今回も……えっちが無いの……。
<scene9-1 イヴ&ビオラ 『デタリウム・フィールド』じゃ>
「という訳で、この子、見てほしいんスよー」
記念ライブも終わり、宇宙海賊ユビキタス*1の一件やらブレインの特訓やらと色々あったが、3周年記念の各イベントも終わり。12月に入りそろそろ肌寒く冬に近づいたある日。
ラファム*2が開発室に現れてイヴ*3とビオラ*4に見せたのは、『デタリウム・システム』の端末だった。
「なんじゃその端末は。わち、ちっこいのは苦手じゃのぅ」
「こういうチマチマしたの、ビオラ苦手だもんね……。私もどちらかと言うと大きい子と遊んでた方が面白いし。正直、乗り気じゃない……」
AJAの開発と調整を任されて開発室に籠っていたビオラとイヴは、面倒くさそうな顔を隠そうともしなかったが、ラファムは気にもせず
「まぁそう言わないでほしいッス。今回、GALと情報統括班が共同開発した面白い端末なんスから」
ニヤリと笑い、端末を起動させる。
「面倒くさいのじゃー。ちっこい機械をチマチマ弄るのはやる気が出ぬのじゃー」
「私も全然テンションあがらないよ……。ただでさえ、七海さんと美兎さんのAJA*5を調整するのを急かされて、ようやく目途がたったところなのに、こんな端末持ってこられても……」
冬に向けてすでに出してあった、ビオラ御用達の炬燵に入って文句を言う二人を横目にラファムが『デタリウム・システム』の端末を弄ると、開発室が一瞬でZ支部のリビングへと変わる。突然現れたZ支部のリビング……ただし、いつもなら置いてあるテーブルやテレビ、本棚などはなく、がらーんとした状態だった……に、二人は目を丸くする。
「な、なんじゃ、これは」
ビオラは目を丸くした。場所が変わったわけではない。ただ、見た目が変わっただけというわけでもなかった。壁や窓の外の風景は、現実のものと変わりはない。
「幻覚……?見た目には、壁の質感とかそれっぽいけど……通り抜けられるみたいだし。ていうか」
壁を触ろうと思って手を突くと、簡単に壁をすり抜ける。すり抜けたリビングの壁は、開発室の壁と同じような位置にあった壁の筈。リビングの壁が幻覚だったとして、開発室の壁はどこへ行ってしまったのか?イヴは目を丸くして、今度は壁に頭を突っ込んでみた。壁に頭を打ち付けるような事になるので、ちょっと恐怖感があったが、すんなりと頭は壁を通過する。そこに広がるのは、真っ暗な漆黒の世界。
「何、これ……。開発室はどこへ行っちゃったの?」
突っ込んだ頭を戻して、ラファムに尋ねる。その様子を見て、ドヤ顔のラファムが胸を張った。
ぽよん、と、巨乳が無駄に揺れる。
「どうッスか。凄いでしょう?」
「確かに、これは目を見張るものがあるの。この場に居る者の精神に働きかけているのか?それとも何か別の場所に転送されているのかのぅ?」
「ビオラは流石ッスね~。目の付け所が違うッス。」
「そ、そうかの~。わち、流石かの~。じゃあ、ちょっと弄ってみるかの~」
「技術者の鏡のビオラならそう言うと思ってたッス。イヴも宜しく頼むッス」
流石のチョロインっぷりを発揮するビオラに白い眼を向けるイヴ。何が流石なのか。それでどうして手のひらを返したように仕事を増やせるのか。小一時間問い詰めたい。とは言うものの、イヴも少し興味が湧いてきていたのは否めない事実だったが。
「二人なら、他の人とは違う視点での使い方をしてくれると思ったッス。じゃあ、よろしく頼むッスよ~」
上司の決定と言わんばかりに二人に1台ずつ端末を渡して部屋を出る。強引とも思えるそのやり口。流石、シリガルの四天王である。
とはいえ。
AJAの調整も一段落し、炬燵に潜れるほどには手があいていた二人は、さっそく端末を弄り始めるのだった。
班長が、イヴとビオラの様子を伺いに開発室のドアを開けたときの事だった。
開発室の見慣れた風景に、ちょっとした違和感を感じたかと思うと、次の瞬間、班長は漆黒の暗闇の中に立っていた。
