虹のエロフェスタ ~公とEと笹~ 作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)
……予定していたセリフも全て読み終わり、うちは完璧な収録を終えた。
我ながら、イイ音声と快感が録れたんじゃないかと思う。椎名の感覚が、常人の男と大きくズレていなければの話だが。
鈴口から飛び散った大量の精液は、ヨーグルトの容器をひっくり返したかのように床を白く汚し、部屋に塩素みたいなニオイを漂わせていた。
それでも握っていたペニスは、まだ生々しい硬さを残しており……『さすがはツクリモノだ』と思えるほどだった。これが本物の男だったら……何ヶ月もオナ禁とかをしていたのかもしれない、そんなレベルの絶倫具合だろう。とてもおそろしいと思います。
「ふぅ……おしごと、かんりょー。椎名ー、これでええんよな?」
――……その、はず…………あっ、やば、漏れる……! ちょ、ちょっと……ごめん、席外すわ……! 笹木も、もう帰ってええからな……!
「はぁ~!? いや、勝手すぎる――おい、マイク外した音も入ってるって!! ちょっと!?これマジで終わりなんか!?」
うちが何を聞いても、返事がくることはなかった。音と感覚の収録を終えたスタジオには――うちひとりが取り残された。
「…………おーい、〝ゆいか〟~。うち、まだ待っとるんやけど~?どうすればええの~?」
…………黒歴史をほじくり返しても応答はない。あのやろー、ホントに席を外したらしい。相変わらずとんでもないヤツだ!ゆるせん!
……まあ、ね。あいつのクズさと相容れなさはわかっとりますよ。水族館でデートするってなってさぁ、あいつ、寝坊して来なかったうえに『水族館〝なんか〟また行けばええやん』って言える女やよ……? いやお前、そういう問題じゃねーだろって……。
好きなモンぞんざいに扱われて、『水族館行くぞ~!』ってわくわくな気持ちを共有できんで……そりゃあ誰でも冷めるし別れたくなるやろ……。うちらの、はじめての水族館デートやったのに……。
でもな~、椎名は絶対に軽く思ってんよな~……しかも何故かうちに未練たらたらやし……なんやねん! セフレとか要らんから! そういう軽い人とはね、うちは将来とか考えられませんから。
『……お願いやって、咲ちゃん……最後に、もっかいだけでええから……! あたしのこと、もう好きじゃなくていいから……!』
……そうやってさぁ……ズルズルと引きずり込もうとするの卑怯やと思いますよ、うち。それに応えてしまう自分も『よくない』ってわかりますけどね。
2年前に公式番組が始まって、多忙になってからは断れるようになったけど……マジで爛れた生活を送っていたからな、あの頃……。
あんまり思い出したくないけども……椎名がクスリ使って生やすチ×ポは、感度高いクセにカタチと硬さがイイから……まあ、その……そういうことで……。
おっぱいもやわっこいし、声もかわいいし……ノンケの女をレズなメスに堕とす、不思議な妖力があるんやと思う……チ×ポのおばけにでも憑依されとるんちゃうかな……?
