笑み。
ルーナは首肯することさえ億劫で
ただ瞳を閉じる。
次の瞬間
灼けるような質量が再び侵略を開始した。
ずぶりっ
鈍く重い衝撃音と共に膣内が圧迫される。
酸素を求めた喉が引き攣り
ルーナの眉が苦悶で歪んだ。
ウィレムは敢えて急がない。
挿入の深度で止まり
内側で待機したままゆっくりと乳房を揉みしだく。
「……お前の魂ごと私のものにしてやる」
その宣言に呼応するかのように
淫紋が微かに熱を帯び光った。
ルーナの肌の上
薄紫の紋様が陽炎のように揺らぎ
「だ……め……それ以上は……!」
警告の叫びを遮断するかのごとく
ウィレムが猛然と抽送を開始した。
ぐちゅっ ずちゅっ ぢゅぶっ!
粘膜と粘液が擦れ合う濁音が
薄闇の室内に轟く。
ルーナの白い脚が爪先まで緊張し
踵が虚空を蹴った。
「あッ! ひぃッ! やあぁッ!!」
理性は跡形もなく溶けていく。
残ったのは原始的な官能のみ。
夕焼けはついに襖の外で熄えようとしていた。
しかし二人だけの小さな世界には
永遠にも似た時間が流れ続けている——。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ウィレムの巨躯がゆっくりと退く。
放出したばかりの分身が引き抜かれる瞬間
ねっとりと糸を引いた残滓が
ルーナの秘裂から夜具へ伝い落ちた。
「……はあ……っ」
彼女の口角からは健康そうな桜色の舌先が零れ
舌裏に残った白濁と混ざった唾液が銀の雫となって垂れ流れる。
その表情はあまりに崩れていた。
恍惚とも無垢とも判別しがたい
境界線上の恍惚が肌の裏側まで浸透している。
瞳は遠い何かを追って虚空に据えられ
焦点の合わない虹彩は虹を含んでいた。
だが決して醜くはなく——
いや逆に
これまでに見たどんな女神彫像よりも妖艶だった。
「……」
ウィレムは言葉を失う。
征服したはずの獲物が
自分の想像を超えて魅了を深めるなど想定外だ。
ルーナは舌先を引っ込めると、ぽたりと唇を閉ざした。
しかしすぐまた小さく舌を突き出して
布団に染み込んだ白濁の湖へと導く。
ぺろり……。
「ん……」
ほとんど無意識の仕草。
幼児が母乳を求め彷徨う舌先にも似た稚さで
ルーナは己の体内から溢れたそれを慈しむように掬い取った。
甘味ではない。
塩気と苦味が混じり
鉄の生温かさを思わせる味。
それでも彼女の表情は微笑に近い柔和さを帯びる。
「……美味しくありませんね」
囁きは霞のように儚く消えた。
声帯さえ疲弊しきっている証だ。
ウィレムは苛立ちとも羨望ともつかぬ思いに囚われ
思わず指先で彼女の顎を掬い上げる。
「お前は一体どれほど……」
問い掛けは途中で掠れた。
答えを聞く必要もない。
ルーナ自身、言葉など用意していないのだから。
二人の視線が絡む。
そこには勝敗を超えた共依存の影があった。
部屋の外では時雨の匂いがし始めている。
夕立は徐々に密度を増し
瓦を打つ音が微かに鼓膜を震わせた。
窓障子の向こう側
灰色の空を切り裂く雷鳴が遠方で咆哮する。
ルーナはその閃光を目蓋の裏で感知し
ほんの僅かに瞼を開く。
翡翠のような虹彩が稲光を写して冴え渡った。
「雨ですか」
掠れた声で尋ねる。
ウィレムは「そうだ」とだけ答えた。
「……もう少し」
ルーナは続けて呟く。
「もう少し……眠らせてください」
それが許しを請う言葉なのか
単なる要求なのか
本人にも判断は難しかった。
ウィレムは逡巡し
しかし何も答えず布団を捲る。
汗と体液で重くなった夜具の隙間から
冷えた空気が滑り込んだ。
「寒いか?」
「いえ」
短い否定。
だが唇の端がわずかに震えている。
ウィレムは自分の上衣を脱ぎ捨てると
それをルーナの肩に掛けた。
藍銀の髪がその陰に隠れ
波打つ河川のような輝きを見せる。
ルーナは抵抗しない。
むしろ布越しに彼の体温を探るように身体を丸める。
「ありがとうございます」
囁きが胸骨を通過して心臓に届いた。
ウィレムは堪えきれない憤りと喜悦の入り混じった衝動に駆られる。
(何故だ——)
