※この作品はR-18です。

ダンまちはもっと肌色が多い方がいいと思うんだ。   作:黒のトビ

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アニメダンまち4期最終回を記念して書き始めたら、こんなに時間がかかってしまった。

相変わらずベルくんの”ベルくん”に焦点を当てた話です。


OVAⅢ(サービス増量中)

 突如、迷宮都市(オラリオ)に出現した温泉施設──『天然温泉・お風呂の神様ケヒトの湯』。

 天然温泉を謳うそれは、迷宮都市の住民の憩いの場として大盛況していた。

 ヘスティアファミリアの面々も、極楽の湯を楽しむために揃ってケヒトの湯を訪れていた。

 そんなケヒトの湯に怒りを爆発させた者がいた。

 ミアハファミリアのナァーザである。

 ディアンケヒトが作り上げた温泉施設は、ナァーザが長期に渡り温めていた計画を横取りした物だったのだ。

 迷宮都市の街中で天然温泉などが湧き出るわけがないことを理解しているナァーザは、そのインチキを暴くべく、ケヒトの湯への潜入を決行する。

 潜入メンバーはナァーザを初めとした主神ミアハ、ダフネ、カサンドラのミアハファミリア一行。どこからともなく現れて悪乗りする神ヘルメス。なし崩し的に巻き込まれたベルとヴェルフの7人。

 陽動と本命に分かれて潜入する作戦を立て、ベルは陽動班を担当することとなる。

 ベルがヴェルフ、ヘルメスと共に浴場で騒ぎを起こさんと男湯に突入する寸前、良からぬことを企んだヘルメスが行き先を女湯に変更し、無理やり女湯に連行されることとなった。

 当然、女湯は騒然とし、三人は散り散りになって逃亡したのだった。

 

 

 

 

 

「いたか?」

「いえ、こっちの方は……」

「総動員で物陰を探すか……」

 

 己を探している店員の足音が遠ざかっていくのが聞こえる。

 草陰に隠れてそれを聞いていたベルは、ドキドキと激しく鼓動する胸を押さえながらホッと安堵の息を吐いた。

 先程まで散々店員に追い掛け回されている最中、咄嗟に飛び込んだ草むらによって命辛々難を逃れることに成功した形だ。

 

 一息ついたことで冷静さを取り戻したことで、これからのことを考える余裕のできたベルは思わず頭を抱えてしまった。

 浴場故に湿度が高く、蒸し暑さすら感じる中を駆け回ったせいか、全身にうっすらと汗が浮かんでいたが、自分が陥っている絶望的な状況を思うと背筋が冷たく待っていくのを感じる。

 

 今の彼は女湯に不法侵入した変質者という立場に置かれている。

 たとえそれがヘルメスによって強制的に放り込まれたと主張しても、それを信じてもらえる可能性は限りなくゼロに近いだろう。

 更には、今の彼の格好は、ピンクの長髪のカツラを装着し、服装は下着一枚というやや変態チックな状態だ。

 顔すら隠れておらず丸出しである。知り合いに出会いでもしたら正体を隠すことはできないであろう。

 他二人はマスクを被っているのに、何故自分はカツラだけなのだ。

 捕まれば最後、明日から二つ名は【変態】と成り果てる。

 それは決定事項と言えた。

 

 そんな状況だというのに。

 

 そんな状況だというのにだ。

 

 ベルはわかりきっている結果を知りながら、それでもなおそうじゃなければいいと思いながら視線を下に下げる。

 

 

 その先では、自身の股間が自己主張するかのように下着を突き上げていた。

 

 

 どうしてこのような状態になっているのか、原因ははっきりしている。

 この草陰に隠れるまでの間、ベルは散々女湯の中を走り回っていたのだ。そこまでの道中で見た光景は正しく桃源郷と言えた。

 

 元々ベル達が侵入した時点で避難誘導が行われ、女性客の約半数は脱衣所などに避難していたが、面白がって居残っていた女性も多くいた。

 男が女湯に侵入しているというのにそれを面白がるような者達だ。居残っていた殆どがアマゾネスなどの、性に開放的な女性ばかりなのは自然な流れだったと言える。

 大半はタオルなどで体を隠していたが、濡れて体の線を浮かび上がらせるタオル一枚の女性は、唯でさえ純情なベルにとっては刺激的な光景であった。

 中には、自らの裸身を一切隠すことなく見せつけてくるような女性すらもいたのだ。

 

 目を逸らし、見ないようにできればよかったのだが、生憎とここは浴場。濡れた足場は滑りやすくなっており、目を閉じながら走るなど危険行為でしかなく。

 追われている身としては、いつ何時追っ手が現れるか分かったものではないので、周囲を警戒しないわけにはいかず、どうしても女性達が視界に入ってくる。

 

 大きい、小さい、褐色、色白、美人系、可愛い系、etc.。

 

 あっちを見てもこっちを見ても、どこまで行ってもピンク色の景色はベルの頭を湯だたせるには十分な威力を持っていた。

 

「あああぁぁぁぁぁぁ…………。」

 今しがた見てしまった光景が蘇り、ベルは顔を真っ赤に染めながら頭を抱える。

 心なしか股間のテントも主張を増したように見える。

 

 今は絶望的な状況を切り抜ける方法を考えるよりも先に、このいきり立った股間をどうにかすることが急務であった。

 捕まった折には、唯でさえ女湯に侵入した男という称号が待っているのだ。もしその男が股間をギンギンにおっ勃て(レベルアップし)ていたら……?

 

 街の人に白い目で見られる、などというだけでは済まないだろう。迫害されるという扱いを受けてもおかしくはない。

 股間をなんとしても小さくしなくてはいけないのは絶対条件だ。

 

 興奮し切った状態の股間を萎えさせるのは非常に簡単だ。

 男なら誰しもが行ったことのある行為を実行するだけでいい。

 

 要は、出せばいいのだ。

 

 下着からイチモツを放り出し、己の手で刺激すればいい。

 勃起(レベルアップ)したイチモツとて、一度射精(ファイヤボルト)してしまえば、自然と収まる。

 

 ベルとてその方法は知っている。

 実践したことだって何度もある。

 温泉の事件以降、性に目覚めたベルの股間は、ちょっとした切っ掛けで簡単に勃起(レベルアップ)するようになってしまった。

 

 

 バルンバルンと揺れる巨大なヘスティアの双丘。

 

 不意に目に入ったリリルカの腋。

 

 髪をかき上げた際にちらりと見えた春姫のうなじ。

 

 

 レベルアップに伴い、様々なステータスが上昇したが、もしかしたら一番上昇したのは股間の反応速度なのではないかと考えてしまう程に。毎回毎回反応してしまうため、仲間にそれを悟らせないようにする技術がどんどん磨かれているような気がしていた。

 反応しているのを悟らせずに家に帰り、出した後にヘスティア達に見つからないように処理をするのが特に大変だった。

 

 しかし今現在、それを行うことはできなかった。

 とてもではないが、女湯の中で股間を放り出して刺激する勇気などなかった。

 もはやそれは勇気ではなく、特殊な性癖の一種だろう。

 

 となると、自然に落ち着かせるしか方法はないが、それもまた難しいことをベルは理解していた。

 

 その理由は何か?

 先程見た百花繚乱な裸身の女性達も原因の一つだろう。

 しかし、それ以上にベルの股間を勃起(レベルアップ)させている、特大の原因が存在した。

 

 

 時は、ヘルメスに無理やり女湯に連行された時点に巻き戻る。

 女湯に侵入した際、一番最初に遭遇した女性が、ギルドの受付嬢を務めるミィシャであった。

 温泉を満喫していた彼女は、当然ながら女湯に男が突撃してくるなど想像もしていなかった。そのため、浴場内での彼女はタオルの一枚も所持しておらず、産まれたままの姿を晒していた。

 更には彼女にとっては不幸なことに、女湯に連れ込まれた際にベルとヴェルフはヘルメスに放り投げられたことで、仰向けに倒れ込んでいる状態だった。

 ミィシャはそんな彼らのすぐそばに立っていた。

 

 ベルはその時見た光景を忘れることは一生ないだろう。

 

 幸か不幸か、いや、男としては間違いなく幸運なことに、ベルは女性の裸体を見る機会に恵まれることが多々あった。

 ヘスティアやリリルカ、リュー、果ては想い人たるアイズの裸まで目撃したことがある。

 しかし、全裸の女性を下から見上げるようなアングルで見たことなど初めての経験だった。

 

 それはもうまさに絶景だった。

 決して大きくはないが形のいい乳房。

 その頂点に恥ずかし気にツンと主張する髪と同じ色の桃色の乳首。

 全体的に細身でありながらも、しっかりと括れた腰。

 そして、本来ならば異性の目に晒すことは許されざるべきな乙女の秘部。

 

