淫蕩王ベルムハルト 作:ヒステリア
『征伐戦争』の後、王を討ち取られ敗戦したヘンディガン王国はシュトゥラ王国に降伏。その後間を置かずヘンディガンはシュトゥラの統治下におかれ、かの国に併合されることになった。
淫蕩王ベルムハルトの尻馬に乗って暴虐を働いていた将兵達は一人残らず捕らえられ、そのほとんどが裁判を経ずに順次処刑され、一部の後方兵や新兵は流刑地に送られ過酷な労役に服すことになった。
国内に残っていた諸侯達は進駐してきたシュトゥラ軍に尻尾を振り自らの地位保全を謀っていたが、シュトゥラ軍を歓待するための費用を賄うためさらなる徴税を行おうとしたことで、領民達の怒りがついに爆発。数千もの民達が一斉に蜂起し領主の屋敷を取り囲んだ。
シュトゥラ侵攻に多くの兵を供出した領主達に彼らを鎮圧する事などできず、シュトゥラ軍も彼らを助ける真似はしなかった。ある領主は民衆達の前に晒され減税や免税を迫られ、ある領主は屋敷に火を点けられ、ある領主は過激な私刑を受けた。
その結果、多くの地から領主や兵士達が姿を消し、当該地の治安回復のためと戦功の恩賞も兼ねてシュトゥラの代官や騎士が新たな領主に着任し、ヘンディガンの支配体制は根本から刷新されることとなった。
罰が下ったのは兵や貴族ばかりではない。ヘンディガンに住む民達もシュトゥラ兵から厳しい視線を向けられ、危害を受ける者も続出した。だが、平定までの間ヘンディガンに逗留していたシュトゥラ王クラウスや、彼の後を引き継いだ総督によってそれは禁じられた。
ヘンディガンの人間すべてが悪というわけではない。むしろ他国侵攻の度に膨大な食料や男手を供出させられていた民衆達も被害者と言えるだろう。それに国土の大部分が食料が育ちにくい寒冷地のシュトゥラにとって、温暖なヘンディガンは生産地として重要な拠点になりうる場所だ。現地民の反抗を煽る真似は避けたい。
そのような経緯や思惑も手伝って現地民への対応も改められ、彼らを少しずつシュトゥラ国民として同化させていった。
その後、クラウスは不具となった右腕をエレミアが残した義手に替えて戦場に臨み、三年もの間ベルカ平定の最前線に立ち続けるが、不意を突かれた際に負った傷が元で戦死。世継ぎをもうけることなくこの世を去り、王家を失ったシュトゥラ王国は聖王連合に統合されることとなった。
さらにその二年後、聖王オリヴィエも念願だったベルカ統一が叶った翌日に『聖王のゆりかご』とともに姿を消し、そのうえ
そうしてすべての住民が他の世界へ去っていき、『次元世界ベルカ』は完全に滅亡することになる。
ベルカ滅亡より少し前、オリヴィエの死からそう間もない頃のこと。
シュトゥラ国内にある小さな家。そこには鮮やかな青髪の美しい母親と今年で5歳になる可愛らしい女の子が暮らしていた。
だが……。
「ぐっ……うぐっ……」
突然首を絞められ、母親は口から唾液とうめきを漏らしながら目の前の娘を見る。娘は母親と違う薄い緑色の髪で、紫色の右眼と蒼色の左眼を持つ少女だった。
少女は色違いの瞳に憎悪を宿しながら実の母親の首を絞め続ける。
「おまえの……おまえのせいで……」
母、フローラは突然のことに驚き娘の腕を掴み返したものの、我が子に宿ったものの正体に気づき、両手の力を緩める。その一方で、娘は逆に両腕に力を込めて……
「おまえのせいでオリヴィエはゆりかごなんかに……彼女とエレミアを――
ぼろぼろと涙を流しながら娘は強く首を絞め続ける。5歳の女の子とは思えない握力だ。それほどの力で自身を絞め殺そうとする娘を見て、フローラは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ふふ、この子の中にいましたの……クラウス様、やっと私のもとに戻ってきて――う゛ぐっ」
おぼろげになっていく視界の中で、フローラは五年ぶりに再会した“彼”の顔に手を伸ばす。しかし、そうしている間にもどんどん喉の圧迫感が増していき、視界が黒く染まっていく。
やがて首からゴキッという不快な音が響き、フローラの頭ががくっと垂れ落ちる。
