淫蕩王ベルムハルト 作:ヒステリア
ヘンディガンと聖王連合の交渉決裂から三月。
二国の接触と決裂を知った他の国々は、この流れを自国の勝利に繫げるため独自の行動を見せ始めていた。
ヘンディガンからの侵略を恐れ聖王連合に庇護を求める国。その反対に聖王連合への反発からヘンディガンに接触をかけつつある国。そのどちらもせず様子見に徹する国。
大陸の勢力図は大きくこの三つに別れる形となり、各地で起こる戦乱も徐々に、だが確実に大きくなりつつあった……ベルムバルトが企図した通り。
この事態を憂慮した聖王が、連合各国の重鎮をゼーゲブレヒト城に集め、およそ二百年ぶりに『聖老院』を開くという噂が聞こえてくる中、ヘンディガン王国はまた一つ隣国を攻め落とし、ついに北の大国『シュトゥラ王国』と国境を接することとなった。
当然のごとくシュトゥラ側が警戒を固める一方、ベルムハルトをはじめヘンディガンは一切行動を起こさず、国の守りを固めたり内政に力を注いだりなど、国力の維持に腐心していた。
さしものベルムハルトもいきなりシュトゥラを攻めるほど馬鹿ではないか――とシュトゥラ側が気を緩めた矢先のこと……。
シュトゥラ本土から南にある大森林……その入り口に黒い鎧で武装した一群の姿があった。
森の入り口に着くや群団はその場に停まり、隣の仲間と談笑を始める。その内容は「こんな森に何の用だ?」「一個部隊をかりだしてピクニックとか言わねえだろうな」という不平に近いものだった。
そんな彼らを、後方からやってきた守護騎士三人は憮然とした様子で眺める。
「相変わらずたるみ切った連中だ。あれで一国の軍隊か」
唾を吐きそうな勢いで、ヴィータは忌々しそうに吐き捨てる。
その後ろにいるザフィーラとシグナムも内心同意するも……
「とはいえ、何も知らされず何日もかけて歩いてきた先が一面に広がる森では、不満をこぼしたくなる気持ちもわかる」
「それに、あれで
シグナムの言葉にヴィータも舌打ちしそうな顔で「まあな」とつぶやく。
ちょうどそんな時――。
「よお諸君。本国からここまでご苦労だったな」
その声に兵士達と守護騎士三人は後ろを振り返る。
そこには今まで後方の馬車の中にいたヘンディガン王ベルムハルトの姿があった。彼の両隣には四人目の守護騎士シャマルと『闇の書の意思』ことファーレの姿もある。
顔を赤くしながら服の乱れを気にしているシャマルの様子から、馬車の中で何が行われていたのかは想像に難くない。
そんな想像を巡らせていたり、目的もわからず森まで連れてこられて不満そうな態度を見せる兵士達の視線を浴びながら、ベルムハルトは声を張り上げた。
「本土からここまでよくついてきてくれた。目的もわからず何日も歩かされて不満に思っている者も多いだろう。その目的をこれから話そうと思う。
ここはシュトゥラ南部の森で、一応あの国の領土って事になってる。“原住民”への配慮なのか、国境にも関わらず監視の兵はほとんどいないがな」
ベルムハルトがそう言った途端、後方からざわめきが起こった。
「シュトゥラの領土……それって……」
「まさか、今から攻め込むっていうのか? これだけの人数で――」
ある兵士がそう言った途端、ざわめきは一斉に広がり、ほとんどの兵士が声を上げだす。ベルムハルトの眼前にいる兵も含めて。
無理もない。シュトゥラは列強随一の軍事力を誇る大国。いつかはぶつかると知っているものの、これだけの人数で、しかも攻め込むにも撤退するにも困難な森を渡るなど正気の沙汰ではない。
相手が王なのもかかわらず、文句を上げ始める兵が出てくる中、ベルムハルトは大きく首を横に振った。
「俺達がこれから行うのは“ボランティア”だ。こんなに広い場所にもかかわらず、シュトゥラはこの森を切り開きもせず何百年も放置している。もったいねえと思わねえか。そこであいつらに代わって、俺達がここを開拓してやろうと思ったわけだ」
ベルムハルトの説明に、頭の悪い者は首をひねりながら仲間の方を見る。だが、察しのいい者や戦慣れしている者は彼が言わんとしている事がわかった。
