ダンまちはもっと肌色が多い方がいいと思うんだ。 作:黒のトビ
今回、ダンまち17巻のネタバレが含まれます。
問題ないという方だけお読みください。
今回もベル君が酷い目に遭います。
原作でもここまでとは言わずとも脱いでくれないでしょうか。
(どうしてこんなことに…………!?)
オラリオの大通り。
雲一つない快晴、思わず外へ飛び出したくなる陽気で、どこか街並みもいつもよりも輝いて見える。
ダンジョンへ向かう冒険者、露店で買い物する住人、楽し気に駆けまわる子供など、今日も多くの人々が行きかい、活気ある日常の光景が繰り広げられている。
その一画で一人の少年がポツンと佇んでいた。
白髪に赤眼の兎のような印象を受けるその少年は、ヘスティア・ファミリア団長ベル・クラネル。
彼は周囲の楽し気な様子に反比例するようにおどおどと忙しなく周囲を見回し、他者からの視線を恐れる様に小さく震えていた。
だがそれも仕方のないことだった。
なぜなら――――。
ベルは今、一糸纏わぬ全裸だった。
信じられない光景だった。
人通りの多い大通りの片隅で、少年が己の全てを曝け出しているのだ。
誰もが服を着ている中で、ベルだけが何も身に着けていない。快晴で暖かな陽気だというのに、彼だけは極寒の中に放り込まれたかのように身を縮こませている。両手で必死に股間を覆い隠し、少しでも視線から逃れようと身をくねらせていた。
しかし、ここで不思議なことが一つ。
人通りの多い大通りで少年が全裸で立っているというのに、誰一人として彼に視線を向けないのだ。まるでそこに存在していないかのように、ベルを無視してそのまま素通りしていく。
なぜそのような不可思議なことが起こっているのか。
それはもちろん――――。
「クラネルさん。そろそろ行きますよ。」
アスフィ・アル・アンドロメダの仕業だ。
「きゃっ!?ア、アスフィさん、ちょっと!?」
グイっと腕を掴まれた拍子にポロリと零れ落ちた
小振りなそれを必死に片手で隠し直しながら、腕を引かれたベルはアスフィと共に人ごみの中へと歩いていった。
ベルが何故このような事態に陥っているか、それは少し前まで遡る。
◇―――――――――――――――――――――――――――
「研究が行き詰まってます。」
「……そうなんですか?」
アスフィの唐突な発言に、どう反応していいか分からなかったベルがどこか外れた返事をする。
ここはヘルメス・ファミリアの団長室。
今日も今日とてアスフィ達は密会を行い、人には到底お見せできない秘め事を行っていた。
満足気にソファーに座るベルは、つい先程までアスフィの手で
ここ最近はアスフィもより大胆になってきており、今日はその平均よりも大分豊かな生おっぱいを丸出しにしたまま
大満足の
「どうしてもおちんちんを大きくする方法が思い浮かばないんです。」
一応言っておくが、彼女の台詞の意味は
現に、今日すでにベルの
「クラネルさんから提供していただいたデータをあらゆる角度から検証しましたが、実証実験が出来ない以上何をどうすればどういう反応になるかもわかりません。
これ以上を求めるにはもっと別角度のデータが必要です。」
彼女が言うデータとは何か。
それは、以前ベルがアスフィに依頼したとある事柄に関係している。
その内容は、ベルのコンプレックスである小振りな
ベルはこの依頼を完遂してもらうために、自分の
そのデータは現在ベルの目の前に並べられている。
ボードに張り付けられた自分の
「別角度のデータというと?」
ベルとしても、この依頼はなんとしても成功してほしいと思っている。以前からコンプレックスであった平均よりも小振りで先っぽまですっぽりな
理由としては、比較対象の増加が一つ。
オラリオに来る前の故郷の村では、住人の数の違いもあり
もう一つは、異性に見られるハプニングが増えたためだ。
以前のダンジョンの温泉での出来事以来、ベルは知り合いの異性の前で股間を露出する機会が激増した。
今日のようにアスフィに
異性に見られるのはもうどうしようもないと諦めたが、見られるなら見られるでもっと立派な方がいい。
そして一番の理由は、想い人が出来たことだ。
ベルはダンジョンで助けられたことが切っ掛けでアイズ・ヴァレンシュタインに一目惚れした。彼女に意識してもらうために実力を磨いてきたし、実際レベルもかなり上がったと自覚している。
しかし、レベルはとんとん拍子に上がっているのに反して、