 それらの光景と共に、己の全てが見られていることを認識し、急速に赤く染まっていく驚愕した顔が、どうやっても脳裏から離れることはなかった。

 特に、乙女の秘部をこうもまじまじと見たことなどなかったベルにとってはあまりにも大きな衝撃だった。混乱する頭の片隅で、ここってこうなっているんだなどと考えてしまう程にそこに注目していた。

 

 そんな衝撃的光景を見てしまったすぐ後だというのに、興奮を抑えろということこそ無理難題と言えよう。

 それでもどうにかしなければいけない。

 どうにかできなければ間違いなく身の破滅が待っている。

 

「そ~……。」

 草陰から顔を出し周囲を確認してみる。

 幸いにも周囲に人影はなく、自分を探している店員達の気配もなかった。

 ホッと息を吐いたベルだが、草陰にしゃがみ込み再び頭を抱えてしまった。

 

「つ、捕まったら終わりだ……。顔も隠せないし、みんなから何を言われるか!」

 どうしてもいいアイデアが浮かばず、ついつい思考がマイナス方面に偏っていく。

 彼の中で想像はどんどん悪化していき、脳裏に現れた知り合いの女性達が次々とベルを罵る。

 エイナが、シルが、春姫が、ヘスティアが、アイズが罵倒しては消えていった。

 

 しかし、想像の中では軽蔑した目でベルを見ている彼女達だが、本物に遭遇した場合、その反応はベルの想像とは異なる者が多いだろう。

 一部の者に至っては、喜ぶ可能性すらある。

 つまりは、これはベルの被害妄想と言えるのかもしれないが、今のベルにとってはこれが真実なのである。

 

 恐怖にガタガタと振るえるベル。

 恐ろしい想像に気を取られていた彼は、いつの間にか草陰のすぐそばに人の気配があることに気が付かなかった。

 

 ガサッ。

 

「ひっ!」

 すぐ背後の草むらが音を立てて動いたことに、反射的に悲鳴が上がる。

 素早く後ろを振り返ると、そこには一人の人影があった。

 

「あっ……!あぁっ……!」

 あまりの恐怖に、腰が抜けたように尻もちをつき、口からは言葉にならない声が漏れ出る。

 下手をすれば衝撃で漏らしていたかもしれない。

 先程まで痛い程に硬く膨張していた股間も、急激に縮こまっていった。

 

 大混乱したまま顔を上げて現れた人物を見る。

 そこにいたのは見知った人物だった。

 

 

 ウェーブのかかった快晴の空を思わせる水色の髪。

 

 女神にも劣らない美貌を、眼鏡で更に理知的に美しく彩った顔。

 

 平均よりも大分豊満な乳房と、平均を下回る細さを見せる腰つき。

 

 それらをタオル一枚という頼りない防壁で覆った身体。

 

 タオルから伸びる足は肉付き良く、妖しい魅力を振りまいていた。

 

 

 ベルの知り合いであり、ヘルメス・ファミリアの団長たるアスフィ・アル・アンドロメダがそこに立っていた。

 

 

「アスッ、アスフィ、さんっ……!あの、これは、そのっ……!」

 自分を見下ろすアスフィを前に、咄嗟に何か言わなければと口を開くベルだったが、真っ白になった頭では言い訳の一つも浮かんでこず、只々意味のない言葉を呟き続けるだけとなった。

 つい先程の、知り合いに罵倒される想像が現実となってしまったと思うと、自然とベルの両目からは涙か零れ落ち、心の中は絶望感でいっぱいになった。

 

「……ふふっ。」

 涙すら流すベルの顔を眺めていたアスフィが突然微笑みを浮かべる。

 笑いと共に紡がれた台詞は、ベルにとって予想だにしない物だった。

 

「安心してくださいクラネルさん。状況は理解しています。」

 ベルの想像とは異なり、アスフィは罵倒をするどころか、安心させるように柔らかく微笑み、視線を合わせるように膝をついて話し出した。

 

「…………え?」

 想像もしなかった言葉に、間の抜けた声を漏らしてしまうベル。両目から止めどなく流れていた涙もピタリと止まった。

 それも仕方のないことだろう、もうお終いだと思っていたら、唐突に優しい笑みを向けられたのだ。理解が及ばなくても当然だ。

 

「先程、ヘルメス様を捕まえて事情を聴きだしました。ヘルメス様が迷惑をおかけして申し訳ありません。

 貴方を助けに来ました。」

 そう言って笑う彼女の顔はとても美しかった。

 もしベルにアイズという想い人がいなければ、恋に落ちてしまってもおかしくない程に。

 

 呆けた顔で、頬を赤く染めながら自分を見るベルを見つめ返しながら、アスフィは望んだ通りの流れになっていることに内心、喝采を上げる。

 

 

 

 アスフィがベルが侵入した女湯にいる原因、それはもちろんヘルメスである。

 

 数日前からコソコソと、木材を加工してよく分からない物を作っていたりと奇妙な行動をしていたヘルメスを発見したアスフィは、またいつもの悪巧みかと、ヘルメスが誰かに迷惑を掛けないよう密かに見張っていた。

 向かった先がケヒトの湯であったため、覗きを行うに違いないとヘルメスを折檻しようとしたアスフィだったが、どうにも様子がおかしく、しばらく観察を続けることにした。

 

 アスフィの予想とは異なり、ヘルメスはケヒトの湯へ入っていくことはなかった。何故かケヒトの湯の前の広場でベンチに擬態し始めたのだ。

 

 最初の二日間は訳が分からなかった。

 自分の主神がついに狂ってしまったのかとさえ疑った。

 三日目にしてようやくミアハファミリアとベル達と合流したことで、これを待っていたのかと納得した。

 いや、それでも三日間もベンチに擬態していたのはどう考えても頭おかしいというか、率直に言ってバカなんじゃないかとは思ったが。

 

 その後も一行の観察を続けることで、ケヒトの湯潜入計画の存在と、計画の中でヘルメスがベル達と陽動を行うことを知ったアスフィは、ヘルメスの真の目的を看破した。

 計画ではヘルメス達は男湯で騒ぎを起こす予定となっているが、アスフィはヘルメスの性格をよく理解している。ヘルメスは必ず女湯に行くと確信していた。

 ミアハファミリアの計画に便乗して女湯を覗くのだと。

 

 アスフィはヘルメスをしばき倒すことを決意した。

 なんだかんだと要領のいいヘルメスのことだ、ケヒトの湯の店員では追いきれずに逃げられてしまうことは予想できた。

 故に、ヘルメスの逃亡ルートを予測し、ヘルメスが逃げきったと油断したところを捕まえる計画を立てる。

 そして、計画通りヘルメスを半殺しにした後のことを考える。

 

 ヘルメス達が女湯に突入し、自分の計画通りにヘルメスが排除されたとするとどうなるか。

 

 

 女湯には孤立無援のベルが取り残される形となる。

 

 なお、ヴェルフのことは気にしていないアスフィだった。

 

 

 この好機に、アスフィは更なる計画を立てた。

 

 アスフィは以前ダンジョン内での事件より、頻繁に見返している物がある。

 それはアスフィが自作した魔道具で撮影されたとある映像である。

 

 その映像とは――――。

 

 

 ダンジョン内の温泉で、不慮の事故によってベルがおちんちん(ガネーシャ)を丸出しにしてしまった時のモノであった。

 

 ベルはその時、アスフィ達の目の前で、おちんちん(ガネーシャ)出すだけでなく、勃起(レベルアップ)する過程を見せつけ、あまつさえ射精(ファイヤボルト)する様さえも晒していた。

 アスフィはその時の全てを記録し、映像として保管していたのだ。

 

 初めて見る異性の恥部が巻き起こす性の衝動は、アスフィに大きな衝撃を与えた。

 しばらくの間、その光景が頭から離れず、映像を毎日のように見返してしまう程に。

 あれからそれなりに時間が経過した今でも、時折映像を見返している。

 

 しかし、いくら衝撃的な光景であっても、こう何度も見返していると慣れというものが湧いてくる。

 アスフィがどれだけベルのおちんちん(ガネーシャ)に興味津々でも、映像はそれ以上の発展を見せることはない。

 

 

 故にアスフィは、ヘルメスの計画を利用して、ベルの新しい映像を手に入れようとしていたのだ。

 意外とむっつりなアスフィだった。

 

 

 アスフィ(むっつりスケベ)が内心でそんなとんでもないことを計画していることなど、予想だにしていないベルは、とても大きな安心感を感じていた。

 ベルにとっては紛うことなき救世主であり、この一瞬でアスフィへの信頼度は天井知らずに急上昇していた。

 

 それ故に、ベルはこの後のアスフィの明らかにおかしな指示に唯々諾々と従ってしまうこととなったのだった。

 

 

 

「では、クラネルさんの正体がバレずに脱出するための方法についてですが。」

 落ち着きを取り戻したベルとアスフィは、二人して草陰に身を伏せながら、これからの行動について話し合う。

 と言っても、話し合いというよりも、アスフィの話をベルが一方的に聞いているという状況だ。

 ベルには何も案がない為、アスフィの提案に全てを委ねる形となっている。

 

