2022/11/4 デタリキZXを知らない人にはわからない用語や、作者の趣味が前面に出すぎて伝わらない用語があるため、作者の偏見にまみれた脚注を入れました。興味があればどうぞ。
<scene1 クッキーマシュマロ 楽屋にて>
班長*1が『上』……特務科学省の上層部から言われたのは、とにかく特別防衛局異形生物対策班*2の設立3周年を祝うイベント企画を行う事、だった。特別防衛局の予算獲得の為、何か派手にアピールしろといういつもの無茶ぶりだ。
異形生物対策班の認知度と好感度を上げるため、公開イベントを行えという指令だが……。
派手にやれ。だが予算は無い。
以前レイン*3が本当に派手にやって……やりすぎて……予算は縮小される一方だったが、そこをなんとかしてしまうのが、班長と言う男だった。伊達に様々な『
「だからって、なんでライブなのかねぇ」
七海*5がぼやく。
そう言いつつも、リードギターを担当する七海は死に物狂いで練習してたのを陽菜*6は知っていた。班長に恥をかかせないように、ジャマー対策の合間を縫ってひたすらギターを弾いて猛特訓していたのだ。
左手の指先から何度も血を流し、痛みを堪えながらの練習。痛みがあまりに酷かった時に、ジミ〇ン*7ばりに右手用のギターを左手で構える逆さギターをするのはともかく歯ギターにまで手を出そうとした時は、さすがに他の3人が止めた。逆にそこから速弾きに目覚め、最近はライトハンド奏法からのエイトフィンガー*8まで使いこなし速弾きの鬼となっていた。
「なんか、高校生の文化祭みたいですよね」
キーボード担当の美月*9が、少し笑いながら言う。
対策班が用意した楽器は、予算の都合で大したものが準備できなかったのだが、美月のキーボードはその最たるもので、いわゆる、初心者向けのキーボード……練習曲にあわせて次に打鍵する鍵盤が光るヤツ*10だ……だった。しかしもともと経験者だった美月は、シンセベースをメインに、キラキラしたシンセ音やオーケストラヒットで曲を盛り上げたり、エフェクト系の音や効果音を入れたりしながら、歪んだハモンドオルガン風の音でソロを弾くなど、機材のポテンシャル以上の演奏していた。『弘法筆を選ばず』を体現をした美月だが、本当は某TKや某DA*11ばりにショルダーキーボード*12を使って前に出たかったらしい。尚、ショルダーキーボードは叩きつけて壊すまでがワンセット*13だと言っていたが、陽菜にはよくわからなかった。
「……うん。でも、美月ちゃんも七海も、センスある。陽菜ちゃんのボーカルも伸びがいい。さすが……」
そう言いながら、クルクルと指先でドラムスティックを回す風香*14。
あの小さい体でドラムを叩く姿は、まるでドラムセットに埋もれているようにも見えたが、ドラム未経験者の4人の中で一番リズムキープが出来ていたのは、風香だった。
淡々とリズムをキープするのは勿論、様々なフィルを入れるのもうまい。
風香に言わせれば「絵を描くときに色を選ぶのと一緒で、何となくその瞬間に気になったタムやシンバルを叩いているだけ」らしいが、陽菜にはよくわからなかった。天才肌ってこういう事かと、自分を納得させたに過ぎない。
そういう陽菜自身も、班長に任された以上、頑張って最高のライブにしようとボーカルとギターをひたすら練習した。
リーダーだからボーカルとギターは陽菜ね、と七海に言われたときは、どうしようかと思ったけれど。班長が「頼むよ」と言えば、否は無かった。ボイトレとギターの特訓の日々。七海と同じく、ギターの弦で何度指から血を流したかわからない。
そして今日。ライブの開演はまもなくだ。
「クッキーマシュマロ*15さん、出番です。お願いします!」
タイムキーパーに声をかけられ、陽菜は改めて、信頼する仲間たちを見た。七海も、美月も、風香も、陽菜を見ていた。
陽菜は頷いて、力強く気合を入れるように言った。
「クッキーマシュマロ、行きます!」
白い防衛装備*16を身にまとった陽菜たちは、舞台へと踏み出した。
サイリウムの光が揺れ、大歓声に見送られ、舞台をはける。
アンコールに応え、最後の曲を演奏し終えた4人は、楽屋に戻っていた。
ライブは大成功に終わった。
途中、何回かあった衣装替えの早着替え…とは言っても『デタリング*17』を使って、それこそ一瞬で『コ・ス・プレ*18』を変えるだけなのだが…も盛り上がった。
4人揃って「日焼け水着*19」で演奏した時は、大盛り上がりだった。