ベルも思春期の男の子だ。彼女と恋仲になりたいし、なれたなら
幸なことに今のところアイズの前で
気にしなければいいが、ガッカリされたり、万が一鼻で笑われでもしたらベルは二度と立ち直れないだろう。
そうならないために、
実のところ、ベルは憶えていないが、すでにベルはアイズの前で
その時の興味津々な反応を見る限り、ガッカリされることも鼻で笑われることもないのだが、ベルには知る由もなかった。
「クラネルさん。こんな話を知ってますか?」
静かに語りだしたアスフィの顔は、どこか蠱惑的な色を孕んでいた。
「よく、女性の胸は異性に揉まれると大きくなる、と言われます。」
突然語られた全く関係ない話に、ベルは軽く混乱した。
混乱しながらも、内容が内容だけについつい男の本能が働き、視線が動いてしまう。
そう、ショートタンクに窮屈そうに収まるアスフィの豊かな双丘に。
「……アスフィさんも誰かに揉まれたんですか?」
それはポロリと零れた疑問だった。
普通に考えてセクハラ以外の何物でもないが、ベルにそのような意図はなかった。アスフィの平均を大きく上回るサイズの乳房に、ついそんな言葉が口をついて出てしまったのだ。
「……あっ!?いえっ、すいません!変な意味じゃなくて!?」
「くすっ。生憎私は今まで誰にも揉まれたことはないですね。」
自身の問題発言に気が付いたベルが慌てて弁明するが、その様子を見るアスフィは怒るどころかクスリと微笑むと、腕を組んで乳房を寄せてあげて、ただでさえ豊満なそれを強調した。
緩めの首元から覗く、深く雄大な谷間に抗いようもなくベルの視線が吸い寄せられる。
「なんでしたら――――。」
自身の最大の武器を見せつけながら、まるで娼婦のような妖艶な表情を浮かべるアスフィが、ベルの耳元に唇を近づけて囁く。
「もっと大きくなるか試してみますか?」
囁かれた言葉の意味を理解したベルの顔が真っ赤に染まる。
口をパクパクさせるが、何も言いたい言葉が出てこなかった。
まず間違いなく冗談であるはずだが、それはあまりにも魅力的過ぎた。
ベルの視線はもうショートタンクに包まれた乳房から放すことが出来なくなっていた。
薄い布を押し上げるそれの中身を幻視する。今まで幾度か見ることを許された白く丸く大きい双丘も、その先端で布地につんと突起する先端の美しい桜色も、ベルの脳裏にはしっかりと記憶されていた。
しかし、色も形も分かるが、その感触に関しては未知の領域だった。
柔らかそうである。
張りがありそうである。
もしそれに触れることが出来るのなら、いったいどんな感触がするのだろうか。
そんな想像がベルの頭の中を埋め尽くす。
「――――あっ!?」
するとどうだろう。
年上の美人なお姉さんに蠱惑的なお誘いを受けた少年が行き着く先などたった一つだ。
そう――――。
ベルの丸出しのままだった
ベルは羞恥の余り、顔を両手で隠した。恥ずかしすぎて
正直な所、ベルはアスフィの前で
アスフィと会うときは毎回その手で
しかし、今回の
いつもはアスフィの手で刺激されたことによる
自分のスケベ心が剥き出しになったように感じて、強烈な羞恥心を感じてしまったのだ。
「ふふっ、話の続きはこれをどうにかしてからにしますか。」
アスフィは微笑みながら、慣れた動作で
指の隙間からそれを眺めるベルは心臓をドキドキと高鳴らせ、
◇―――――――――――――――――――――――――――
「さて話を戻しますと。
女性の胸と同じように、男性のここも様々な刺激を受けることで成長するのではないかという仮説です。」
そう説明しながら、
さすがに
「刺激……ですか。」
「はい。
形状から得られるデータだけでは正直限界があります。
これからは外部刺激による反応も取り入れていかなくてはいけません。」
そう語るアスフィの表情は真剣そのものだ。
ベルも呆けていた顔を真剣なものへと切り替える。
アスフィは取り繕うのがとても上手なのだ。
「刺激を与えてクラネルさんのおちんちんがどういった反応を示すのか、そういったデータを収集することで新しいアプローチを試みることが出来るはずです。」
「具体的には何をするんですか?」
「例えば、たくさん触られたり、見られたり……。」
「……アスフィさん。その、自分で言うのもなんですけど……。」
アスフィの言う刺激というもの聞いたベルはやや頬を染め、何処か気まずそうな表情を浮かべる。