征服したいという欲と
壊したくないという矛盾が同時進行する。
どちらを選んでも破局しか待っていない罠だと理解しているのに。
ルーナは浅いまどろみへ沈みかける。
頬に残った涙の跡が乾きかけ
白粉のような輝きを湛える。
その無防備な様に
ウィレムは歯噛みした。
(逃がさぬ)
心中で呟く。
雷鳴は一向に止む気配がない。
やがてルーナは本当に安堵の寝息を立てはじめた。
規則正しい呼吸音が重なるたび
汗ばんだ肌に走る白濁の帯がゆっくりと乾いていく。
ウィレムは傍らで胡坐をかいたまま
彼女の寝顔を見つめ続けた。
窓硝子の向こう
夕立は次第に雨脚を強くし
庭木の葉を叩いて土砂降りとなる。
外界の喧噪が膨らむほど
室内の静寂はより一層深く澱んでいった——。
◆◆◆
雷鳴は深夜をすぎてようやく遠退いた。
障子の外で雨脚はまだしつこく草木を叩いているが
その音の奥にかすかな黎明の匂いが混じり始めていた。
だが室内──伯爵別棟の最も奥まった閨房には
微塵の曙光も届かない。
燭台の芯だけが橙黄色の炎を吐き
闇と汗と体液の匂いに満ちた空間を仄かに照らしていた。
中央の夜具には二匹の獣。
いや正確には
貪り食われる肉と、人間の仮面を剥ぎ捨てた牡が
同じ皮膚の匂いを纏い絡み合っていた。
ルーナの姿はもはや"少女"ではなく
血を啜った後の蝶のように白い翅を折り畳む亡骸だった。
頬は煤けた月のように青褪め
閉じた睫毛の影が薄く隈になっている。
唇は乾きひび割れ、舌を出した形跡を残したまま半ば開いている。
咽喉の奥からはもはや呼気も漏れない。
まるで息そのものを搾り尽くされたかのように──
けれど膣口からはとどめない。
ウィレムが幾度も放った白濁が
粘度を保ったまま滔々と溢れ続けている。
その量たるや
太腿の内側から脛へ
さらに踝を越えて夜具へ染み込み
最早誰も数えられぬほどの小池を形づくっていた。
「……ふっ」
突然、ルーナの腹部が震えた。
痙攣とも呼べぬ微かな蠕動。
膀胱に溜まった水分が
神経の断裂により一気に逆流したのだ。
じょろろろろ……
薄く黄色みを帯びた液体が白濁の湖に混ざる。
その匂いは夜明け前の冷気に乗って
部屋いっぱいに蔓延した。
だがウィレムは眉ひとつ動かさない。
むしろ興奮は募る一方だった。
(まだ……終わっていない)
自戒の念を胸中で繰り返しながらも
彼の手は再びルーナの腰を掴む。
指の食い込みは残酷なほど深く
柔らかな脂肪層が波打って骨盤が鳴る。
「おい……まだ寝るなよ」
低く嗄れた囁きが耳殻を這う。
答えは返らない。
代わりに膣壁が惰性で収縮し
抜けかけた肉柱を呑み込もうと蠢いた。
ずぶっ……
卑俗な粘着音とともに結合が再開される。
ルーナの背中が弧を描き
銀鈴のように小さく啼いた。
「んっ……」
その声はもはや祈りにも似ている。
赦しを乞うのではない。
ただ終わりが訪れないことへの悲哀だ。
ウィレムの視線がそこに釘付けになる。
薄く開いた瞳孔の奥で
灯火の橙が揺れているのを見つけてしまったからだ。
(まだ生きている)
欲望と罪悪感が胸骨を砕く。
だからこそ楔を穿つ。
痛みも快楽も区別のつかぬまま
ただ深く。
ぐちゅ…… ぬちゃ……
抽送の速度は次第に加速する。
濁流が掻き回され泡立ち
粘着質な膜となってシーツの上で膨らんだ。
ルーナの身体は一切抵抗しない。
ただ打擲に合わせて
壊れ物のように揺さぶられているだけだ。
その無抵抗こそが
最高級の供物であるかのように
ウィレムは敬虔な信徒さながら唇を舐めた。
「もっと……堕ちろ」
声に出した瞬間
自身の倫理観が底無し沼に陥る感触があった。
だが引き返せない。
やがて彼の中で膨張した熱が
もう一段階凶暴な形で喉元を焼いた。
どくりっ
「……くっ」
呻きを嚙み殺す余裕もなく
濃厚な白い奔流が
虚脱した子宮へ叩きつけられた。
どぶっ どぷっ びゅるる……
噴射が終わっても
まだ勢いは衰えない。
膣口からは泡沫の雫が弾け飛び
シーツの縁へ白い雨が降る。
ウィレムは最後の一滴まで注ぎ込み
