※この作品はR-18です。

淫蕩王ベルムハルト   作:ヒステリア

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第十六話 去る者達

 ヘンディガン西端にある都市。

 元は中立国の王都だったその街はヘンディガンに侵略され、シュトゥラ侵攻の前線基地に作り変えられてしまった。

 そして今、この街では……。

 

 

 

 

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「そこのおにいさ~ん♪ 『YARISUTE』に寄ってかな~い♪ こわ~いシュトゥラと戦ってくれる兵士さんは、タダでかわいい女の子とヤリ放題よ~♪」

 

 ある場所では乳房を丸出しにした売り子が客を呼び込み……

 

 

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「おー、タイプの子キタッ!」

「見えねえぞー! もっと股広げろーー!!」

 

 ある場所では乳房も陰部も剥き出しの踊り子によるショーが行われ……

 

 

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「待って……こんなところで――ああんっ!」

「そう言いながら自分から腰振ってんじゃねえか。本当は興奮してんだろう」

「街中の人が見てる……恥ずかしいけど気持ちいいいい!!」

 

 ある場所では兵士と遊女が公然と性行為におよび……

 

 

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「さあ、シュトゥラの森に住んでた猫女の生き残りだ! これを逃したら二度とお目にかかれないかもしれないよ!!」

「銀貨三枚!」

「五枚!」

「――なら俺は十枚だ!!」

「おおっ、十枚っ! これ以上出せる客はいないのかー!? いないなら銀貨十枚で決まりだー!!」

「やだ、こわいよ。クラウスさま、たすけて……」

 

 ある場所では森からさらわれてきた『魔女』が奴隷として売られ……

 

 

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『さあ、愛し合う二匹の交尾もクライマックス! そろそろ絶頂かーー!!』

「いやあ! こんな見世物みたいなところでさせられるなんて」

「はあ……はあ……ごめん。でも、こうしないと二人とも殺されてしまうんだ」

 

 ある場所では『魔女』同士が衆人の前で性行為を強いられ……

 

 

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「まったく、最近の女兵士は上官様への奉仕も満足にできんのか! もっと喉の奥まで咥えこまんか!!」

「んむううううぅぅっ!」

 

 街の片隅に建てられた砦では、女兵士が砦を治める将の慰み者にされていた。

 

 

 

 シュトゥラとの決戦を間近に控えた今、ベルムハルトは最前線となるこの街にほとんどの将兵を集め、街の各所に娯楽や風俗関連を主とする施設を建てさせ、兵達に思う存分それらを楽しむ事を許していた。

 相次ぐ戦と略奪で理性が緩みきった兵士達は当然のごとく目の前に落とされた餌に群がり、禁欲的な田舎町から徴兵されてきた新兵達も初めての刺激と快楽の虜となっていた。

 

 次に戦う国は純粋な軍事力なら大陸一の大国、シュトゥラ。そんな国と戦う兵に生きて帰れる保証などない。それを知っている兵の半分以上は頃合いを見てさっさと逃げ出すつもりだった。

 しかし、目の前の快楽に溺れていくうちにそんな事すっかり頭から抜け落ちてしまった。

 

 この『快楽の都』こそベルムハルトが設置した、忠誠心の浅い兵士達を戦まで閉じ込めておく“檻”なのである。

 

 

 

 その一方で、戦の気配が濃くなるこの地から遠ざかろうとする者もいた。

 

 

 

「妊娠だと?」

 

 机に肘を乗せ、頬杖をかいた姿勢でベルムハルトは聞き返す。彼の前でシャマルはこくりとうなずいた。彼女の隣には栗色髪の侍女が不安そうな顔をしながら立っていた。

 ベルムハルトは彼女に目をやり……。

 

「おい、本当か?」

「――っ、は、はい。一ヶ月前から気持ち悪くなることが何回もあって……今日それをシャマル様に見咎められて、シャマル様に勧められるまま診ていただいたら……」

 

 侍女はそこで言葉を飲み込む。隣ではシャマルが険しい顔のまま、主を見据えていた。

 間違いなくベルムハルトの子だろう。何度も彼女に相手をさせていた事は守護騎士達も知っているし、さっき彼女から聞いたところ、ベルムハルト以外の男と性行為をしたことはないとの事だった。

 ベルムハルトもそれは気づいてるはずだが……。

 

「で、妊娠したからどうした? 堕ろす手配でも頼みに来たのか。だったらそこのシャマルに言え。体調が落ち着くまでなら休みも認めてやる。それでいいだろう」

 

 ベルムハルトがそう吐き捨てると、シャマルは辛そうに侍女の方を見る。妊娠がわかった時から覚悟はしていた。彼ならそう命じるだろうと。彼女とてこんな形で身ごもった子供など――

 

「産みます! 私、この子を産むつもりです!」

「――!?」

「えっ――」

 

 侍女が放った言葉にシャマルは驚きの声を漏らし、ベルムハルトも頬杖を解きながら目を見開く。

 そして……

 

「本気か?」

 

 その短い問いに侍女――エマはうなずく。

 

「はい。故郷に帰って、そこで産みます――だから私にお暇をください! もうこのお城に来られなくなってもかまいません!」

 

 そう言って、エマはベルムハルトに頭を下げる。お腹をかばってるつもりなのか、彼女にしてはやや浅い角度で。

 突然の出来事にシャマルはせわしなくエマと主の間で視線を行き来させる。彼女の味方をするべきなのか、それとも主に命じられた通り、堕ろす準備をするべきなのか。

 しかし、肝心のベルムハルトははぁとため息をつき。

 