「僕、今でも十分に見られたり触られたりしてると思うんですけど……。」
そう、自分で言う通り、ベルは
今まさにアスフィに
刺激というには、その内容はいつも通りに思えた。
本来、それが普通に思えてしまう程に脱いでいるベルが異常なだけなのだが。
「ええ、わかっています。
ですので今回は、また違った手法を考えています。」
勿論そんなことはアスフィには分かりきっていることだ。ベルの
「触られるとなるとまだ準備することが多いので、今回は見られる刺激の方で行きます。」
ベルが怪訝な表情を浮かべる。アスフィの言っている内容がよく理解できなかった。
これまでよりも頻繁にヘスティア達の前で脱ぐということだろうか。
アスフィは、そんなベルの瞳を真っ直ぐに捕らえ、真剣な表情で告げた。
「クラネルさん、あなたには――――
全裸のまま、オラリオの大通りを歩いていただきます。」
「…………ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
ベルの叫び声が響き渡る中、アスフィは頭の中でベルを言い包める言葉を組み立てていた。
◇―――――――――――――――――――――――――――
話は冒頭へと戻る。
全裸で人ごみに連れてこられたベルは、ビクビクと小動物のように周囲を窺いながら歩いていた。
その手を取るアスフィは、ベルの態度を気にしていないかのようにより人が多い方へとどんどん歩みを進めていった。
「ア、アスフィさん!やっぱりこれはちょっと!?」
「今更何を言っているんですか。
研究を進めるには必要なことだって、クラネルさんも納得したじゃないですか。」
「そ、そうですけどぉ……。」
「それに、
そんなことを言われても堂々とすることなどできないと縮こまるベルの頭には、シンプルなデザインのサークレットが装着されていた。
これはアスフィが作成した魔道具だ。
その効果は装着者の透明化。つまりは
この魔道具によって、騒ぎになることなく全裸のまま人ごみを歩けているのだ。
「これは見られているという状況に置かれていることが重要なんです。
私にもあなたの姿は見えていなんですから、手を離さないでくださいね。
あと、ちゃんと見せる様に歩いて下さい。手で隠したりはしてないでしょうね。」
「だ、大丈夫です!」
返事をしながら
アスフィはその様子を見て、密かに唇を釣り上げた。
当然、ベルの姿が見えていないというのは嘘である。他の人には見えていないのは本当だが、アスフィのかけている眼鏡を通すと、透明になっているベルの身体がはっきりと見える様になっているのだ。
おどおどと不安そうにしながらも、必死に
なにせあの純情なベルが、こんなにも人通りが多い場所で、自らの意思で
出来ることなら今すぐに自室にトンボ返りして自慰行為に耽りたい。それほどに興奮していた。
しかし、こんな機会は滅多にないことだ。ここで切り上げてしまうにはあまりにももったいない。
そんなSっ気を発揮したアスフィは、怯えるベルの手を引きオラリオの街中を歩き続けた。
◇―――――――――――――――――――――――――――
「むっ。」
「あら。アンドロメダさん。」
「おや。」
「――――っ!?」
そうやって通りを歩いていると、前方から歩いてきた知り合いと出くわした。
二人に前に現れたのは、「豊穣の女主人」の従業員であるシルとリューだった。
「奇遇ですね。お散歩ですか?」
「いえ、ちょっとした用事がありまして。そちらは?」
「そうなんですか。私達は買い出しですよ。
ね?リュー。」
「ええ。」
軽い世間話を繰り広げるアスフィ達であったが、傍らのベルは気が気ではなかった。
なにせ、今の彼は全裸だ。
何かの拍子で透明化が解けてしまいでもしたら、二度と「豊穣の女主人」に通うことはできないだろう。
それどころか二人に軽蔑されて、顔を合わせることすらできなくなるかもしれない。絶対にそんな悲劇は避けなければならない。
ベルはアスフィを信頼している。
アスフィが作った魔道具に不具合などはないと信じてもいる。
しかし、それでもベルの背中には嫌な汗が流れていた。
何故なら、談話しているリューが透明になっている筈のベルの方へとちらちらと視線を向けてくるのだ。
(な、なんでリューさんこっちを見てるんだ!?
まさか、見えてる!?
いや、見えてたらもっと反応するはず!)
(何か気配を感じる……?)