力尽きたように上体をルーナへ預けた。
肺腑が焼けるように痛い。
その時だった。
かすかに、しかし確かに行われる呼気が耳朶を擽った。
「……あ……」
掠れていて判読不能の音域。
それでも確かに聴こえた。
生命維持のために口笛のような呼吸を試みている。
(まだ……消えていない)
希望とも失望ともつかない感情が胸を締め上げる。
ウィレムは自らの行為が
人ひとりの尊厳を完全に毀損したことへの
免罪符を求めたわけではない。
だがそこに灯る微かな呼気は
彼の良心の呵責を嘲笑うかのごとく
生存の証を刻んでいる。
やがて──
夜空を裂く最後の雷鳴が遠方で朽ち果てると
東の彼方に淡紅の気配が漂い始めた。
雨脚が止み
竹筒から滴る雫だけが時を測る。
ウィレムはようやくルーナから身体を離す。
長い交尾の鎖が外れ
双方の体液が糸を曳いて繋がる。
ぬちゅ……
引き抜いたそれは
すでに役目を終えた筈なのに
まだ不完全燃焼の火種を孕んでいた。
彼は自嘲気味に鼻を鳴らし
汗だくの額を袖で拭う。
そのまま部屋の隅に積まれた桶へ
新しい手拭いを取りに行く。
冷えた井戸水で濡らし
丁寧に絞ると
まずはルーナの濡れそぼった秘部へあてがった。
ぴたり……
冷水の接触に痙攣が走り
閉じられた睫毛が微かに震える。
その反応を見て初めて
ウィレムは己の顔に苦笑を浮かべた。
「……馬鹿みたいだ」
誰にともなく呟く。
征服欲に燃えた激情も
ここへ来ては徒労にすぎない。
傷跡を丹念に拭き清め
薄く開いた唇に指を入れて
口腔に残る自己の精を洗い流す。
吐瀉物のように苦く生暖かい液体が
指先から滴るのを
彼は一瞥だけであっさり払い捨てた。
ついで額と首筋を拭い
背中に貼りついた長い黒髪を払う。
すると藍銀の艶が再び解き放たれ
夜明け前の翳りを飲み込みながら鈍く輝いた。
ルーナはまったく反応しない。
まるで魂ごと肉体を離れたように
虚空を見つめている。
その顔を見ながら
ウィレムはふと思う。
(俺は──何を得た?)
問いに答えはない。
ただ空になった双眸が
こちらを見ている。
あるいは見ていながら
何も見ていない。
彼は静かに息を吐くと
部屋の戸口に向けて呼びかけた。
「マルセラ」
間もなく廊下から小柄な侍女が現れる。
年のころ十四ほど。
栗色の髪をひっつめた初々しい童顔だ。
「旦那さま」
「寝台を新しくしてくれ。
あと医師と薬を──そうだな、“治療”用のもな」
意味ありげな指示に
少女は一瞬怯えを見せたものの
すぐに平伏して退出した。
戸が閉まる。
再び閨房には二人だけになった。
ウィレムはルーナを抱き上げ
肘掛椅子へ座らせる。
崩れ落ちそうになる首を支え
肩を軽く叩いた。
「起きろ」
声に反応はない。
それでも指先だけが微かに痙攣し
肯定とも否定ともつかぬ信号を送る。
「明日──いや今日か。
また使わせてもらう」
卑劣な約束。
だがそれはすでに互いが理解している契約だ。
ウィレムは言い置いて
薄羽織を彼女に掛け直すと
自らも濡れ衣を脱いで浴槽室へ向かった。
遠のく足音。
壁の向こうで湯が撥ねる音。
閨房には昏い静謐だけが取り残される。
ルーナのまぶたが僅かに動いた。
眠りと覚醒の狭間で見るのは悪夢か淫夢か……
浴室から戻ったウィレムは
新たな敷布に巻き替えられた寝台を一瞥し
すぐさま元いた椅子へ腰を落ち着けた。
部屋の中央。
そこに佇むのはまだ微睡みの中にある藍銀の乙女。
たっぷりと蜜を吸った黒百合のように
ぐったりと凭れかかる様は
昨夜の饗宴の名残を色濃く留めている。
しかし──
灯台の薄光を受けて浮かび上がったその横顔は
驚くべきことに清冽だった。
濡れた黒髪が肌に張りつき
首筋へ銀糸のように流れる。
瞳は固く閉じられ
その睫毛は幼子のごとく繊細で脆い。
唇は少し腫れぼったい。
昨日の酷使で潤いを失い
無垢な少年が噛んだ葡萄の皮のように
つんと上を向いて僅かにひび割れている。
それでも──
「聖女」という言葉が最も似つかわしいのはこの瞬間だった。
