※この作品はR-18です。

Rationalis Platinum   作:TSれメロス

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II. / Eram quod es: sum quod eris.

 

 

 

 

         < 6 >

 

 

 

―――ミルクのようにふわふわと蕩けたままの曖昧な意識から、急浮上する。

さっきまで……その、なんというか、男(・)の(・)子(・)の(・)一(・)物(・)を俺は自(・)ら(・)口(・)に(・)し(・)て(・)い(・)た(・)わけだが。

“自覚”しただけでか(・)あ(・)っ(・)と顔面が焼けるような赤熱に染まる。でもいまはそれどころじゃない。

気付けばどこまでも真っ白な、明らかに先刻の寝室ではないどこかに俺はいた。

しかも服(・)を(・)着(・)て(・)い(・)な(・)い(・)全裸のおまけつきで。ここは一体どこだというのか。

 

「―――“おんなのこになる”のが、そんなに怖かった?」

 

誰もいなかったはずの背後から、鈴を転がしたように透き通る声を掛けられる。

振り返ればそこにいたのは―――ゴシックドレスに身を包み、透き通るような長い銀髪、闇の中でも見通せそうな爛々と輝く真紅の眼。

……居間の大鏡で見た自分の姿そのままの少女が、鏡から抜け出してきたかのように純白の虚空へ佇んでいた。

 

「君は―――誰? まさか、俺の中の『魔女』の残滓?」

「そうだと言おうと思えばそう言えなくもないけど、厳密にはもう違うわね」

 

返って来るのははぐらかすような、面白がっているような、中身のない持って回った形容の言葉。しかし俺には“なぜか”彼女が虚偽を口にしていないだろうという根拠なき確信があった。……なぜかは皆目見当がつかない。

 

「どういうことだ?」

「―――『テセウスの舟』って知ってる? あなたの魂には多分な(・)い(・)知識だと思うけども」

 

名前だけは聞いたことがある、ような……わからない。視線で彼女を見やって続きを促した。

 

「船ってたくさんのパーツからできてるでしょ? でも使っていれば所々壊れて行って、パーツを交換しなければいけなくなる。

 そしてこれを繰り返していくと、船を造った時の最(・)初(・)か(・)ら(・)あ(・)っ(・)た(・)パーツは一つもなくなってしまう。

 でも船は問題なく、作った時の最初とま(・)っ(・)た(・)く(・)同(・)じ(・)よ(・)う(・)に(・)動(・)く(・)の。

 じゃあ、この船は最初の船と同(・)じ(・)かしら。それとも違(・)う(・)のかしら。ねぇ、あなたはどっちだと思う?」

「……同一性の、問題?」

 

俺の口からは呻くような自問自答が零れた。なにか―――今、ろくでもないことを言われて、そして俺も、ろくでもないことを気づかされそうになっているような。正体のわからない焦燥感。喉元の奥から得体の知れないなにかが、ゆっくりと口中にせり出してくるようなおぞましい感覚があった。

目の前の彼女が、紅玉の双眸を窄めて静かにこちらを睨(ね)め付けてきている。これは―――ああ、これは―――“捕食者の目”だ。

 

「『私』はかつて『魔女』でもあった。でも今は違う・・の。……なら何(・)だと思う?」

「―――ひっ」

 

思わずたじろいて後退しようとするが、足が地面(と言っていいのか)にぴたりと張り付いて動けない。

そして俺が動けないのに、彼女はそんな制約など一切無いように、平然と歩みを進めてくる。

 

「ここはあなたの心の中。そして私の中。私とあなただけの世界。私とあなたの全て」

 

こちらが下がれない以上、距離はあっと言う間にゼロとなり、俺の視界が彼女の怪しく紅潮した顔で占有される。徐(おもむろ)にそっと彼女の両手が俺の頬へと添えられ、そこから当たり前のように―――顔を近づけられて、更に唇をぴったりと重ねられた。

口紅同士が触れあった箇所から、じんわりと甘い痺れが生じて、俺の頭と体が言うことを効かなくなっていく。

脱力してくたりと女の子座りになった俺と、彼女は同じ目線にまで腰を下ろしてきて、慈悲深く酷薄に囁いた。

 