うわぁ!と思わず悲鳴を上げたところで、
「あ、あれ?班長じゃない」
「おおー。班長殿。どうしてここに……というか、何故ここに居るのじゃ?」
イヴとビオラが気がつき声をかける。
いや、何故と言われても、対策班付になっている二人の様子を見に来るのはいつもの事だっていうか、何故ここにいるかはこっちの台詞だ。この何もない空間はなんだ。ここは開発室ではなかったか。
確かに足元はあるのに、落ちているやら昇っているやらわからない感覚。宇宙空間?でも普通に空気吸ってるし。これがGALの科学力か。流石、GALの科学力は
「そっか、フィールドを発生させたときに一緒にこっちに来ちゃったのか。あ、ちょっとまってね」
イヴが手にした端末を操作すると、今度はZ支部のリビングになった。周りの風景が漆黒の空間からリビングに変わって目をぱちくりとさせたが、イヴとビオラの持つ端末を見て理解した。
「『デタリウム・システム』……」
班長は思わず呟いていた。その呟き声にビオラが反応する。
「なんじゃ知っておったのか」
知っているも何も、この前の記念ライブの後に色々あって、そもそもそれは凍結した案件ではなかったか。
班長は、陽菜と七海によって作られた頬の手形の痛みを思い出す。……いや、二人の制止を聞かずに機能停止をしたおかげで、頬に手形を作ったのは自分自身のせいだとは思うが。
「だってほら、ここ、開発室だよ?ラファムだって、どこに問題あったか検証もせずに凍結なんてできないんじゃない?」
「まぁ、端末の開発自体にはかかわっていなかったのじゃが、先程ラファムから渡されてのぅ。今色々と、イヴと二人で検証しておったのじゃ」
なるほど。どう?いろいろと分かった?
「うむ。ラファムの奴め、面白いものを持ってきたのぅ」
言いながら、ビオラはまた端末を操作し、背景を変える。今度は本部のリビング。本棚やソファ等がなく、普段よりも広々としている。
「こうして、背景を変えることで『デタリウム・システム』は本来の力を発揮できるようになるのじゃ。これを仮に名付けるとするなら……ふむ、『デタリウム・フィールド』じゃな」
『デタリウム・フィールド』?本来の力って?
班長は尋ねる。
つまりじゃな、とビオラは得意げに解説を始めた。『デタリウム・システム』で『デタリウム・フィールド』を展開することにより……つまり、背景を変えることで、人物やジャマーを含めて、おける数に制限はあるが、このフィールド内なら様々なものを『配置』する事ができるようになると。
「これまでの使い方は限定的過ぎたのじゃ。服を変える、ジャマーを出す。まぁ言えば着せ替え機能じゃの」
班長は
「ところが、この『デタリウム・フィールド』の中でなら……。ほれ、立ち話もなんじゃ、座るがいい」
そう言いながらビオラが端末を操作すると、班長の目の前に見慣れた本部のソファーセットが現れる。そしてローテーブルには急須と湯呑が人数分。座れば確かに本部のソファーと同じような硬さだった。
「こうして、限定的ではあるが、物を配置したりすることができるのじゃ」
ビオラはさらに端末を操作する。するとだんだんとモノが現れては配置され、気が付けば普段の本部のリビングだった。とはいえ、よく見ると、本棚に本はない*6し、細かい所で差異がある。
「限定的と言ったじゃろ。パパっとやっては見せたが、細かいところまで再現するのは面倒くさいのじゃぁ。……あぁ、ホントに面倒くさくなってきた。わち、なんでこんな頑張ったんじゃろ*7……」
急にやる気をなくし、ソファでだらけ始めるビオラに、がんばるビオラは素敵だよ、と班長はビオラの頭を撫でた。
「ふぉぉぉぉ……な、何を言っておるのじゃぁぁぁぁ……。しかも頭をナデナデとか……わち、そんなに素敵かのぅ?」
勿論、と頷いて、班長はビオラの髪を梳く。
素敵なビオラはもうちょっと教えてくれるよね?
