……今回は、えっちが無いのです……。
次回は!次回は必ず!!
<scene8-1 リリー 班長のせいなんだから!>
藤宮リリー*1は、ようやく帰ってきたX支部の自室にて酒の入った頭でぼーっとしていた。
今日は3周年記念ライブの当日。リリーは本日非番だったため、ライブに関わる事もなく、後輩に誘われた特務科学省のエリートさん達との合コンに出かけていたのだが。
「ホント最悪な男しか居なかったじゃない。全く」
吐き捨てるように呟いて、リリーはソファにぐったりと身を預けた。
あんな史上稀にみる最悪の合コンに参加することになったのも。
……全部、班長のせいなんだから。
ふぅ、とため息をついて、ポケットから出したのは、「デタリウム・システム」の端末。
後輩に誘われるまま、最悪の合コンの参加と引き換えにこの端末のテスターを引き受けたのは、現時点では割にあってなかった。性能だって説明通りかもわからないし、どんな不具合があるかもわからないというこの端末。
「これでホントに言った通りの性能じゃなかったら怒るからね……。もぅ」
リリーは呟き、端末の電源を入れた。
そもそも、リリーが「デタリウム・システム」の端末を渡された経緯は、数日前のある日に遡る。
たまたまリリーが本部に行った時、もともと情報統括班に所属され今は研究所に勤務している後輩ちゃんに、仕事上がりに呑みに行こうと誘われたのだった。普段はX支部で現場の仕事をしている為、本部に行くのも久しぶり、本部勤めの後輩に会うのも中々チャンスがない。本部の用事は済んでいたが、リリーは直帰する旨X支部に連絡を入れ、後輩ちゃんと一緒に、二人で本部近くの個室居酒屋へと繰り出したのだった。
「先輩、聞いてくださいよ、この間の合コンでぇ」
「あーはいはい。最近合コンなんて行ってないな、私」
「もー。結婚目当てで国家資格を余裕で通った、リリー先輩の言葉とは思えないですよー」
ケラケラと笑う青髪の後輩ちゃんに片眉を上げて見せる。何よ。対策班は女ばかりで出会いなんてないんだから。
「それともあれですか?班長さんに悪いとか思っちゃったりして?」
「な……なんで班長が出てくるのよ」
もー。バレバレですよー。とまた屈託なく笑う後輩ちゃん。
「しかも、対策班の人み――――――――んな、班長狙いとか。ウwwwケwwwルwww」
「草生やしてるんじゃないわよ、まったく。」
リリーは手にしたカクテルを飲み干すと、すみませーん、と、暖簾の外にお代わりを注文する。
「班長さんってどこがいいんですかぁ?なんか見た目パッとしないし、鈍感だし。なんかラブコメ漫画かラノベの主人公みたいですよね。コミックならそう言うもんだって思えるけど、実際にいたら面倒くさそう」
「で、でも、優しいし、隊員一人一人を見ててくれるし、理解してくれるし、懐深いし、気を使ってくれるし……」
「はいはい、御馳走さまですーっと。あ、あたしにも同じのくださーい」
リリーの頼んだお代わりを持ってきた店員に、後輩ちゃんが追加注文する。
「そ、そうは言うけど、班長だって私の事頼りにしてる*2んだからね!ジャマー対策でも作戦立案でも、私、結構役に立ってるんだから」
なんだか言い訳にもならない事を言うリリーに、後輩ちゃんは白い眼を向ける。
「……でも、最近はほったらかされてて*3」
うぐ、とリリーは唸る。
「8月の
ぐぬぬ。何も言えないリリー。ポニーテールが震える。
「新しい強いコ・ス・プレ*5も貰えなくて」
「あ、新しいコ・ス・プレは、班長のせいじゃありませんー。ていうかそれこそ本部のせいじゃない*6」
リリーは反論するが、
「その新しいコ・ス・プレが台頭してきたせい*7で、最近はジャマー対策のサポート*8しかできず」
グハッ!心の中で吐血するリリー。
「そんなジャマー対策に追われる毎日で心癒されるのは、部屋で内緒で呼び出しているマイジャマーちゃんだけ、と。そんな人生寂しいじゃないですか」
な、何故そんなことまで知っているのか。隊員の夜の事情まで情報統括班は把握しているのか。恐るべし、情報統括班。いや、プライバシーとは。
「やだなぁ、カマかけただけなのに。先輩、よっぽど焦ってますね」
「ううう。どーしよ――――。私、出番無くなっちゃう――――」