「まず、誰にも見つからずに浴場を出るというのは、物理的に不可能です。」

 アスフィの言葉にベルは頷きを返す。

 女湯には今だ多くの客が残っている上、ケヒトの湯の店員は今この瞬間もベル達を草の根分けても探し出すと言わんばかりに、必死に捜索している。

 これらの包囲網を潜り抜けるのは、並大抵で出来ることではない。

 

 仮にアスフィが作成した魔道具の漆黒兜(ハデス・ヘッド)があれば、難しいことではないが、生憎と風呂場にそんな物を持ち込むことはできなかった。

 

「ならば逆に考えてください。『見つかってもいいや』と考えるのです。」

「ええっ!?」

 突然、遠い世界の貴族のようなことを言い出したアスフィに驚愕するベル。

 

「もちろん、ただ単純に見つかってしまえばそれでお終いです。」

 そこで一旦言葉を区切り、アスフィは生徒に勉強を教える教師の様に微笑む。

 

「ですが、見つかってもそれがクラネルさんだと分からなければどうでしょう?」

 

 まるで謎かけのような言葉に、ベルは首を傾げる。

 アスフィが何を言っているのか理解が及ばなかった。

 

「そんなに難しいことではありません。これを使うのです。」

 そう言ってアスフィが取り出したのは、彼女が身に着けているものと同じ、一枚のタオルだった。

「?」

 やはり理解が及ばないベル。

 

「クラネルさんにはこのタオルを巻いて、女性を装ってもらいます。」

「女性を、装う?」

 

「ええ。ここは女湯です。

 そこに男性がいるからこそ目立ってしまうわけですから、女性だと思わせることができれば注目されることなく堂々と出ていくことができます。」

 木を隠すなら森の中。

 女湯にいるのが男性だから不自然なのであり、女湯に女性がいても何ら不自然なことはない。

 ベルにとっては、正に目から鱗な作戦だった。

 

「……大丈夫なのでしょうか?

 男だって簡単にバレちゃいませんか?」

 確かに作戦の有用性は認めるが、それでもベルには拭い切れない不安感が付き纏う。

 なにせ見つかったら一発アウトな状況なのだ。万全を期したいと思ってしまっても仕方のないことだろう。

 

「安心してください。

 幸いなことにクラネルさんは女性的な顔立ちをされてますので、体を隠してしまえば男性だとバレる可能性は低いでしょう。

 念には念を入れて、カツラの髪形も変えましょう。

 ここまでの道中で顔を覚えられているかもしれないので、前髪で目元を隠すようにすればより安全です。」

 説明を続けながらてきぱきと作業を続け、カツラの髪をポニーテールにし、目元が隠れるようにベルの頭に深めに装着する。

 それだけで大分雰囲気が変わったのだが、鏡などがない以上、ベルに確認する術はなかった。

 しかし、アスフィの的確な行動は、ベルの不安感を取り払うには十分な力強さを持っていた。

 

 実際、これだけ念を入れて偽装したベルを見て、男性だと見抜ける者は殆どいないだろう。

 なにせベルが以前温泉でアルバイトした時、寝落ちして女性が入ってきてしまった浴場からアイズの手引きで脱出する際に、素顔のままタオルを身体に巻いただけだというのに、ティオネ・ティオナ姉妹にはバレることなく完全に女だと思われていたくらいだ。

 

「止めに私が一緒に行動します。

 店員たちが探しているのは男性です。仮にターゲットに似ていると思われたとしても、それが女性の二人組の片割れであれば、まず間違いなく気のせいと思うでしょう。」

「ア、アスフィさん……!本当にありがとうございますっ!」

 心理的な盲点をついた作戦と言えよう。

 こんな短時間でここまで見事な作戦を立案したアスフィに、ベルは心からの尊敬の視線を向けるのであった。

 助けに来てくれたのがアスフィでよかったと、最大級の感謝を伝える。

 

 

「ですが、この作戦には大きな問題点があります。」

 

 

 安心しきったベルに冷や水を浴びせかけるように、アスフィは鋭い声色で予想外の一言を放つ。

「えっ!?そ、それはいったい何なんですか!?」

 驚愕するベルをしり目に、アスフィはベルに立ち上がるように促す。

 一瞬躊躇したものの、アスフィを信用し切っているベルは、周囲に人影が存在しないことを確認してからゆっくりと立ち上がる。

 

 

 起立するベルを、座ったまま頭の先からつま先までもをゆっくりと目で舐め上げるアスフィ。

 そして、徐にベルの下着に手をかけ――――。

 

 

 ズリッ!!

 

 プルルンッ!!

 

 

 そのまま、足元まで一気にずり下した。

 

 勢いよく飛び出したおちんちん(ガネーシャ)が上下左右にと暴れまわる。

 アスフィのすぐ眼前で陰茎(はな)が弾け、睾丸(たまたま)が揺れる。

 平均よりも小振りなそれは、先端まですっぽりと皮に覆われ、やや余り気味の部分が小さく皺を作っている。

 ベルの、急激なレベルの成長と反比例して、まったく成長の兆しを見せない幼げな性器(ひみつ)が曝け出されていた。

 

 

「――――――――うわぁぁっ!?」

 一瞬何が起こったか理解できなかったベル。

 突然下半身にスーッとした解放感を感じ視線を向けると、決して人目に晒したくなかった小振りで皮っ被り(リトルルーキー)なおちんちん(ガネーシャ)と、それを間近で真剣な表情で見つめる美女という光景が飛び込んでくる。

 しばらく唖然としてしまったが、現状に思考が追い付いてきたベルは、悲鳴を上げながら必死におちんちん(ガネーシャ)を隠した。

 

 しかし、アスフィの取った行動はベルを更なる混乱に陥らせる。

 

 

「隠さないでください。」

 

 

 なんとアスフィは、股間を隠したベルの腕を掴み、強引に腰に持っていくことで、隠されていたおちんちん(ガネーシャ)を再び丸出しにしてしまったのだ。

 

「――――!?――――っ!?」

 あまりにも想定外すぎるアスフィの行動に、ベルの頭は最早混乱の極致だった。

 両手は未だアスフィに押さえつけられたままであり、おちんちん(ガネーシャ)を隠すことも儘ならない。

 悲鳴すら上げることができずに、ただ顔を羞恥に染めることしかできなかった。

 

「アスッ!?アスフィッ!?」

「問題があるのは、これです。クラネルさん。」

 おちんちん(ガネーシャ)から一切目を逸らすことなく、それでいて羞恥心など欠片も感じていない様子でアスフィは淡々と語る。

「堂々と出ていくと言っても、これから進むのは女湯です。

 当然、裸の女性が多く残っているでしょう。」

 そこでようやくおちんちん(ガネーシャ)から視線を上げて、ベルの目をしっかりと捉えた。

 

 

「先程の様にここを大きくされてしまうと、隠しようがありません。」

 

 

 見られていた。

 アスフィの言葉を理解したベルは、合流した時の自身の股間の状態をばっちりと確認されていたことを知り、これ以上ない程に顔を真っ赤に染め上げる。

 

 アスフィの忠告は尤もだろう。

 これから女湯を突っ切って脱出しようというのだ、女性の裸体を視界に入れないということは難しい、いや、不可能だ。

 その時、ベルの股間が反応してしまえば、いかに上手く女性を装えていたとしても、一発で正体がばれてしまう。ベルのおちんちん(ガネーシャ)次第で全てが台無しになるかもしれないのだ。

 正直な所、再び裸の女性を見てしまった時、ベルには股間を反応させない自身がなかった。現に先程実際に大きくしてしまったばかりである。

 今だって、アスフィが喋る度に吐息がおちんちん(ガネーシャ)を撫でるのを感じてしまう程に、敏感になっていた。

 

「大きくしないようにできますか?」

 女性であるアスフィには、男性特有の部位であるそこについての問題を完全に理解することはできない。

 それでもベルの反応を見ていれば、大きくなるのを抑えるのが難しい程度のことは察せられた。

 案の定、ベルは首を横に振ってNOの返事だ。

 

「でしょうね。

 ですので、こんなこともあろうかと、解決策を用意してあります。」

 そう言ってアスフィはどこからともなく、銀色に光る指輪を取り出した。

 タオル一枚しか身に着けていないはずなのに、本当にどこから取り出したのか。それにどんなことがあると思っていたのか、そういった諸々の不自然さに混乱中のベルが気付くことはなかった。

 

「……指輪?」

「はい。これは私が作成した魔道具です。

 身に着けた者の肉体を、一定の状態に保つという効果があります。」

 アスフィの説明通りであれば、指輪を身に着けた者の肉体は変化しない、つまりは、怪我や老いなどから解放されるといった、破格と言っても足りない程の効果を持った魔道具であった。

「といっても、失敗作なのでそこまで強力な効果はないのですが……。」

 当然ながら、神ならざるアスフィにそこまで強力な効果を持った魔道具の作成はできなかった。

 しかし、この状況で使う分には十分な効果を持っていた。具体的には、女湯を出るまでの間、ベルの股間のサイズ変化を抑える程度のことは可能だった。

 というより、最初からそれ目的で作った、割と下世話な魔道具なのだ。

 

