※この作品はR-18です。

とても都合のいいオナホ先輩   作:九龍城砦

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今回、エロがありません。
あと、チラッと新キャラが出ます。


実は尾行に気づいていた察しが良い後輩くん

 あの後、ゴムボートで水に着水する派手な絶叫系に乗った。

 結果、先輩はさらに上機嫌になった。今日は機嫌が青天井だな、この人。

 

「楽しかったね、後輩くん!」

「そ、そうですね……めっちゃ冷てぇ……」

 

 前の席に座ったせいで、水をモロに被ってしまってヤバい。めっちゃ冷たい。

 しかし不幸中の幸いというべきか、今日は日差しも強めで暖かい日だ。風邪は引かなくて済みそうでよかった。

 

「先輩、次の行き先は僕が決めていいですか?」

「もちろん良いとも! いっぱい刺激的な体験ができて、非常に満足したからね!」

 

 それはよかった。絶叫系は苦手だったけど、付き合った甲斐があったな。

 

「それで、後輩くんはどこをご所望だい? メリーゴーランドでも、ティーカップでも、何でも付き合うよ!」

「ありがとうございます、じゃあ──」

 

 入口で受け取ったパンフレットを開き、次に乗るアトラクションを二人で決める。

 こういう何気ない時間も、先輩と一緒だと凄く楽しく感じてしまうな。

 

(……尾行されてなければ、もっと楽しいんだろうけどな)

 

 バレないように、顔は向けずに目線だけで尾行者の姿を確認する。

 すると近くのカフェのテーブルに、お粗末な変装をした四人が座っているのが見えた。

 結構前から気づいてたが、何してるんだろうな、あの四人は。

 

「先輩は気づいてなさそうだけど……」

「んぉ? 何か言ったかい、後輩くん?」

「いえ、何も」

 

 とりあえず放置しておくか。今のところ実害は無さそうだし、関わると逆に面倒なことになりそうだ。

 それよりも、次のアトラクションを早く決めなければ。先輩が退屈してしまう。

 

「ここ、行ってみたいです」

「ホラー系か! いいね!」

 

 地図で指さしたのは、専用の乗り物に乗って幽霊の出るホラースポットを進んでいくアトラクションだ。

 説明文を見る限り、ゆっくり進んでいくタイプらしいので、丁度いいだろう。

 

「じゃあ行こうか、後輩くん!」

 

 花が咲いたような笑顔のまま、右手を差し出す先輩。

 僕は、その手を掴んで。

 

「はい!」

 

 自分でも、らしくないような──無邪気な笑みを浮かべた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

「ひゃわ〜! なにココ、人がいっぱいだ〜!」

 

 ジェットコースターの支柱に飛び乗り、遊園地を一望する存在がいた。

 黄色い外套を身に纏う、小さな人影。しかし肝心の黄色い外套はボロボロに古びており、その端からは柔らかそうな太ももが覗いていた。

 男が見れば一目で欲情間違いなしの、エッチすぎる太ももだった。

 

「う~ん、ボクがちょっと目を離した隙に、こんなに繁殖してるだなんて……人間ってエッチだなぁ」

 

 フードによって目元は見えない。しかし、その艷やかな唇から紡がれるソプラノボイスは、聴く者すべてを虜にする。

 危険な魅力、とでも言うべきだろうか。関わったら破滅が確定するような、そんな予感を全身から放っていた。

 

「見つけたよ、ニャル」

 

 ピンク色の瞳が、キラリと輝く。獲物を見つけた狩人のように、ゆっくり口角が上がっていった。

 

「お楽しみ中みたいだし、ちょ〜っとイタズラしちゃおっかなぁ?」

 

 建物内のアトラクションに入っていく、一組の男女。その姿を見つけ、黄衣の女王は建物を指差す。

 それと同時に、おぞましい気配が建物内を包んだ。今の一瞬だけで、彼女がアトラクションに何かを仕掛けたのは明白であった。

 

「名付けて、綱渡りドキドキ☆急接近大作戦〜!」

 

 どうやら、ネーミングセンスは皆無らしい。

 

 

◆◇◆◇

 

 

「……チッ、あの黄色……」

「どうしました、先輩?」

「あぁいや、何でもないよ」

 

 アトラクションの世界観説明も終わり、専用の乗り物に乗って出発した直後。先輩がイラついたように、何かを呟いた。黄色って何のことだろう。

 

「結構雰囲気ありますね」

「あぁ、そうだね……」

 

 真っ暗な建物の奥の方から、ひんやりとした空気が流れてくる。

 まるで、今にも本物のお化けが飛び出してきそうな雰囲気だ。

 

「……シャン、聞こえる? 狩人も──そう。そっちはお願いね」

「先輩?」

「なんだい、後輩くん?」

 

 なんか真剣な顔しながらブツブツ言っていたから、気になって声を掛けたのだが。

 なのに声をかけた瞬間、いつもの先輩に戻ってしまった。どうしたんだろうか。

 