穢れを知らない純粋さ。
およそ罪業とは隔絶された無償の慈愛。
触れてしまえば即座に粉砕されそうで
だからこそ人は恐れながら憧憬する。
ウィレムは椅子の肘掛けを掴み
ゆっくりとその幻影を見据えた。
(欺瞞だ)
心の奥で嗤う。
昨日も一昨昨日も──
何十日という昼夜の営みの中で
この乙女がどれほど獣じみた喘ぎを吐き
どれほど卑猥な姿を晒してきたか。
すべて自身の眼で確かめたではないか。
だが眼前の静謐は疑いようもなく真実だった。
その乖離が彼を翻弄する。
手負いの狐を追い詰めた狩人が
崖際で振り返った獣の眼に怯えを抱くようなものだ。
ウィレムは慎重に間合いを計り
足音を殺して近寄った。
ルーナの前に膝を折ると
右手で額に垂れる髪をそっと払う。
露わになった耳許には昨夜の鬱血痕が薄く残る。
熟れた南国の果実にも似た肉の柔らかさ。
静かに開脚させる。
剥き出しの陰唇が昨夜の行為を反芻するようにヒクついた。
ウィレムは指先でそっと裾を割る。
羞じらいのように重ねた襞を
一枚一枚剥がし取っていく──
刹那、露わになる肉壁の色は
予期に反して瑞々しかった。
(やはり)
何度も犯し穢し尽くしたはずの其処が
幾度眺めようと処女の清廉を纏っている。
天性なのか。
それとも彼女が行使する禁忌の知識によるものか。
ウィレムは自らの困惑を誤魔化すために
軽く笑って囁いた。
「何度抱いても新品同様とは──末恐ろしい女だ」
返事はない。
だが膣口が微かに震え
透明な雫が珠を成して滲み出る。
無意識下で応えた返答。
ウィレムは左の人差し指と中指を使い
恥丘を左右へ押し分けた。
途端に現れるのは濃紅の蕾。
花びらのように幾重にも折り重なりながら
中心一点へ熱を集めている。
まだ誰も触れたことがない錯覚。
彼は濡れそぼった粘膜へ指先を滑り込ませる。
くちゅ……
小さな水音が室内に谺した。
「っ」
ルーナの睫毛が僅かに震える。
意識の底で感じている。
(拒否はない)
昨夜あれほど酷使した部位が
既に官能の呼び声に反応しているのだから
抗う道理がどこにあるのか。
ウィレムは探るように円を描く。
内壁がしっとりと絡み付き
粘液が指へ纏わり付いて絡み付く。
その温もりはまさしく新生児の皮膚。
あるいは初雪に触れた時の柔軟な冷たさ。
指を抜くと糸が引いた。
光を孕みながら空中で揺らめく銀線──
淫靡でありながら奇蹟の輝き。
ウィレムは己の呼気が
少しずつ早鐘になっていくのを感じた。
(いけない)
自制しようとしても
視覚と触覚が五感を賑やかにする。
再び挿入。
今度は奥へ──
窄まりを抜け
子宮口付近で軽くノックすると
ルーナの脚がピクンと跳ねた。
「ん……ぁ」
寝言とも喘ぎともつかない声。
その響きがまた
新たな欲情を焚き付ける燃料となる。
膣道がキュウと締まり
指を千切らんばかりに咀嚼する。
ウィレムは舌打ち混じりに問いかける。
「起きていないのか?
それとも寝たふりか?」
返答はない。
だが身体は雄弁だった。
肉襞が蠢き
まるで招き入れるように脈打つ。
(処女のようで──娼婦のようだ)
この相反する二面性こそが
彼女を永遠に飽かせぬ所以なのだろう。
ウィレムは指を引き抜き
代わりに屹立した己を宛てがった。
滴る先端が入り口で戯れ
粘膜と触れ合うだけで背筋が痺れる。
「少し動くぞ」
耳許で囁き
ゆっくりと体重をかけた。
ぬちゅ……
先刻の潤いを借りて
易々と進入を許してしまう秘奥。
ルーナの喉から
小さな嗚咽が洩れた。
「──あ」
その響きは覚醒の前兆か
或いは眠りに落ちたまま味わう恍惚か。
ウィレムは構わず抽送を開始する。
寝台が軋む音。
結合部から奏でられる水音。
静寂を埋める卑俗な旋律。
数往復もしないうちに
ルーナの頬に朱が差し
睫毛が明らかに震え出した。
目蓋が薄く開く。
焦点の定まらぬ琥珀色の瞳が
ぼんやりと彼を捕える。
「……ウィレム……さま?」
掠れた声。
夢と現の境を彷徨う迷い子の呟き。
ウィレムは動きを止めずに応える。
「ようやく覚醒か?