「な、なるほど。」

 説明を聞き、納得の声を上げる。

 確かに指輪を使えば、女性の裸体を見てしまっても股間を反応させることなく女湯を出ることができそうだ。

 露わになったままの股間に脳内は羞恥一色のままだが、そこに紛れもない安堵が生まれる。

 故に、アスフィの次の行動に何も備えることができなかった。

 

「失礼します。」

 

 

 ふにっ。

 

 スポっ。

 

 

「…………ぅえぇぇぇぇぇぇっ!?」

 驚愕の叫び声を上げるベル。ほんの僅かに残った理性が働いたのか、叫び声はギリギリ小声と言える音量だった。

 隠れている状態で大きな声を出すのは褒められたことではないが、ベルが叫び声を上げてしまったのは無理もないことだ。

 

 

 なんとアスフィは、ベルのおちんちん(ガネーシャ)の陰茎(はな)を摘まみ上げ、そこに指輪を嵌めてしまったのだ。

 

 

 指輪というのは、通常指に嵌める物だ。

 ベルもこの魔道具を使うに際には、指に嵌めるのだと思っていた。

 しかし実際にアスフィが指輪を嵌めたのは、まさかのおちんちん(ガネーシャ)に直接だ。

 叫び声の一つも上がろうというものだ。

 

 ベルが叫び声を上げるのをスルーして指輪の状態を確認していたアスフィが、不意に眉根を上げる。

 ベルの陰茎(はな)に嵌めた指輪が、しっかりと嵌っていなかったのだ。

 陰茎(はな)の直径よりも指輪の直径の方が大きく、やや緩かった。

 

 この結果に、表情にこそ出ていないがアスフィは内心動揺していた。

 何故なら、この指輪は温泉事件の映像からベルの陰茎(はな)のサイズを正確に割り出して、それにピッタリ嵌るように作った物だったのだから。

 

 これはアスフィのミスだった。

 男性経験もないアスフィが男性器について詳しいわけはなく、それのサイズが可変式であることは知っていたが、その時の環境によって通常時(ニュートラル)のサイズまでもが違ってくることまでは理解していなかった。

 ダンジョンの温泉の時は戦闘の直後ということもあり、ベルも興奮気味で股間も通常時よりも大きくなっていた。

 対して今は、女湯に一人取り残されるという危機的状況にあり、心身の不安からか股間も縮こまり気味だったのだ。

 

 想定よりも小振りだったおちんちん(ガネーシャ)を眺めながら、しばし考え込むアスフィ。

 

 解決策はすぐに出た。

 

 

「ちょっと大きくしますね。」

 そう言ってアスフィは、ベルのおちんちん(ガネーシャ)を揉みしだき始めた。

 

 

「ア、アスフィさんっ!?」

 アスフィのまさかの行動に、ベルは再び驚愕の声を上げる。

 今の状況は、ベルにとってもはやファンタジーの領域に至っていた。

 なにせ、全裸で立つ自分の前に最上級の美女が跪き、自分の股間をその白魚のような指で弄り回しているのだ。

 これまでの現実離れした流れに、とうとうベルは今起きていることが本当に現実なのかと疑い始めてしまった。

 

 ベルがどれだけ現実逃避をしようとも、これは現実だ。

 現にアスフィはベルの股間を揉んでいるし、それによって齎される快感は紛れもなく本物だ。

 故に、実際に刺激された股間は、現実的な反応を示す。

 

 

 ピクピクッ。

 

 

 ベルの股間が膨張の兆しを見せ始めたのだ。

 

 スポっ。

 

 アスフィはその瞬間を逃さす、素早くタイミングよく指輪を再度陰茎(はな)に嵌め込んだ。

 するとなんと、大きくなり始めていたおちんちん(ガネーシャ)が、その膨張を止めたのだ。

 

「どうやら成功のようですね。」

 結果を確認したアスフィが微笑む。

 魔道具は、不具合を出すことなくその能力を存分に発揮したようだ。

「こ、これで終わりですか?」

 ベルは、この羞恥に時間がようやく終わることに安堵する。

 

 

「いえ、最後に少しだけ確認させていただきます。」

 

 揉みっ。

 

「あぅっ!」

 

 言うや否や、アスフィが再びおちんちん(ガネーシャ)を刺激し始める。

 それも今度は、先程どのような軽いタッチではなく、本気で男性を気持ちよくさせようとする動きでだ。

 

 

「今のところ変化はなし。」

「あっ……!あんっ……!」

 陰茎(はな)を指で上下にしごき上げる。

 

 

「これはどうでしょう?」

「あんっ!いやんっ!」

 先端の皮の余った部分を揉んだり、引っ張ったりしてみる。

 

 

「なら、これでっ!」

「あっ、あっ、あっ、あっ!」

 先端の皮を高速で剥いたり戻したりしする。

 

 

「ふむ、これなら大丈夫でしょう。」

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」

 本気で刺激しても、一切大きさを変えることのないおちんちん(ガネーシャ)に満足気なアスフィに対し、ベルは息も絶え絶えな様子だった。

 指輪を嵌められたベルのおちんちん(ガネーシャ)は、決して勃起(レベルアップ)することなく、射精(ファイヤボルト)することもないが、快楽だけは

しっかりと感じるという、ある意味拷問のような状態だったのだ。

 

 

 立ったまま、もはや股間を隠す素振りさえも見せなくなったベルを見て、アスフィは次に自分が行おうとしていることに一瞬の躊躇を見せる。

 それでも、それは必要なことなのだと、迷いを振り切ってベルに声をかける。

 

「それではクラネルさん。最後の確認を行います。」

 まだ続けなくてはいけないのかと、先程の快楽地獄を思いだしたベルが涙目で訴えかける。

 そんなベルをまたしてもスルーして、アスフィは徐に立ち上がる。

 

 アスフィに対して思わず身構えてしまうベルだったが、アスフィ行動はベルの予想とはかけ離れたものだった。

 

 

 そこからの時間は、ベルにはとてもゆっくりに感じられた。

 

 

 ハラリ。

 

 

 立ち上がったアスフィは、自然な動きで手をタオルの結び目に持っていき、なんとそのまま解いてしまった。

 当然、体を覆っていたタオルは重力に従い、地面へと落ちていく。

 そこに残っていたのは――――。

 

 

 一糸纏わぬ裸身を晒したアスフィがいた。

 

 

 その瞬間、ベルは完全に真っ白になった。

 自身の股間を晒した時以上の衝撃が頭を殴りつけ、目の前の光景のこと以外何も考えられなくなった。

 なにせ、目の前にはどんな男でも虜にしてしまうような、絶景が広がっていたのだから。

 

 アスフィは、羞恥から顔を真っ赤に染め上げ、目線を合わせることができないのか眉尻を下げて顔を背けていた。普段のアスフィからは想像できないような可愛らしい反応だったが、ベルがそちらに視線を向けることは殆どなかった。

 どうしても、視線が首から下に向いてしまうのだ。

 

 遮る物のなくなった豊かな双丘は、支える物がなくともその形を崩すことなく、美しい丸みを誇り。

 

 双丘の頂上には、ひっそりと花が咲くかのように薄桃色の突起があり、ベルの視線に反応したのか、プクッとそのサイズを僅かに膨らませていた。

 

 腰はキュっと引き締まっており、無駄な脂肪は見受けられないというのに、どこか柔らかい印象を与える。

 

 臍から下へと目線でなぞると、髪と同じ色の空色の毛が綺麗に整えられており、その先に見える女性の神秘は美しい桃色をしていた。

 

 あまりにも美しい光景を目にした人間は言葉を失うというが、今のベルは正しくその状態だった。

 声を漏らすこともなく、アスフィの裸身を眺める。

 上から下へ、下から上へと何度も繰り返し、その全身を脳裏に刻んでゆく。

 もし許されるのであれば、いつまででも見ていたいと思える光景であった。

 

 

「その……。そんなに見ないでください……。」

 ベルが夢中になって見続けたためか、アスフィが蚊の鳴くようなか細い声を上げる。

 身動ぎする度にたぷんと揺れる乳房が、ベルの視線を釘付けにして離さなかったのだ。

 

「――――はっ!ごっ、ごめんなさいっ!」

「いえ、いいんですよ。お互い様ですし。」

 アスフィの言葉でようやく我に返ったベルが、必死に謝罪する。

 先程はアスフィがベルのおちんちん(ガネーシャ)に夢中になり、今度はベルがアスフィの裸体に夢中になる。確かにお互い様と言えるだろう。

 ベルの方は、直に触られたのだが、そこは男女の裸の価値の違いということでとんとんとしておこう。

 

「それよりも、効果は問題なさそうですね。」

「あっ!」

 ここまできてようやく、アスフィが裸身を晒したのは、女性の裸体を見て勃起(レベルアップ)するのを魔道具がちゃんと抑えられるか確認するためだったと気が付いた。

 目線を下げて股間を確認すると、そこには先程と変わらず小振りなままのおちんちん(ガネーシャ)があった。

 

「すごい!全然大きくなってませんよ!」

 素晴らしい裸体を見たのに全く反応していない、キラリと光る指輪が嵌められた股間をプルンプルンと揺らしながら感嘆の声を上げるベル。

 いつもの彼であれば、間違いなく最大サイズまで勃起(レベルアップ)していたであろう。下手をすれば、触れることすらなく射精(ファイヤボルト)していてもおかしくないくらい興奮していたベルの驚愕は大きかった。

 

 驚きと興奮に股間を揺らすベルを見ながら、アスフィの心中に僅かな不安が過る。

 

 

「私に魅力がないわけじゃありませんよね……?」

 

 

「そんなわけないですよっ!