「あなたにいっぱい教えてあげる―――私の全てを。あなたが私であることを。……初めから私でしかないということを、ね」

 

 

 

 

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「んんっ、むぐっ!? ううんっ、ひぃっ、はぁっ!」

「じゅぷっ、ふうっ……あはっ、すごい乱れ方するのねあなた。まだキスだけしかしてないのに」

 

腰の括(くび)れから彼女の腕を背に回され、抱きしめられて、口唇を貪られている。

吸い付かれ、吸い出され、舌で外と中を丁寧に余す処なくなぞられ、俺の舌まで絡め取られて愛撫を受ける。

粘膜同士で触れ合う度に“なにか”が俺の中へとしみ込んで来て、さらに肉体の感度が上がる。

躯(からだ)だけではなく心にも、睦事を経る度に“なにか”を与えられて、俺が俺でなくなっていくような錯覚を覚える。

そして、責めはそれだけにとどまらない。

 

「すごいわよね、この胸。大き過ぎず、小さ過ぎなくて。しかも釣鐘型の、重力に全然負けてない。本当いやらしい」

「ひぅっ!? だ、だめ、そこ、感じすぎるから―――ああああっ!?」

「ほら、指が全然抵抗なく沈むでしょ? かと思えば強く弾き返してもきて、幾らでも触っていられる揉み心地なの」

「やめてっ、揉まないでっ、あたまとむね、ち(・)か(・)ち(・)か(・)するの。おかしくなるっ!」

「ふふふ、じゃあ揉むのはやめるわ。……代わりにこ(・)っ(・)ち(・)をきもちよくしてあげる」

 

彼女は“ぴんっ”とデコピンの要領で、軽く胸の先端―――乳首を弾いた。

たったそれだけで意識が文字通り、一瞬だけ完全に「飛んだ」。そして自我が戻って来れば、屹立する乳頭からは思い出したように爆発的な“きもちいい”が全身に逆流していく。

彼女から抱き竦められているせいで、四肢を暴れさせて逃れることもできず、甘い熱の暴虐を最大限に堪能「させられる」。

 

快楽に脳全体を灼かれながらも、漸く自覚が及んできた。“この身体”はおかしい。あまりに、あまりにも感(・)じ(・)過(・)ぎ(・)る(・)。

そんな俺の思考を見通したかのように、彼女は妖艶に嗤いながら言の葉を紡いだ。

 

「『魔女』は“完璧な肉体”を作ったの。朽ちないし、変わらないし、底がないし、飽きないこの体を。でもね、完璧な肉体っていうのはそれだけじゃダメなの。肉体を使うに足る“魂”が必要になる」

「たま、しい……?」

「高級車だって運転の素人が乗れば、目も当てられない惨状になるでしょ? それと同じ。

 でも“完璧な肉体”は、“本当に完璧”だからそう呼ばれるの。『使い手を選ぶ』なんて欠点は万に一つも“あってはならない”。……では、どうすればいいか」

 

そう言いながら彼女は前触れなく、俺の双丘の頂点へと二本指をそれぞれ宛がい―――そこから容赦なく“挟み潰された”。俺の意識が粉々に消し飛び、取り戻され、また吹き飛ぶ刹那でありながら快楽の無間地獄に囚われていく。もうなにかを考える余裕なんてないのに、しかし彼女の言葉だけはあらゆる障害を無視して俺の耳を潜り抜けていく。

 

「使い手が誰であれ何であれ。無能であれ有能であれ。等しく完(・)璧(・)に(・)し(・)て(・)し(・)ま(・)え(・)ば(・)い(・)い(・)。

 自転車の乗り方を学ぶのだって補助輪を付けて行うでしょ? だ(・)か(・)ら(・)、あ(・)な(・)た(・)が(・)私(・)に(・)な(・)る(・)の(・)も(・)同(・)じ(・)こ(・)と(・)な(・)の(・)」

 

 

 

 