よく眠ったな」
「……んっ」
抗議とも悦びともつかぬ声。
寝起きの脳裏に刷り込まれる快楽信号。
ルーナはやがて完全に目を開けた。
その瞬間
淫靡な笑みが唇に浮かぶ。
「……またですか」
呆れたような
だが愉しそうな微笑。
ウィレムはニヤリと返す。
「嫌なら蹴り飛ばせば良い」
「できません……そんなこと」
否定は言葉だけ。
実際には両脚が彼の腰を抱え込んでしまう。
寝具が波打つ。
朝日を知らぬまま再演される媾合。
ウィレムは再び悟った。
(この身体は──永久処女)
汚しても汚しても
朝露のように生まれ変わる。
だからこそ
何度でも摘み取ることが出来る花。
穢すことを赦された至宝。
彼は唇を奪い舌を絡ませる。
ルーナもそれに応じた。
薄闇の内側で聖女と修道士のような接吻を交わしながら
下半身では獣が貪り合う。
窓の向こう。
僅かな曙光が帷を引き裂き始める。
だがそれは外の話。
室内の二匹はなお暫く
無垢と邪淫の二重奏に酔い痴れることだろう──
ウィレムは己の下半身から湧き上がる官能の震源を
いささかの驚愕を持って受け止めた。
一見すれば滑稽にも見える
拙劣で幼稚な擦り付け運動──
だが接触面を伝ってくる温もりと潤いは紛れもなく本物で
濡れそぼった秘裂が粘液を伴いながら
亀頭を包み込む圧迫感が
正体不明の快感として脊椎を駆け昇ってくる。
(これは……何だ)
普段のような
荒々しく一気に貪り合う交わりとは趣を異にする
慎ましやかでありながら深奥に潜む執着。
まるで淑女が茶会で紅茶の味を確かめるような
品の良さすら孕んだ摩擦。
ルーナはそのままゆっくりと腰を持ち上げる。
股間全体が彼の分身を中心に円を描き始める。
射精には至らず
しかし充分すぎるほどの粘膜接触が得られる動き。
「どうでしょう」
潤んだ瞳が伺うように向けられた。
「お気に召しませんか?」
声は震えている。
だが羞恥に耐えながらも誇らしげな響きがあった。
ウィレムは己の言葉が見つからないまま
ただ喉を鳴らした。
「……妙な愉しみ方を覚えたものだな」
それは褒め言葉か皮肉か。
自分でも分からない曖昧さを含んだ返答だったが
ルーナは嬉しそうに小さく頷き
「勉学の一環ですので」
と言い添えた。
さらに両腕を頭上へ掲げ
布団へ倒れこんだ肢体を露呈させる。
曝け出された腋窩は
鳥の翼のように柔らかな羽毛で飾られており
それが細かく上下する胸郭の動きにつられてわずかに震える。
その光景が却って淫らだった。
「私は……あなたに身を委ねております」
彼女は言った。
言葉というより誓約の文体に近く
儀式めいた荘重さを帯びていた。
ウィレムは思わず喉の奥に滲む興奮を噛み殺す。
普段であれば躊躇いもなく
貪り喰らう獣となっていたかもしれない局面だが
今日の彼は違った。
眼前の女の献身が
信仰にも似た純朴さを含んでいる以上
粗略に扱えば神罰に遭うのではないかという
不可思議な畏怖すら覚える。
ゆるゆると円運動を続ける秘肉が
じわりじわりと熱を増幅させていく。
亀頭冠が最も過敏な部分を擦るたび
ルーナの唇が音の無い溜息を漏らし
指先が虚空を掻いた。
「こんな緩慢な刺激では
足りないかもしれませんが」
控えめに告白するその声色には
どこか焦燥の色が滲んでいた。
ウィレムは不意に理解する。
これが彼女なりの──
女王でも学者でもない
ひとりの女としての懊悩なのだということを。
「十分だ」
ようやく口に出来た答えは短く簡潔なものだった。
ルーナの瞳がぱちりと瞬き頬が僅かに緩んだ。
「よかった」
安心したように溜め息が洩れる。
そのまま動きが止まりかかったので
ウィレムはそっと彼女の腰を掴み引き下げた。
ずぷっ
結合が深くなる。
途端にルーナの背筋が弓なりに伸び
甲高い嘆息が零れる。
「ぁッ」
腕を掲げたままなので腋の窪みへ汗が滴り落ち
わずかな宝石のように光を散らす。