最後の早着替えに、みんなお揃いで『ドリーミングナイト*20』を着るところを、七海が間違えて『寵愛の桃紐*21』にしてしまい、恥ずかしがる七海の姿を見て、観客の何人かが鼻血を噴いて医務室に運ばれたというハプニングはあったが。
「いやー、ゴメンゴメン。あの時は焦ったなぁ…」
「焦ったなぁじゃないわよ、七海…」
「そうです。恥ずかしさにしゃがみ込んだ七海さんをフォローをするために、『トラブル・イマジン』と『アクシデント・イマジン』*22にコ・ス・プレをチェンジして観客の視線を集めた私たちの身にもなってください」
恥ずかしがってギターを抱えた七海は、角度によっては全裸にも見える煽情的な姿だった。
その前に立って、とっさに陽菜が『フルスロットル・ギア+*23』にコ・ス・プレをチェンジしバイク……AJA-TYPE-Mtを舞台に召喚。七海の姿をAJAで隠すと、美月に目配せをする。そして二人はコ・ス・プレをイマジンシリーズに変えて、あの巨乳を観客に晒したのだ。
観客は急に現れたAJAと、イマジンシリーズを見てさらに大盛り上がりとなった。観客は二人の巨乳に注目。その間にAJAに隠れた七海は、慌ててコ・ス・プレを変えてこんどこそ『ドリーミングナイト』に着替え。七海が着替えた直後に、陽菜と美月が『ドリーミングナイト』へと早着替えをしたのを確認して、それまで、何もなかったようにリズムを取り続けていた風香がイントロのドラムを叩き、曲をスタートさせたのだった。
プンスコと怒る陽菜と美月に詰め寄られ、七海は手を合わせる。
「悪かったってば。あ、そんな中、冷静にドラム叩いてた風香にも助けられたよなぁ」
トラブルの間、それがさも演出であるかのようにリズムを取り続けていた風香。
七海は謝罪しながらも、誤魔化す様に風香に話をふるが、
「……私には、そういう『えっちぃ』コ・ス・プレが無いから*24」
天使が通り抜けた。
トントン、という楽屋のドアをノックする音で、凍り付いた部屋の時間が動き出した。
はーいと慌てて陽菜が返事をし、扉を開ける。扉の向こうにいたのは、山ほどの花束*25を持った班長だった。
「今日はよく頑張ってくれたな。みんな、ありがとう」
「はい!班長!」
やり切った4人の元気な返事に微笑みながら、クッキーマシュマロの一人一人に花束を渡そうとする班長。
「七海、ギターよかったぞ。いっぱい練習したんだろう?ほら」
班長が花束を受け取ろうとする七海の左手を取る。その指先はギターの弦で何度血を滲ませたかわからないほど、固くなっていた。
「あ……あたしは、別に。班長が、ご褒美をくれるって言ったから」
恥ずかしさに、手を振りほどいて身体の後ろに手を隠す七海。俯くその頬は赤くなっていた。
「ああ、勿論だ。この花束は『ご褒美』じゃないからな。期待しててくれ。美月、キーボードお疲れ様。ホントはもっといい機材を用意したかったんだが」
美月に花束を渡しながら苦笑いする班長。
「いえいえ。でももうちょっといい機材*26でしたら、もっといい演奏をして、班長のご褒美がもっと期待できたかもしれないのに、残念ですねぇ」
「いや、あの機材であれだけの演奏をしたんだからたいしたもんだ。…風香」
「ん」
花束を受け取り、風香が返事をする。
「ドラム、凄かったぞ。流石は風香だ。」
「……ご褒美……。新しいコ・ス・プレも欲しい。ご褒美とは別に」
出来れば『えっちぃ』コ・ス・プレで、と付け加えられ、班長は苦笑いした。
……まわりは凍りついた。
「アハハ、コ・ス・プレの事はラファム達に言っておく。…陽菜」
「ハイ!班長!」
花束を持って陽菜の方を向く班長に、陽菜は待っていましたとばかりに返事をした。
それはもう、尻尾があったらブンブンと振っているくらいに。
「リーダーとして、ボーカルもギターも頑張ったな。ハプニングが起きた時の対処も、流石だったぞ」
「ありがとう……ございます……!」
班長は、私の事をちゃんと見ててくれる…。そう思って、花束を受け取る陽菜は泣きそうだった。
「何泣きそうになってるんだよ、陽菜」
「な……七海だって。なに鼻すすってるのよ」
「ば……これはそのほら、まぁなんだ、無事に終わったから」
茶化そうとしてやり返された七海が慌てている姿に、みんなが吹き出す。
「そうだな。みんな、よくやってくれた。本当にありがとう」
班長はもう一度礼を言い、頭を下げると、打ち上げの席を設けてあることを伝え、撤収の指示を出す。
はい、と返事をして、クッキーマシュマロのみんなが撤収準備に腰を上げるのを見届け、班長は楽屋を出ていくのだった。