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“くりゅくりゅ”と挟んだ乳首を捩じるように刺激したかと思えば、今度は掌で胸の中へ押し込むように埋没させられる。

許容外の快楽に「ぃあああぁぁっ……!?」と俺は激しく背を仰け反らせたが、そんなことはお構いなしに彼女は俺の乳頭を口に含み、転がして来る。

舌で“くるくる”と敏感な神経細胞の塊を包み込まれ、立てた剣歯の甘噛みで痛苦にならないギリギリの法悦を咥(・)え(・)られ、昂奮に屹立する突起へ雨のようなバードキスを降らせられる。

そこから指で垂直に乳首の長さを「引き伸ば」されたところへ“ふうううっ”と息を吹きかけられる。ぞくぞくと脳の脆弱な箇所が震えて悶えるのを感じた。

……抵抗しなければならないのに、俺の中で膨らみつつある“何か”がその全てに待ったをかけている。心に浮かべかけた抗うための発想の一切が、明確に言語化される前に霧散して意識の外へ放逐されてしまう。

 

「『チート転生』って言うのかしら? 前の“私だった”魔女は、そういう力を持ってたの。名前は『錬金術』って言うらしいわね。

 “ポイント”を一杯使って、その中にあった一番取るのが難しい『黄金比錬成』っていうものを“前の私”は獲得して、使ったの。

 そしてその力で、“普通の絶世美女”ぐらいではあった自分の身体を“私”に再錬成したの」

 

彼女の左手は俺のうなじに、右手は聳え立つ俺の胸の中間へと当てられて、ゆっくりと指で躯をなぞりながら下方へと垂直に降ろされていく。指が触れて通過した箇所が、火を入れたように感度を上げて熱を持ち、かすかな体の揺れにさえ反応して“びくん”と歓喜の電流を脳に伝えてくる。

そして、左の腕は俺の膨らんだ臀部へ。右の腕は下腹の丹田―――その丁度奥に、子を為すための中枢機関がある場所でぴたりと動きを止めた。

“ぐっ”と彼女の右掌が俺の臍と女門の中間あたりを押し込んでくる。思わず身構えたもののこれまでと違い、直接的な快楽は(・)なかった。……あるいは、それがあった方がま(・)だ(・)よ(・)か(・)っ(・)た(・)のかもしれない。

触れられるのと同時。“きゅううううっ”と、奥(・)が強烈に疼くのを感じた。散々に開発され、焦らされた俺の全身の渇望が、女を象徴する魂の櫃の一点へと収束していく。

……これまで具体的な状態の思考をせず、意(・)識(・)か(・)ら(・)外(・)し(・)て(・)い(・)た(・)女性器部分―――俺の秘裂が、なにかを訴えるかのように蠢きながら、独りでに“くぱぁっ”と開(・)き(・)、と(・)ろ(・)ぉ(・)り(・)と欲望の雫を際限なく生み出し始めた現実。それを下腹が膨大な熱を発し始めたことで、是が非でも直視させられる。

 

「“前の私”はとてもよく私になってくれていたわ。でも足りなかったの。

 女の私だけじゃなくて、男(・)の(・)私(・)も同時になければ私(・)は(・)完(・)璧(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)ことに気づいた。

 だから私は私を完璧にするために求めたの。欠落していた、男の私になってくれるあ(・)な(・)た(・)を(・)」

 

艶尻の膨らみに回されていた彼女の左手が、五指を鉤型に曲げて、やわやわと俺の双臀を揉み拉(しだ)きはじめる。身体は明らかにそ(・)こ(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)と訴えていたのに、ここへ来て彼女は敢えて快楽の薄(・)い(・)殿部ばかりを攻撃し始めていた。その狙いは明白もいいところだったが、どんどん俺の股で膨張していく疼(・)き(・)は許容外の量へ近づいていく。

……気が付けば俺は何かを強請(ねだ)るかのように、溢れた淫蜜でしとどに爛れる左右の太腿の根元を、自分でさえ気付かぬままに端(はした)も無く擦り合わせていた。肌そのものの感度が異様に高い所為で、愛液で濡れて摩(す)れるだけでもナカが焦れるような熱情を感じてしまう。