「ここからは私が率いる」
宣言すると
彼女は俯いたまま小さく
「お願いいたします」と囁いた。
ウィレムはゆっくりと腰を浮かせる。
先ほどまでルーナ主体だった動作を
今度は自ら主導する形へ転じたのだ。
肉棒が後退し膣壁が名残惜しげに締めつける感触。
続いて深々と侵入し子宮口のすぐ手前で止める。
突けば容易に突破できそうな位置で
(焦らされているのはどちらだ)
内心で独白しつつ抽送を開始した。
ぬちゅ……ぬちゅ……ぬちゅ……
湿った拍子が規則正しく響く。
速すぎず遅すぎない律動が
二人の体温と呼気を混ぜ合わせていく。
ルーナの腕は未だ上方へ固定されたままで
露出した腋窩が微妙な角度を変えるたび
髪飾りの細工が微かに音を立てた。
「気持ち……良いでしょうか」
うわ言めいた問いかけ。
ウィレムは答える代わりに腰を強く押し付けた。
根元まで埋没した陰茎が最奥をノックすると
「……っはぁ」
ルーナの瞳から涙が一粒零れた。
快楽と陶酔の境界線で溶け出した
無垢な雫。
「私の方が……壊れそうです」
震える声で述べたあと
自嘲するように微笑みながら視線を逸らす。
ウィレムはその頬をそっと掴み
自分の方へ向けさせた。
「壊れればいい」
低い囁き。
「お前は既に人ではない。
ここで私の一部となったのだから」
ルーナは瞠目したのち
涙を拭いもせず小さく首肯いた。
「はい……ウィレム様」
刹那
彼女の内部がまるで理解したと応えるかのように
淫らにくちゅくちゅと律動を変える。
ウィレムは思わず息を呑む。
脳裏で警報が鳴り響くのを無視して
抽送のリズムをわずかに速めた。
ぐちゅ……ぐちゅっ……ずぷッ!
先ほどまで穏やかだった音色が荒々しく変わる。
ルーナの喉が反り返り
掲げていた腕が崩れ落ちそうになるのを
「まだだ」
と言うと
両手首を握り再び頭上へ固定する。
自由を封じられたまま与えられる快楽に
彼女の表情は蕩けかけていた。
「わた……し……は……あなたの……もの」
断続的な言葉。
「捧げます……全部……」
その宣言が聞こえた瞬間
ウィレムの理性が決定的に焼け切れた。
杭打ちのごとき抽送が
血を沸騰させる勢いで再開された。
先ほどまでの円舞曲は終わったのだ。
今あるのは剥き出しの衝動だけ。
ルーナの細い腰を両拳で掴んだウィレムは
力任せに引き寄せると同時に自らの腰を突き上げた。
ぐぷっ──!!
蜜壺の入口が悲鳴をあげる。
だが抵抗は許されない。
内壁を埋め尽くす粘膜が
肉槍の往来に追随する形で攪拌されるたび
熟れた果実の汁を搾り取るような水音が響く。
「ぅ゛あッ……!」
迸った叫声は掠れていた。
ルーナの瞳孔は開き切っており
眼球は虚空を泳ぐように震えている。
(もっとだ)
ウィレムの思考は単純化しつつあった。
征服という名の執着だけが脳幹を支配し
理性は遠く彼方へ吹き飛んでいる。
再度引き抜く。
根元から雁首までを膣内の襞に引っ掛けながら
高速で掻き出すような動作。
「ひっ……ぁぐッ!」
痛みか快感か定義できない波が
彼女の背骨を突き抜ける。
爪先が虚空を蹴り上げ
束ねた黒髪が床板に火花のごとく散る。
(壊れろ)
耳朶を震わせる吐息にそんな独白が混じった。
一度抜け切った陰茎を休む間も与えず再び貫く。
ずぶんっ!
肉杭が最奥まで到達する寸前
子宮頸管の抵抗がわずかな弾力を生む。
そこを容赦なく殴打すると
「っ……ッッ!」
ルーナは喉を絞り声にならない嬌声を漏らす。
唇の端から唾液が細く垂れ落ちた。
ウィレムは右手で彼女の頬を掴み
自らの目の高さへ引き寄せる。
「随分と派手だな。
これが“奴隷妻”の務めか?」
挑発に反応できる余裕など残っていない。
しかし反射的に彼女は頷こうと
小さく顎を上下させた。
震えが返事の代替となっているのが見て取れる。
「いいだろう。
その心意気を褒めてやる」
言うや否や抽送を早める。
パン! パン! パンッ!