ベルが身に着けている魔道具は、身体は透明にしてくれるが気配を消すなどの機能はない。だから、気配を感じ取れる高レベルの冒険者などにはそこになにかいると感づかれてしまう可能性があった。
訝し気に視線を上下させるリューに、ベルはえも言われぬ感覚に陥る。
見られていないのに見られている。
そんな不思議な感覚がベルの肉体を敏感にし、リューの視線が実際に身体を撫でているかのような錯覚を起こす。
嫋やかな指先で撫でられているような感覚は、体験したことのない快感を生み出し、思わず股間がふっくらとし始めた。
「すいません。
用事もあるのでそろそろ失礼します。」
「そうですか。ではさようなら。」
「はい。さようなら。」
ベルの股間の変化に気が付いたアスフィは、会話を切り上げ足早にその場を離れる。
ここで
ただでさえ不審がられているのだ。これ以上は拙いと感じたアスフィの行動は早かった。
◇―――――――――――――――――――――――――――
「ではそろそろ帰りましょう。シル。
…………シル?」
去り行くアスフィの後姿を見送ったリューがシルに声をかける。
アスフィの隣に何かがいるような気配を感じたが、彼女は
不審な感じはあったが、別に嫌な感じはしなかったのでとりあえず問題なしとしたリューだったが、シルからの返答がないことに疑問を覚え彼女の方へ視線を向けた。
「シ、シル……?どうしました?」
視線を向けた先にいたのは、リューがよく知るシルではなかった。
その美しい顔に、常に朗らかな微笑みを浮かべている彼女が笑みを捨て去り、真顔でアスフィが去っていった方角を見つめていた。いや、もはや睨みつけていると言っても過言ではないだろう。
初めて見る親友の表情に、少し怯えたように恐る恐る声かけたリューの声にも何も反応を返さないシル。
彼女は、その心の内に彼女には似つかわしくないドロドロとした感情を蠢かせていた。
(アスフィ・アル・アンドロメダ……っ!)
ギリっと食いしばった歯が音を鳴らす。
彼女は先程のアスフィに、悶え転げまわるような怒りを抱いていた。
自分のお気に入りである
そう。シルはアスフィの隣に立つベルの姿がはっきりと見えていた。
透明になっていようと、シルの目にはそんなことは関係ないと言わんばかりにくっきりだった。
知り合いに会ってしまったことに驚いた表情も、女性の前で
アスフィに手を引かれた全裸のベルの姿を見たシルは、表情にこそ出さなかったが内心物凄く驚いていた。
なにせあの純情無垢なベルが、こんな人通りの多いところで全裸を晒しているのだ。
頭に嵌められた魔道具を見て、すぐにベルが他者に認識されていないことに気が付いたので、自分も他の者と同じように見えてないふりをしたが、出来ることならベルの恥ずかしい部分をガン見したかった。
幼い
ベルのあられもない姿に興奮しながらも、隣に立つアスフィにもしっかり意識を向けていた。
彼女はシルにとって、いまだかつてない複雑な感情を向ける対象だった。
ベルやリューのようなお気に入りとは違う、むしろマイナスな方向性の感情だ。
アスフィは自分のお気に入りであるベルを言葉巧みに騙くらかして、様々ないやらしい行為をさせていた悪い女だ。
自分の獲物を掠め取られた気分だった。そういったことは自分が彼と行うはずだったのだ。
シルは、彼らの行為を覗き見る度に、悔しさと興奮でいっぱいだった。
ベルの小振りな
ベルが
ベルが
そして何より、お気に入りの
シルが彼女に向ける感情それは、怒り、嫉妬、同調、そして――――――――僅かな尊敬。
そう、尊敬だ。
彼女は、自分のような【魅了】があるわけではない。自分よりは劣るものの確かに美しい容姿をしているが権能には遠く及ばない。
しかし彼女は、その頭脳を持ってベルを操り、ついにはベル自身の意思で体を差し出させるほどに調教してしまったのだ。
これは彼女の長い生の中でも初めて見る手管だった。
神々すら飛び越えた変態だとドン引きした。
どんな魔女よりも悪辣だと寒気を覚えた。
そして、自分にも出来ないような手腕を持つ彼女に敬意を抱いた。
(ええ、認めましょう。
確かに貴女はほんの一部、ほんの少しとはいえ私の想像を超えた。)
「シル?聞こえていますか?」
(アスフィ・アル・アンドロメダ。貴女のことを私のライバルとして認めましょう。)
