淫蕩王ベルムハルト 作:ヒステリア
四刻目を数えるほどの時間。
例によって朝っぱらから、栗色髪の侍女が主人に抱きつきながら喘ぎ声を漏らしていた。
「あっ……ま、またイッちゃいます……んんっ……また、ご主人様より先に――ああん!!」
その言葉とともに侍女は体を震わせ、その下半身から透明な愛液が漏れ出す。
彼女を抱きかかえるように己の体に乗せていた主人、ベルムハルトはため息交じりに文句を吐きだした。
「相変わらず股の緩いエロメイドだな。俺が出してないうちに二回もイキやがって」
「も、申し訳ありません――でもご主人様のが奥に当たると気持ちよくなって、どうしても――ふぁっ!」
侍女の言い訳も聞かず、ベルムハルトは注送を繰り返す。
その後もしばらく侍女は嬌声を上げ続け、彼女が三回目の絶頂を訴え始めた時に、ベルムハルトの下半身から射精感がこみ上げてきた。
「――出すぞ。せめて主人の精液くらい受け止めろ」
「えっ――ま、待ってください! 私、今日は危険な日――いや――――あああああん!!!」
侍女の訴えも空しく、ベルムハルトは遠慮なく彼女の中に精を注ぎ込み、彼女も三度目の絶頂を迎える。
侍女は荒い息を吐きながら、主に乗っかったまま尋ねた。
「はあ……はあ……今朝はこれでご満足でしょうか……」
「満足なわけあるか。てめえばかり快楽を貪りやがって。王様に性欲処理させるとはいいご身分だな、ったく」
対してベルムハルトは不満そうに吐き捨ながら、侍女を体から引き離す。
侍女はベッドから降りようとして、後ろを振り向き――そして“彼女”の存在を思い出した。
「あの……あの方は大丈夫なんでしょうか? 私が来る前からずっとあのままですけど……」
心配そうな顔で侍女はそちらとベルムハルトの間に視線を行き来させる。
だが、ベルムハルトは平気そうに片手を振るのみだった。
「お前が気にすることじゃねえよ。いいから、お前はさっさと服着てここから出て行け。はやくしねえとマッパのまま追い出すぞ」
その脅し文句に侍女はびくりと震え、急いで仕事着を身につける。この主なら本気でやりかねないと知っているからだ。
侍女は顔を赤くしたまま主人の前で仕事着を着て、そそくさと部屋から退出する。
そして後には、ベルムハルトと隅に放置されていた“彼女”だけが残された。
「待たせたな“管制人格”ちゃん。壁に括りつけられたまま、俺とへっぽこメイドのセックスを眺めていた気分はどうだ?」
彼の視線の先では、銀髪の女――『闇の書の管制人格』が拘束されていた。
彼女の身体にはいくつもの鞭や蝋燭の跡が残り、股間からは棒状のバイブが差し込まれている。そんな状態のまま、彼女は壁に取りつけられている拘束具に両腕を繋がれ、一晩中磔になっていた。
ベルムハルトはテーブルに置いてある機器を手に取り、全裸のまま彼女に近づく。
「そろそろ答える気になったか?」
「……何を、でしょうか…………」
彼女は主から視線を外しながら訊き返す。その直後、ベルムハルトは躊躇いもなく機器のスイッチに指をかけた。
「んん――ぁぁあああああ!!」
スイッチが入ると同時に、股間に差し込まれたバイブは激しく律動し、彼女の
嬌声とはかけ離れたうめき声と苦痛に歪む表情をしばらく堪能してから、ベルムハルトはもう一度スイッチに指をかけ、バイブを止めた。
「決まってんだろう。『闇の書』を完成させればどうなるか、今まで『闇の書の主』だった奴らはどうなったか――答える気になったかって言ってんだよ」
「……申し訳ありません……私の口からは詳細を教えることができないように
言い終えるのを待たず、ベルムハルトは再びバイブのスイッチが入れ、彼女の膣を掻き回す。
再びうめき声を上げる彼女を眺めながら、ベルムハルトはあごに手を乗せ思案していた。
ベルムハルトは放埒であれど無能ではない。もし彼が守護騎士に戦や頁の蒐集を任せるだけの男だったら、義父や異父弟、
彼の恐ろしさは短期間のうちに計略を練り上げる智謀と、それを実行するためならどんな手段も選ばない苛烈さにある。
先の内乱でも最初はヘンディガン伯として、第二王子の王位継承を助けるという名目で内乱に加わり、その座を奪い取ったのだ。
その知力ゆえに『闇の書を完成させた者は絶大な力を手にする』という話には最初から懐疑的だった。
もしその通りなら、なぜ『闇の書』が未完成のまま多くの持ち主の手に渡ってきたのか? 『守護騎士』という“蒐集の道具”までいるのだ。いつまで経っても完成しないままというのはおかしい。
そもそも主達はなぜ『闇の書』を手放したのか? 『守護騎士』に頁の蒐集をさせておいてまで。
何かあるに違いない。『闇の書』が完成しない理由と、主達が姿を消したわけが。
