すまんな、今回は番外編だから、クリスマスエッチはないんだ。
<クリスマスイヴ クッキーマシュマロ 本部近くにて>
クリスマスイヴの夕暮れ。クッキーマシュマロの4人は揃って街を歩いていた。
久々に4人揃ってのジャマー対策。年の瀬に各地でジャマーが発生し、手が足りないと『クッキーマシュマロ』にも出動命令が下されたのだ。久々の出動とはいえ、そこはチームワークで難なくこなし。
無事にジャマー対策完了し、4人は冬空の中、本部へ帰投中である。
「寒くなってきたなー。あ、クリスマスツリーだ。おっきいー」
七海は薄曇りの空を背景にそそり立つクリスマスツリーを見上げた。どんよりとした雲のかかった冬の空が寒さを実感させる。そんな中の巨大なクリスマスツリーは、冬だと言う事を実感させる。
「なんか、雪が降るかもって言ってましたよ」
美月もクリスマスツリー越しに空を見上げる。確かに、いつ降り始めてもおかしくない、灰色の雲が空を覆っていた。
「……今年もホワイトクリスマス」
風香もツリーの向こうの空を見る。そういえば去年のクリスマスにも雪が降った*1っけ。陽菜もつられてツリーを見上げた。クリスマスイヴ当日。ジャマー対策に追われている私達。勿論今日は4人とも、プライベートの予定なし。冬の寒さが身に染みる。
「そう言えば、風香はサンタコス持ってるんだよな*2。あれ、寒そうだったけど大丈夫なのか?」
「……ふ。どうせ私のサンタコスは布面積が広い*3……」
「いや、そういう事じゃなくて」
風香が遠い目をすると、七海がツッコむ。Z支部で培った絆は健在だった。
相変わらず、えっちぃコスには恵まれない風香だが、そもそも新しいコ・ス・プレ自体、3周年の時に七海が貰ったきり、『クッキーマシュマロ』には回ってきてはいなかった。
「まぁ、これだけ隊員が居たら、新装備だってなかなか回ってきませんよね。それにほら、私とか最近はそんなにジャマー対策に出ることも無いですし」
美月は肩をすくめる。情報統括班に所属している美月は、最近デスクワークばかりだ。勿論、毎日のヨガで身体が鈍ったりはしていないが、新装備は現場に出ることの多い隊員に回すべき、なのだろう。
「いやいや、風香も現場仕事が多いんだし、そろそろ新しいコ・ス・プレがあったっていいよな」
「……うん。えっちぃコ・ス・プレを希望する」
「いや、そこじゃなくて」
くすっと、二人のやりとりに噴き出す陽菜。
「いいなぁ、現場に居たら、班長にももっと会えるもんねー」
「「いや、それはない」」
「え。」
七海と風香に同時に突っ込まれる陽菜。
「最近また班長忙しいんだって。ラファムX支部長に色々頼まれごとしてて」
「……『デタリウム・システム』絡み……」
「え、『
陽菜は目を丸くした。だって記念ライブの後、凍結するって言ってたじゃない。公衆の面前で七海と二人で下着姿を晒したあの一件は忘れられない。今ですら思い出せば顔が赤くなる。
それがまた復活しているとはどういうことか。あの時の恥ずかしさを返せ。下着姿晒し損じゃない。
「……いや、あれは陽菜ちゃんと七海も悪い。新技術を信じすぎ。ましてや制服をぐちゃぐちゃのシワシワにしてくんずほぐれt」
「「わーーーっ!わーーーーーっ!わーーーーーーーーっ!」」
ムグ、と慌てて風香の口を塞ぐ陽菜と七海。こっちのチームワークも健在である。
「でも、ホント?『デタリウム・システム』絡みって」
「ムグムグ」
風香の口を抑えながら、陽菜は美月に聞くが、美月は肩を竦める。
「私にも情報が回ってこないんですよ。あれから何人かのテスターに端末を渡してたみたいですけど、それも今メンテナンス中なんですって」
「ふぅん。何があったのやら」
「ムグムグムグ」
風香が何か言っていたが、陽菜と七海に口を塞がれ聞こえない。
「で、ラファム支部長の所に、班長が直談判しに行ったって噂なんだ」
「直談判って、何を?」
「さぁ?『デタリウム・システム』が凍結してない事に文句でも言いに行ったんじゃね?」
「ムグムグ、ム……グ……」
「ちょ、ちょっと、風香さん!?」
風香の様子がおかしいことに気が付き、慌てて美月は陽菜と七海の手を外させた。
どうやら息が出来なかったらしい。はぁ、はぁ、と息をして、風香は一つ深呼吸。
「……ふぅ、綺麗なお花畑と川向うに両親が見えた……」
「おま……両親、普通に生きてるだろ……」
「……ん。ぴんぴんしてる。だから三途の川じゃないと判断した……」
「おばあちゃんって言わなかったところが風香さんらしいと言うか」
「……そんな事より『デタリウム・システム』の話。たぶん班長は、自分がテスターになる代わりに、他の隊員を
風香は、クィッと眼鏡のフレームを上げると、顔の前で口元を隠す様に両手を組む。
「……おそらく、班長は『デタリウム・システム』の闇に気がついてしまった……」