「シル?シル~?」
(だから…………。)
「シル!?大丈夫ですか!?」
(もっとあの子の恥ずかしい姿を私に見せてね。)
「鼻血!?鼻血出てますよ!?」
真剣な顔で虚空を見つめながら鼻血を垂れ流すシルは、大慌てしたリューによって「豊穣の女主人」へと連れ帰られた。
◇―――――――――――――――――――――――――――
「アスフィさん。本当に見えてないんですよね。」
「ええ。ちゃんと透明になってますよ。
ですが、姿は消えても気配や音が言える訳ではないので、気配察知に優れる高位の冒険者であれば何かがいると気が付くこともありますし、声を出せば一般人にも気が付かれてしまうでしょうから気を付けてくださいね。」
シル達と別れたベル達は、大通りを進んでより人通りの多い場所へと差しかかっていた。
ベルはリューに気が付かれかけたことで、魔道具の効果を再確認していた。
どこか不安そうな表情を浮かべながらも、アスフィの言葉に気を引き締める。
「さすがにこれ以上知り合いに遭遇するのはちょっと……遠慮したいです。」
リューの反応によほど参ってしまったのだろう、愚痴っぽい言葉を溢しながら角を曲がろうとしたその時。
「あははっ!」
「――――っ!?」
突然、角から女の子が飛び出してきた。
一瞬驚愕したものの、ベルも高レベルの冒険者だ。
女の子にぶつかることなく、ひらりと身をかわすことに成功した。
「――――痛っ!?」
しかし詰めが甘かった。
女の子との接触こそ避けられたものの、身をかわした拍子に頭を看板にぶつけてしまった。
思わず漏れ出た声に、咄嗟に両手で口を塞いで、周囲を見渡すベル。
幸いなことに、メインストリートから少し外れた場所だったため周囲に人影はなく、声を聞かれることはなかったようだ。
「……ふぅ。」
安堵の息を吐く。
とそこで、誰かの視線を感じたベルはそちらに顔を向ける。
するとそこには、先程避けた少女の姿があった。
ベルよりも幾分年下の、十歳に満たないくらいの可愛らしい少女だ。
少女とばっちりと目が合った。
透明になっている筈なのに、目が合ったことにベルの思考が固まる。
少女は、ベルの顔に向けていた視線を徐々に下に下げていき、とある一点でピタリと止まった。
そこをじーっと見つめた少女は、ポツリと呟いた。
「…………ゾウさん。」
「――――っ!?」
咄嗟に股間を隠すベル。
透明になっている筈なのに、なぜかこの少女にはばっちりと見えてしまっている様子だ。
羞恥と驚愕で混乱すベルだが、ふいに頭部の違和感に気が付いた。
頭にはまっていた魔道具が、頭をぶつけた拍子に取れかかっていたのだ。
どんな高性能な魔道具でも、きちんと装着していなければ効果を発揮しない。
魔道具が外れた結果、ベルは見知らぬ少女の目の前で全裸を披露する羽目になったのだ。
「っ!!」
「ゾウさん!!……あれ?ゾウさん?」
股間を隠していた手を放し、素早く魔道具を装着し直す。
再び露わになった
「っ!!っ!!っ!!」
一方ベルは息も絶え絶えだった。
危機を脱したベルだったが、まだ少女は目の前にいる為、漏れ出そうになる荒い息を必死に抑え込んでいた。
見知らぬ少女。それも自分よりも年下。そんな幼子に
なにせこれが露見してしまった場合、少女に裸体を見せつけて興奮する変態という、罪状の中でも最底辺と言えるレッテルを与えられる可能性が高いのだ。
そんなことになるくらいだったら死んだほうがまだマシと言えた。
「お母さ~ん!ゾウさんがいたのに消えちゃった!」
「あら、ガネーシャ様でもいたのかしら?」
「……………………っはぁっ!はぁっ!はぁっ!」
少女が
本当に危機一髪だった。
今まで生きてきた中で最大の恐怖を感じた。
ダンジョンでミノタウロスに追いかけられた時よりも死を感じたかもしれない。
「……アスフィさん。帰りましょう!もういいですよね!?」
ベルはもう限界だった。
これ以上全裸で外を歩くのは無理だ。
死んでしまう。
本気でそう感じていた。
「そうですね。データもある程度は集まったでしょうから、ここらへんで切り上げましょうか。」
その言葉に、今日一番の笑顔を浮かべたベルは、アスフィの手を引いて足早にヘルメス・ファミリアへと足を向けるのだった。
◇―――――――――――――――――――――――――――