 

「ふふっ、ちゃんと私の自覚ができてくれてるね? す(・)っ(・)ご(・)く(・)ほ(・)し(・)い(・)で(・)し(・)ょ(・)、お(・)と(・)こ(・)の(・)こ(・)の(・)お(・)ち(・)ん(・)ち(・)ん(・)」

「ち、違う。そんなのいらないっ……!」

「ふーん? じ(・)ゃ(・)あ(・)試(・)し(・)て(・)み(・)る(・)?」

 

そう言うや否や、彼女は自分のショーツの中に手を入れて、何(・)か(・)を指先で摘まんだ。

「「んっ」」と小さな喘ぎが、彼女と(・)な(・)ぜ(・)か(・)俺(・)の(・)方(・)か(・)ら(・)も(・)零(・)れ(・)る(・)。俺(・)の(・)体(・)は、びしょびしょに濡れた女性器の上部で震える、敏感な吉舌―――クリトリスに触れられてい(・)な(・)い(・)はずなのに、突起に二指を宛がわれる触感の(・)み(・)を伝えてきた。

そして、その感覚が急速に焼けるような熱を発して、延直線状に爆発して。

 

「「んんんんんっ!? あっ、んっ、あはああああああああっ!!」」

 

堪え切れない解(・)放(・)感(・)に促されて、俺は彼女と共に艶めいた矯声を上げていた。

び(・)ゅ(・)る(・)り(・)と覚えのある、けれどお(・)ぞ(・)ま(・)し(・)い(・)触感と共に、彼女の下着の中からはぬ(・)る(・)ぬ(・)る(・)と(・)先(・)端(・)か(・)ら(・)粘(・)液(・)を(・)零(・)す(・)肉(・)棒(・)が現れて存在を主張していた。

あれは……あれは……男にしかないものだ。男(・)性(・)器(・)、ペ(・)ニ(・)ス(・)だ。頭の理解が追い付かない。

 

フリーズして反応できない俺とは対照的に、彼女は当然のようにその醜悪な直立を怒(いか)らせながら近づいてきて。

―――俺の目の前へと、今にも暴発しそうに“びくんびくん”と律動する陰茎が突き出された。

直視に耐えない穢らわしい怒張のはずなのに。何故かそ(・)れ(・)から目が離せない。喉がからからに干上がって、白痴のように口の端から涎が溢れ、舐(ねぶ)るように先端を揺らす舌が唇の間から伸び出ていく。

 

「“舐(・)め(・)”ないの? ほ(・)し(・)い(・)ん(・)で(・)し(・)ょ(・)う(・)?」

「……だ、れが」

「だって今のあなた、す(・)ご(・)い(・)こ(・)と(・)になってるわよ?」

 

淫らに哂う彼女が指さしたその先には、見覚えのある姿見が。

そして其処へ映っている俺の様相は―――

 

 

「――――――、ぁ」

 

ぴかぴかでつるつるでつやつや。わたしのおきにいり。

細く長い銀髪は嫣然(えんぜん)と煌き、けれど汗や愛液を吸って身体へと絡み付いており、敢えて“隠す”ことで熟れた肉体の卑猥さを強調するかのような、無自覚の婀娜(あだ)めきに満ちた振る舞いを示し。

かがみでずっとながめてるだけであきないの。

ダークルビーの切れ長な双眸は情欲と落涙に爛れ、媚びるように諂(へつら)うように、それでいて奥底では獰猛で、嗜虐的な暗い女帝の気色を帯びて。

こんなさいぶまでわたしはかんぺきなのよ。

睫の毛は濡れ烏のように、角度に応じて美しく妖しく反光し。鼻先は高く細く歪みのない、何処までも整い切った形状を其処に留めて。

りっぷぐろすなんかいらないわ。

真紅に輝く唇は見る者の意識を吸い込むが如き、爛れた欲望の色香を燻らせ。それが弧を描いて下向きに三日月を作っている様には、男の劣情を煽るような妖艶さが纏わり付いており。