 アスフィさんの裸、すっごく綺麗です!」

「そ、そうですか?……ありがとうございます。」

 後ろを向いて、白桃のような引き締まった尻を見せながら零れた呟きに、猛然と否定の言葉を上げる。

 あまりにも真っ直ぐな、だからこそ心からの言葉とわかる勢いに、アスフィの顔が羞恥とは違う理由で熱を持つ。

 誤魔化すように咳払いをしたアスフィは、足元に落ちていたタオルを拾い上げ、素早く身に着ける。

 それを見ていたベルが浮かべた少し残念そうな表情が、アスフィの自尊心を刺激したが、さすがにもうタイムリミットが近いのでぐっと堪える。

 

「時間をかけすぎました。ふふっ、そろそろ行きましょう。」

 出発を促しながら視線を向けると、いまだに股間丸出しのままのベルがおり、つい苦笑してしまう。

 

 

「もう隠しても大丈夫ですよ。おちんちん。」

 

 

「え?…………うわぁ!?」

 アスフィの言葉にようやく晒され続けた股間を両手で隠したが、もはや手遅れという言葉すらも生温い。

 色も形も大きさも、感触すらも目の前の女性には知られてしまっているのだ。

 

 

 また顔を真っ赤にして俯いてしまったベルを引き連れて、アスフィはようやく出口を目指し始めた。

 

 ちなみに、ベルの下着はいつの間にかアスフィが回収していたため、今ベルが身に着けている物はカツラとタオル一枚だけだ。

 

 

 

 

 

 全裸の少年と全裸の女性による、文字通りの触れ合いを終えて出発した二人の移動はスムーズに進んだ。

 時折、店員や裸の女性とすれ違うも、タオルに隠されたベルの股間が反応することもなく、誰からも不審に思われることはなかった。

 

 すると出口を目指す二人の目の前に、巨大な滝が現れた。

 温泉施設内にある構造物としては、あまりに規模が大きすぎるそれを目の当たりにして、思わず唖然としてしまう。

 最初からナァーザの計画に組み込まれていたものなのか、ディアンケヒトが後から付け足したものなのかは不明だが、明らかにやり過ぎだった。

 どれだけ施工費用が掛かったのか想像もできない。

 ディアンケヒトは馬鹿なのではないかとすら思う。

 

 しばしの間、滝を見つめていた二人だが、我に返り再び出口へと歩き出し、滝の間近にかけられたつり橋を渡っている時に問題が発生した。

 

「……まぁ、ベルさん。」

 出口へ急ぐ二人に声をかけた者がいたのだ。

 しかも、ベルを名指しして。

 

「し、シルさん!?な、なんで即バレ……!?」

「……まずいですね。」

 二人に声をかけたのは豊饒の女主人の店員であり、ベルと親しくしている女性シル・フローヴァだった。

 完全な偽装をしていた筈なのに一目でバレてしまったことで、先程の想像が頭をよぎり挙動不審になるベル。

 予想外のアクシデントにアスフィも表情を曇らせる。

 もしシルが騒ぎ立てでもしたら全てが台無しになってしまうのだ、この一瞬の間に、シルの次の行動如何によっては取り押さえることまで検討していた。

 

「あら、アンドロメダさんも。

 偶然ですね。こんな所で。でもここ、女湯ですよ。」

 二人の緊張を他所に、シルの態度は責めるようなものではなく、朗らかな声色で揶揄うように話しかけてくる。

 そのままベル達の方へ、妙に艶めかしく腰をくねらせながら近付いてきた。

 胸と下半身をそれぞれ小さなタオル二枚で隠しているだけという格好もあり、彼女はいやに淫靡な雰囲気を漂わせていた。

 

 温泉に入りに来たにしては、彼女のタオルでの体の隠し方はおかしいのだが、何故そんな格好をしているのだろうか。

 

「あ、いや、そのっ……。」

「ここの温泉、すっごく人気なんですよね。

 剣姫様たちも見かけましたし、そうそう、ギルドのエイナ・チュールさんも。」

「あ……はぁ……。」

 罵倒されるどころか笑顔で近付いてくるシルに、ベルもアスフィもどう反応してよいのか分からず言葉を詰まらせる。

 そうしている間にも、シルはどんどん近づいて来る。

「よかったらベルさんたちも一緒に……。」

 シルがとうとうベル達のすぐそばまで近づいた時、ハプニングが起こった。

 

「きゃっ!?」

 シルが足を滑らせたのだ。

「シルさん!!」

「なっ!?クラネルさん!?」

 ベルは咄嗟に転びかけているシルに手を伸ばす。

 アスフィは急な出来事に反応できずに、ただ驚愕の声を上げることしかできなかった。

「あっ……!」

 ベルが掴んだのは、シルの胸を隠しているタオルだった。

 タオルぼ結び目は脱げないように結ばれているとはいえ、あくまで最低限の強さでしか結ばれてはいない。

 ベルがどれだけ必死に食いしばろうとも、当然のようにすぐに結び目は解け、ベルの手にタオルだけ残してシルは倒れ込んでいく。

「ああんっ……!」

「うわああっ!?」

 タオルを剥ぎ取られ、シルの中々に豊かな乳房が露わになる中、下手にシルを支えようとして力を入れたことでバランスを崩したか、ベルも同じように足を滑らせた。

 

 

 一部始終を見ていたアスフィは、その後の展開に瞠目した。

 

 

「きゃあんっ。」

 シルと共に倒れたベルは、そのままシルの露わになった乳房に顔から突っ込んだ。

 胸に埋もれたベルは、なんとその反発で跳ね上がり、橋の欄干を乗り越えて谷底に落ちたのだ。

 確かにシルは大きく張りのある胸を持っていたが、いくら何でも男性を弾き飛ばす程の弾力性を持っている筈はない。

 アスフィはつい内心で、そうはならんやろ、とロキのような突っ込みを入れてしまうが、事実そうなったのだ。

 あまりに想像外の出来事に、ベルを助けることもできずにただ唖然と見過ごしてしまった。

 

「ごめんなさあああああぁぁいっ!」

 鼻血を吹き出しながら、谷底へ落ちていくベル。

 鼻血の原因は明らかだろう。

 

「ベルさぁあーん!」

 落ちていってしまったベルの名を橋の上から叫ぶシルの傍らに佇みながら、アスフィは唖然としたまま呟く。

 

 

「えぇー……?」

 

 

 

 

 

 所変わって本命であるナァーザ達は、ケヒトの湯の最上階のボイラー室を目指し通路を進んでいた。

 道中、服だけ溶かす溶解液を噴射するシャワーの罠が張り巡らされていたが、弓矢やナイフで次々と破壊していった。

 しかし、逃げようのない範囲に溶解液撒き散らすを罠が現れ、カサンドラとダフネがその身を犠牲にすることで、ナァーザとミアハを先へと進める。

 そんな尊い犠牲を払い進んでいくナァーザ達を、ディアンケヒトが待ち構えていた。それも、著作権的に大丈夫なのが妖しい、振る度にブゥンブゥンと音を立てる光の剣を携えて。

 不法侵入を咎めるディアンケヒトを前に、ミアハは自分がディアンケヒトを抑え込んでいる間に、ナァーザに先へと進むように命じる。

 やけに顔が良いことを強調するミアハにキレたディアンケヒトが振り被った光の剣が、天井に張り巡らされた配管を斬り裂いてしまった。

 

 

「あつうううぅ!?」

 光の剣が斬り裂いた配管は、ボイラー室から館内に、お湯を送り込むための通り道であるため、それに穴を開ければ当然ながら温泉が噴き出す。

 自身の真上にある配管を斬ったディアンケヒトは、頭から熱湯を被ることとなり悲鳴を上げる。

 

 配管に穴が開いたことで水圧などのバランスが崩れたのか、館内に張り巡らされた配管の至る所が破裂し、ケヒトの湯のあらゆる場所がお湯浸しになるくらいにお湯が溢れた。

 原因となったディアンケヒトが斬った配管も亀裂をどんどん広げ、大量のお湯を吐き出していく。

 お湯の勢いは凄まじく、光の剣の刀身を掻き消すだけでなく、近くにいたナァーザ達を流しかける程だった。

 