「あら、貴方は……。」
「……こんにちは。」
「~~~~~~~~っ!?」
ベル、人生最大の危機を迎える。
ヘルメス・ファミリアへと向かっていたベル達が出くわしたのは、今もっとも会いたくない人物だった。
金髪の美少女と燈色の髪の美少女。
ベルの想い人であるアイズ・ヴァレンシュタインと、ベルを目の敵にしているレフィーヤ・ウィリディスだ。
普段であれば、アイズと出会えて嬉しくないなどということはないのだが、今は状況が悪かった。
もしアイズに自分が全裸で街中を出歩いていることがバレたら、それこそ破滅だ。
決してバレないよう、心臓の音すら止まれと気配を殺すベルだったが、相手は彼の剣姫だ。甘い相手であるはずもなかった。
「……?そこになにかいる?」
「――――っ!?」
ドクンと心臓が爆発したかのように高鳴る。
恐怖で体が震え、背中に氷よりも冷たい汗が伝る。
死刑宣告を受けた罪人のような心持で、目の前が真っ白になった。
「ええ、今ちょっと実験をしてまして。
特殊なモンスターが透明になって隣にいるんですよ。」
助け舟を出したのはアスフィだ。
然しものアスフィも、この状況で見て見ぬふりは出来なかった。
この状況を作り上げた原因はアスフィだが。
「モンスターッ……?」
「モンスターがいるんですか!?」
モンスターという言葉で、冒険者であるアイズ達が身構える。
特にモンスターを嫌うアイズの反応は素早かったが、その警戒もすぐに困惑に変わる。
モンスターがいるというのに、嫌悪感が湧かないのだ。
それどころか、目の前の気配にはどこか好意すら感じた。
今までと違うその感覚にアイズは戸惑うばかりだった。
「安心してください。
このモンスターは危険性は一切ありません。
ヘルメス・ファミリア団長として保証します。」
「そうなんですか?」
危険性のないモンスターと言われてもピンときていないレフィーヤだったが、アスフィほどの人物が言うのであればそういうものなのだろうと納得した。
アスフィは、何とか穏便にこの場を離れようと考えを巡らせるが、いい案を思いつく前にアイズが予想外の行動に出た。
「っ!?」
ベルに触れようと手を伸ばしたのだ。
すっと自然に伸ばされた手に、アスフィの制止も間に合わなかった。
ベルは自分に近付いて来る想い人の手に、どうすべきか頭を高速で回転させる。
避けるのは間に合わない。
かといってこのまま触れられれば、モンスターではなく人間だとバレてしまう可能性が高い。
どうする。
どうすればいい。
ほんの一秒にも満たない刹那の間に、ベルの思考は加速する。
ベルが出した結論は。
「っ――――!」
「ぶっ!?」
「あ、結構すべすべ。」
アスフィはその光景を見て、思わず吹き出すのを堪えきれなかった。
だが彼女に非はない。
誰だってこれを見たら同じような反応をする。
むしろアスフィは堪えられた方である。
なにせ――――。
アスフィの視線の先には、全裸でブリッジをするベルの姿があったのだから。
ベルはアイズの手が触れる直前、その場で仰け反りブリッジの体勢を取った。
姿が見えているのであればそれはただのブリッジに過ぎないが、姿が見えていないのならブリッジをしたベルは四足歩行のモンスターと誤認される可能性がある。
そう判断したベルの、渾身のブリッジであった。
それが幸いしてか、ベルの身体に触れたアイズはそれが人間であるとは気が付いていない様子だった。
ギリギリのタイミングで致命傷を逃れたベル。
しかし、その代償は大きかった。
今のベルは人通りのある街中で、全裸で、想い人の目の前でブリッジをしている。ブリッジの格好上、
そう、目の前にいるアイズとレフィーヤに向けて、剥き出しの
ベルは少しでも冷静にならないように必死だった。
ほんの僅かでも正気を取り戻してしまえば、恐怖で動けなくなってしまうという予感があった。
もし、魔道具が外れて透明化が解けてしまったら。
もし、今の自分の格好を二人に見られてしまったら。
もし…………アイズに嫌われてしまったら。
グルグルと混乱する頭で、この状況を無事に乗り切る方法を模索するも、良い案など出てくるはずもなし。
ベルが混乱し続ける間も、事態はどんどん悪化の一途を辿る。
「あ、ほんとにすべすべ。
これ前足ですかね?」
「っ!?」