ふわふわでくにゅくにゅのむちむち。だいすき。

胸部に並び佇む突き出た双子の乳房は、一切の歪みなき完全な釣鐘型のシンメトリーを成立させ、剰(あまつさ)え重力を嘲笑うかの如く天へと牙を剥き、終わりなき反抗と情欲の意志を体現していて。

どんなにてあらにしてもこわれない、びんかんできもちいいところ。

先端の乳嘴は赤子のように澄んだ薄いピンク色を帯び、如何なる愛撫を受けようがそれを貪欲に飲み込む柔らかさと硬さ、そして敏感さを頂きより屹立して主張し続け。

すべすべで、さわってなでるだけできもちいい。

面皰も染みも何一つ見当たらない極上の珠肌は、底無しの発情を示すかのように薄朱色の熱量を、爪先から頭頂まで一部の淀みもなく湛え。

おとこのおちんちんをしこしこするのにぴったり。

手足はオトコへ奉仕するのに最適な長さと細さ、そして機能美を極めた左右計10本の完璧な形状の指を揃えていて。

せなかごしにかがみでみるとうっとりする。

腰のくびれは雄の欲望をくすぐるような無駄のない曲線美を描き、臀部の桃肉は健康的と挑発的が同居する妖しい膨らみと崩れの無い輪郭を実現し。

みてっ、みてっ、わたしをいっぱいみてっ

鼠蹊部も見ただけで陰所の実存を交尾対象へと強制的に想起させる、理想的な誘惑を行うかのような二条の美麗なカーヴを躰に刻んでいて。

でもやっぱり―――ここがいちばん。

そして、最奥の玉門へいたる女陰の口は、“とろとろ”になって歓喜の愛蜜を無尽蔵に零しながら、今か今かと番(つが)いを求めて“ひくひく”と交合の受け構えを見せていた。

もう、やせがまんしなくていいのよ。わたしがわたしにしてあげるから

 

 

ぴしり、と。

俺の心とか、魂とか、そういう決定的で、根本的で、致命的なところに、不可逆の亀裂が入ったような気がして。

そして。

その亀裂からは、熱くてつめたくて、黒くて白くて、澄んで淀んだ“私”が静かに、勢いよく染み込んでくるのを感じた。感じてしまった。

認識が、一部が、それでもゆっくりと、確実に“裏返って”いくのを自覚する。

目を閉じて耳を塞ぎ、全てを拒絶するように首を振って“私”を私の中からなんとか追い出そうとした。

 

「ちがうっ……! ちがうっ! 私はわたしじゃない! こんなの、おかしいの、私じゃない!」

「あら。俺(・)ってもう言わないの、私(・)?」

「あ……っ!? やだっ、『私』は―――なにこれ、なんで『私』って。駄目、『私』っ、いやぁっ! 『私』なのはだめ、なのに!」

「わからないなら“手取り足取り”教えてあげる。あ(・)な(・)た(・)が(・)私(・)で(・)あ(・)る(・)証(・)明(・)を(・)」

 

『私』は優しく手を私の瞼に触れて、壊れ物でも扱うかのように私の閉じた眼を丁寧に開かせてきた。

こじ開けられた視界に映ったのは、見せつけるかのように『私』の蜜壺の上端で存在を主張している欲棒。

再度、金縛りを受けたかの如く視線が釘付けになって、身動きがとれなくなる。

 

「私にこんなものがついているのは、あなたが“犯(・)さ(・)れ(・)た(・)い(・)”と望んだから。

 あなたがこれから目を離せないのは“欲(・)し(・)く(・)て(・)欲(・)し(・)く(・)て(・)し(・)か(・)た(・)が(・)な(・)い(・)”から。

 足が地に張り付いて動けなかったのも、『俺』なんかじゃなくて『私』としか言えなくなったのも、全部同じこと。だからアラーネは一貫して貴方を“主様(わたし)”と呼んでいたでしょう?