 そんなお湯の暴流に晒されたディアンケヒトは、お湯に紛れて何かが自分の上に落ちてきたのを見た。

 一瞬だったため、それがなにかを認識することはできなかったが、瞬間的にある神物(じんぶつ)を思い浮かべた。

 

 それは知り合いの神に似ていた。

 

 

 そう、ガネーシャによく似たモノが、自分の顔面に迫ってきていた。

 

 

 ガネーシャの赤い仮面とは違い、真っ白なそれが降ってきて、自分の顔面に思いっきり押し付けられた。

 柔らかく、生暖かい感触を顔面で感じながら、そのまま押し潰さたのだった。

 

 

「ごほっ、ごほっ……あー……たくさんお湯飲んじゃったぁ……危なかったぁ……。

 配管に巻き込まれた時はもうダメかと……。」

 咳き込みながら、ベルは飲み込んでしまったお湯を吐き出す。

 彼は橋から落下した後、水中の排水溝に飲み込まれ配管の中を漂っていたのだ。

 ディアンケヒトが配管を斬り付けて破裂させなければ、そのまま溺死していたかもしれない、かなり危険な状態であった。

 ある意味ディアンケヒトは命の恩人と言えるのかもしれない。

 

「……あれ?」

 お湯を吐き出し終えたベルがようやく周囲の状況を見渡す。

「ごほっ、ごほっ、ごほっ……。」

 するとなんと、すぐ近くに別行動をしていたミアハとナァーザがいたのだ。

「ベル!」

「ミアハ様、ナァーザさーん!おーい!よかったぁ~!」

 いち早くベルに気が付いたミアハが声を上げ、声を聞いたベルも、床にしては妙に柔らかいそれに気が付くことなく踏み付けにしながら立ち上がり、笑顔で両手を振って二人を呼ぶ。

 

「……ふへへふぁふぉさとだろ……。」

 踏み付けにされた床、もといディアンケヒトが何かを呟くが、ベルには聞こえておらず、ナァーザ達は衝撃的な光景にそんな些細な事を気にしていられなかった。

 

 立ち上がったベルの姿を見た二人は、思わず固まってしまった。

 ナァーザは目を見開き顔を赤く染め、ミアハは驚愕の表情を浮かべる。

 その原因は、ベルの格好にあった。

 

 ナァーザの格好も、上はビキニくらいの布面積しか残っておらず、下に至っては下着丸出しだったが、ベルの格好はナァーザと比べても比較にならないくらいアウトだった。

 ベルは、橋から落ちる際にカツラとタオルをその場に残したままにしてしまったのだ。

 つまり、今のベルは何も身に着けておらず、ナァーザの前で全てを丸出しにしてしまっていた。

 更には、両手を振る度に連動するようにプルンプルン揺れるおちんちん(ガネーシャ)には、何故か指輪が嵌められているのだ。

 ナァーザ達が混乱してしまうのも無理はないだろう。

 

 また、指輪についても触れ辛い。

 もし尋ねて、戦闘に役立つ魔道具ですと言われてもどう反応していいかわからないし、趣味やファッションですなどと言われてしまった場合、これからベルをどういう目で見ていいかもわからなくなってしまう。

 結局二人は最後まで、指輪を話題に出すことはなかった。

 

「あー、ベル。女性の前でその格好はいただけないぞ。」

 指輪について見なかったことにしたミアハは、自分の上着を脱いでベルの下半身に巻き付けて、おちんちん(ガネーシャ)を隠してあげる。

「……うわぁ!?」

 そこに来てようやく、自分の格好に気が付いたベルが股間を両手で隠す。

 咄嗟にナァーザの方を見ると、彼女は顔を赤くしたまま目を逸らした。

 

 見ちゃった。

 ナァーザの行動は、その事実をはっきりとベルに伝える結果となった。

 

 またしても見られてしまったと、ベルはディアンケヒトの上で膝を抱えることとなるのだった。

 

 本日、ベルがおちんちん(ガネーシャ)を見られてしまった女性はこれで二人目である。

 

 

 

 

 

 その後、なんとか立ち直ったベルを引き連れてボイラー室に辿り着いた一行。

 そこで見た秘密とは、なんと温泉の正体がアミッドが入ったお湯の残り湯、つまり聖女の煮汁であったという衝撃的事実であった。

 想像を絶する真実に言葉をなくす一同。

 特に温泉のお湯を飲んだことがあったベルは、特にショックを受けていた。吐き気を催す程ではないのは、アミッドが類稀な美人だからであろうか。

 しかし、自分の残り湯を飲まれたアミッドが受けたショックはそれ以上だった。

 元々、この温泉に乗り気ではなかったアミッドだが、ディアンケヒトが絶対にバレないと強く説得されて、仕方なくやっていたのだ。

 それなのに、ナァーザ達にバレた上、自分の残り湯まで飲まれてしまったアミッドの羞恥心は軽々と限界を超えた。

 泣き叫ぶアミッドの力がボイラーを暴走させたようで、大爆発を起こしケヒトの湯を瓦礫の山へと変貌させたのだ。

 それでも、中に残っていた人達に、死者どころか怪我人に一人も出さなかったのは、さすが聖女と言えよう。

 

 

 ケヒトの湯が瓦礫の山に変わったにもかかわらず、いまだ女性達が温泉を楽しんでいる中、いろいろな意味で疲れ切ったベルは瓦礫の影で座り込んでいた。

 アスフィとの裸の触れ合いや、配管の中で溺死しかけたこと、聖女の煮汁の衝撃など、今日一日で信じられない程濃い体験をしたベルの疲労は相当なものだった。

 

 それ故に、彼は自身のすぐ後ろに脅威が迫っていることに気が付かなかった。

 

 

「ここにいたの、ベル君!」

 

 

 地の底から響いてきたような、重く暗い声が聞こえた。

 

「エ、エイナさん……?」

 振り返ったベルの視線の先にいたのは、ギルドの受付嬢エイナ・チュールだった。

 彼女は殆ど布切れと化したボロボロのタオルで、その中々に豊満な身体を隠しているという、男性ならば間違いなく目を奪われてしまう煽情的な格好をしていた。

 現に、下半身こそタオルの残りが巻き付いているものの、上半身に至ってはボロ切れと言っていいような程度しか布が残っておらず、手で押さえつけることで辛うじて乳房が曝け出されるのを防いでいるに過ぎない。

 

「女湯で走り回ってたの、ベル君なんだってね?

 目撃者もちゃんと居るんだよ!」

 その声は、むしろ優しさすら感じるような柔らかさを含んでいた。

 ベルは逆に、その柔らかさにこそ恐怖を覚えた。

 エイナの背後でシルが両手を合わせて謝罪のポーズをとっており、その横でアスフィが申し訳なさそうな表情を浮かべていたが、それすらも視界に入らない。

 一瞬たりともエイナから意識を逸らしてはいけないと、ベルの頭の中で警報が盛大に鳴り響いていた。

 

 普段であれば、ベルもエイナの姿に見惚れ、顔を真っ赤にしていたことだろう。

 しかし今現在、エイナの姿を見たベルの顔は、赤どころか真っ青に染まり始めていた。

 

「あ、いや、その、それは……。」

 恐怖に彩られるベルの頭が必死に言い訳を模索しだす。

 先刻のアスフィと出会った時の状況と同じだが、今回は決定的に違う点がある。

 

 相手が間違いなく激怒しているという点だ。

 

「どういうことか詳しく説明してくれる?

 私、巨象のマンモスのぱおーんまで見ちゃったんだからね……?」

 温泉内で見てしまったガネーシャの巨象があまりにもショックだったのだろう。

 エイナはベルに詰め寄りながら、涙すら流していた。

 

 

 そこからのベルの行動は、間違いなく悪手と言えるものだった。

 もしベルがもう少し慎重に行動していたら、この後の悲劇は起こらなかったかもしれない。

 

 

「エ、エイナさん!お、落ち着いて。」

 ベルがエイナを宥めようと立ち上がる。

 

 そんなベルを見て、憤怒の表情を浮かべていたエイナが、唖然として目を見開いた。

 その背後で、シルは目を輝かせてベルを見つめ、アスフィはやっちゃったとでも言いたげに溜息を吐く。

 

 原因はベルの格好にあった。

 ボイラー室では、ミアハに借りた上着を腰に巻き付けていたベルであったが、爆発によって、その上着はどこかへ行ってしまったため、今ベルは再び全裸へと戻っていた。

 そんな状態で立ち上がったため、エイナの目の前にベルの股間がモロに映り込んだのだ。

 

 エイナ、本日二本目のおちんちん(ガネーシャ)である。

 

 ガネーシャのマンモスと比べて、ベルのモノは形こそ同じであれどサイズが大分小さかった。

 ガネーシャを巨象とすれば、ベルは小象といったところか。

 可愛らしいと表現してもいいようなモノだったが、それは仄かに思いを寄せるベルのモノだ、エイナが驚愕してしまうのも無理はない。

 