アイズに続いてレフィーヤまでもが触りだしたのだ。
アイズとレフィーヤの柔らかな手が、ベルの太ももを撫でる。普段他人に触れられることのない部分を撫でられて、ゾクゾクした寒気のような感覚が背中を通り過ぎる。そしてその感覚は、さらにベルの焦燥を掻き立てて行く。
事態は更に悪化する。
二人の手が、少しずつ足の付け根へと動き出した。
「~~~~っ!?」
徐々に徐々に
そして――――。
「――――ぁ。」
その小さな悲鳴は誰にも届くことはなかった。
アイズの、レフィーヤの指が、剥き出しの
自分の最も敏感な部分で感じる想い人の指の感触に、恐怖のような、歓喜のような、産まれてこの方感じたことのない感覚にブルリと震える。
今この瞬間が夢か現実化も曖昧だ。
それでも、
「これ……頭かな?」
「みたいですね。」
ムニムニと無遠慮なまでに
アイズとレフィーヤの二人同時に与えられる刺激に、ベルは早くもギリギリだった。
「これは鼻?」
「変な形の頭ですね。」
「うん。それに凄くちっちゃい。」
「そうですね。ちょっと小さ過ぎますよね。」
二人が言っているのは、身体に対しての頭の比率のことであり、決して
しかし、実際に触られているベルからすれば、違うと分かっているのに
羞恥と悔しさに顔が歪むのを抑えきれなかった。
そんなベルの気持ちなど知る由もない二人は、どこか興奮した様子でさらに
「ん……これは、玉?」
「小さな球が二つ?……あっ!?これってもしかして目ですか!?」
「あ、いえ。それは目ではないです。でも敏感な部分なので優しく触ってください。」
「……そうなんですか。頭に玉が付いてるモンスター?」
「でも、これプニプニしてて気持ちいいよ。」
「あ、ほんとですね。」
楽し気に
今まで
そんな初体験の快感に、ベルの
ムクムクッ。
「あれ?……なんか、お鼻大きくなってる?」
「ほんとですね。それにすごく硬い。」
「あ~、え~と。この子は喜ぶとそこが硬く大きくなる習性を持ってるんですよ。」
「そうなんだ。じゃあ、もっと撫でてあげる。」
もともとすぐ近くを触っていたので当然のことだった。
固くそそり立った
姿は見えないのだが、彼女は今掴んでいるものに、どこか既視感を感じていた。
自分はどこかでこれを触ったことがある。
それが何なのかどうしても思い出せず、記憶を呼び起こそうとさらに激しく
一方レフィーヤは、アイズと同じくどこかで触れたことがあると既視感を感じていたが、
ベルは、何故か経験があるような動きで
それが、致命的な間違いであったことを、彼はすぐに実感することこととなる。
「あ!これもしかして口ですか?」
「おふっ――――!?」
ベルの口から思わず声が零れた。
「鳴いた!やっぱりこれが口なんですね!」
レフィーヤが楽し気に
その度にベルの身体がビクンと震える。
「ん~、これ喜んでるんでしょうか?なんか震えてるんですけど。」
「喜んでるみたいだよ。ここ、さっきよりも硬くなってる。」
「そうなんですね。でも――――
随分と
そういってレフィーヤはベルのお尻の中心にある窄まり指で撫でる。
そう、レフィーヤが口だと勘違いしている部分はベルのお尻の穴だった。
他人どころか自分ですら触ったことのない部分を触れられて、ベルの身体は過敏に反応した。
穴の周囲を撫でられる度に痙攣を起こし、未知の快感に
レフィーヤの指は遠慮がなかった。
肛門の皺の一本一本をなぞるように撫で回したかと思ったら、触れるか触れないかの柔らかいタッチで撫でたり、挙句の果てには中に指を入れようとまでしてきた。
ベルはキュっと肛門に力を入れて必死に閉める。
油断するとレフィーヤの指が侵入しようとしてくるのだ。
まるで、かつて自分が許可なくお尻の穴を撫でられた復讐であるかのように、それはもう執拗だった。
今にも
そんな彼に、更なる危機が訪れる。
スルッ。
「っ!?」
ブリッジという頭を地面に向ける姿勢の所為であろう、魔道具がするすると抜け落ちようとしていたのだ。
ベルの心境は、もはや絶望という言葉でも足りない。
これが外れたら最後、先程の恐怖が現実となって降り注ぐのだ。
徐々にずり落ちてくる魔道具は、死へのカウントダウンと等しかった。
「「…………!」」
「っ~~~~!?」