肉同士が衝突する破裂音が連続し
室内の空気が刃物のように研ぎ澄まされる。
ルーナの膣圧は更に増した。
限界を超えてもなお絞ろうとする襞の働きは
さながら万力の如し。
通常であれば男を悦ばせる仕草も
ここまで強烈になると拷問だ。
「締め過ぎだ……ッ!」
呻き混じりの叱咤。
痛みが腰骨を通じて脳に刺さる。
だが中断しない。
いや出来なかった。
己の武器ともいえる剛直を
内側から握り潰されそうな圧力に晒されながらも
なぜか腰を止めるという選択肢が出てこない。
(負ければ終いだ)
本能は理屈で測れない領域に在る。
痛みが快楽と交錯し
射精中枢を直接炙られる錯覚を生む。
ぐりゅっ!
膣内で角度を変えながら捩じ込まれる肉棒。
「ゃめぇ……ッ!
そ……そこぉッ!」
哀願のような喘ぎ。
ルーナの腹腔の最も感じる箇所──
Gスポットにカリ首を引っ掛けられては
耐えられるはずがない。
刹那
彼女の全身が魚のように跳ね上がる。
「イッ……ぐぅ゛ゥ!!」
ビュルルッ!
噴水のごとき愛液が尿道口から放射され
接合部を濡らしながらシーツへ滴る。
潮吹きと同時に膣内も痙攣し
亀頭を咥えたまま搾り取る仕草へ転じた。
「……っはァ!」
ウィレムは歯を食いしばる。
猛烈な逆流する疼きが輸精管を駆け登る。
(まだだ……ぐぅっ……!)
堪えようとする意志は次の瞬間に粉砕された。
ぎゅうううッ──!
ルーナの肉壁が最後の力を振り絞り
根元から搾り上げる締め付け。
「ぐっ……あぁッ!」
堪えきれず吐精が始まる。
ドクンドクンと脈動しながら白濁が子宮へ叩きつけられる。
びゅるっ……びゅるるッ!
熱い奔流を受けた瞬間、ルーナは大きく仰け反った。
「きて……るッ……あぁああッ!!」
二人の喘ぎが重なり、閨房の空気が白く煙るような錯覚を与える。
漸く弛緩が訪れると、結合部から泡立った粘液が逆流し
赤と白と透明が混ざったカクテルとなって
シーツに大きな染みを作った。
ウィレムは肩で息をしながら、汗で滑る腰から手を離す。
しかし杭はまだ刺さったまま。
ルーナは半ば白目を剥きかけていた。
涎を拭いもせず放心している。
(墜ちたか)
彼はそう思った。
だが次の瞬間
膣の最奥で微かな脈動が返ってきた。
「……ふぅっ」
呼吸音とともにわずかに締め付けが強まる。
無意識のうちに男根を労う仕草。
「……悪いメスだ」
侮蔑とも賞賛ともつかない言葉を洩らしつつ
ウィレムはゆっくりと陰茎を引き抜いた。
ずるり──
薄膜のような粘液がまとわりつきながら
解放される分身。
同時に栓を失った秘所からは
どろっ
白濁と愛液と血液が混ざった混合液が溢れ出す。
腿裏まで滴り落ちて淫靡な軌跡を描いた。
ウィレムはその光景に満足げに眉を吊り上げ
気怠げな動きで彼女の腹に跨った。
「起きろ」
命じるとルーナはかすかに睫を揺らし
焦点の怪しい瞳で見上げてきた。
「……わたし……は……?」
声は枯れ枝のようだが確かに意思がある。
「良い働きだ」
褒美に唇を塞ぐ。
疲弊しきった口内を蹂躙するつもりだったが
意外にも彼女の方から舌を絡めてくる。
(まだ足りぬのか)
ウィレムは苦笑混じりに思う。
すると背筋に再び微熱が戻り始めた。
「……欲しいのか?」
問いは肯定以外を認めない。
ルーナは僅かに頷く。
「ならば望むところを言え」
蒼白い頬が紅潮する。
しばしの逡巡の後
「……もっと……愛してください」
蚊の鳴く声で懇願した。
その瞬間
ウィレムの中に新たなかさが鳴動した。
「了解した」
彼は囁く。
「二度と自我が芽生えぬほど
私の味を覚え込ませてやる」
そう言って再び覆いかぶさる。
淫液の臭気に包まれた寝室で
また一つの嵐が胎動を始めた──。
◇ ◇ ◇
窓辺では朝靄が白く流れ
蝉の第一陣が鳴き始めたが
その声は二人の喘ぎによって掻き消されていた。
季節外れの蝉たちが夏を勘違いしたように
永遠の春を祝う騒音を撒き散らしながら──。
夜明けを三周巡らせたであろう時刻。
蝋燭の焔はほとんど熔け落ち
暗澹とした闇が床一面に広がっていた。
それでもルーナの肢体は
月光を拾って白磁のように輝く。
「お休みになりましたか」