常々そう思っていたからこそ、『管制人格』が現れた今、ベルムハルトは彼女を“尋問”しているというわけだ。
――しかし昨晩の責めに加えて、ここまでやっても口を割らんか……何も話せないように“細工されている”というのは本当かもしれんな。今日は客人と会う予定もあるし、そろそろ仕上げと行くか。
そう考えながらベルムハルトは手ずから震え続けるバイブを引き抜く。それを見て彼女は荒い息をついた。
そこへ――。
「そらっ――!」
「――ひぐぅぅうううっ!!」
一度引き抜いたバイブを、ベルムハルトは彼女の膣へ突き刺すように挿れる。
あまりの衝撃に彼女は白目をむき、身体が弓なりに仰け反る。だが、ベルムハルトは構わず、さらに奥までバイブを押し込んだ。
「さっさと白状しろ。小便もできん体になっちまうぞ!」
「おおおぉぉ――ほ、本当に言えないんですっ――ぃぐ……だ、だからもう許して……き、昨日の晩からずっとこのままで……そんなこと言われたら逆に――んんっ!」
そこで彼女は体を小刻みに震わせる。それを見て彼女が何を我慢しているか気づいたものの、それぐらいでベルムハルトが責めの手を緩めることはなかった。
「ひぎぅ――ほ、本当にやめて、くだ…………くぅっ――あっ、も、もうダメ……あ、あるじ……せめて私からはな、れて…………んっ――あっ、あああああ――――!!」
絶叫しながら彼女が体を反らすのを見て、ベルムハルトも後ろに行って距離を取る。
その直後、彼女の股間からバイブが飛び出し、黄金色の水が噴水のように噴き出した。
予想していたとはいえ、自室の床が小便まみれになるところを見て、ベルムハルトは顔をしかめた。
「あーあ。人形のくせに小便なんかするんじゃねえよ。しかも小便の話した直後にお漏らしとは、動物かてめえは」
「も、申し訳ありません……ですが『闇の書』が完成した後については、私からは本当に何も……」
そう言って彼女はうつむいて黙り込む。そんな彼女にベルムハルトはちっと舌打ちを鳴らした。
「今日はこれぐらいにしてやる。後であの侍女に掃除させるから、お前はもうしばらくそのままでいろ」
「……はい」
自らの尿の匂いが立ち込める中そのような命令をされても、彼女は不満そうなそぶりも見せず黙って従う。
ベルムハルトはそこで立ち止まり、彼女の方を振り返った。
「そういやお前の名前だが、一つ思いついたのがある」
「……えっ?」
その言葉に彼女は顔を上げ、主の方を見る。
そんな彼女に付けられる名前は――
「ファーレ……昔のベルカ語で『罠』っていう意味だ。ぴったりだろう*1」
にやりと、ベルムハルトは意地の悪い笑みを浮かべながら尋ねる。
それに対して……
「
ファーレと名付けられた彼女は苦笑しながらうつむき、尿で汚れた足元を見下ろす。
そんな彼女に背を向け、『とりあえず今日は別の部屋で寝るか』と考えながらベルムハルトはクローゼットに向かった。
それからベルムハルトは入浴をはじめとした身支度や食事、政務をある程度こなしつつ、“客人”の訪れを待った。
そして午後を過ぎた頃、その客人は城にやってきた。
「この度は私ごときに謁見の機会を賜り、誠に恐悦至極。陛下のお心遣いに深い感謝の念を……」
「よせよせ。これは正式な謁見じゃない。楽にいこう――さ、そこのソファに座ってくれ」
床に膝を付ける客人の口上を遮って、ベルムハルトは気さくな態度で席につくように促す。
客人は恐縮しながらも、彼の反対側のソファに腰を下ろした。
この客人は“とある国”の使者を務める男で、年齢は四十代半ば。上質な服を纏った、見るからに貴族とわかる身なりをしていた。
そんな彼が通された部屋は玉座の間ではなく、城内にある客室の一つだった。ベッドやテーブルなどの家具が用意されており、隣には湯浴みの部屋まである。
その事に違和感を覚えつつも、使者は脂汗を流しながら一国の王と相対していた。
「遠路はるばるよく来てくれた。『聖王連合』からあんたを呼びだした理由はわかるな?」
「……はっ、その件につきましては改めてお詫び申し上げます。リゼリアム王女と名乗っていた方がマルグレー伯爵がさらってきた村娘だったとは露ほども思わず……」
そう言って使者はテーブルに視線を落とす。
無論、彼の言っていることはまったくの嘘である。
聖王連合は最初からリゼが王位継承権を持たない落胤であることを承知の上で伯爵に援助を施し、この国を乗っ取らせようとした。連合にとって、いよいよ目障りになったベルムハルトを取り除くために。
だがその目論見も、リゼの素性が内外に知れ渡った事と反乱の失敗によって潰えた。
そして現在。聖王連合が犯した内政干渉の責任追及という