……ま、それはそれでええとして……ですね……。この、耳舐めと手コキで勘違いしてしまった……身体のアツさを、どうしてくれようか。
今ならゆいかのチ×ポを性処理の道具みたいに使ってやってもいいのに、肝心の本人が居ない。いっつもこうなんよな……相性は悪くないけど、なんか一生噛み合わん感じが拭えないんだ……あいつは……。
「……っ……♡ でも……ちょうどヨさそうなのが、目の前にあるんよな……はぁ……♡」
2時間も時間をかけて、耳とチ×ポを汁だくにした人形くんがまだそこに居る。さっきまで、こいつに恥ずかしい思いをさせられていたのだから……ちょっとぐらい、見返りをもらってもバチは当たらないだろう。
うちは火照った身体から熱を逃がすように、シャツの前を開いてブラを脱ぐ。汗ばんだ肌を晒して、パンツも下ろしたのに……涼しくなるどころか、余計に熱く湿ってきた身体を、マネキンもどきの膝に乗せた。
「……ふぅ……ん、んっ……♡ お前のせいで……このアホみたいにイイ身体のせいで……うち、こんなになったんやからな……! ちゃんと責任、取れや……っ……♡」
誰も見てない。あいつそっくりだけど、本人じゃない。だから……こんなに、思いきったこともできてしまう。
ヤケになって抱きついた身体はツクリモノのはずなのに、なぜか安心する包容力を感じた。厚い胸板も、ガッチリしすぎている肩も……全部が、あの憎らしい男と同じぐらいの頼もしさを有していた。
胸に指を滑らせ、聞こえない鼓動に虚しさと安堵を覚える。お姫様抱っこをしてくれたら、しっかり支えてくれそうな腕の太さを確かめると胸がキュンとする。
自分のナカに入ってきたら、破裂してしまいそうなほどに膨らんだ陰茎に……どうしようもなく、スキモノみたいに……ドキドキ、バクバクとしてしまう。
きっと、耳舐めとか手コキとか……ふざけたコトをさせられたせいだろう。そうじゃなきゃ、この昂りと焦燥に似た疼きに説明がつかないから。
でも、今なら大丈夫。こんな恥ずかしい行為でも、誰にも咎められず、ネタにもされないはず。こんなの、自室でオナニーをしているのと何も変わらない――ただ、いつもより……感度が上がって、我を忘れてしまえるだけ……お人形に頬ずりをして、ぐるぐるとした気持ちを吐き出せるだけだ……。
「……はぁ……大変だった……。もう、思い出したくないぐらいに……大変だったのに……なんで、うちは……」
ずっと続けてきた、二人でMCを務めていた番組が終わった。体力的なキツさもあったし、ようやく終わってくれたことは素直に嬉しかった……スケジュール的にはかなりカツカツで、常にケツカッチンの状態だったんで、つつがなく終われたことには借金完済の目途が経ったときレベルの安堵を感じたものだ。
……そのはずなのに。きっつい収録が終わったら終わったで、どこか物足りない毎日が始まった。
長距離の移動もなくなったし、前泊もしなくてよくなった。自由に使える時間が増えた。好きなことをできるようになった。
……それでも、〝何か〟を奪われたような……底知れない虚無感が、うちの心にぽっかりと穴を開けていた。
その不満の正体を掴めないまま、番組の主要メンバーで集まる機会があって……久しぶりに、満ち足りた時間を感じることができた。
そのとき、なんとなく……本当になんとなく……やしきずの声を聞いて感じた胸の痛みが、その虚無を埋めてくれたような気がした。
……いやいや。うちはアホか? あのやしきずに……そんなこと、あるか……?
あいつは筋金入りのオタクだし、すぐ人を煽ってくるし、子供っぽい……けど……優しくて、頼りがいがある……。そういう男だということは、うちでもわかる。
長い間、収録で顔を合わせていたから、その人間性と人望の理由は察せられる。気遣いもできるし、細かな配慮も忘れない。それに、与えられた仕事をしっかりとやり遂げる。
社会人としては、それが当たり前なんかもしれんけど……あんなにも真摯に実行されたら、さすがに……まあ……誰からでも、カッコよく見えるんちゃいますかね……。
うち自身も……なんというか、〝兄〟みたいな……そんな感じの安心感は、近くでずっと感じていた。
収録でも……うちがミスったときはフォローしてくれるし、体調が悪いときには何も言っていないのに察してくれて、いつも以上の馬力で現場を回してくれていた。
コラボで配信をしていたときから感じていたことやけど……あいつは、『他人を楽しませること』すらも自分で楽しめるタイプの男なのだ。
みんなが求めている笹木咲として……リスナーを楽しませて、満足させることに必死になっているうちとは違う。やしきずの評価は、やしきずが楽しませて、一緒に楽しんできた人たちによる根強いものだと思う。
うちにはないものを持っている。うちができないことをやってのけている。それでも、覚えるのは嫉妬ではなくて……ひねくれたうちの心には爽やかすぎる、きらきらとした憧れぐらいのものだった。
――もしも――やしきずが楽しくさせようとする相手が、うちだけになったとしたら。そのとき、どれぐらいの楽しさを共有できるのだろう?