 そう―――私はずっと、ずぅっと、あなたが本(・)当(・)に(・)し(・)て(・)ほ(・)し(・)い(・)こ(・)と(・)だ(・)け(・)をあなたにしてあげていたの。あ(・)な(・)た(・)が(・)他(・)の(・)誰(・)で(・)も(・)な(・)く(・)、他(・)の(・)何(・)者(・)で(・)も(・)な(・)い(・)こ(・)の(・)私(・)だ(・)っ(・)た(・)か(・)ら(・)」

 

『私』がなにか言っているが、そのないようは半分も頭に入ってこない。

そ(・)ん(・)な(・)わ(・)か(・)り(・)き(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)より、今は何かべつのものがすごく欲しかった。

のどがかわく。しきゅうのおくが“ぐずぐず”して“きゅうきゅう”する。

 

「私はあなた。あなたは私。ここはあなたの心の中。躰である私の中。あなたと私の世界。私とあなたの全て」

 

おなかのしたの まんなかあたりが “かあああっ”と もえるように あつい

ほしい ほしい いますぐほしい したい ちょうだい たくさん いっぱい

 

「あなたがしてほしいことを全てしてあげる。あなたがなりたい私をいっぱい注ぎ込んであげる。

 私が何なのかを心の底から、魂の髄まで理解させてあげる。あ(・)な(・)た(・)を(・)完(・)全(・)に(・)私(・)に(・)し(・)て(・)あ(・)げ(・)る(・)。だから―――」

 

めのまえの“わたし”が うっとりとするえみをうかべて といかけてくる

わたし―――おれ? わたし? ど(・)っ(・)ち(・)だ(・)っ(・)た(・)っ(・)け(・)

 

「――――――ひとつになりましょう?」

 

そっか

わたしは おれだけど どうじにわたしだったんだ

なら いいよね

こころのそこから いっぱい きもちよくなっても

 

わたしは こくりと くびを たてにふりました

すると “わたし”はとってもうれしそうにわらって

おおきなおちんちんを わたしのとろとろになったおまんこに “ずぶり”といれてくれました

 

 

 

 

         < 9 >

 

 

 

…………甘く蕩け、茹っていた意識が覚(・)醒(・)する。

亀頭が“くちゅり”とわたしの陰唇に触れて、次の瞬間。

容赦なく最奥まで突き込まれた。

 

―――ずずずずずずっ、ずぶぶぶぶぶっ!!

 

「「んああああああああああああああああああああっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」」

 

―――びゅううううう、びゅるるるるるるるっ!!

 

わたしたちは同時に絶頂し、そして絶頂させられていた。わたしのなかに私が洪水のような勢いの白濁を流し込んでくるのが分かる。

完全にわたしたちがつながったからなのか、入(・)れ(・)る(・)感覚と入(・)れ(・)ら(・)れ(・)る(・)感覚が同じ部位に同居して快楽の永久機関を作り上げている。

同時に処女膜という名の、わたしの中に残っていた「俺」や「人間」の残滓が完全に貫かれて私の中へと四散するのを感じた。

知識としては一応あるが、根本的な「認識」としてはもう、人間だった頃の常識や価値観が遠い彼方にあるもののように思えてしまう。

 

一度放出したにも関わらず、わたしに挿入されていた私の陽根は萎えることなく。

「全然足りない」とでも言わんばかりに屹立の抽送を再開。“ぱんぱん”とわたしの秘壺を貪るように私が腰を振りたくり、恥も外聞もない動きでわたしへと打ち付けてくる。

“ずるり”と皮の剥けた私の花茎の先端は、硬質で敏感な肉槍として、突かれる側のわたしの玄室を、強烈な快楽で貫き穿つように何度も何度もノックしてくる。ポルチオを“ずりゅうっ”と抉られる度に子宮全体が歓喜に鳴動し、わたしが子を孕む「オンナ」という名の生物であることを、脳裏に再認識させてきた。

さらには“きゅうきゅう”とおちんちんをあらゆる角度から搾り上げるわたしの膣も、責めている私の余裕を容易く奪い去る極上の名器であり、同時に包んだ男根が擦れる度、責められるわたしの自我すら甘い熱で軋ませてくる双方向快楽機関であった。