それを見た瞬間、娘はひっと小さな悲鳴を上げながら母親の首から手を放し、自分がしたことが信じられないように自身の両手を見つめ、そのまま逃げるように家を飛び出して行った。
シュトゥラ城から追い出されて五年、フローラにとってようやく訪れた想い人との再会であり、“彼”に殺してもらえた瞬間だった。
一方、こちらはヘンディガン、いや、シュトゥラ最東にある村。
その村の片隅にある家にも、若い母親と5歳になったばかりの男の子が暮らしていた。
「母さん、庭のそうじおわったよー!」
「あら、早かったわね」
息子の声に気づいて、台所から母親の返事とぱたぱたという足音が聞こえてくる。後ろにまとめた栗色の髪と、田舎娘という言葉が似合うほど垢抜けない容姿は五年前から変わっていないように見える。しかし守るべきものを持ったからか、今の彼女からは昔とは比べものにならないほどの逞しさが身についていた。
「お疲れ様、ちょうどお昼ご飯できたから手を洗ってきなさい」
金色に輝く息子の髪を撫でながらそう告げると、息子は「うん」と元気よく頷いて手洗い場に向かって行った。そんな息子を見ていい子に育ったと思う一方で、“あの人”のようにならないように気をつけないと、とエマは密かに誓った。
彼の名はアレン。エマと一緒に暮らしている一人息子であり、『淫蕩王』ベルムハルトが遺した子供でもある。勿論、あの子には父親は戦争で死んだとしか教えていない。おそらくそれ以上のことを教える日は来ないだろう……来ないことを願う。
当のアレンは庭掃除の出来とその合間に村の人々の手伝いをした事を誇らしげに語りながら昼食を摂る。それに耳を傾け、話に夢中になるあまり口元を汚す息子の顔を時々拭きながら、エマも食事を口に運ぶ。
そこで戸を叩く音が聞こえてきた。立ち上がろうとするアレンを制して、エマが戸に向かう。その間にも何度か戸を叩く音が聞こえてくる。その音と間隔から、また“あの子”が来たんだろうと予想がついた。
「はいはーい、今開けまーす――あら、やっぱり」
「おばさん、こんにちは! アレンいますか?」
エマが扉を開けるなり、彼女の足元にも届かない小さな女の子が挨拶と問いを発してくる。肩ぐらいまで伸びた金髪が自慢の可愛い女の子で、早くも将来は美人になるに違いないと噂されている。
そんな少女に対して、エマは腰をかがめながら挨拶を返した。
「こんにちは、リアちゃん。アレンなら今お昼を食べてるところだけど、リアちゃんも食べていく?」
「あっ、ごめんなさい。お昼はさっきおばあちゃんと食べてきたところで……」
申し訳なさと一緒に食べたかったという思いの混じった顔でリアは顔を俯かせる。そこへエマの後ろから足音と声が届いてきた。
「あ、やっぱりリアか。また遊びにきたのか?」
「うん! 来年からがっこうだから今のうちにいっぱいあそんできなさいって言われて。だからアレンといっしょにあそぼうと思ってきたんだけど」
「うーん、おれも来年からがっこうだからあそべるうちにあそんでおきたいけど。もうごはんも食べおわったし……」
遠慮してる風を装いながらアレンは母親を見上げる。そんな息子と友達にエマは苦笑しながら首を縦に振った。
「いいわよ。今日はもうお手伝いも終わったから、リアちゃんと遊びに行ってらっしゃい。その代わり夕方までには帰ってくる事。それと、二人とも絶対村の外に出たら駄目よ!」
真剣な表情になって注意するエマに、アレンとリアはうなずきを返す。そしてアレンはリアの腕を掴み――。
「じゃあいこうぜ! この村、あそべるとこ少ないから早くいかないととられちまう!」
「わっ、ちょっとひっぱらないで!」
リアの抗議に構わず、アレンは彼女を引っ張りながら外へ駆け出す。そんな二人に昔の自分とハルトを重ね、わずかに涙が浮かんだ。
リア。あの少女も普通の子供ではない。ベルムハルトの異母妹・リゼが産んだ子供で、アレンの
敗戦後、ヘンディガンの牢もシュトゥラの占領下に入り、そこに囚われていたリゼとレティシア姫も救出された。しかし、長い幽閉生活の間に二人とも精神に異常をきたしており、リゼに至っては半年以上前から子供を身ごもっている状態だった。