「――勝手にしろ。お前のような能無しメイド、いなくても困らんからな。……だが、一応けじめだけは取ってやる。馬車と退職金の用意をしてやるから、それまで部屋で待ってろ」

「えっ……」

 

 冷酷なはずの主の口から出てきたまさかの言葉に、シャマルは戸惑いの声を漏らす。一方、エマの方は驚きもせず。

 

「はい、ありがとうございますハルトさま。……それと、もう一つだけお願いしてもいいですか」

「なんだ?」

 

 ベルムハルトが聞き返すとエマはお腹を撫でながら言った。

 

「この子が生まれる九ヶ月後。それまでに戦が終わって、ハルトさまがご無事なら、一度だけこの子に会いに来てあげてくれませんか。昔、私たちが住んでいたあの町で……待ってますから」

「…………考えてやる」

 

 長い間を開けて放った言葉にエマは淡い笑みを浮かべ、もう一度だけ頭を下げてから部屋を後にしていった。

 シャマルは呆然と彼女が出て行った扉と主を見る。一方、ベルムハルトは不愉快そうにちっと舌打ちを鳴らすだけだった。

 

 

 

 ベルムハルトとエマは主と侍女であると同時に、小さい頃から故郷で一緒に過ごした幼なじみにあたる。

 今のベルムハルトからは想像もつかないが、かつては無邪気に彼女と遊んでいた時期があった。ハルトの母親の死を知った時は彼の分まで泣きわめき、その後はハルトを遊びに誘ったりして一生懸命慰めようとした。

 だがそれも空しく、父親に殺されかけたことでベルムハルトは権力の奪取とその拡大に燃えることになってしまうのだが。

 

 国を手に入れ、そこにあるものすべてを自由にできるようになった今のベルムハルトにとって、エマなど手慰みに弄ぶ女の一人に過ぎなかった。

 そんな彼女に最後の最後で情けをかけたのは、わずかに残った幼なじみへの情か、それとも――死期が迫っている事を感じ取ったからか。

 ベルムハルト本人にもわかりようがない。

 

 

 

 そしてもう一人、故郷に戻ろうとしている者がいた。

 

 

 

「オリヴィエ、本当に行かなければならないのか? 何もこんな時に……」

 

 城の前まで出ながら、クラウスは馬車に乗り込もうとするオリヴィエを引き留める言葉をかける。しかし、オリヴィエは淡い笑みを浮かべ。

 

「こんな時だからです。聖王陛下……お父様の葬儀に出なかったら、私や私を預かっているシュトゥラの心証が悪くなるかもしれません。それに私にとってたった一人の父との別れですから。どうか行かせてくれませんか」

 

 そう言って頭を下げるオリヴィエにクラウスは何も言えなくなる。実の父親の葬儀のためだ、平時であればクラウスの方から帰国を勧めるところだろう。

 だが今はヘンディガンとの戦が近づいている。それを前にあの国……ベルムハルトが何を仕掛けてくるか全くわからない状態だ。聖王の死だって、あの男が何か仕掛けたに違いないのだ。それを思うと、オリヴィエから目を離したくなかった。

 だが――。

 

「大丈夫です。僕がこの命に代えてでもヴィヴィ様をお守りしますから。殿下はシュトゥラを守る事だけを考えて」

 

 エレミアはそう言って拳を掲げる。確かに彼以上に心強い者はいない。だが、もし守護騎士と名乗る四人組やベルムハルト本人、そして『闇の書の意思』という女が襲ってきたら……。

 そう危惧するクラウスの前で、オリヴィエは彼の隣に顔を向けた。

 

「……フローラ、クラウスのことをよろしくお願いします」

 

 笑みを消し真面目な顔を向けるオリヴィエに、フローラは笑みを深くし……

 

「ええ、それが私の仕事ですから。オリヴィエ様とエレミア様、お付きの侍女様達もどうかお気をつけてくださいませ」

 

 彼女はそう言ってオリヴィエ達四人に対して頭を下げる。エレミア達は笑みを浮かべながら返事を返すものの、オリヴィエは強い目つきで彼女を見る。それにクラウスはわずかな違和感を覚えた。

 そこでオリヴィエは再びクラウスに顔を戻し。

 

「では行ってきます。クラウスもどうか気を付けて」

「ああ。君が帰ってくるまでにあの男、ベルムハルトを打ち倒してみせるよ」

 

 クラウスは不安を胸の奥に追いやり、頼もしそうな笑みと言葉を返してみせる。これ以上言ってもオリヴィエを止めることはできなそうだ。それに今のシュトゥラより聖王連合の方が安全かもしれない。あの男が放った刺客に気を付ければだが。

 

 そう言って送り出すクラウス達にオリヴィエはエレミア達とともにまた深く頭を下げ、馬車に乗り込んだ。“ある決意”を固めながら。

 

(ごめんなさいクラウス。もしかしたらこれが最後の別れになるかもしれません。ですが、ベルムハルトと『闇の書』、そしてベルカの戦乱を止めるには私(・)が(・)聖(・)王(・)に(・)な(・)る(・)しかないんです)

 

 

 

 そんな覚悟を胸に秘めたまま、オリヴィエはシュトゥラを後にした。次に彼女が戻ってくるのは、オリヴィエが『ゆりかごの聖王』となることが決まった後の事である。




おまけ:女兵士のその後


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「まともにフェラもできんような女兵などいらんわ。お前たちの好きにしろ」
「へへ、ゴチになります。そら、口を開けろ」
「待ってください! 今度はちゃんとご奉仕しますから――んんんん!!!」
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