「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか……」

「なに身構えてるんですか、先輩。もしかしてホラー系は苦手でした?」

「別にそういう訳じゃないが……むしろ、わたしは本来脅かす側というか、なんというか……」

 

 歯切れの悪い返事だ。いつもの先輩らしくないな。

 

「先輩」

「わひゃっ!?」

 

 隣に座る先輩の手を、両手で優しく握りしめる。

 すべすべで、柔らかくて、小さくて──なんというか、ずっと握っていたい感触をしていた。

 

「こっ、後輩くん!?」

「大丈夫ですよ、先輩」

 

 先輩の体温が、先輩の鼓動が、握っている手を通して伝わってくる。

 

「先輩のことは、僕が絶対に守りますから」

「……っ!」

 

 向き合いながら、先輩に自分の思いを告げる。ちょっとクサいかもだけど、たまにはこういうのも良いだろう。紛れもない、本心からの言葉だ。

 

「まったく、後輩くんは……そんなこと言われたら、ますます好きになっちゃうだろう」

「ダメなんですか?」

「ダメじゃないが……あぁくそっ、心が繋がる感覚とはコレの事か……!」

 

 真っ赤になった顔を逸らしながら、またしてもブツブツと呟く先輩。

 やっぱり、このアトラクションに乗ってから、なんか様子がおかしいぞ。

 

「先輩、どこか具合悪いんで──」

 

 と、口を開いたその瞬間──乗り物が暗闇を抜けて、最初のホラーゾーンに突入した。

 

「|3ρ!?}‘··||¡©©®⁈‼§£」

「∋>∃$ゝ℃;ςΖΘ仝_>!?」

「Γ(©’<]\ー47!|々Γ〜」

 

 そこは、外国の墓場だった。

 映画で見るような、平たい墓石が建てられた、中世の墓場。

 そこで異形の存在──ゾンビやグール──たちが、楽しそうにダンスを踊っている。

 

「……アイツ、マジ……ホントマジ……」

「先輩?」

 

 なんか俯いてプルプル震えてる。

 本格的に心配になってきたんだが。

 

「げっほげっほ……うわぁ、最近のアトラクションって臭いまで再現してるんですね」

「……認識阻害かけといて良かったよ……」

 

 肉が腐ったような臭いと、魚が腐ったような臭いが合わさって、なんとも言えない『吐き気を催す臭い』を醸し出している。

 これは日本に住んでたら中々嗅げない臭いだぞ。最近の遊園地って凄いなぁ。

 

「……まぁ、後輩くんの身に直接的な危害が及ばなければ、別にいいか……」

 

 そうして、乗り物は次のエリアに進んでいく。

 

「£∋仝$}0*^Ζ⁈£!?」

「®8>ρ4ς6∋(%!」

「!;®℃]?ゝゝヽ|¡〜」

 

 そこは、黄金の蜂蜜が壁を覆っている空間だった。黒い蜂のような生き物が飛び回り、せっせと蜂蜜を集めては、透明な瓶の中に詰めていく。

 ホラーと言うより、どっちかと言えば、おとぎ話に近い光景だった。

 

「……自分の眷属まで駆り出すのか……」

 

 今度の先輩は、なんか白目を剥いて呆れていた。

 そして今回はさっきと違い、本物の蜂蜜みたいな香りが漂ってきている。

 甘い匂いが、昔食べたハニートーストを思い出させてくれた。

 

「なんか、お腹空いてきましたね」

「そうだね……ここを出たらお昼にしようか」

 

 そうして、乗り物は次のエリアに進んでいく。

 

「〜’∋〜’8ρ·§々仝ο>!」

「⁈∃£#06!ー@Θ!!」

 

 最後のエリアは海のど真ん中。

 タコを擬人化したような巨大生物と、黄色い外套を纏った巨大な人影が、取っ組み合いながら戦っている場面だった。

 顔にかかる水しぶきがすごい。これが最新鋭のアトラクションってやつなのか。

 

「なんか、怪獣映画みたいですね!」

「……ソウダネ……」

 

 何故か、先輩はまた白目を剥いていた。

 あ、黄色い外套の人影がタコの巨人を蹴り飛ばした。

 

「よし行け! 避けて、そこで右ストレート!」

「…………」

「はっ、すみません先輩!」

 

 ガラにもなく、巨大生物同士の対決に興奮してしまった。

 昔はよく見てたなぁ、こういう特撮映画。

 

「……アイツ、今度会ったら絶対にシメる」

 

 そうして、乗り物はゴールへ辿り着いた。

 ホラー系って言ってたけど、言うほどホラーじゃなかったな。

 でも結構楽しかったし、満足できるクオリティをしていた。

 

「楽しかったですね、先輩!」

「あぁ……もう二度と乗りたく無いけどね」

「何でですか!?」

 

 足早に建物の出口へ向かいつつ、先輩はため息をつく。このアトラクション、どうやら先輩は気に入らなかったようだ。

 個人的には、すごく面白かったと思うんだけど。

 

 

 その後。

 先輩はヤケ食いと称して、売店のハニーポップコーンを五袋ほど食べ尽くしたのだった。

 いや食べ過ぎだろ。

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