ひしっと。後輩ちゃんに抱き着くリリー。揺れるポニーテール。そんなリリーの頭を後輩ちゃんはよしよしと撫で、ポニーテールの先を梳く。
「だからこそ。だからこそですよ、先輩。今こそ合コン。今度の合コンは特務科学省のエリートばかり!ほーら先輩も合コンに参加したくなってきたー。合コンに参加したくなってきたー♪」
こぶしを握り締め。熱弁する後輩ちゃん。その勢いに、まるで催眠術のように誘導されるリリー。
「うう、そうかなぁ」
「ただし、合コンに誘うには条件がありまーす」
「何よ、条件って」
「『デタリウム・システム』~♪」
テレレレッテレ~*9♪
自分の髪色と同じ色をした、世界的に有名な猫型ロボットのように、後輩ちゃんは一つの端末を取り出した。
「この端末はですね、GALと情報統括班が作った新しい装置なのです。リリー先輩にはこれのテスターになってもらいまーす」
リリーは不審げに後輩ちゃんを眺めた。
「テスター?モニターじゃなくて?」
「テスターです。何せ、まだ不具合があるかも検証中で」
リリーは呆れた。
「はぁ?合コンの穴埋めして、怪しげな新装置の被験者になれって?何よそれ」
「まぁまぁ、そう言わず。エリートとの合コンにも行ける!新装置も弄れる!『両方』やらなくちゃあならないっていうの、最高じゃないですか」
ドヤ顔の後輩ちゃんだったが。リリーの冷たい視線に気が付き、慌てて説明を始める。
「いや、いろいろ機能があるんですけど、これを使えばジャマーを複数体呼び出せr」
「了解しました。むしろ合コンどうでもいい。そっちくれ」
「えー。ダメですよぉ。合コンにもちゃんと参加してもらわないと」
「いいじゃない。テスターやるやる♪」
はぁ、とため息をつく後輩ちゃん。
「ちょっとだいぶかなり心配になってきたので、端末は当日お渡しします。事前に渡したら絶対に当日来ませんよね」
「えー。信用ないなー。ぶーぶー」
ふくれっ面を作るリリーに、後輩ちゃんは肩をすくめる。
「まぁどっちみち、調整が必要なので今日は渡せないんですけどね。じゃあ、合コン、必ず来てくださいね!約束ですよ!」
「分かったわよ。じゃあ、詳細は後で送って」
ホントは合コンなんて参加するつもりは全くなかったけれど。
私の事をほったらかしにしてる、班長のせいなんだから。
こうして、後輩ちゃんの会話の流れで、リリーの事をほったらかしにしている班長のせい……
後輩ちゃんとそんなやり取りの後に迎えた合コン当日……奇しくもその日は、クッキーマシュマロの3周年記念ライブの日だったのだが……リリーはせっかくだからと可愛らしく整えて、合コンに参加した。
相手は特務科学省のエリートたちと聞いていたので、まぁ官僚との出会いやらコネやら作れればいいかと思っていたのだが。
「ホント最悪」
当日、記念ライブに関わらない人員は、エリートと言いつつも平の平。
上層部の主要な面々は記念ライブへ……そして打ち上げへ参加しているわけだし、こんな合コンに来るのは、特務科学省に勤務していても特別防衛局の存在意義を理解しておらず、ましてや
いわんや、
え?現場に居るの?ジャマーとか気持ち悪くね?あの
と、リリーのキレポイントを確実についてくる……特に「ジャマー 気持ち悪い」が最悪だった……口撃に辟易し、でも流石に異形生物対策班の上部組織である特務科学省のエリートを無下にも出来ず。
心を殺し、接待モードで乗り切ったのだった。
「まぁまぁ、これで私も面目が保てます。研究費削減をちらつかせて、合コンセッティングしろってうるさかったんですよー。はい、約束の端末です」
「あんたね……」
騙されたも同然な物言いに、ひったくるように端末を受け取ると、リリーはジト目で後輩ちゃんを見る。
「いつか背中からマイジャマーをけしかけたい。特にあのマイジャマーを気持ち悪いって言った男」
「その時は協力しますね。あ、使い方は簡単な説明書つけときましたから」
「あなたを含めた今日の参加者全員にマイジャマーをけしかけたいって意味よ、まったく」
碌でもない男との合コンに付き合わされた身にもなってほしい。
まったく。こんなことになったのも。
……全部、私をほったらかしにしてる班長のせいなんだから!