いつの間にか――そんな、しょうもないことを考えるようになっていた。
……あれは、いつのことだったか忘れたけど……収録の休憩中に、やしきずがなんかのオマケらしいウエハースをサクサクと食べていた。
「なんでそんなん食ってんの?」と聞くと、『カードのオマケが余りまくってるんだ』とあいつは答えた。
「弁当作ってくれる彼女とかおらんの?」と煽ると、『いるわけねーだろ』と怒りもせずに返答してきた。
そのオトナな対応が気に入らなくて……「オタク君、かわいそうだから……うちが付き合ってあげようか?」って、バカにするように言ってやった。
そしたら、あいつは――。
『……はは……気持ちだけ受け取っとくよ。いつもありがとな、笹木』
――……なんやねん、それ。それでも配信者かお前。
おもんな。つまんな。キモい。きしょくわるっ。ホンマにオタクやなこいつ! しょーもなっ!!
……………………小粋でオモロい返しとか、いかにもオタクっぽい反応とか……もっと、何かあったやろ。
なあ……ほかに、あったんちゃうの……? 気が利いて、口も回るやしきずなら……思い付いたことも、あったんやろ……?
……なんで、いっつもネタにしてるようなことを……笑いもせず、否定もせず……素直に返してくるねん。
急にそんな反応されたから……うちも「え? あ、おぉ……そうか……」とか言って、アホみたいな顔を晒して押し黙ることしかできんかったやないか……!
……あの気まずすぎる休憩時間が明けて、さっきまでの空気がウソみたいに思えるほどに明るい収録が終わって……夜に布団をかぶっても、心に刺さったモヤモヤのトゲが消えることはなかった。
あれから、うちは……おかしくなってしまったのだと思う。やしきずの隣に立つことが嬉しくなって……言葉を交わすだけで、気分が明るくなって、身体と心が元気さを取り戻すように改造されてしまったのだ。
……全部……全部、あいつが悪いんだ。
「……やし、きず……っ……♡」
……ほら、おかしい。その名前を口にしただけで……胸がうざったらしく疼いて、甘酸っぱい感情が全身に広がって……抑えきれない、謎の身震いに苛まれる。
切なくて、涙が目元に滲んで……身体中に溢れていた情欲が、やしきずの声を頭の中で響かせる。ちょっとニチャニチャしているクセに、ちゃんと何を言っているのか伝わらせてくる……忘れられない声が、うちの頭から消えてくれない。
下腹部にもどかしい刺激が走って……とろり、と溢れた粘り気のある花蜜で、跳ね回るペニスに自分の香りを擦り付ける。タコの体表みたいにヌルヌルになっためしべが、やしきずの肉槍にまとわりついて……離ればなれになっていたものを、ひとつにできたような気がした。
無我夢中になって、ツクリモノの男根に気持ちいいところを擦らせる。ちゅぷちゅぷとはしたない音を響かせて、ギシギシと椅子を軋ませて……全身をぶつけるように、オモチャとまぐわい続けた。
「はぁっ……♡ あ、ぁああっ……♡ 意外と、ええモン持っとるやないか……っ……♡ オタクのクセにっ……ふっ……♡ふぅっ……♡ なっ……あっ……♡なまいき、なぁっ……♡」
黒光りする胸板を叩いて、快楽でフニャフニャになった身体を預ける。首に抱きついて、ほっぺたをうりうりと擦り付けて……アホみたいな顔と吐息を晒して、感情が見えにくい双眸を覗き込む。