 しかし、エイナを混乱させた理由はそれだけではなかった。

 

 エイナの視界に入ったベルのおちんちん(ガネーシャ)、そこにはガネーシャにはなかった物がくっ付いていた。

 何故か、陰茎(はな)の付け根に指輪が嵌っていたのだ。

 

「エイナさん……?」

 急に止まってしまったエイナに、ベルが恐る恐る声をかける。

 

 混乱するエイナの中で、様々なことが浮かんでは消えていく。

 女湯を走り回っていたベル、裸を見られたと泣いていたミィシャ、指輪を嵌めたおちんちん(ガネーシャ)。

 グルグルと考えが混ざり合っていき、最終的に生まれた物。

 

 

 それは――――――先程まで以上の怒りだった。

 

 

「ベル君の……。ベル君の……っ!」

 怒りがマグマの様に頭を湧き上がらせて、俯き加減の顔がどんどん般若のモノへと変わっていく。

 

「…………あっ!わぁっ!?」

 ここでようやくベルが丸出しになっているおちんちん(ガネーシャ)に気が付いた。

 

 

「ベル君のぉっ!変っ!態っ!!」

「ぎゃぶふぁっ!?」

 

 

 その光景を傍から見ていたアスフィは、あまりにも見事な出来事に少し感嘆してしまった。

 

 顔を上げて、思いっきり腕を振り被ったエイナ。

 

 おちんちん(ガネーシャ)を隠そうと、両手を股間に向けたベル。

 

 両者が同時に動いたため、奇蹟的なタイミングでエイナの平手が、ベルの顎を打ち抜いた。

 頭を揺らされたベルは、そのまま気を失い仰向きで後ろに倒れた。

 

 ベルにとっては本当に不運なタイミングだった。

 高レベルの冒険者であるベルが、恩恵も持たない一般人のエイナの一撃で気を失うことはまずない。

 今回は、股間を隠そうとしていたためガードができず、意識も股間に向かっていたため意識外からの打撃を無防備に受けることとなり、さらにその一撃が運悪く顎にクリーンヒットしたためにこのような結果になったのだ。

 

「ふんっ!」

 全裸のまま大の字に倒れるベルを一瞥したエイナは、肩を怒らせながら去っていった。

 残されたのは、倒れたベルを心配するアスフィと、丸出しのままのおちんちん(ガネーシャ)をはぁはぁと荒い息遣いで凝視するシルだった。

 

「ふぅ……。さて、どうしましょうか。」

 残されたアスフィは、全裸で気絶しているベルを見ながら溜息を零す。

 隣で、もはや本性を隠すことがなくなり、ベルのおちんちん(ガネーシャ)を見つめながら涎を拭っているシル(へんたい)のことは、努めて視界に入れないようにするアスフィ(むっつり)。

 

「なんかこっちで騒いでる声が聞こえたよ?」

「怪我人でもいるのかしら?」

 

 これからどう行動するかを考えていると、がやがやと話し声が近づいて来るのが聞こえた。

 どうやら大きな声で騒いだことで、様子を見に来た者がいるようだ。

 

 この事態にアスフィは焦った。

 ベルはいまだ気絶中。しかも全裸だ。

 話し声は女性の物だったため、ベルが見つかってしまえば大騒ぎになることは間違いなく。

 このままでは、ベルはヘルメスの所為で、女湯に侵入しておちんちん(ガネーシャ)を丸出しにしていた変態という扱いを受けてしまう。

 さすがにそれは申し訳ないどころでは済まない。

 しかし、女性達がやってくるまでにベルを隠す時間もない。

 アスフィの優秀な頭脳が高速で回転する。

 

「もうこれしかっ……。すいません、クラネルさん!」

 どうあがいても最良の結果が得られないことを理解したアスフィは、なんとか致命傷だけは避けられるよう動いた。

 

 ベルが橋の上で落としたカツラをベルに被せ、顔だけは見られないように隠したのだ。

 当然おちんちん(ガネーシャ)は丸出しのままだ。

 たとえ女性達におちんちん(ガネーシャ)を見られてしまっても、誰のモノかさえバレなければ、ギリギリベルの名誉は守られると考えたのだ。

 ベルからしてみれば十分致命傷と言えるかもしれないが。

 

 アスフィがベルにカツラを被せた直後、話し声を上げていた女性達が到着した。

 

「あれっ、男の子がいる!?しかもすっぽんぽんだ!」

「あらほんと。」

「……っ!」

「もしかして騒ぎになってたのってこの子が原因かい?」

「ちょ、ちょっと。なんで丸出しなんですか!」

「殿方のっ……!」

 

 現れたのは何とヘスティア・リリルカ・春姫のヘスティアファミリア一行と、アイズ・ティオナ・ティオネのロキファミリア一行であった。

 

 ティオネとティオナは、恥ずかしがることもなく大股開きになっているおちんちん(ガネーシャ)を見ながら笑い。

 アイズは、ティオナに目隠しをされながらも無理やり指の隙間を広げ、頬を染めながらおちんちん(ガネーシャ)をじっと見つめる。

 ヘスティアは、倒れているのがベルと気が付いておらず、おちんちん(ガネーシャ)も気にすることなく疑問を上げ。

 リリルカは、さすがに直視はできず、顔を背けながらちらちらと興味ありげに視線を向ける。

 春姫は、おちんちん(ガネーシャ)が視界に入った瞬間、鼻血を出してぶっ倒れた。

 

 これでベルは、知り合いの女性の大半におちんちん(ガネーシャ)を見られることとなったのだった。

 

 

「キャーッ!」

「あらあら。」

「こんな可愛い子なら、覗きなんてしなくても一緒に入ってあげたのに。」

「可愛いって何が?」

「そりゃ、ナニがよ。」

「は、初めて見ちゃったッス。」

「うん。案外小さいんだね。」

 

 そんなこんなしていると、騒ぎを聞きつけたのか、徐々に女湯に残っていた女性達が集まってきた。

 それぞれベルのおちんちん(ガネーシャ)を見て、悲鳴を上げたり、笑ったり、恥ずかしがったりと様々な反応を見せるが、誰一人としてその場を離れていくことはなかった。

 そして、何故か一定以上近づかずに遠巻きから眺めるだけだった。

 

 集まってきた女性達の中にはダフネとカサンドラの姿もあった。

 

「あ、あれっ!あれって!」

「お、落ち着きなって!下手に騒いだら正体がバレちゃうかもしれないでしょ!」

「だ、だって!おちっ、おちんっ!」

「それ以上言っちゃダメっ!?」

 動揺しながらも、周囲の女性達に聞こえないように小声で話す二人。

 騒ぎが気になってやってきた二人が見た物は、おちんちん(ガネーシャ)を丸出しにしたまま倒れている男性の姿だった。

 モロに見てしまった男の子のシンボルに真っ赤になる二人だったが、彼女達は周囲の女性達と事情が違った。

 

 そこで倒れているのが誰か知っているのだ。

 

 おちんちん(ガネーシャ)が誰のモノかわかっているのだ。

 

 顔こそ隠されていて見えないが、女湯にいる男性で、ピンクのカツラ、体格なども考慮すると、そこにいるのはベル・クラネルで間違いはなかった。

 ベルのおちんちん(ガネーシャ)を見てしまっているのだ。

 

 とは言っても、この状況で彼女達にできることは何もない。

 精々が、騒ぎ立ててベルの正体が露見しないようにする程度だ。

 助けることができないことに申し訳なさを感じながら、おちんちん(ガネーシャ)から目を離さずに見つめ続けることしかできない二人だった。

 

 

「あぁ――――――っ!!」

 

 

 すると突然、女性達の集団の中から叫び声が上がった。

 一人の女性が集団を搔き分けてズンズンとこちらに近づいて来る。

 それはベルが女湯に入った直後に全裸を見てしまったミィシャであった。

 

 彼女は、先程のエイナに劣らんばかりの怒りの表情を浮かべ、倒れているベルの下へと近づいてきたのだ。

 近付いてくるに従って、アスフィの表情が苦く歪んでいく。

 彼女も自分と同じくベルに己の全てを見られた同士であるが、自分から見せたアスフィと違い、ミィシャは同意なく見られた被害者という立場だ。

 怒りは十分に理解できるし、共感もできる。故に、アスフィの聡明な頭脳を持ってしても、彼女の怒りを宥める方法が思いつかなかった。

 

「こいつっ!こいつがっ!」

「フロットさん、落ち着いて下さい!」

「だって、こいつっ!アタシこいつに全部っ!」

 興奮し、今にも殴り掛かりかねないミィシャをなんとか宥めようとするも、当然の如く聞く耳を持たない。

 顔を怒りと羞恥で真っ赤に染め上げ、目尻には涙が浮かんでいる。

 このままでは、興奮のままカツラを剥ぎ取られ、ベルの正体がここにいる全員にバレてしまいかねない。

 同じファミリアであるヘスティア達や、ベルの想い人であるアイズ達の前で正体が露見してしまうことは、なんとしてでも避けなければならない。

 アスフィの思考が、戦闘中に比肩する程に高速で回転する。

 