そんなわけで「デタリウム・システム」の端末を手にしたリリーは、説明書を軽く読み流し、とりあえず一体のジャマーを呼び出した。
「きゃーっ!黄デメキングちゃん。カワイイ♪」
呼び出したのは、黄色いデメキングと呼ばれるジャマーだ。リリーがいつも呼び出している個体とは違う気がする。ぴょん、ぴょんと跳ねる様子は、リリーには可愛らしいとしか思えなかった。
「このスライダーで大きさを調節できるんだ……。ふふ、チビデメキングだ」
大きくしたり、小さくしたり。端末に表示されたスライダーを動かして、デメキングの大きさを調整してみるリリー。先の合コンの事など忘れ、すっかりご満悦である。
「そして試しにもう一体……出来た!」
その場には先ほどとは別の赤いデメキングが現れる。リリーは感動した。
そう、デタスティックで呼び出せるジャマーは1体だけ*10。だから、デタスティックを使って、部屋で内緒にジャマーを呼び出す時も1体しか呼び出せないのだ。それなのにここには2体もいる。そう。2体もいるのだ!
「色違いのデメキングちゃんが2体もこの部屋にいるなんて……!」
流石ジャマー好きを自称するだけの事はある。2体のデメキングがポヨンポヨンしているだけでテンションあげあげである。そんなジャマー好きが2体だけで収まるわけがない。
「青でしょ、茶でしょ、わぁ、無属性のデメキングちゃんもいるじゃない!」
赤、青、茶、緑、黄、黒、そして無属性。7種類のデメキングを呼び出したリリーは、ポヨンポヨンと跳ねる7体のデメキングをそれぞれ大きくしたり小さくしたり。一気に7体のジャマーに触れられるなんて夢のようだった。
つついてみたり。撫でてみたり。抱きしめてみたり。
「至福だわ……」
ジャマーに囲まれて幸せそうなリリー。だが、リリーの邪な欲望は膨れ上がるのだ。
どこまで呼び出せるのか。
何匹のジャマーに囲まれることができるのか。
限界チャレンジである。
酒に酔った勢いもあり、リリーはこの7種類のジャマーを更に増やし始めた。
8、9、10……
まだまだ呼び出せる。
20……30……
気がついた時には、部屋はジャマーで溢れかえっていた。
「さ、さすがにこれはちょっと……」
いや、もっと前に気が付くべきだったのだ。
自分のいるソファの周りに、何十体ものデメキング。リリーにとっては幸せだが、もしも他の人が部屋に入ってきたら卒倒し……いや、即刻ジャマー対策案件である。
「ちょ、ちょっと、やり過ぎちゃったかな?」
そう言いつつ、リリーが「デタリウム・システム」の端末でジャマーを戻そうと操作しようとした、その時。
ポヨン。
一番初めに呼び出して小さくしていた黄デメキングが跳ねて、リリーの手に当たった。
そして、黄デメキングが手に当たった衝撃で、リリーは、端末から手を滑らせていた。
「あ。」
それは偶然だったのか、それとも黄デメキングの意思だったのか。今となってはわかるすべはない。
リリーの手から離れた端末は、ゆっくりと、万有引力の法則に逆らう事のないまま……カツン!と音をたてて地面に落ちた。
そしてその瞬間。今までポヨンポヨンと跳ねているだけだったデメキング達の目が。
ギョロリ。
一斉に、リリーの方を向いた。
これは。……絶対に、ヤヴァいパターンだわ。
リリーの目に、先程ななめ読みした説明書の一文が目に入ってきた。
――尚、『デタリウム・システム』において、ジャマーの制御が難しい場合があります――
リリーは思った。
説明書はちゃんと読みましょう*11、と。
えっちが無いまま、引っ張ってゴメンナサイ。
次回、<scene8-2 リリー 愛しのマイジャマー>
(1週間ごとの投稿の予定です。のんびりおまちくださいませ)