ベルが込み上げる射精感に抗い身体を痙攣させると、何かを感じ取ったのか、恥部を弄り回す二人の手の動きがより加速する。
頭は絶望で氷のように凍えているのに、股間は燃え滾るような熱を纏っている。
言葉にすらできない異常過ぎる状況に、真っ白になったベルの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
もうどうなってもいいや。
度重なる異常事態に、限界を迎えたベルの精神が屈しようとしていた。
その気持ちが必死に抑え込んでいた肉体の緊張を、ほんの少しだけ緩めてしまった。
その瞬間――――。
つぷっ。
僅かに締め付けが緩んだ一瞬に、レフィーヤの指が爪先だけとはいえ肛門内部に侵入した。
カランッ。
それと同時に魔道具が外れ落ち、透明になっていたベルの裸体がアイズ達の目の前に現れる。
「「――――あっ!?」」
突然現れたモンスターの姿に、驚きの声が上がる。
そしてそれ以上に、目の前にある自分が触れているものへ視線が集まった。
アイズが握りしめている
それぞれがそれを視認し、見覚えのあるそれが何であったか高速で記憶を掘り起こしだす。
その記憶が呼び起さようとした寸前――――。
「――――はぅっ!!」
ベルの
「「きゃっ!?」」
元気に飛び出した精液は、目の前にいたアイズとレフィーヤに向かう。
しかし、いくら至近距離から突然発射されたとはいえ、二人は歴戦の冒険者である。華麗に身を翻し、自分に向かってきた精液を躱すことに成功した。
「っ!申し訳ありませんが用事があるのでそろそろ失礼いたします!」
精液を躱した瞬間、二人の注意が一瞬ベルから離れた。
そこからのアスフィの動きは第一級冒険者であるアイズすら超えていた。
外れた魔道具をベルに装着し直し、
「……なんだったんでしょうか?」
「……さあ?」
残された二人の頭には疑問だけが残った。
「……でも、何だろう。
あのモンスター、どこかで見たことある気がする。」
「……私もです。」
「「う~ん?」」
首を傾げる二人の顔は、何故か分からないが真っ赤に染まっていた。
見てはいけない、それでいて凄く見たかったものが見れてしまったかのような、奇妙な満足感があった。
そして何より、あれを見てから妙に体が熱い。
下腹部が熱を持ち、もじもじと足を擦り合わせる。
端的に言ってムラムラしていた。
それを自覚することなく、二人は真っ赤な顔のまま家路についたのだった。
◇―――――――――――――――――――――――――――
「すぐに助けられなくて申し訳ありませんでした。」
「…………。」
ヘルメス・ファミリアに無事帰還したアスフィ達は、団長室でほっと息を吐いていた。
アスフィが先程のことを謝罪するが、ソファーに腰掛けるベルはそれが聞こえているのかも定かではない様子でボーっと虚空を見つめていた。
彼の格好は外を歩いていた時と変わらず、いまだ全裸のままだった。
「とりあえず、今回のような危険な実験は今後控えますので、今日はもう帰っていただいても大丈夫ですよ。」
「……はい。」
のそのそと立ち上がって服を手に取るベルだったが、その表情はいまだ夢現のような状態だ。
「……見ていた限り、ギリギリヴァレンシュタインさんには見られていなかったみたいですので大丈夫だと思いますよ。」
「っ――――!」
アイズの名を聞いて、ボーっとしていたベルの身体がピクンと震える。
そして――――。
ムクムクッ。
ベルの
「……今回の謝罪も込めて私がすっきりさせて――――。」
「いえっ!大丈夫です!!」
「そ、そうですか?」
「はい。それはまた今度お願いします。
今日は……今日だけはこのままでいいんです。」
そういってベルは素早く
残されたアスフィは、首を傾げながらも今日の映像を鑑賞するための準備を始めるのだった。
◇―――――――――――――――――――――――――――
ベルは痛い程に硬く起立した
いつものベルだったら、ここまで
なぜなら――――。
股間に残る
それを思い起こすだけで、ベルの
もう少しだけ。
今日の内だけでも、この感触を
結局、興奮しすぎたベルは帰宅途中で限界に達し、彼が帰宅後真っ先に行ったのは、汚れたパンツをこっそりと洗濯することだった。
最近初めてXファイルを観て驚きました。
あれってほとんど事件解決してないんですね。