「たださっき言った通り、この森には原住民が住み着いている。猫のような耳と尻尾が付いてる亜人で、珍しい魔法を使う事から『魔女』と呼ばれている。あいつらがいる限り、開拓したくてもできねえだろうな」
そこまで聞いてほとんどの兵が、王が言わんとすることを理解した。原住民を排除して、その後この森を焼き払うつもりだと。確かに、この森がなくなればシュトゥラ攻めはかなり楽になる。
そこでベルムハルトはわざとらしく下卑た笑みを浮かべた。
「もう一つ付け加えるなら……この森の原住民は『魔女』の名の通り、女の方が多いという話だ。女だけじゃすぐ絶滅しちまうから男もいるといえばいるけどな……」
女と聞いた途端、少なくない兵が唾を飲み込む。その音を聞いて守護騎士達は顔をしかめた。
この主の元で働くのが嫌な一番の理由だ。
「“魔女狩り”だ! この森を焼く前に邪魔な『魔女』どもを一人残らず追っ払え!! 抵抗する『魔女』どもはお前達の好きにして構わん!」
ベルムハルトが腕を振り上げながら声高に叫んだ瞬間、兵士達も王に倣って片腕を上げ、一面に響く歓声を上げた。
その声は残念ながら原住民――『魔女』達には届かなかった。届いた者がいたとしても、妙な集団が森の傍で騒いでいるだけだと思っただけだろう。
そして彼らが気づいた時には、黒鎧の兵士達がすぐそばまで迫ってきていた。
「――えっ!?」
「な、なんだあんたたち?」
森の中に設けた村の中に突然黒い鎧の兵士達が現れ、そこに住む『魔女』達は驚く。
そんな彼らに兵士達は剣を向けて――。
「いたぞ、魔女達だ! 男は殺せ! 女は一人残らず生け捕りにしろ!!」
その一言で兵士達は村に踏み込み、驚く『魔女』の男を斬りつけ、女の『魔女』を捕まえていく。
「いやああああああ!!」
「捕まえたぞ。本当に猫みてえな耳と尻尾がついてやがる。どんな体してるのかな♪」
兵達は捕まえた『魔女』の服を剥ぎ、遠慮なくその体を眺め回す。そして――
「ほうら、これが人間様のチンポだ。男のくせに魔女なんて名乗ってた彼氏よりデカいだろ」
「やめて! そんなもの入れないで――やあああ!!」
恋人の死を目の当たりにしながら、女は必死に抵抗するもののそれも空しく、兵士は一物を彼女の中に突き入れた。
「やあっ!! たすけておかあさん! このおじさんこわい!」
「やめてください! 私は好きにしていいから娘だけは――」
捕まった娘の助けを聞いて、母親は他の兵士に犯されながら懸命に懇願するが、兵士は娘を抱えながら無常に母親を蹴飛ばす。
「どけ。ババアと非処女に興味はねえ。――お嬢ちゃん怖くないよ。大きくなったらみんなすることを一足先にするだけだから――おらっ!」
「いたいいたい! そんなところにオチンチンはいらないよ!! いあ゛あ゛あ゛――ゆらさないで! いたすぎてミアしんじゃうう!!」
ミアという少女は言葉通り悲痛な声を上げるものの、兵士は無視して幼い体の中を突き続ける。
そしてとうとう――
「おぉ、出すぞ――ガキの中にガキの種を出すぞ!」
「えっ、がきのたねって――やああああ! オチンチンからなにかでたあ!! ミアのなかにおじさんのオシッコだされちゃったあああ!!」
「ミア……あなたを守れない母親でごめんね……うぅっ」
自分の中に出されたものがわからず苦痛とショックで泣き叫ぶ娘に、母親も謝りながら涙を流す。
そんな母娘に下卑た笑いを浴びせながら、兵士達は輪姦を続けた。
「んっ……猫の格好してるだけあっていい舌使いじゃねえか。噛んだらどうなるかわかってるだろうな」
「わ、わっはへはふ、ほほはなひで――んぶっ!」
「何言ってるかわかんねえよ。人間語でしゃべれ――出したてのミルクを飲ませてやる。ありがたく全部飲み干せ!」
「――んぶうううぅぅ!!」
口の中に大量の精液を出され、吐きそうになるのをこらえながらすべて飲み干す。兵士はそんな彼女の脚をつかみ次の行為に及んだ。