「な、なんだよ、『デタリウム・システム』の闇って」
七海に問われ、風香は遠くを見つめた。
「それは、これから徐々にわかってくる、筈。たぶん、1週間おきくらいには*4」
「なんのこっちゃ」
と。
「あ、雪……」
さーっと。空から白い粉雪が舞い落ちてきた。手のひらで受け止めると、すぐに消えてしまう。
クリスマスツリーのイルミネーションの輝きをうけ、舞い落ちる雪の幻想的な風景に、4人はぼーっとクリスマスツリーを見上げた。
世の中はホワイトクリスマス。カップル達は浮かれ、家族連れははしゃぐ、そんな中、仕事中の私達。
……世知辛い。
「あぁ、もぉ!早く戻って仕事終えよう!そしたらみんなで飲みにいこう!」
七海の提案に、みんなで頷く。
その時だった。後ろから、七海の背中に飛びついた者がいた。
うわ、とよろける七海の背中にしがみついたのは緑色の髪の……猫耳。
「やっと見つけたにゃー。クッキーマシュマロのみんな、探したにゃー」
「ミ、ミーシャ!?」
重い、降りろともがく七海の背中によじ登り、ニッコリピースしているのは、パンダ組*5のミーシャ・ワイル*6だった。
去年のクリスマスに与えられた『
「ジャマー対策お疲れ様にゃ。
「班長から!?」
フフンと勝ち誇った顔になり、広く開いた胸元、豊満な乳房と乳房の間からメモを取り出す。
「……どこから取り出してるの」
「美蘭の真似してみたにゃ。美蘭ほどじゃないけど、ミーシャも結構入るのにゃ」
ミーシャは握りしめた風香の手が震えているのに気がついてはいなかった。カンペなのだろう、胸の間から出したその紙を見ながら、ミーシャは口を開く。
「ジャマー対策お疲れ様。……えーと、これ、なんて読むにゃ?」
七海にカンペを見せるミーシャ。
「緊急任務」
「それにゃ。キンキュー任務を頑張ってくれたクッキーマシュマロへ、クリスマスプレゼントをミーシャにたくします」
そしてミーシャはカンペを再びしまうと、担いでいた白い袋から4人にプレゼントを取り出して一人一人に渡していった。
「陽菜と美月にはこのおっきな箱にゃ。たぶん、鰹節ではないにゃ。風香にはこっちの包みにゃ。これも鰹節ではないにゃ。七海には、こっちのおっきな猫さんぬいぐるみにゃ。ミーシャの方が可愛いにゃ」
確かに鰹節ではなさそうにゃ。陽菜は口調がうつっていた。
「ミーシャは班長から何かもらったの?」
「勿論、リボンをつけた鰹節を貰ったにゃ。幸せにゃ……」
じゅるりと舌なめずりをするミーシャ。
「あと、今日はこのままベストしていいそうにゃ。気を付けて帰るにゃー」
言うだけ言うと、ミーシャは袋を担ぎ、風のように走り去っていった。
「ベスト?」
「多分、チョッキ……直帰のことかと」
「誰だ、そんな言葉教えたの」
「千影さん*8じゃないですか?」
クッキーマシュマロの4人は目を点にして、ミーシャを見送っていたが、ハタと気が付く。
「これって、班長からのプレゼントだけど……」
そう。こうやって渡されたって事は、このクリスマスイヴは、班長と一緒にはいられないって事だ。
「もーーーーっ!班長めぇ、こんなプレゼントで誤魔化されるかーーーーー!」
と言いつつ巨大な猫のぬいぐるみを、ぎゅうと抱きしめる七海の顔はニヤけていた。
「そうですよ!こんな大きなプレゼント持って本部に戻ったら、何を言われるかわからなじゃないですか」
美月の顔もニヤけている。
「ですよね!班長めー。プレゼントすれば誤魔化されると思わないでください!」
陽菜も、そこには居ない班長に文句を言いつつ、嬉しそうだった。
「仕方ないなー。じゃあ、このまま飲みにいくかー!班長がキープしてたボトル、空けちゃおうぜー」
「「「おー!」」」
七海の号令で、4人は街に繰り出すことになった。クリスマスイヴの夜。こうやって、お互い
行きつけの店へ足を向ける三人の背中に、風香は肩を竦めた。
「……ちょろい……」
勿論。自分がちょろい仲間なのはわかっていたが、まぁ、クリスマスイヴを仲間と過ごすのは悪くない。友達の少なかった風香にとって、クッキーマシュマロの皆は、かけがえのない存在なのだった。
同時刻。本部内高層階の一部屋。
ブラインドを指で押し上げて階下の様子を窓越しに見ていた班長は、ミーシャからプレゼントを渡されたクッキーマシュマロが本部によらず帰る事を目視で確認した。他の隊員たちも、今日は本部に戻らないようにしてある。
黒ずくめの格好をした班長は、漆黒のフードの奥でニヤリと口元を歪ませた。
そして班長は、『デタリウム・システム』の端末を起動させ、呟く。
「『デタリウム・フィールド』発動……」
クリスマスの番外編でした。番外編なので、えっちも無くてゴメンよ、ゴメンよ。
さて次回はまた本編に戻ります。
次回は、実験!開発室と『デタリウム・フィールド』!