「う、うむぅ……。じゃあ説明するのじゃぁ……」
チョロすぎる……と、ビオラの横に居たイヴが白い目になるのを見て見ぬふりをして、班長は『デタリウム・フィールド』の事を説明するように促す。
「この『デタリウム・フィールド』じゃが、フィールド内に居る人間の精神に作用しているのか、とても不思議な事が出来る。例えば、この端末で出したばかりの急須じゃが。そちはこの中に、お茶は入っているとおもうかの?」
「いや、出したばかりだし、何も入っていないのでは?」
「ふむ、そちはそう思うか。わちは、この中にお茶が入っていると
ビオラは急須に手を伸ばし、湯呑に傾ける。すると、暖かそうなお茶が注がれた。驚く班長を横目に、3人分お茶を淹れたところで、ビオラは悪戯っぽく笑い、班長に聞いた。
「ところで、そちが座っているソファじゃが、実は幻で、本当はそこには無いのじゃ。……と、言ったら信じるかのぅ?」
何を馬鹿な、ちゃんと座れているではないか。……しかし、確かにいきなり現れたこのソファが幻だと言われたら……もしかして……。
そう疑念がわいた瞬間、あたかもソファが消えたかのように、班長のお尻の下からソファの感触が消え、班長は床に尻もちをついていた。ビオラからは、班長がソファにめり込んでいるように見える。
「これが『デタリウム・フィールド』の最大の効果じゃ。ここにあるものは、あると信じれば形となって存在する。しかしそれの実態が無いと思えばこのように」
ビオラが急須と湯呑から手を離すと、急須も湯呑も宙に浮いたまま落ちることはなかった。
「想像力の想いのままに。……あたかも幻のように。あたかも実在するかのように」
ビオラは湯呑だけを掴む。先ほどまで魔法のように宙に浮いていた湯呑を口に近づける。
こくり。こくり。
ビオラの喉を通るお茶。演技ではない。
「『デタリウム・フィールド』に居る者の想像力が、このフィールドにあるものすべてを制御できる、という訳じゃ」
「限定的とはいえ、フィールド内では想像力があれば神様みたいな事も出来る。凄くない?さっきからテンション爆上がりなんだぁ」
イヴも、戦闘中でもないのにテンションが上がっていた。
しかしなるほど、これはすごい。
感心していると、ビオラはさらに端末を操作し始めた。
先程配置した家具が魔法のように消えていき、リビングは再び何もない部屋となる。
「班長殿、壁を触ってみぃ」
言われた通りに、リビングの壁を触る。冷たい壁の感触。トントン、と軽く叩けば、建築ボードの軽い音がする。
「その壁も、『無い』のじゃ。……言ってる意味、
まさか……と一瞬思うが、言われた通り「壁は無い、壁は無い……」と心の中で念じつつ、手を伸ばす。するとその手はあっさりと壁をすり抜けていた。学校の教室のフィールドで美月とエッチした時の事を思い出す。そうか、あの時は幻覚だとは思っていたが、教室の壁や窓は、トイレの壁がそう見えているだけだと勝手に
「そして、この『デタリウム・フィールド』では」
再びビオラは端末を操作する。いくつもの青い机。そして白い絨毯とカーテン。
ビオラが端末を操作すると、それらは大きさを変え、向きを変え、魔法のようにリビングに配置されていく。
「想像力?創造力?いや、ここまでくると妄想力かのぅ。想いの力で、こんな事すら出来てしまう」
そこに広がっていたのは、青い空。そして砂浜、波打ち際。
「海だー!」
テンションが上がったイヴが叫ぶ。端末を弄り、ビーチパラソルとビーチベッドを設置する。
波の音や、潮風の香りまで感じてしまいそうになるのが不思議だった。
ふと班長は、ビオラの作った砂浜から視線を外す。横を見れば、本部のリビング。
我に返ったように、波の音や潮風は感じなくなる。
再び、視線を作られた砂浜に戻す。……やっぱり、波の音が聞こえる気がした。
特撮映画のセットのようなものだろうか。
妄想する力で、こんな事が出来るなら、自分にも出来るだろうか……?
等と考えている横で。
「海と言えば!」
「海と言えば!」
二人が叫んでいた。
「「水着だ(じゃ)ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
そして二人は砂浜を走る。走りながら、端末を弄り、二人の姿はあっという間に水着に変わる。
……着替えシーンは無いのか。謎の光さん*8の出番は。
そんな益体も無いことを考えた班長は、はたと気がついて、砂浜へ走っていった二人に声をかける。
「二人とも!『デタリウム・システム』でコ・ス・プレを変えた時の不具合、直ってるんだよな!?」
二人は同時に立ち止まり、班長の方へ振り向いて、同時に首を傾げた。
「「何のこと(じゃ)?」」
「以前、『デタリウム・システム』を使ってコ・ス・プレを変えたら、喜怒哀楽、特に「エッチな気分」が増幅されたんだ。しかも、転生コスのダメージ増幅と同じ割合で」
それであの夜は……ゲフンゲフン。
「二人とも、
二人の顔から表情が抜けた。
あ。これ、あかん奴だ。
班長は目を手で覆った。イヴとビオラは顔を見合わせ。……そして叫んだ。
「「……ラファムめぇぇぇぇぇ!!!!」」
次回、<scene9-2 イヴ&ビオラ 『デタリウム・フィールド』効果>
共同戦線中、オート周回で回しっぱなしの班長達に、お年玉として1/1の0時に公開予定!
オート周回のお供にどうぞ♪