この任を受けた時から、使者は命を取られる覚悟をしていた。
聖王連合の行為は明らかにヘンディガンの属国化もしくは併合を図ったものであり、ベルムハルトが怒りに震えていることは想像に難くないからだ。
使者の首を斬り落とすくらいはやりかねない……ほとんどの国でご法度とされる行為だが、ベルムハルトならそのぐらいしてもおかしくなかった。
だが……。
「ああ、その事はいい。領土を拡げてそこそこ強くなってる国が内乱なんて起こしそうになってるから、つい崩したくなっちまったんだろう。俺だってあんたらの立場ならそうしたさ。もっとも俺だったら、偽王女の身柄を借りた上で徹底的に仕切らせてもらうがな……くく」
「は、はあ……」
ベルムハルトの軽口に対して、使者は相槌を返すことしかできない。下手に肯定すれば敵対の意思ありと見なされるかもしれないからだ。実際そのような発言を引き出して開戦の口実にする王や貴族は珍しくない。
だが、ベルムハルトの狙いはそんな事ではない。
「だから固くなるなって。ここらでそろそろ膿を出したかったところだし、あの戦のおかげで手駒も増えたしな。連合にはむしろ感謝してるくらいなんだぜ……そこでなんだが」
「……?」
使者は怪訝な表情を作る。目の前の王が何を言っているのか、何を言い出すつもりなのか、まったくわからない。
首をひねるのを懸命にこらえている使者に、ベルムハルトは一度大きく息を吐きだしてから言った。
「俺達と……ヘンディガン王国と組む気はないか? 属国ではなく対等な同盟国としてだ」
「――な、なんですと!?」
その提案に使者は大きく目を剥く。自らを葬ろうとした国に責任を求めるものと思いきや、まさか同盟を提案してくるとは……。
うまくいけば、労せずヘンディガンを属国にできるかも――
使者がそう考えているところで、ベルムハルトは再び口を開いた。
「もちろん、ただで手を組もうと言ってるわけじゃない。同盟とは名ばかりの使いぱしりにされるのはごめんだからな。こちらを対等な国として認めている証拠を見せてもらう」
「証拠?」
思わず繰り返す使者に、ベルムハルトはこくりと頷き――
「『シュトゥラ王国』との関係を切れ」
「なっ――!?」
その条件に使者に思わず目を見張る。彼に構わずベルムハルトは続ける。
「数ある国の中で
「それは……」
使者はそれ以上何も言えなくなる。
シュトゥラ王国は列強の中でも指折りの軍事力を持つ大国であり、“ゆりかご”のような切り札を抜きにすれば聖王国を凌ぐといわれている。だからこそ聖王連合はシュトゥラと対等な同盟を結び、末の王女を人質として送り込んでいるのだ。
それを切るという事はつまり……。
「細かい条件はこれから用意する書状に記載しておく。あんたにはそれを『聖王』殿に届けてほしい……頼めるか?」
「え、ええ。それぐらいでしたら謹んで……」
使者は安堵の笑みを浮かべながら応える。なんとか無事に国に帰れそうだと。
だがそこで――
「ただ……肝心の書状がまだできていないんだ。あの聖王様に届けると思うと指が震えてな。用意するのに一日……いや、推敲する時間も含めて二日は待ってほしい」
「それは……そうでしょうな。では私はそれまでどうすれば……」
明らかに落胆した様子で使者は尋ねる。そんな彼とは対照的にベルムハルトはにやりと唇を吊り上げた。
「それならこの部屋を使ってくれ。食事などもすべてこちらが用意する……あんたの世話をする従者もな」
そこでベルムハルトはテーブルの上に置いてあった
すると扉がガチャリと開き……
「「失礼します」」
ぴたりと重なった声とともに、二人の侍女が客室に入ってくる。
それを見て使者は一国の王を前にしているという状況も忘れ、あんぐりと口を開けた。
侍女二人は男達を前にしているにもかかわらず、恥じる様子も見せず白い乳房を晒し、スカートまでたくし上げていた。
思わず二人を凝視する使者。彼にとどめを刺すように囁いた。
「これから二日間、この侍女達を
「……」
使者はあぜんとした表情のままベルムハルトの方に首を向ける。そんな彼にベルムハルトは頷きを返した。
「これが
「……、……」
ぶら下げられた餌を前にして、使者はただこくこくとうなずく。この瞬間から、彼はベルムハルトに忠実な“
そんな彼の肩を叩きながら、ベルムハルトは椅子から立ち上がる。
「薬の用意はしてあるから妊娠の心配はなしだ……じゃあ、ゆっくりしていってくれ」
そう言ってからベルムハルトが出て言った瞬間、客室の中からベッドに倒れ込む音と女二人の喘ぎ声が聞こえてくる。
それを背に、ベルムハルトは高笑いしながら廊下を歩いていった。
まずは一手。
この“姦計”こそ、聖王連合とシュトゥラへの最初の攻撃に他ならない。