救出後すぐにレティシアとリゼは医療施設に送られたものの、レティシアはほどなく動物性感染症を発症して病死し、リゼは今も一日中うわごとを口にし食事や排泄すら一人でできない状態でいる。
そんな母親に娘を育てられるわけもなく、クラウス達はリゼの娘の引き取り先を探すことになった。
しかし、この子は『淫蕩王の姪』。その血筋を知られればどんな危険があるかわかったものではないうえに、聖王家の手前、クラウスが保護するわけにもいかなかった。
そこではるか東にある村の噂を聞きつけ、子供のいない老夫婦に生活の援助と引き換えにリゼの娘を預けることにしたのである。
そうした経緯を経て、リゼの娘は『リア』と名付けられ、エマ達の隣の家に住んでいる。もし老夫婦に万が一のことがあった場合、あるいは老夫婦がリアの血筋を知って彼女を追い出した場合、リアもエマが育てる事になるかもしれない。
そう考えるとクラウスはアレンのことにも気づいていたのかもしれない。『あの二人がベルムハルトのような人間にならないように目を光らせてくれ』という思いから黙認してくれていたのかもしれない。
たとえ、そうであってもそうでなくても……。
――私があの子達を守らないと。ハルトさまとリゼさんの分まで。
その一方、母の思いなど知る由もなく、アレンとリアは遊び場を求めて村を練り歩いていた。
「いつものあそび場もうまってたなー」
「うん。どこであそぼう……」
アレンは退屈そうに愚痴をこぼし、リアは相槌を打ちながらついていく。
そうしている間に二人は村はずれまで来ていた。空き家が一つあるだけの寂しい場所で、あたりには人っ子一人いない。
そこについた途端、アレンはおもむろにリアの腕を掴み、小さな声で囁いた。
「リア、ここでこの前やった“さわりっこ”の続きしない?」
「――えっ!」
そう言われた瞬間、リアは顔を赤くしながら顔を向けてくる。
「で、でも、あんなあそびだれもやってないよ。それにすごくはずかしいし――きゃっ!」
首を振ろうとするリアだったが、アレンの手が胸に触れた途端、小さな喘ぎ声を漏らす。
「そう言うわりに気持ちよさそうな声だしてるじゃんか。本当はしたかったんだろう」
「それは――んぅっ!」
言い返そうとしたところで股の割れ目をなぞられ、リアの口から甘い声が漏れる。どんどん体が熱くなってきて、もっと触ってほしいという気持ちが強くなっていく。
リアは残った理性を振り絞って――
「じゃ、じゃあ、せめてあの家のなかでしよう。あそこだれも住んでないから――あ、ん……っ」
答える代わりにアレンはリアの乳首をつまみ上げ、そのまま小屋まで連れ込んだ。
「あんっ、アレンにさわられてるところ、きもちいぃ……」
飛び込むように中に入った瞬間、アレンはリアの服を剥ぎ取り、露わになった胸と股を揉みしだく。
リアもアレンの下半身に手を伸ばし、収まったままの逸物をつるりと撫でた。
「アレンのおちんちん、いつもよりおっきくなってる。アレンもきもちよくなってる?」
「ああ、今日はずっとここでさわりっこしようぜ」
「うん――あはぁっ、そこいいよぉ、もっと、もっとお胸とお股いっぱいさわって――はあああんっ!!」
年端もいかない少年と少女の喘ぎ声と秘部をこすり合う音が小屋中に響く。
やがて二人は邪魔な服をすべて脱ぎ捨て、互いの体を余すことなく触り舐り合った。
数年後、父が『淫蕩王』だと知らぬまま、アレンは十歳足らずで性に目覚め、村の少女のほとんどと関係を持つようになる。
さらに後年、アレンは移住先の世界でも性豪ぶりを発揮し、傭兵騎士として各地を旅しながら目に留まった美女を余さずものにしていき、ついには各国の王女達をも陥落して、父さえ成し得なかった世界征服に成功し『淫蕩王』と呼ばれるようになるが、それはまだ先の話である。
ご愛読ありがとうございました。これで本編完結です。
この後は『淫蕩戦士ハルト』という2・3話の短編を書く予定です。ベルムハルトの母親が処刑されず息子とともに辺境に追放されていたら、というIFで本編より明るめの話になる予定です。
当然エロもあります。というかそれが主軸です。
でも前回の受けが悪かったから、今話の反応次第でそのままポシャるかも……。