彼女の名は紘深。ちょっと変わったものが好きな、小学3年生の少女だ。
クラスではムードメーカーでもなくトラブルメーカーでもないごく平穏な立場ではあるが、クラスの女子と放課後遊びに行ったり、たまに罰ゲームでクラスの男子から告白されたりなどと、クラスメイトとともに平和な学校生活を過ごしていた。
そんな秋のある日3時間目。
(授業をしている最上の声)
3時間目の教科は道徳。担任教師の最上先生が教科書の内容を読み上げた上で、みんな思ったことを考えてそれを意見として発表するのがこの授業の大きな特徴だ。
その3時間目の授業が始まってから、わずか10分後のことだった。
(あっ…)
紘深の体にあるものが降りかかってきた。それは尿意だ。
(なんで…?さっきトイレ済ませたのに…)
トイレを済ませたばかりの突然の尿意。まだ微かなものではあったが、紘深はかなり困惑していた。
しかし紘深は目の前の授業にとにかく集中し、尿意をかき消した。
読み上げを終える最上先生。
最上「では、皆さんが思ったことを考えて下さい。15分後に発表します。」
一同「はい。」
ここからは考える時間。それからさらに15分が過ぎ、発表の時間になった。男子から先に、順々に発表していく。
最上「じゃあ次、小早川君。」
小早川「はい…」
小早川の番になった。しかし自分の思ったことを口に出すことが苦手な小早川。周囲から「頑張れ」という声が上がるが、それがプレッシャーになってなかなか発表することができない。
最上「じゃあ仕方ない。小早川君はまた授業の最後に改めて聞くから。」
小早川の発表は一旦は見送りになり、次の人へ移る。そうこうしているうちに女子に移り、紘深の番になった。
紘深「―ということだと思います。」
最上「ありがとう―」
紘深は自分の発表を乗り切ることができた。しかしそんな紘深の膀胱は、いつの間にか激しい痛みを帯びるほどになっていた。
そして一番最後の女子の発表が終わり、授業はあと数分で終わり。小早川の番に戻る。
しかし…
(チャイムの音)
小早川がなかなか発表できないまま、授業終了のチャイムが鳴った。チャイムが鳴り終わった数秒後…
(ジュジュ…)
紘深はついにおしっこを少し漏らしてしまった。授業終了のチャイムが、紘深の尿意を更に高める。
クラスの男子A「頑張れー小早川。」
クラスの女子B「頑張って!」
授業には集中できる性格の紘深。前にも授業中に尿意を催したことはあったが、概ねそのような状況下でも授業に集中することはできて我慢しきることもできており、それでもどうしてもという時はトイレに行くことができていた。
しかし紘深は心の中でそれを拒んだ。
(ここで私だけトイレ行ったら、小早川君に申し訳ないじゃん…)
と、紘深は思っていたからだ。
小早川が発言しなければ授業は終わらない。クラスメイトの「頑張れ」の声とともに、それが小早川にとって一番のプレッシャーになっていた。
(ジュッ… ジュッ… ジュウウ…)
時間の経過と比例してさらに高まっていく紘深の尿意。そんな紘深の膀胱は今にもはちきれそうだ。
パンツに少しずつ滲み出ていく紘深のおしっこ。そのおしっこはパンツの上のスパッツにもシミを作りつつあった。
(漏れちゃう… 漏れちゃう…)
紘深はミニスカートの上から、おしっこの出口を押さえてしまっていた。
(チャイムの音)
4時間目の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。
今にも紘深を飲み込もうとしている「おもらし」という概念。今更トイレに立ってももう間に合わないほどの尿意が、紘深を縛り付けていた。
そしてチャイムからおよそ5分。授業の延長時間に換算して15分が経った頃、ついに紘深の体に耐えきれない程の痛みが走る。
(漏れちゃう… 漏れちゃう…!)
そしてついにその時は訪れた。
(ジュ… ジュジュ… ジュジュジュウウウウウウウウウウウウウウウ…)
ほんの20秒くらいだろうか。紘深の膀胱はとうとう力尽き、紘深は椅子に座ったまま「おもらし」をしてしまった。
(ビチャビチャビチャビチャビチャビチャ…)
紘深の座る椅子から零れ落ちるおしっこの水音が教室中に響き渡り、あたりを見回すクラスメイトたち。何が起こったのかまだイマイチ状況を呑み込めていないようだ。
(紘深の嗚咽する声)
おもらしが終わり、嗚咽する紘深。
(終わった… 完全に終わった…)
と思っていた。
すると、保健委員の荒木が声を上げた。
「あの… 先生… 紘深ちゃんが…」
全てを知った最上先生やクラスメイトたち。
最上「分かった。授業はここまでにしよう。荒木さんは黒藤さんを保健室に連れて行って。できる人は黒藤さんのとこの床を掃除して。」
クラスメイトA「分かりました。」
紘深を保健室に連れて行く荒木。授業はその時点で打ち切りとなった。
(保健室のドアを開ける音)
荒木「高山先生…」
高山「あら荒木さん。どうしたの?」
荒木「紘深ちゃんが、教室でおもらししちゃって…」
高山「あらあら。一体何があったの?最上先生、授業中にトイレ行っちゃいけないなんてこと言う先生じゃなかったと思うけど…」
紘深「グスッ… だって… 小早川君が答え出そうと頑張っている中で私だけトイレに行ったら、小早川君に申し訳ないと思って…」
高山「そうだったのね。答えられなかった子のために頑張ってたのね。偉いわ。」
(紘深を抱きしめる高山)
紘深「うう… うわぁぁぁぁぁぁぁぁー!」
紘深を抱きしめる高山先生。紘深は今まで堪えていた涙を一気に溢れさせた。
保健室で着替えをする紘深。ぐしょぐしょに濡れたパンツやスパッツ、ミニスカート、靴下を目の当たりにしたことが、紘深の気分をさらに下げた。
「ベッド空いてるから、寝てていいわよ。」
「はい…」
着替えを終えた紘深はベッドで横になった。泣き疲れたせいか、紘深はすぐに眠ってしまった。
それからしばらくして、時刻は12時半過ぎ。給食の時間だ。
(目を覚ます紘深)
「高山先生…」
「黒藤さん起きた?あなたのお母さんには連絡しておいたから。クラスの『増田さん』って子が給食持ってきてくれたわよ。」
「増田ちゃんが…」
「あと、増田さんと一緒に小早川君が一緒に来てたわよ。なんか、『黒藤さんに謝りたい』って言ってた。」
「え…?」
~回想~
小早川「黒藤さんごめんなさい!俺が…なかなか答えられなかったばっかりにこんなことになっちゃって… 俺のせいで―」
~回想終わり~
「小早川君…来てくれたんだ。」
「あなた、良いクラスメイトに恵まれたわね。もし困ったことがあったらまたお話してね。」
「はい。」
給食を食べ始めた紘深。今日の献立には紘深の大好物があった。
それからしばらくして紘深の母親が迎えに来た。
紘深の母親「紘深。」
紘深「お母さん…」
(母親に抱き着く紘深)
そしてその後、紘深は母親とともに家に帰った。
今回のことで浅からぬ心の傷を負った紘深は次の日から数日、学校を休んだ。少なくとも女子は全員、紘深のことを心配した。行ける人が集まった上で紘深の家の店を訪れたり、翌々日には学校を訪れた紘深の母親と会話したりしたという。
そして、週が明けた月曜日…
(教室に入る紘深)
「あ!」
「?」
「ひろちゃん、おかえり!」
「うん… ただいま!」(満面の笑み)