 そしてアスフィは一つの閃きを得る。

 

「この変態がっ――――!」

「フロットさん、よく聞いて下さい!」

 アスフィが普段の彼女からは考えられない程大きな声を上げる。

 

 そして――――。

 

 

 

「子(・)供(・)のしたことですから!!」

 

 

 

 丸出しのままだったおちんちん(ガネーシャ)を指差した。

 

 

 ベルに意識があれば死刑宣告にも近い言葉だった。

 

 

「えっ?」

 怒りに震えていたミィシャが、思わず怒りを忘れてベルのおちんちん(ガネーシャ)を見る。

 遠巻きに見守っていた女性達も一斉におちんちん(ガネーシャ)にを見た。

 その瞬間、その場にいた全女性の視線がベルのおちんちん(ガネーシャ)一点に集中した。

 シルは最初からずっとベルのおちんちん(ガネーシャ)しか見ていなかったが。

 

 大人の男に裸を見られたからこそミィシャはここまで怒り狂っているのだ。

 仮に見られたのが子供であれば、彼女は怒るどころか笑って窘める程度で済んだであろう。

 

 しかし、ベルを子供と主張するには無理があった。

 身長もそれなりにあり、よく見れば筋肉も中々に引き締まっていて、子供特有の柔らかさと言ったものもわずかに感じる程度だ。

 肌の質感などから見て、十代半ば程度であることは見て取れるが、それでも子供というには苦しい。

 

 だが、一点において子供を主張できる部分があった。

 

 それがおちんちん(ガネーシャ)だ。

 

 年齢からしても小振りと言えるそれはすっぽりと先まで被っており、十分に子供と言える幼さを秘めていた。

 

 

「ぷっ!」

 アスフィの発言に唖然としていたミィシャが堪えきれなくなり噴き出した。

 堰を切ったように笑い出したミィシャは先程の怒りなどすっかり忘れてしまったようだ。

 周囲の女性達も釣られたように笑い出す。

 中には子供発言がツボに入ってしまい、呼吸が怪しくなるほどに笑い転げている者までいる。

 

「あはははははっ!子供っ!たしかに子供のしたことだねっ!」

 一頻り大笑いしたミィシャはしゃがみ込んで、おちんちん(ガネーシャ)をまじまじと見る。

 怒りの収まった冷静な視線で見ると、おちんちん(ガネーシャ)の幼さがよりくっきりと見える。

 年齢こそ自分とそう変わらないだろうが、この子の恥ずかしい部分を見ているという優越感が年齢差以上の格差を与え、怒りが湧いてくる気配もない。

 

「こんな可愛いらしいのに指輪なんてくっ付けちゃってる変態君は、何処の誰なのかな~?」

「すいません。彼はヘルメス様の悪ふざけに巻き込まれて女湯に連れ込まれただけなんです。

 彼の名誉のために、誰なのかは秘密にさせてくれませんか。」

 揶揄うようなミィシャに、アスフィが懇願する。

 彼の万能者(ペルセウス)にこうも言われてしまっては、正体を探るわけにもいかず、仕方なしとおちんちん(ガネーシャ)をしっかり記憶するにとどめる。

 

(……あれ?)

 おちんちん(ガネーシャ)を眺めていたミィシャは、視界に映り込んだ物に意識を奪われる。おちんちん(ガネーシャ)そのものではなく、その上にちらりと見えた物だ。

 よく目を凝らさないと見えない程に密かにだが、そこには間違いなく毛が生えていた。

 

 

 それは、白い毛だった。

 

 

 その瞬間、ミィシャの中で全ての点が一つに繋がった。

 アスフィがこの子を庇う理由、ここに来るまでにすれ違った怒り狂ったエイナ、そしてこの白い毛。

 時折ギルドにやってきて、エイナと楽しそうに話していた兎のような白髪の少年が記憶の中から浮かび上がる。

 目の前に横たわる変態の体格、そして何よりこのちょろっとだけ生えた白い恥毛が、その少年の姿と重なる。

 ミィシャは確信する。

 

 

 この子は間違いなく、エイナの弟君たるヘスティアファミリアのベル・クラネルであると。

 

 

(そっか~。弟君だったのか~。)

 ミィシャの顔がニマニマとした笑顔に染まっていく。

 それはまるで、玩具を見つけた猫のような顔だった。

 

 散々見ていたおちんちん(ガネーシャ)だが、それがベルのモノとわかったからには見え方が変わってくる。

 これまでは、正体の知れない変態の情けないおちんちん(ガネーシャ)だったが、これからは、同僚であるエイナの想い人である男の子のおちんちん(ガネーシャ)として見る形となるのだ。

 これはもう、エイナの友人として、もしかしたらエイナがお(・)世(・)話(・)に(・)な(・)る(・)かもしれないモノをしっかりと評価して、記憶に焼き付けなければならないだろう。

 自分に言い訳して、ミィシャは再びおちんちん(ガネーシャ)に視線を向ける。

 

(しっかし、弟君がこんなに可愛らしいモノ持ってるなんてねぇ。

 エイナは最近男の顔になってきたとか言ってたけど、こっちはまだまだお子ちゃま(レベル1)ね。)

 無遠慮な程におちんちん(ガネーシャ)を具に観察しながら、その可愛らしさにミィシャは興奮が抑えられなかった。

 特別親しいといった間柄ではないが同僚の想い人で、自分も知り合いと言える程度には話をしたことがある。

 そんな相手の、最も恥ずかしい部分をこうもはっきりと見てしまった。その異常事態がミィシャをこの上なく興奮させていた。

 

 

 

「騒々しいぞ!何の騒ぎだ!」

 

「「「「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」

 

 ミィシャが童顔なベルにお似合いの、小振りなおちんちん(ガネーシャ)に夢中になっていると、遠巻きに見ていた女性達の方から怒声と悲鳴が聞こえてきた。

 

 声に驚いたアスフィ達がそちらを振り向くと、女性達のすぐそばにディアンケヒトがいた。騒ぎがあまりにも大きくなり過ぎたことで、とうとうディアンケヒトの耳にもその声が届いたのだ。

 自分の温泉内で騒ぎが起きていることに怒ったディアンケヒトは、アミッドやナァーザ達をそのままに、騒ぎの現場に怒鳴り込んだのだった。

 

 悲鳴を上げたのは駆け付けてきたディアンケヒトの姿を見た女性達だ。

 彼女達の上げた悲鳴は、ベルのおちんちん(ガネーシャ)を見た時の物と種類が違った。見たくもない物を見た時の嫌悪感が混じった悲鳴だった。

 理由は、ディアンケヒトの姿を見れば一目で判明した。

 

 ディアンケヒトは全裸だった。

 温泉に浸かっていた所から、タオルも持たずに駆け付けたのだ。

 

 直前まで若々しいベルの全裸を眺めていた彼女達にとって、いきなり見させられたディアンケヒトの老いを感じさせる全裸は強い衝撃を与えた。

 仮にも神であるディアンケヒトは、決して不細工ではない。むしろ顔そのものは整っていると言っていい。

 しかし、ベルの中々に鍛えられて引き締まっている身体と比べると、その身体はやや弛み気味であり、股間に関しては小振りで先まですっぽりな子供らしい幼さを見せるベルのおちんちん(ガネーシャ)とは対照的に、しっかりと剥けて大人の形状をしたそれなりのサイズのモノがぶら下がっているのだ。あまりのギャップに、彼女達の目線ではディアンケヒトの身体はことさら醜悪に見えてしまった。

 ベルの時のキャーという悲鳴と、ディアンケヒトの時のギャーという悲鳴の違いを考えれば、彼女たちがどう感じたのか分かるだろう。

 先程まで目の保養と言えるモノを見ていたのに、急にそんな見るに堪えないモノを見せられた女性達は、いったいどのような行動に出るであろうか。

 

「おい、貴様等っ!…………おい?何だ?」

 

 怒鳴り声を上げていたディアンケヒトが、異様な女性達の雰囲気に気が付き、思わずたじろぐ。

 徐々に後ずさりをするディアンケヒトを、目に怒りを宿した女性達が逃がさないように囲い込んでいく。

 

 その裏で、アスフィがベルを担いで全速力で走りだした。

 アスフィは、皆がディアンケヒトに気を取られている間に、ベルをこの場から逃がすことに成功したのだった。

 

 

「おい。ちょっと?待て!」

 怒れる彼女等がそんな言葉に耳を貸すはずもなく。

 

 

「ぎやああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 廃墟となったケヒトの湯に、ディアンケヒトの悲鳴が響き渡った。

 

 

 こうして、ケヒトの湯を廻る大騒動は、ディアンケヒトが割を食う形で終結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




くっそ長くなった。

やっぱりアスフィさんはむっつりだったら素敵だと思うんですよ。
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