そして、わたしの女陰の上端で“びくっびくんっ”と自分がオトコのペニスであるかのように誤認し、いきり立って主張する淫核は、私が怒張を打ち込む度に“こりゅっこりゅうっ”と容赦なくすり潰され、わたしの女性器でしかないことを理解し、媚びて燻ぶるようなオンナの官能電流をわたしの躰全域へ放出する。

端的に述べて、気持ちいい。ただひたすらに、きもちいい。

二度目の射精もさして時間は置かれなかった。私の鈴口より魂の御座全体を蹂躙する生命の濁流が爆発して、わたしのなかが、私から注ぎ込まれたわたしでいっぱいになる。

 

「あっ、もっと。もっとちょうだいっ! もっともっと私をわたしにしてっ! わたしをわたしでたくさん孕ませてぇっ!」

「わたしのなか、すごいぐちゃぐちゃのどろどろでしめつけてきてきもちいいのっ! たくさんたくさんずぼずぼしてせーしびゅーびゅーしてあげるっ!」

「ああああっ、くるっ、きちゃうのっ! いく、いく、いくいくいくいっちゃう、イクイクイクぅっ!」

「わたしもいっちゃうのぉ! わたしでいっちゃう、わたしでイクゥゥゥ!」

 

……気が付けば、服を着ていた方のわたしもいつの間にかその一切を脱ぎ去り、生まれたままの姿となってわたしに何度も犯されている。

なので途中からどちらがわたしで、どちらが私だったのかはもうわからなくなったし、どうでもよかった。

わたしがわたしと繋がるたび、わたしがわたしへと「純化」していくのを理解できる。

つまりどちらも結局はわたしなのだから、もはや区別する意味がなかった。

 

唇同士を交えて、お互いの口中を気が済むまで貪り合う。頭の中がピンク色に染まっていくように“しあわせ”で溢れた。

ぎゅうっと隙間無く抱きしめ合い、胸と胸を、乳首と乳首をぴったりと重ねて愛撫し合う。倍化して返って来る快楽に言葉にならない溜め息が漏れた。

空(・)い(・)て(・)いる方の淫裂や菊座に指を差し込み、粘膜をまさぐって“スイッチ”を探り、相互に刺激し合う。予想外の法悦にちかちかと思考が灼けた。

体位を変え、犯す側と犯される側を変え、何度も何度も射精し射精される。一度イッた“上限”が次にはもう“下限”になり、その繰り返しでわたしたちは、天井知らずに魂の階梯を駆け昇っていく。

 

どれだけ“媾(まぐわ)った”のかもわからなくなった頃に、ほんとうの意味での「限界」がやってきた。

わたしの意識が半分以上トんでいる中、その意識すらも塵一つ残さず焼尽させるような極大の白い波の奔流。

肉欲を果てなく貪り尽くした果てに訪れるそ(・)れ(・)が、ついにわたしのあたまの、おくのおくから、ゆっくりとゆっくりと招来されようとしていた。

快楽や恐怖を通り越して、自我が隅から隅までばらばらにされる予感に心が、体が、魂が震えた。

 

『わたしっ! わたしになるのっ! わたしイクッ、わたしでいっちゃうぅぅぅ!』

『くるっ、くるくるくるくるぅ! わたしのなかにわたしきちゃうっ! わたしでイクぅぅぅぅ!』

『イクッ!! ほんとにイクッ!! うぅぅぅぅう、あああああああぁぁぁぁぁっっっ!!』

 

さいごの射精をされたときに、わたしのいちばんおくで何かが何かに“つぷっ”ともぐりこむ確かな感覚があって。

わたしにまたがっているわたしが、しあわせそうなかおのまま、いとのきれたにんぎょうみたくわたしのうえへとたおれこんできて、

“とぷんっ”と、こーひーにみるくやさとうをやさしくおとしたときのように、わたしのからだがていこうなくわたしのなかにしずんでかさなってひとつになって、

いしきがあますところなくはじけてなにもかもがまっしろにまざってひかりのなかへときえていった―――

 

 

 

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