このような光景は森のいたるところで行われている。シュトゥラ王家に保護されてるはずの『魔女の森』は今、どこからか乱入してきたヘンディガン軍によって虐殺と凌辱の場と化していた。
「貴様ら、よくも『魔女の村』を!」
「一体なぜこんなことを――」
罵声を飛ばしながら、『魔女』の男達は黒い炎を飛ばしてくる。
しかしそんなもの、ヘンディガン兵ならまだしも守護騎士達に通じるわけもなく――。
「ふっ――はあっ」
「ぐあっ――」
シグナムの一刀で『魔女』の一人が倒れる。その間にヴィータとザフィーラも『魔女』を倒し、それを確認してシグナムは後ろの『闇の書』に向かって言葉をかけた。
「また何人か倒した。蒐集を頼む」
『
「うぐ――ぎゃあああっ!」
術式言語で告げながら『闇の書』が頁を開いた途端、倒れていた『魔女』達の胸からリンカーコアが浮かび上がり、そこから漏れる魔力が『闇の書』に“蒐集”されていく。
それが終わると『闇の書』はひとりでに閉じ、『魔女』達は再び気を失った。
「これで抵抗する者はあらかた片づけたか……あとは――」
言いながらシグナムは残りの『魔女』達がいる方に目を向け、そして露骨なほど顔をしかめる。彼女の後を追ってそちらを見たヴィータとザフィーラも同様だった。
『魔女』達はもう戦う力を持たない者しか残っておらず、若い娘のほとんどがヘンディガン兵に蹂躙されていた。
兵士達は、
「何がボランティアだ――ほとんど賊と変わらねえじゃねえか!」
「……」
ヴィータとザフィーラは拳を強く握る。シグナムも手にしている剣の柄を強く握った。
――許されるのなら今すぐに奴らを斬り捨ててやりたいところだが、腐っても主の兵。手にかけるわけにもいかん。
守護騎士達とてこのような場面を見るのは初めてではない。しかし、彼女達は『闇の書』の頁を集めるという役割上、略奪などの場からは外されることが多く、
それゆえ、久しぶりに狼藉の場面を見せられて、騎士達は憤慨と何もできない自分達への怒りを覚えずにはいられなかった。
そこでふと疑問が出てくる。
「――なんであたしらまでこんなところに連れてこられたんだ? たった数十人の守部倒したところで頁なんてろくに集まらねえじゃねえか」
「……」
ヴィータがぶつけてきた疑問にシグナムもザフィーラも内心頭をひねる。
『魔女』達は確かに珍しい魔法を使い、彼らからもそこそこ魔力を吸収することができたが、いかんせん戦える者の数が少なすぎる。頁自体も五ページ目の途中しか埋まっていない。
なぜ、こんな暴虐の場に、魔力もろくに集まらない場所に守護騎士達までかりだした? しかもベルムハルトが直々に指揮を執って……。
そう疑問に思っているところだった。
「――ぐわっ!!」
「な、なんだ?」
「あいつ、どこに?」
ふいに兵達がどよめく声が届く。
何事かと思いながらシグナム達は――放っておきたい感情を抑えながら――そちらに視線を向けた。
兵達がいた場所には大きな黒い“怪物”が現れていた。ずんぐりした体躯で、背中にコウモリのような翼を付けた怪物だ。大きな黒目とあんぐりした口のついた、子供のラクガキのような顔で怖さとは縁遠い。
しかし、陵辱の最中に突然現れ仲間を飲み込んだ怪物に、兵達は娘から飛び退き慌てふためいていた。
気がつけば村や森のいたる所から同じ形の怪物が現れ、空中には槍を持った小型の怪物が大量に浮かんでいた。
ヘンディガン兵は粗末なモノをさらしたまま、呆然とそれらを見上げる
そんな中……
「この『悪魔』は――まさかクロ!」
汚された胸や陰部を手で隠しながら、村娘の一人があらぬ方を見る。
兵士達、そして守護騎士もその視線をなぞった。
そこにはいつの間にか、一人の少女が木の上に立っていた。
他の『魔女』と同じように、肩までかかった金髪の上に猫耳を生やし、黒い装束に身を包み、手に箒を持っている。
彼女は木の上から村や森を見回し、そして自分達の住処を踏みにじった異国の兵を金色の瞳で睨み付けた。
「『魔女』の誇りを穢す者は――未来永劫呪われよ!」