本人を前にしていたら、こんなトチ狂ったことはできないだろう。そっくりの人形だから……誰にも見られていない、今だから……心の外に出しちゃいけないはずの想いが溢れ出す。
「……へへ……♡ 普段、死んだ魚みたいな目ぇしてんのに……ふ、くぅっ……♡ テンション上がると……キラキラって、子供みたいに光って……かわいい……んよな……♡」
イケメンというよりも、オトナな雰囲気で整っている顔立ち。落ち着きがあって、抜けきらない疲れがあって……だからこそ、たまに見せる笑顔がとても魅力的に見える。
「……せっかく、うちを抱いてんのに……っ……♡ もっと嬉しそうにしろっ……このっ……ん、くっ……♡」
深くまで繋がっている腰を揺らしながら、カチコチに凝ったほっぺたをグイグイと伸ばす。硬いのに頑張ったら綻びそうな、不思議な感触と戯れながら……逆に、うちがちょっと笑ってしまった。
さっきまで舐めていたせいで濡れている耳をグリグリと揉んで、おでこを突き合わせる。すぐ近くに……目の前に、どこか遠く感じていたはずの顔があって、ほっぺたがバグったみたいに熱くなった。
「……く、ぅうっ……んっ♡ん、ぅっ……♡ やしきず……ん、んむぅ……っ……♡ ちゅっ……くぴ……っ……♡」
緊張しているように結ばれた唇に、自分の濡れた花びらを吸い寄せる。虚しいはずなのに、どこか心を埋めてくれるような温もりを感じるキスが、うちの心を惑わせた。
ガッチリとした肩幅が、うちの体重を全部支えてくれるから……全部をぶつけるように腰を動かせる。繋がった部分で、今まで抱えていたモヤモヤを突き崩してもらうように……やしきずのペニスに、一番深いトコロを小突かせた。
「あっ……あっ……♡ やしきずっ……やしきずっ……♡ うち、もう……もたん、から……♡ お願い……一緒に……ん、んっ……♡」
理性がなくなりかける、まどろみのような世界の中で。目の前に居る人形が、ホンモノにしか思えないぐらいに、頭がぐちゃぐちゃになっていく。
他の何もかもを捨ててもいいから、こうして触れ合う者だけを選ぶように抱き締める。いつもみたいにうちのことを虐めてくる、素敵でオトナな社畜と――強まっていく鼓動を重ねて――ひとつに融け合えるように、まぶたの裏でパチパチと散る星に祈りを捧げた。
「イくっ……ぅうっ……♡ やし……きずっ……♡ うち……うちっ……もぉ、イっちゃ――あっ♡だめ……!♡ きっ、きず……くっ――あっ♡ああっ――あぁあああああああっ……!!」
身体がどこかに飛んでしまいそうな浮遊感に包まれても――やじきずは、うちを支えてくれていた。
ガクガクと全身を痙攣させて、最奥で熱いものを注いでくる男根に絶頂の快感を教え込まされて……うちは、何ヶ月ぶりかの多幸感を味わっていた。
胎内に入ってこようとして、お腹が張るぐらいに吐き出される精液の圧を感じながら。びゅくびゅくと力なく絶頂に震える脈動と、自分の心音をできるだけ近づけていく。
「はぁっ……はぁーっ……♡ やし、きず……ん、んっ……♡ はぅ……むぅっ……♡ ん、ちゅる……ふぅっ……♡」
その唇に吸い寄せられるように接吻を交わして、やしきずの想いを感じ取ろうとして――これが、人形であることを思い出す。
うちは、虚しすぎる夢の終わりと絶頂の余韻に浸りながら……自分の中で渦巻いていた想いを吐き出して、すっきりとした心の清々しさの中に……自分の中で膨らんだ、欲張りな気持ちにヘキエキとするのだった。