と
控えめに訊ねる声に応える代わり
ウィレムは硬さを失った陰茎を彼女の豊乳の狭間に押し当てた。
まだ温度が高い。
情事の名残を証明するように
じんわり──
彼の腰骨に温もりが伝わる。
「休憩? 冗談だろう」
苦笑混じりの吐息。
ルーナは頬を赤らめつつも跪いて両腕で谷間を形成する。
その膨らみは以前にも増して豊かだった。
一月ほど前までは掌に納まる量感だったものが
今は両手で抱えなければ安定しないほど。
(私以外にも愛されたのだろうな、忌々しい)
と内心毒づくが指先は正直だった。
胸骨のあたりから溢れる脂肪を
そっと掬い取り寄せ集める。
ずぷっ
包み込まれる。
滑らかな肌理と柔らかな餅菓子の感触が
萎えたはずの肉棒を忽ち蘇生させた。
「ん……熱くなってきました」
「当然だ。お前の身体が呼んだのだ」
事実、密着しているだけで蒸気を感じる。
汗腺から滲み出た塩味のある雫と
我慢汁が混ざり天然の潤滑油ができあがる。
ルーナは右掌で根本を抑えながら左掌を添え胸を上下させる。
ぬちゅ ぬちゅ……
乳輪に当たる亀頭が湿った音を立て
鼓膜に粟立つような刺激を与えた。
「すごい脈動ですね」
「口で言わなくていい」
焦れる余裕はない。
だが彼女は敢えて揶揄するように笑みを作る。
「じゃあ……こうしましょう」
ぐいっ──
突然V字を描くように乳房を左右から圧迫。
陰茎は完全に見えなくなった。
(完全埋没パイズリ……!)
俗世で流行る言葉が頭に浮かんだ瞬間
肉竿が粘液で覆われた脂肪塊に揉みくだされる。
「むにゅ……むにゅ……」
擬音さえ聞こえそうな程の柔らかさ。
しかもその摩擦が持続的だ。
「ウィレム様のお好きな“乳穴”をご用意しました」
囁く声は蜜を含んでいる。
確かに亀頭の頂に乳房の合間から小さな凹凸が当たり
ちょうどカリ首を捏ねるように刺激を加えていた。
「……っ」
喉奥で低く唸る。
怒張が危うく暴発しそうになるのを歯噛みして堪える。
(このメス奴隷は本気だ)
自分が施した教育が芽を結んだわけだが
結果として男側が追い詰められている。
ルーナは察したように動きを変えた。
今度は両手で左右の乳球を交互に捻る。
中央部で渦ができるイメージ。
粘液は攪拌され白濁した斑模様を浮かべながら
ぬらぁ……
谷間の外側に滲み出していく。
「このような技は……どこで」
咄嗟に出た問い。
答えは即座に返ってきた。
「伯爵様に、三人纏めて仕込まれました」
冗談めいた報告口調。
ウィレムは怒りとも呆れとも違う
奇妙な嫉妬を覚えずにはいられなかった。
「負けは認めよう」
と彼は息を荒げながら宣告する。
「だが代金はいただく」
双つの丘を押し返す形で
肉杭を根元から突き上げた。
ずぶりっ!
乳腺と乳脂がぶつかり合い
乳圧が一斉に襲い来る。
「あッ……!」
ルーナの声が跳ねる。
それでも胸部は離れずむしろ更に拘束を強めた。
(捕食されてるのはどっちだ)
半ば自嘲気味に思案する間に
鈴口に熱い電流が走る。
どくん……
我慢の糸が切れると同時に
ビュッ──!!
大量の白濁が噴出した。
濃密な液は谷間から噴き上がり
彼女の顎をも通り越して空中に散る。
「きゃっ!」
慌てて目を瞑る少女の表情すら可愛らしい。
飛び散った飛沫は胸の曲線に沿って滴り落ち
再び天然のローションへ戻る。
(終わったと思ったか?)
彼は尚も硬度を保ったまま
もう一度胸の奥深くへ先端を埋めた。
「……もう一度、だ」
命令というより懇願に近い声音。
ルーナは睫毛を震わせながらも頷く。
「承知いたしました。今度は……私の番ですから」
妖しく笑うと
両乳房をクロスさせる形で捩じる。
ぐりゅ ぐりゅ
捻転が亀頭に螺旋状の刺激を与え
粘液は次第に泡立ち始めた。
「う……」
「もうちょっと頑張れますよね?」
優しく促すような言い方が却って屈辱的だった。
(いいだろう)
ウィレムは唇を歪め
「続けろ」
と囁いた。
パイズリという名の小さな淫獄は
夜明け前の時を忘れたように延々と続く──―。
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